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第158回 介護事業の経営課題の一つは所属意識をいかに高めるかということ

2025/11/04

仕事を行う上で所属意識というのはとても大切です。社会人としての自分の存在感は、どこどこの職場組織に所属しているということで培われているように思います。電話をかけた相手に、自分が誰なのかを名乗る際には、職場名を冠にして○○の○○ですと、名乗ることが多いのが、そのことを証明しているのではないでしょうか。そのことは自分の仕事に対するモチベーションや、パフォーマンスにもつながってきます。自分は経営者でも管理職でもないとしても、所属する組織に利する結果を残そうとするのは、所属する職場を愛する精神が、一番の素になっているからではないでしょうか。

介護事業においても、この所属意識はとても大切だと思います。自分が所属する組織が、社会に認められる良い組織になるために、介護という職業の使命や、誇りを大切にしようとするからです。単に給料などの待遇が良いことだけを、良しとするのではなく、利用者対応が優れていたり、高品質な介護サービスを提供して、地域貢献したいと思うためには、所属する組織への帰属意識が不可欠だと思うのです。

ところが、介護人材不足の中で、この所属意識が薄れているのではないかと思われる組織も増えています。外国人材の方々が、組織に所属意識を持っているでしょうか。その人たちの中には、観光気分で日本を訪れ、介護労働を日本で過ごす間のアルバイト程度に考えて、短期間に別な良い仕事に就こうとか、祖国や他の外国に短期間で移ろうとする人もいます。

その方々に所属意識を持ってもらうためには、職場がその人たちを愛し、その人たちの居場所であると、認識されねばなりません。古いアパートを借り切って、外国人材の居住場所とするのは良いのですが、狭い部屋に複数の外国人を共同で住まわせて、それが居住環境の整備だと勘違いしている事業者に、外国人は所属意識を持ってくれません。自分たちは使い捨ての歯車だと思って、職場を愛さず利用者を愛しません。そのようなことがないように、外国人材の方々の住環境をきちんと整え、生活支援も行い、仕事がしやすいように翻訳機は当たり前に設置し、会話ができても記録が苦手の人のために、生成AI搭載の自動記録媒体を常備しなければなりません。そのような前提条件を整えて、同じ職場の中で同じ目的をもって、同じ方向に向かって仕事をする仲間であるという意識を、高めるための様々な支援が必要とされているのです。そこをおざなりにして、外国人材を受け入れているところは、早い段階で失敗の憂き目にあうことは必然です。

問題は派遣職員です。その人たちが、派遣先に所属意識をもって仕事ができているでしょうか。派遣職員は、派遣先より派遣元の登録派遣会社に、所属意識を持つ人が多いように感じます。その人たちが、派遣先で直接雇用されている職員と、同様の意識を持つように指導しても、なかなか思うようになりません。

そもそも所属意識とは、考え方の問題なのです。行動は規律である程度規制できますが、感情や思考はそうならないのです。でも思考が伴わない行動に、発展性はないと思います。自分が組織に所属している意識が薄いということは、その組織が近い将来どうなろうと、自分には関係のないことだという意識が、常にあるという状態になります。組織が社会に認められなかろうが、組織経営を続けられなくなろうが、全くそうしたことには、興味が持てなくなるのです。そうなっても自分は、働き場所を変えれば良いだけですから・・・。

これは介護事業にとって、致命的結果につながる危険性を秘めた問題です。介護という職業は、こうすればこうなるというエビデンスが、存在しない部分があります。目に見えない介護サービスを利用する人は、感情ある人間ですから、「こうしてAさんは喜ばれたけれど、同じ行為を行ってもBさんは喜ぶどころか、気分を害された」ということが起きうるのです。その時、組織に対する所属意識が薄く、規制された行動だけで動いている人に、Bさんの負の感情は伝わりません。仮に伝わったとしても、それを何とかして良い感情に変えようという動機づけは、起こりづらくなります。所属意識の薄い人は、結果がどうなろうと、決められて事を決められたとおりに、行っておればよいだろうという考えがちです。これは結果的に、介護の品質劣化に繋がり、不適切サービスの温床にさえなり得る問題だと思います。

そもそも介護事業者の求人がこれほど多い状況で、派遣社員という身分をあえて選ぶ理由は何でしょう。手取り月給の多さを理由に挙げる人がいますが、退職金制度も含めた福利厚生面をすべて含めて考えると、派遣社員が正職員の待遇を上回ることはほぼありません。それでもなおかつ派遣という身分を選ぶ人は、一つの会社のルールや人間関係に縛られたくない、上司の顔色を窺って仕事をしたくない、会社組織で高い地位について責任を負いたくないなど、組織の発展向上を目指す考え方とは、相反する考え方を持つ人が多いのです。そういう人たちに対して、組織への所属意識をもって、組織を愛してほしいと訴えてもなかなか通じません。

ではどうしたらよいのでしょう・・・僕は、その人たちが組織の未来を創る働き方ができるような処方を、持ちあわせていません。無理だろうというあきらめの気持ちしか持てません。だから僕が、社会福祉法人のトップを務めていた間は、派遣職員は一切使いませんでした。アプローチやオファーがあっても、全て断っていました。そのために僕が居た法人は、派遣に頼らずに、直接雇用職員だけで、必要なケアサービスが提供できる事業者を目指していました。従業員募集の工夫をして、法人独自の雇用システムを構築し、なおかつ一旦採用した従業員が、不安から離職しなくて済むように、適切な介護知識と技術を獲得できる、研修体制なども同時に創り上げました。こうして従業員が定着でき、その環境の中でスキルと待遇がセットで向上する法人を、目指し・実践していました。よってコンサル先などでやむを得ず派遣職員を雇用している場合は、出来るだけ責任を負わない部署の仕事を任すにとどめ、派遣職員比率を下げるための、組織作りのアドバイスをしています。

もともと僕自身は、人の暮らしに深く介入する介護事業に、派遣労働を認めている法律がおかしいだろうと考えています。あくまで個人的な意見ですが・・・。

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