HOME > U+(ユープラス) > masaの介護・福祉よもやま話 > 第165回 看取り介護期の栄養士の役割は、生きるを支える重要な役割
2026/09/14
介護保険制度の理念の一つである自立支援の考え方は、制度施行時から変化(進化?)し続けている。そのことに関連した介護報酬改定の過去の経緯を振り返ると、2006年度の改定時に「経口維持加算」が新設され、その要件として栄養マネジメント加算(常勤の管理栄養士1名以上の配置が要件)の算定が必要とされた。それ以後、経口からの食事摂取の取り組みが重視され、そこに管理栄養士又は栄養士(※以下、栄養士等と表記)が、関わることを評価する報酬体系が整えられていった。それは自立支援が、身体の機能維持・回復のための医学的リハビリテーションエクササイズだけで、実現できるものではなく、栄養状態の維持・向上が必須であり、そのためには、経口からの食事摂取を続けることが、重要であるという考え方に基づくものである。
2024年度の介護報酬改定では、この考え方がさらに進められて、高齢者のフレイル(虚弱)予防のために、口腔機能向上に関する取り組みが求められるようになり、リハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組が高く評価されている。自立支援の第一歩は「お口のケア」からであり、食べる喜びの維持が、全身状態の維持につながるとして、栄養士等の役割が益々重要視されているのである。
このように栄養士等の仕事とは、レシピを工夫することや、献立を立てて栄養計算をすることのみではなく、利用者の口腔状態・摂食状況なども把握しながら、食べる喜びを維持するための工夫・取り組み全般を含むものである。そうであれば、要介護者が看取り介護の対象になった際にも、栄養士等の役割は重要となってくる。看取り介護対象者は、そのいずれかの時期において、経口摂取が不可能となる。いわゆる禁食という状態に陥るわけであるが、それは医師の判断によって時期が決まる。その際に栄養士等からの情報提供を参考にすることはあっても、禁食の判断・指示を行うのはあくまで医師である。
(※看取り介護の場合、口からの食事摂取ができなくなっても、経管栄養を行うことはないし、多くの場合、点滴も行わないか、必要最低限にとどめるのが普通である。)
だが、禁食となった以後は、食事提供されなくなるのだから、栄養士等の出番はなくなると考えてはならない。むしろ食の専門家である栄養士等の腕の見せ所は、禁食となった以後である。そこでのキーワードは、「出来ないことより、出来ることを考えるのが、専門職の役割」である。
食事ができなくなっても、口から物を摂取できなくなっても、味わうことはできるかもしれない。好きな味を感ずることはできるかもしれない。そういう機会を、保障・実現する専門家が栄養士等だと思う。
僕が過去に総合施設長を務めていた特養は、ユニットケアのしつらえがない、従来型多床室中心の古い施設であったが、それでも利用者一人一人に、個人専用の冷蔵庫を設置していた。個人の食べたいもの・呑みたいものを、遠慮なく味わってもらうためだ。その冷蔵庫は、看取り介護の場で大いに活躍していた。看取り介護対象者の方の場合は、禁食になった後はその冷蔵庫に、管理栄養士が責任をもって、その方の好きなもので、味わうことができるものを、毎日食品管理して入れることを、ルーティンにしていたのである。
アイスクリームが食べたい・・プリンが食べたい・・・煮豆が食べたい。そんな思いを持った瞬間に、味わってもらうことが大事だから、管理栄養士がその方の状態で、味わうことができる状態(※例えば、毎日煮豆を煮て、ペースト状態にしたものを小さなタッパーに入れ、冷蔵庫で保存する等々)で保存していた。看取り介護対象者が、「〇〇したい」と言った瞬間に、その要求に応える心づもりがないと、先送りさせた希望はかなうことがないまま、死を迎えることだってあるのだ。いま舌の上で味わいたいものは、1時間後にはもう味わうことさえできなくなることもあるのだ。そこには後悔しか残らない。そうしたリアルタイムの食に関する希望に、応えられるための栄養士等の役割が重要になるのである。
看取り介護とは、誰かの人生の最終ステージの、「生きる」を支える重要な支援行為なのだから、最期まで利用者ニーズに応える姿勢を、忘れないでほしいと思う。