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第400回 情報化推進国民会議の解散

2017/04/10

産業界、労・使・消費者と官庁、有識者など国民各層が集まって日本の「情報化」を促す活動をしてきた「情報化推進国民会議」(児玉幸治委員長)が「十分に使命を果たした」として、3月末に解散した。発足から32年の活動だった。筆者も慶應義塾大学の教授時代に要請されて参加し、コンピューターへの「不正アクセス禁止法」成立支援活動や住民基本台帳ネットワークの推進、マイナンバー制度の啓蒙・推進など、様々な情報政策提言や国民運動の提唱を行ってきた。

まだ、サイバーセキュリティの体制整備、ビッグデータ・IoT・AIを基本にした「第4次産業革命」推進の支援など、新しい課題は続々と出現してきているが、日本の情報社会の基本となるマイナンバー制がどうにか動き始めたのを一区切りにして、「国民運動」としての国民会議の活動を終了することを決めたものだ。

確かに、「情報化推進」「国民会議」などの用語は、ひと時代もふた時代も前のもののような気がする。1980年代半ば、パソコンは登場していたものの、まだ、大型コンピューター全盛の時代。いずれ通信もデジタル化し、新しい社会が到来する予感はあったが、その時期は、先進的な人達のものだった情報機器を広く社会全体に普及させることが重要な目標だった。高い目標を掲げて活動を展開したつもりだが、想像以上のインターネットの急進展、無線サービスの発展、スマートフォンの出現、AIの本格化など目標を遥かに上回る社会が実現してきた思いがある。

上述のように次々と新しい課題は登場してくるが、時代の変化のスピードは速い。30年前の組織形態、運動形態がそのまま現代で有効なものかどうか。

「企業の寿命は30年」という経験則がある。

実際、その間に時代に対応して変化を遂げることができなければ、企業は終焉を迎える。その例は嫌という程目にしている。巧みに変化し、進化し、新しい衣に切り替えることができた企業だけが、今日生き延びている。

多くの従業員や顧客を抱えている企業ならば、生き延びる道を模索する意味があるが、運動組織は、時代に合わせて新しいものを作ればよい。

企業の寿命は30年、組織の寿命も30年。数々の実績を挙げて、情報化推進国民会議は役割を終えて「大往生」を果たした、といえるのではないか。

組織に関与した人間として、誇らしく、解散後の記念パーティーで美酒を味わった。

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