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ITかかし

製品概要

「ITかかし」は、JR東日本フロンティアサービス研究所、ヨシモトポール株式会社、内田洋行の共同研究開発成果です。
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多くの無人駅では、運行情報の伝達システムの構築が不十分です。 そのため、災害時に列車の遅れがあった場合などは、駅の利用者は、列車が今どれくらい遅れていて、 いつ到着するのかが分からず、ヤキモキして待っていなくてはいけません。 そのような課題を解決するために、車両に搭載したGPS機能付き携帯電話を利用して、 無人駅に設置しているITかかしに情報を配信するなど、低コストでの運行情報配信システムを可能にしました。 また、ITかかしが備えるネットワーク機能を利用して、地域の人がその地域の情報を広く伝えることにも寄与しました。

開発の背景と流れ

全国の約40%は、地方ローカル線を中心に存在する無人駅です。都心の駅がハード的にもソフト的にも日に日に発展していく一方で、無人駅では、木造建築で50年を越す駅も珍しくなく、有人駅時代の施設をそのまま利用しています。その為、使われていない駅務室や休憩室といった過剰な施設を併設していたり、運行情報などの案内設備もままならず、天候の悪いときなどでも、利用者は電車が来るかどうかをヤキモキしながら待っていたりしなくてはならないなど、その多くは、利用者にとってやさしくない駅として存在しています。

知る、つくる、評価する
  • 無人駅周辺の方々へインタビューを実施し、地域の方々が抱える課題や要望を把握し分析しました

  • 無人駅の地域の方々と一緒になって開発をおこないました。(ユーザー参加型デザインの実施)

  • プロトタイプの無人駅設置時や、イベント出展時に、ユーザー評価をおこないました

ユーザー中心設計を用いて実現した機能

無人駅から情報を発信する

かかし型のこのプロダクトは、中央駅や隣駅からの情報を伝えるスピーカーやLED、駅利用者を安全に見守るカメラを備えています。カメラで周辺の風景を撮影して、それを都市へ発信することができます。また、ネットワーク機能を利用して、地域の人が地元のお祭りの情報などをほかの情報端末(例えば隣りの駅に設置しているディスプレイ)に流すこともできます。

  • ユーザーの要求
ユーザー中心設計の取り組み

地域の方々の抱える問題を発見するために、ボランティアで無人駅を守る活動をしている方々へのインタビュー調査を実施しました。

ユーザー中心設計活動写真

私たちがモノづくりをする際に、常に重視しているのは「関係する人々を巻き込む」ことです。私たちが作り出すプロダクトは、それを使う人や運用する人たちがいて初めて機能します。そして、プロダクトのあるところにうまく人が絡んで、初めてその「場」が生かされるのです。今回のように、無人駅というその空間をすでに営んでいる方々がいる場合には、その方々の理解なくしては、このプロジェクトは成功し得ません。この後の作業においても、ボランティアの方々と密にコンタクトを取りながら、プロダクトを形にしていきました。

運行情報を伝える

列車にGPS機能付き携帯電話を搭載して、その位置情報をITかかしが取得することで、低コストでのシステム構築を実現しました。取得した運行情報は、LED電光表示とスピーカーからの音声で、視覚でも聴覚でも分かりやすく伝えます。

  • ユーザーの要求
ユーザー中心設計の取り組み

その地域の魅力を発見するために、無人駅や駅周辺の観察調査を実施しました。

ユーザー中心設計活動写真

フィールド観察調査を実施することで、駅施設の老朽化といった目に見える問題のほかに、現場に行かなければ分からないことも発見できました。それは、久留里線には、鉄道を中心とした「人の温かみ」が存在することです。そもそも情報配信システムが、なぜかかしの形をしているのか?という声が聞こえてきそうですね。かかしには、田んぼを荒らすカラスを追い払い、田んぼを見守る役目があります。のどかな風景の中で、駅を見守るシンボリックな端末となり、無機質な端末デザインにはない、どこか愛着のわくかかし型のデザインを採用することで、駅に温かみを生むことを指向したのです。実用的な側面以外で、どこか愛着のわく魅力のあるかかし型の端末は、その地域に行って、人の温かみに触れないと生み出せないデザインでした。