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コラム

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ユニバーサルデザインが描く未来

執筆者:鴨志田 厚子
鴨志田デザイン事務所代表、静岡文化芸術大学デザイン学部教授
東京芸術大学卒業後、静岡県工業試験場意匠課を経てデザイナーとして独立。理論だけではなく、実際の製品デザインやフィッティングデザインでユニバーサルデザインを実践。
外部デザイナーの先駆者として、内田洋行の商品を数十点デザインし、ユニバーサルデザイン基準設定を監修。

ユニバーサルデザインとオフィス環境

現代のビジネス環境のなかで求められる、人にやさしいデザイン

ユニバーサルデザインは高齢者や障害者のためのものと考えられがちですが、そうではありません。若いデザイナーの中には自分には関係ないこととして無関心な人もいます。人は疲れるものです。パソコンなどに長く向かっていると疲れるでしょう。現代のビジネス環境は人にとってかなり過酷です。目の疲れや腰痛、四十肩、五十肩、あるいは糖尿や高血圧など慢性的な病を持ちながら働いている人もいるでしょう。人は誰もが弱さを抱えながら生きているもの。それを補うような机や椅子、空間のデザインを考えることがユニバーサルデザインです。

ユニバーサルデザインは世の中のニーズです

また、いまでこそ高齢者はリストラの対象になっていますが、これから日本は少子化に向かい、高齢者でも働く時代になってきます。子供たちの総合学習にはユニバーサルデザインの勉強を取り入れている学校もあり、あらゆる意味でバリアフリー、ボーダレス社会へ向けた準備が進められています。小中学校の先生からの、共用品推進機構への問合せも増えています。ユニバーサルデザインはまもなくニーズとなって立ち現れてくるでしょう。オフィス環境においても例外ではありません。いちはやくオフィス環境のユニバーサルデザイン化に取り組む企業こそが、先進的な企業として生き残る可能性も高いといえます。

「さりげない配慮」こそがユニバーサルデザイン

たいそうなことを言ってきましたが、実際にはちょっとした配慮でいいんです。シャンプーのボトルの側面には、よく見るとギザギザが入っています。これは目の不自由な方のために触ってリンスと識別できるように付けられているものです。電話のプッシュボタンの「5」のところに小さなポッチが付いているも同様の理由です。これらは知っていれば目が悪くない人にも大変便利です。そんな簡単なこと、さりげないことがユニバーサルデザインの理想です。

誰もが同じ場所で働いたり、楽しんだりできる空間

肝心なのは、高齢者でも新型の電気製品が簡単に使えたり、オフィスでは車椅子でも不自由なく仕事ができたり、公共施設では子ども達が自由に利用できる工夫がされていること。特別扱いではなく。それがちょっとしたデザインの配慮で可能になる。例えば、受付のカウンターは高いところと低いところを設け、子どもや車椅子の人でも届く高さのコーナーをさりげなく設ける。受付に障害をもった人を配置する、といったことが自然に行えるようになるとさらにいいですね。
高いところにある資料を取りやすくする棚、太った人でも座りやすい椅子、会議の声を聞きやすくする道具、車椅子が通れる通路、あるいは通路を通れる車椅子、杖をかけやすい机、持ちやすいペン。誰もが同じ場所で働けたり、くつろげたり、楽しんだりできる手助けをするのがユニバーサルデザインということができます。長期の障害をもった人だけでなく、ケガや病気をしたり、妊婦になったり、そんな一時的な不便さがある人も安心して働ける職場。不自然でなく、そのような配慮がされたオフィスでは、人がいきいきと働きます。そうした企業は、どんな個性の人も受け入れる、活気あふれる集団に違いありません。

内田洋行さんには、ぜひがんばっていただきたいですね

内田洋行さんを含めオフィス機器・家具メーカーが負う社会的責任は大きいと思いますよ。ユニバーサルデザインの普及も、内田さん次第。ぜひこの分野のリーディングカンパニーになっていただきたいですね。それに、ユニバーサルデザインを進めるのって、結局は自分のためになるんです。年は誰でもとるし、病気やケガをすることだってある。そのときのためにラクに働ける職場を作っておくのは悪くないでしょ。企業にとっても優秀な人材を失わないですみます。内田さんには、商社としてさまざまな企業に「結局は自分のためになるユニバーサルデザイン」の提案をしていってほしいですね。

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