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ユニバーサルデザインが描く未来

執筆者:鴨志田 厚子
鴨志田デザイン事務所代表、静岡文化芸術大学デザイン学部教授
東京芸術大学卒業後、静岡県工業試験場意匠課を経てデザイナーとして独立。理論だけではなく、実際の製品デザインやフィッティングデザインでユニバーサルデザインを実践。
外部デザイナーの先駆者として、内田洋行の商品を数十点デザインし、ユニバーサルデザイン基準設定を監修。

ハート・オブ・ユニバーサルデザイン

心がともなってこそデザインは活きてくるんです

最近、日本でも低床バスが多く見られるようになりました。子どもでもお年寄りでも、ラクに乗り降りができる、ユニバーサルデザインの有効な一例です。車椅子の人は階段が昇れないから「スロープ」を用意する。一方、スロープを用意できない場所もあるので「階段を昇れる車椅子」を作るという方法もあると私は思います。しかし、考えてみると、近くにいる人のちょっとした手助けがあれば、なくてもすむ装置もあるのかもしれません。ハード面の整備に頼るばかりではいけないと思います。
モノをつくる側がユニバーサルデザインに配慮して作っても、流通の過程で途切れてしまい、ユーザーにはその意味が届かないこともあります。ユニバーサルデザインに十分配慮された商品でも、売場にただ置いてあるだけでは伝わりません。売る人のきちんとした説明があると、買う人も安心ですし、商品の機能を有効に発揮させることができます。

美しくなきゃ、デザインじゃない

機能だけを追及していくと、デザインが特殊な形になっていくことがままあります。仕上げのデザインでそれをどのくらいきれいにまとめていくか、がデザイナーの腕の見せどころです。少々使いにくくなってもカッコよさをとるとか、使う場面や使う人を考えたバランス感覚が必要です。形態は機能に従うともいいますが、機能一点張りでは親しみがありません。使う側にとってもカッコいいモノを使いたい。そのような精神的な欲求から手に入れたモノは、所有する喜びも手伝い、多少の不自由さも使いこなせてしまうのです。楽しく仕事ができたり、生活できたりすることが大切なのですから。

「デザインは化粧ではない」ことを忘れずに

デザインはカバーリング(表面加工)ではありません。近年、日本では、デザインというと見た目を良くするための化粧のようなものとして、認識されがちでした。今でもそう思っている人は多いでしょう。使いよさを追求した形がデザインであることは基本です。デザインもユーザーの研究が大切です。差別化目的の色や形だけが先行しては、よいデザインとはいえません。

日本らしいユニバーサルデザインとは

日本のユニバーサルデザインは立ち遅れているといわれますが、「和」を見直すことで日本らしいユニバーサルデザインができあがるのではないかと思います。もともと畳や障子・着物のモジュールには、ユニバーサルデザイン思想が流れています。日本の得意とする量産の技術の中に、うまく手作業の部分を取り入れ、匠の技を織り込んでいます。素材にしても、テクスチュアにしても、和を見直すことで、ホッとするような親しみやすさと、オリジナリティが出てきます。日本文化の原点に立ち帰り、得意な新技術や素材を取り入れながら、形にしていくと自ずと日本らしいユニバーサルデザインができてくるのではないでしょうか。

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