Microsoft 365 の動向
存在感を増す Microsoft 365
勤務先のグループウエアについて聞いた「キーマンズネット」の調査によると、2019年度では Microsoft 365 と答えた人は28.4%でしたが、2020年度には40.5%。12.1ポイントの上昇です。コロナ禍でニーズが高まったと考えられます。
同じ「キーマンズネット」の2020年度の調査では、勤務先で利用しているコミュニケーションツールの71.7%が、2021年度の調査では、勤務先で利用しているWeb会議ツールの69.5%が Microsoft Teams(以下Teamsと表記)となっています。企業の中でも、コミュニケーションツールとしてTeamsの影響力が強いことがわかります。
Teamsのアクティブユーザーは、全世界で月間2億5,000万人。世界的にも影響力の強さがうかがえます。
ハイブリッドワーク
コロナ禍で広がったリモートワーク。コロナは収束されつつありますが、働き方が完全に元に戻ることはなく、これからはハイブリッドワークが主流になると考えられています。
ハイブリッドワークとは、完全にリモートで働くというパターンと、完全にオフィスで働くというパターンの中間に位置するものです。リモートワークとオフィスワークを組み合わせ、業務や予定にあわせて働く場所を自由に選択できる状態です。組み合わせは色々と考えられますので、その厳密な定義はありません。幅広いバリエーションの中から、会社やチーム、個人に適した働き方を選ぶ時代になると思います。
なぜ、ハイブリッドなのか。なぜ、コロナ禍以前のオフィスワークにもどらないのか。それは、みなさんがリモートで働くことのメリットを実感したからでしょう。
たとえば、自宅のほうが集中できると考える人もます。また、通勤時間が不要になり満員電車に乗るストレスがなくなることに加え、その削減できた時間を家族や趣味・学習のために使うこともできます。結果的にワーク・ライフ・バランスが向上するなど、この1〜2年のリモートワークで多くの人がメリットを実感しました。
企業側にもメリットがあります。育児や介護などの事情で毎日出社できない人の離職を防止できるほか、他の地方に住む社員を雇用できる人材面のメリット。また、オフィススペースの削減に伴うコストの削減。そして、災害時の事業継続性確保などのメリットです。
では、オフィスは不要になるのかというと、多くの場合は今後も必要であると考えられています。自宅に集中して働ける環境がない従業員もいますし、そもそも在宅に適さない業務もあります。特にリモートワークにおけるコミュニケーション不足を課題に挙げる企業も多く、コミュニケーションの場としもオフィスが期待されています。
オフィスに出社するメリットは、他の従業員と直接顔を合わせられることです。ちょっとした会話や雑談が気軽に行えますし、アイデアを出し合うような会議は対面で行ったほうが良いでしょう。同僚などとの人脈を作ることもできます。そうした繋がりによって会社への帰属意識も生まれるかもしれません。興味深いことに若い世代ほどオフィスにも出社したいと考えています。「コロナ禍のテレワークと人事の課題に関する調査 あしたのチーム」によると、20代の67.4%は、「オフィスに出社して仕事をしたい」と答えています。
こうしたリモートワークとオフィスワークの良いところを取って働きたいという欲ばりな働き方がハイブリッドワークといえるでしょう。
リモートで柔軟に働きたいが、オフィスでの対面コミュニケーションもしたいというジレンマと向き合い、よりより働き方をデザインしていくことが、これからのハイブリッドワークの課題でしょう。
テック企業の試行錯誤
例えばGoogleでは、週3日はオフィス勤務、2日は好きな場所での勤務と定めています。これによって従業員は、60%はメインオフィス、20%はサブオフィス、20%は自宅で働く計画になっています。オフィスに出社する目的はコラボレーションです。そのため、チーム単位でオフィス勤務の日程を決めるなど、自分たちで働き方を選択できるようにするようです。
私たちの周りを振り返っても、働く場所の選択肢は増えています。以前は、オフィス、自宅、外出時のカフェなどでした。今ではコワーキングスペースや、サテライトオフィスなどもあります。コワーキングスペースなど。最近では、コワーキングスペース付きのマンションも増えています。観光地などで働くワーケーションもあります。
働く場所の選択肢が増えていくと、重要となるのがITの環境です。メール、チャット、Web会議、ファイル共有、ワークフロー、業務アプリなど、どこからでも平等にアクセスできるITの環境があるからこそ、好きな場所を選んで働けるとも言えます。
IT環境として Microsoft 365 を利用するときに中心となるのがTeamsです。Teamsは、さまざまな場所をつなぐ、コラボレーションのハブとして機能します。
Microsoft Teams 活用のコツ
ハイブリットワークにTeamsを活かすコツは次の2点です。
① 非同期コミュケーションを意識する
② この場にいない人の体験を考える
従業員のコミュニケーションは大きくは2つにわけられます。1つは、同じ時間を共有する「同期コミュニケーション」。主なものに会議や電話、立ち話があります。また、すぐに返信を求められる場合はメール、チャットも含まれます。
もう1つは、それぞれが都合のいい時間にリアクションする、「非同期コミュニケーション」です。たとえば、すぐに返事をしなくて良いメール、チャット、イントラネットの掲示板、タスク管理ツール、ファイル共有などです。
メールは、同期コミュニケーションでもあり、非同期コミュニケーションのどちらでも利用できると言いましたが、これはどういうことでしょうか。それは、使うユーザーの意識によって変わるものであるということです。組織の雰囲気やその場の状況が、メールを受信したら「すぐに返信しなきゃ」と感じる場合には同期コミュニケーションに、「あとで返信しよう」と考えらえる場合には非同期コミュニケーションとなるでしょう。
ハイブリッドワークでは非同期コミュニケーションが良い場面が多くあります。一方で、同期コミュニケーションが効率の良いもあります。同期・非同期それぞれのコミュニケーションのバランスを考える必要があります。そのためにも、非同期コミュニケーションを意識することが大事になります。
たとえばチャットの使い方を見てみましょう。チャットは、基本的にはそれぞれの都合の良い時間で情報を共有し合う、非同期コミュニケーションツールです。ところが、使い方を間違えると、相手に同期コミュニケーションを強制してしまいます。
これは良くないチャットの例です。
最初に「お疲れさまです」だけ送る、または、受け取ったことのある人も少なくないでしょう。この問題点は、相手に何の要件かも伝わらず、とりあえず相手は返事するしかありません。そこから同期コミュニケーションが始まってしまう(即レスを強要してしまう)のです。
非同期コミュニケーションでチャットを利用するなら、次のようにすると良いでしょう。
「お疲れさまです」のあとに、「昨日お願いした件ですが…」と要件を続けます。すると、相手はすぐ返事するべきかどうか判断できます。ちょっとした違いですが、非同期コミュニケーションではこうしたことを意識することが大事です。
クイックコールを上手に使おう
チャットは便利ですが、ときには同期コミュニケーションの「通話」機能を上手く利用することも大事です。チャットの右上に、音声通話のアイコンがあり、チャットの途中から音声通話に変えることができます。このようなちょっとした通話は「クイックコール」と呼ばれます。
チャットでは30分かかる要件も、通話なら5分ですむことがあります。そういうときに、このクイックコールを活用すると便利です。最初は、非同期コミュニケーションで始まるが、途中から同期コミュニケーションに変わるパターンです。コミュニケーション上手の人はよくクイックコールを使っています。Teamsでは同期コミュニケーションと非同期コミュニケーションを組み合わせて利用できる点がポイントです。
チャットの上手な利用の仕方を以下にまとめました。
ところで、Teamsにはチャットの機能が2種類あります。「チャット」と「チーム」のチャネルです。
チームのチャットは、スレッド形式になるので、あとから会話の流れを確認するのに便利です。また、会話にタイトルをつけることもできるので、検索しやすいことも利点です。できるだけ、チームのチャットを使うことをおすすめします。
オンライン会議
自宅やオフィス、サテライトオフィスなど様々な場所からクラウド上の会議室に集まって会議をするオンライン会議は、同期コミュニケーションの1つです。ただし、この同期コミュニケーションでも、非同期コミュニケーションを意識することが大事です。
具体的には、会議前であれば、参加者の時間調整、事前の資料共有、資料の共同作成、議題の確認などがあります。会議後も、議事メモによる振り返り、動画によるフォロー、タスクの確認、会議後の議論などがあります。これら会議の前後にある非同期コミュニケーションを意識すると、会議の情報をさらに共有しやすくなります。
チャネルに紐づけた会議
いつものメンバーで行う会議は、チームのチャネルで行うようにすると、会議の情報がチャネルに集約されて便利です。右上のメニューの「会議をスケジュール」を選択し、会議予定を作成します。すると、会議前後を含む会議に関するやりとりやチャット、会議のレコーディング動画などをすべてスレッドにまとめることができます。
また、会議の結果をチャットや議事録、動画、Plannerのタスクなどで残しておくことで、会議に参加できなかった人も短い時間で会議を後追いできるようになり便利です。
会議中も発表者の発言中に疑問があれば、どんどんチャットに書き込みながら聞くと、他の人も参考になり、議論のスピードアップにつながります。参加してない人にもあとから議論の内容を確認するのに役立ちます。このように、ちょっとした機能を意識して活用するだけで、Teamsをより便利に活用できます。
会議中の資料共有方法として、デスクトップを共有する方が多いと思いますが、Teamsには、PowerPoint Liveという共有方法があります。PowerPoint Liveでは、参加者の画面の左下にスライドを切り替えるメニューが表示され、自由に前後のスライドを確認することができます。
ハイブリッド会議の難しさ
会議室に集まるメンバーと一部のリモート参加者の組み合わせでハイブリッドに会議が行われる場合、会議室に集まったメンバーだけで議論が進みがちです。とくに、発言力の強い参加者が会議室にいると、リモートの参加者は意見を言いづらくなります。どのようにすればうまくいくのでしょうか。
まずは、会議室の参加者とリモートの参加者とのパワーバランスをとることを考えましょう。たとえば、上司や主催者など発言力のある人は、必ずリモートから参加してもらう。あるいはいっそ、会議室に集まらず全員がリモートで参加してもいいかもしれません。ただ、会議室に集まるメリットもあるので、臨機応変に考えていただければと思います。
会議招集時の会議出席依頼に追加が予定されている今後の新機能では、参加依頼の返信に、出欠だけでなく、オンライン参加か直接参加かを選択できるようになります。これによって会議室に集まるメンバーを事前に確認したり、それによってカメラのある会議室に変更したりするなどの対応が可能になります。2022年の早い時期にリリースの予定です。
これからの会議室のレイアウトを考える際には、「会議室にいない人の体験」から、会議室を設計するのがポイントです。たとえば、カメラを囲むようにテーブルや椅子を配置したり、画面に映ったリモート参加の人と目線が合うようにカメラやディスプレイの高さを調整したりするなどです。リモートで参加する人が、どういう会議体験が得られるか、そこから会議室のレイアウト考えようというのがこれからの時代に求められるのではないでしょうか。
まとめ
コロナ禍の影響が収束したとしても、もう以前のような働き方にはもどらないというのが世間一般の見方です。ハイブリットワークが一般的になっていく中で、いつでもどこでもアクセできるIT環境はさらに重要性を増してくるでしょう。
Microsoft 365 では、Teamsが中心的な存在になります。Teamsを上手に使うには、機能をたくさん知っていることよりも、簡単な機能でもそれをどう使うかが重要になってきます。
このときの大事な視点として、
① 非同期コミュニケーションを意識して使う
② この場にいない人の体験を意識して考える
について今日はお話ししました。
詳しくは、拙著『Microsoft Teams 踏み込み活用術』にも書いてありますので、ご興味がある方はぜひご一読ください。
ご清聴ありがとうございました。