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【自社実践レポート・kintone編】 利用部門が自分でつくる便利アプリ - スキマ業務のデジタル化

2023/5/30 [ワークスタイル,コラム]

多くの企業で、「システム化しづらい」或いは「大きな投資をするほどではない」面倒な業務というのはまだ山ほどあるのではないでしょうか。そんな業務の一つのシステム化に、開発経験もない営業メンバーが取り組んでみました。使ったのは「kintone(キントーン)」。これからご検討される方、もしくは既にご利用の方にも、ご参考になれば幸いです。

営業部門のスキマ業務をなんとかしたい

ERPだけでなく、RPAやBI、グループウェア、名刺管理に案件管理など、様々なツールを導入していても、細々とした手作業が残る業務はあるのではないでしょうか。ましてそれが特定部門だけの業務であれば、システムを導入して解決するのも難しくなってしまいます。

私が所属する営業部門では、一部の仕入れ商品の「保守契約管理」が以前より課題でした。多様なメーカーのサービスを、多くのお客様にご提供する中で、ある製品の過去の保守契約履歴の管理・次回契約更新のご意向確認・費用のご提示・契約更新というステップの多くがアナログでした。契約管理用のExcelが担当営業個人任せになっている、という状態だったのです。

保守契約更新フロー(Before)

そこで、まずは目的を明確にしつつ、このステップのどこが特に問題なのか、どこを自動化できるか、を検討するところから始めました。
使うツールはこの時点でkintoneを第一候補に置いていました。

kintone(キントーン)とは

テレビCMでもお馴染みの「kintone」は、サイボウズ株式会社が提供しているクラウドサービスです。素人でも業務アプリを簡単に開発できるノーコードツールとして、多くの企業様で導入されています(2023年3月時点で約2万8,500社)。

弊社でも販売・サポートをさせていただいており、社内にはユーザー様をサポートする専用部隊もいます。利用者としても、例えばイベント申込者管理など、簡易的なデータベース兼ビューワーとして一部部門で利用しています。

そのため、営業部門としても身近なツールで、便利さもよく分かっていましたので、kintoneでの開発を念頭に置いて検討を進めていきました。

まずは設計前会議

発起人の営業管理職1名と、営業部3名で打ち合わせを進めました。開発担当はそのうち2名ですが、双方特にシステム開発経験はありません。ただ営業経験の中でkintoneの概要は理解していました。

保守契約更新フロー(来期)

まずは今の業務のどこが一番問題なのか、負荷に感じるかを現場にヒアリングした上で、システム化後の流れを考えます。この作業については、実際の業務を細かく理解している利用部門だからこそ、効率的に進められたと思います。

業務を分解し、絶対に自動化したいところ、一部アナログが残るところに整理していきます。例えばお客様やメーカーとのやりとりはどうしても人が行う必要があります。ただやりとりを行う前後の書類作成は自動化したいですし、更新通知を分かりやすく一本化するのも譲れない機能でした。

いざ実装

凡その設計ができたら、以下の5ステップでプロトタイプを実装していきます。

① データ項目決定
② インプット(入力画面)
③ アウトプット(帳票)
④ 通知
⑤ データ移行(インポート)

① データ項目決定

必要なデータの項目を検討します。今回はもともと管理されていたExcelも、実際に契約した取引履歴もありますので、それらを合わせ、重複項目を整理してデータベース化しました。
入力ミスを防ぐ、入力工数を削減する目的で、「得意先」「担当者」「メーカー」などは別のマスタアプリを作って参照するようにしました。

② インプット(入力画面)

必要項目は①で決まっていたので、あとは入力しやすい・見やすいように整えるだけです。なるべく自動入力される項目が多くなるように、kintoneの「ルックアップ」や、初期値設定を多用しました。ルックアップとは、他のアプリから必要なデータをコピーして取得できるkintoneの便利機能です。例えば、受注入力アプリから、商品マスタという別のアプリを参照して商品を検索し、コードや価格など関連する情報をコピーしてくる、というように使います。

③ アウトプット(帳票)

「見積書」「発注書」「手配指示書」の3つの帳票を出力することにしました。実は見積を作成するツールは別にあるのですが、契約データをkintoneで管理する以上、そのデータを使って各種帳票を作成するのが利便性の面で良いという結論に至りました。
kintoneには印刷機能はありますが、エクセルで決まった帳票をアウトプットする機能はないので、プラグインを採用することにしました。プラグインとは、kintoneに追加実装できる拡張機能です。サードパーティー製のツールが多く提供されており、目的にあわせて検索・検討することができます。今回はエクセル帳票出力ができるものの中から、「Repotone *1」を選択しました。
ユーザーは、kintoneの画面からボタン1つで必要な帳票をダウンロードできるようになります。

*1「Repotone」は、株式会社ソウルウェアが開発するkintone上の請求や見積データを帳票出力できるプラグインです。詳細は、kintoneのWebサイトよりご覧ください

帳票DLボタンの画面イメージ

④ 通知

契約更新前の60日前に、各担当にメールで通知をとばす、という機能は必須でした。kintoneでは「リマインダーの条件通知」という機能があり、これを使う想定をしていましたが、kintoneユーザーではないメンバーにも更新通知を配信したい、という要件が出てきたため、急遽RPAを使うことにしました。
ERP連携などを担う全社RPA(関連記事:「自社実践レポート・RPA編」)とは別に、Microsoft 365 で提供されている「Power Automate」という簡易的なRPAを使うことができる環境にありましたので、こちらでメール通知を実装しました。

kintoneからのメール自動通知機能を追加する方法

⑤ データ移行(インポート)

実装で最も苦労したのがデータ移行でした。エクセルで管理されている契約一覧や、過去1年間の取引履歴から取り出した保守契約データを統合、クレンジングして、kintoneにインポートします。
クレンジングとは言っても、エクセル上での手作業です。項目を揃えて、重複データを排除し、その結果を各担当営業にチェックしてもらうということを1か月程度かけて実施していきました。

効果と課題、今後の展開

稼働して1年弱になりますが、概ね現場からは好評です。
定着するまで少し時間はかかりましたが、「メール通知」をトリガーに、保守更新に関わる一連の手続きを確実(忘れず)に対応することできる環境が整いました。これまでは各メーカーからの通知がバラバラな方法・フォーマットで送られてくるので、見落としがあったり、メーカー契約上は旧担当になっているために通知が現担当に届かなかったりといった問題がありました。各自がエクセルやスケジュール表で管理している契約についても、漏れがあったりお客様への連絡が遅くなってしまったりと人的ミスもあったかと思います。それらが、統一フォーマットのメールで関係者複数名に配信されるため、見過ごしてしまうリスクは軽減されました。

また、契約がデータベース化されたことにより、担当個人だけでなく管理職やチームでも更新が必要な契約をチェックすることができるようになりました。

kintoneにて年一保守を管理します。見積や入力依頼書の作成が簡単に!

現場に向けた説明会資料

課題は、更に自動化を進める余地があることです。現在はkintone画面から更新日を入力したり、金額や数量の変更をしたりしていますが、ERP側から実績を取り込んだり、もしくは逆にkintoneを更新したら自動でERPに流れたりといった自動化ができればいいなと考えています。また、お客様へのご連絡も半自動化できないか、といった要望ももらっていますので、将来的に検討していきたいです。
ほかにも営業部にはスキマ業務がたくさんありますので、メンバーと効率化に向けて検討していきたいと考えています。

kintoneで業務アプリを作ってみて

実装には苦労もありましたが、ゼロからシステムが出来上がっていき、それがチームの効率化に繋がる過程はとてもエキサイティングでした。現場が分かる利用部門だからこそ、自分ごととして取り組めたことが大きかったのだと思います。
一方で、実装にのめり込み過ぎると、利用者の気持ちを置いて行ってしまう危険もあるかと思いました。今回は開発担当2名以外にも検討メンバーがいたので、都度全員で当初の目的を振り返りながら進めていけましたが、1名で企画実装を進める場合は特に、利用者とこまめにコミュニケーションを取りながら進めていくのがよいと思います。

今回の内容が、今後kintoneでスキマ業務のデジタル化をご検討される方のご参考になれば幸いです。
内田洋行では開発や開発伴走ができる専門チームもおりますので、もしお困りの際はお気軽にお声がけください。

▼kintoneの導入支援・利活用サービスに興味がある方へ
【無料ダウンロード】サイボウズ kintone リーフレット

執筆:情報ソリューション事業部 石井

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