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【福祉・介護コラム】 介護報酬改定の動向

2023/8/21 [福祉,コラム]

今月より月に1回、福祉や介護に関するコラムを掲載いたします。コラムを執筆いただくのは東洋大学にて教鞭をとっていらっしゃる高野先生です。医療ソーシャルワーカー、高齢者分野の社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)をされていらっしゃったご経験、教育者としての視点を基に独自の視点で執筆いただきます。

来春に迫った介護報酬の改定

来年・2024年4月は、3年に1度の介護報酬改定の時期です。今、それを約8ヶ月後に控え、介護サービス事業の経営者・実践者にとっては少し落ち着かない時期になっていることと思います。

大規模事業者などではそろそろ次年度の予算なども検討しなければならず、収支を左右する介護報酬改定の動きからは目が離せません。なにしろ、介護サービス事業は「公定価格」である介護報酬が収入のほとんどを占める特殊な事業種別です。

介護報酬の決定方法

この介護報酬は、介護保険法で「厚生労働大臣が決める」ことが定められています。実際には、厚生労働省の老健局から出される厚生労働省令で周知されることになります。通常、この省令は介護報酬改定の年の1月下旬に通知されます。

しかし、これは厚生労働省の一存で決められるものではありません。介護保険法で介護報酬の決定に際し「厚生労働大臣は社会保障審議会の意見を聴いたうえで定める」こととなっているためです。実際には、介護報酬改定の年の前年の1年間をかけて、社会保障審議会介護給付費分科会で議論・検討され、その最終的な意見が12月に取りまとめられて、それが介護報酬を示す省令のベースとなります。

さらに、この分科会の議論には、10月頃に結果が示される介護事業経営実態調査が大きな影響を及ぼし、それが報酬改定の流れを決定づけます。それは、介護保険法に「介護サーヒビスの種類ごとに、サービス内容・要介護度・事業所などの所在地等に応じた平均的な費用を勘案して決定する」ことが規定されているためです。そのため、介護報酬改定の検討を行う分科会で、各事業所・施設の経営の実態を踏まえた数値を見ながら議論が行われるわけです。この調査は6月に行われますから、多くのみなさんの事業所・施設にもその調査票などが届いたことと思います。

来年4月の介護報酬はどうなるのか

現在、分科会は2週間に1回程度の頻度で開催されていますが、まだ議論は本格化していません。資料や議事録は厚生労働省のWEBサイトで確認できますから、秋以降の議論に注目をして欲しいと思います。

過去の例をみると、介護報酬の改定には連続性がうかがえます。つまり、前回(2021年4月)の介護報酬改定で焦点があてられた下記の諸点については、2024年の改定に際しても同様な検討が加えられる可能性が高い、と言うことです。

  • 地域包括ケアシステムの深化・推進
    医療介護連携、看取り、認知症ケアなどの重視・評価
  • 自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進
    LIFE(科学的介護情報システム)の利活用の推進、心身機能の維持・改善に向けたケアの重視・評価
  • 介護人材の確保と介護現場の生産性の向上
    処遇改善加算などのあり方の検討、介護現場でのICT/DX化の推進
  • 制度の安定性・持続可能性の確保
    高齢者向け集合住宅などでのサービス提供における介護報酬の見直し、サービス提供の効率性向上に対する評価、公正さの確保

なお、みなさんが一番気になる介護報酬の改定率については、12月時点での社会経済情勢や政治情勢に影響されます。現時点で予測をするのはなかなか難しいと思います。

しかし、介護サービスの経営者・実践者には、上記のような報酬改定の主要な議論のポイントを念頭に置き、来年以降の経営・実践のあり方を早めに検討して欲しいと思います。

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東洋大学 ライフデザイン学部 准教授 高野 龍昭 氏

東洋大学
ライフデザイン学部 准教授
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