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【福祉・介護コラム】 2024年度介護報酬改定の概要

2024/1/30 [福祉,コラム]

今回の福祉・介護コラムは、2024年度介護報酬改定の概要について、東洋大学にて教鞭をとっていらっしゃる高野先生に執筆いただきました。医療ソーシャルワーカー、高齢者分野の社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)をされていらっしゃったご経験、教育者としての視点を基に独自の視点で執筆いただきます。

2024年度の介護報酬改定の動向

12月20日、2024年度の政府予算に関する鈴木俊一財務大臣・武見敬三厚生労働大臣の大臣折衝によって、次年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の“改定率”が決定されました。

11月下旬までは、財務省サイドの「医療・介護の経営は、コロナ禍での各種の補助金等による黒字が一定程度蓄積されている」といった論調に加え、客観的にみても厳しい財政・経済情勢から、マイナス改定が予測されている状況でした。しかしその後、賃上げを促す政府の各種施策との整合性を求めるとともに、医療・介護分野での人材確保難を材料とした厚労省サイドが巻き返し、各種の事業者団体等のいわゆるロビー活動とも相俟って、介護報酬は微増ではあるものの「プラス改定」となりました。

もっとも、私自身は、12月初旬以降に明るみになった政治的スキャンダル(いわゆる「キックバック」裏金問題)が、最終的なプラス改定への大きな圧力になったと感じています。

報酬の改定率

大臣折衝で確定したそれぞれの報酬の改定率は次のとおりです(厚生労働省が発表した資料を一部改編しています)。

診療報酬:+0.88%

註1)このうち、註2から註4を除く改定分:+0.46%
(40歳未満の勤務医・勤務歯科医・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分:+0.28%程度を含む。)

註2)このうち、看護職員、病院薬剤師その他医療関係職種(上記の註1を除く)について、2024年度のベア:+2.5%、2025年度のベア:+2.0%を実施していくための特例的な対応:+0.61%

註3)このうち、入院時食費基準額の引き上げ(1食あたり30円)の対応:+0.06%

註4)このうち、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化:▲0.25%

薬価等:▲1.00%

・薬価:▲0.97%

・材料価格:▲0.02%

介護報酬:+2.04%相当(外枠分:+0.45%含む)

・介護職員の処遇改善分:+0.98%

・その他の改定率:+0.61%

・外枠分(処遇改善加算一本化による賃上げ効果、光熱水費基準費用額増額による増収効果):+0.45%相当

障害福祉サービス等報酬:+1.5%を上回る水準(外枠分:+0.38%程度含む)

・本体分:+1.12%

・外枠分(処遇改善加算の一本化の効果等):+0.38%

こうして介護報酬の改定率を概観してみると、処遇改善分・本体部分の改定率は診療報酬のそれを上回っています。これは、医療と介護の制度的な関係性を考えると、歴史的なことだといって良いでしょう。逆に言えば、疲弊している介護事業者・介護従事者に政府が一定の配慮をした改定であると評価できます。

なお、今回の改定はこれまでと異なり、改定の施行時期が4月のものと6月に遅れるものに分かれます。これは、社会保障審議会医療保険部会等で、診療報酬や薬価等の改定の項目・算定基準が複雑であることから、従前より「4月の改定では準備期間が不足し混乱が生じる」という指摘があったためです。これに影響される形で、介護報酬の一部も6月改定となります。

今回の改定で6月施行となるものは次のとおりです。

診療報酬…すべて

薬価等…すべて

介護報酬…訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の各サービス種別の報酬, 介護職員処遇改善加算に関する報酬(6月までは今年度補正予算による介護職員処遇改善支援事業等で対応)

障害福祉サービス等報酬…福祉介護職員処遇改善加算に関する報酬(6月までは今年度補正予算による障害福祉サービス事業所における福祉・介護職員の処遇改善で対応)

その他の動向

介護報酬の個別項目の単価や算定基準、運営基準などの細則については、1月中旬に社会保障審議会介護給付費分科会で決定され、それを受けて厚生労働省令として発出されます。各サービス種別の基本報酬やLIFEに関連する加算などが実際にどのような単位数となるのかと言ったことは、その経過に注視しておく必要があります。

なお、今回の制度改正における利用者負担などの懸案事項は、12月22日の社会保障審議会介護保険部会で概ねの決着をみました。

まず、1号保険料の負担のあり方については、保険料段階を現行の原則9段階から原則13段階に細分化されることになります。その段階別の保険料率は、現行の×0.3倍〜×1.7倍を×0.285倍〜×2.4倍に改め、累進性を強化する方向性となります。

また、2割負担者の所得基準については次年度以降も現行どおりとなった一方、そのあり方については引き続き検討を加え、2027年度の前までに結論を得ることで意見がとりまとめられました。

一方、老健施設と介護医療院の多床室の居住費については、前述の大臣折衝の際、介護老人保健施設の「その他型」「療養型」、介護医療院の「U型」について、新たな室料負担(月額8千円相当)を導入することが決まりました。一般的な入所期間が長い種別の施設で、居住費の一定額が保険給付外となり利用者負担に移行されることとなった形です。導入の時期は2025年8月利用分からとなる見込みです。

もちろん、これは補足給付(特定施設入居者介護サービス費)の対象となり、一定の低所得者対策は講じられますが、多くの利用者の負担額が重くなります。老健施設・介護医療院の経営者・介護従事者はその対応を検討しておくことが必要です。

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東洋大学 ライフデザイン学部 准教授 高野 龍昭 氏

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