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【福祉・介護コラム】 2024年度介護報酬改定の全体像 〜訪問・通所系サービスと多機能系サービス、ケアマネジメントについて〜

2024/2/27 [福祉,コラム]

今回の福祉・介護コラムは、2024年度介護報酬改定における訪問・通所系サービス・多機能系サービス・ケアマネジメントの改定ポイントを、東洋大学にて教鞭をとっていらっしゃる高野先生に執筆いただきました。医療ソーシャルワーカー、高齢者分野の社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)をされていらっしゃったご経験、教育者としての視点を基に独自の視点で執筆いただきます。

2024年度の介護報酬改定の動向

前回のコラムでは、介護報酬改定にあたっての全体の改定率などの動きを解説しました。その後、1月下旬に政府の審議会(社会保障審議会介護給付費分科会)で介護報酬の単価や各種加算の見直し、人員・運営基準の改定案が答申され、報酬改定の全体像がほぼ確定的となりました。この答申が厚生労働省内の諸手続きを経て、2月下旬から3月下旬にかけて省令・告示・通知などとして発出され、確定します。

そこで、今回は訪問・通所系サービス、多機能系サービス、それにケアマネジメントについて、そのポイントを解説してみます(居住系・施設系サービスは次回に解説予定です)。

基本報酬の改定

基本報酬については、訪問介護や定期巡回・随時対応型訪問介護、そして夜間対応型訪問介護でマイナス改定となりました。そのマイナス幅は1%程度となっています。

大変残念な結果ですが、これは昨秋に示された「介護経営実態調査」の結果が大きく影響しています。この調査は介護報酬改定にあたって最も重視されるものなのですが、訪問介護関連の事業の収支差が他のサービスを相当に上回る好調な状況であることが示されました。こうした経過があれば、政府はそのサービスの基本報酬を引き上げることはできない状況となります。その代わりに、現行の3つの処遇改善加算が一本化されるとともに、上位の加算率が上乗せされ、それが特に訪問介護等で目立つ改定となっています。これは、各種の介護分野の処遇・給与の水準に関する調査で訪問介護等の給与水準が低く示されており、その改善策が訪問介護等を筆頭に措置された形となっています。

私が試算したところ、現行よりも上位のランクの処遇改善加算を取得できれば、さほどに経営上の問題は生じない水準であり、ケースによってはかなりの増収も見込まれます。したがって、訪問介護の関係者は「上位の加算を取得する努力」が必要となるわけです。

なお、その他の訪問系サービス(訪問看護、訪問リハビリテーションなど)の基本報酬はわずかにプラス、通所系サービス(通所介護、通所リハビリテーションなど)や多機能系サービス(小規模多機能居宅介護、看護小規模多機能居宅介護)も同様の傾向です。

大きな見直しとなったのは居宅介護支援です。基本報酬がやはり数%のプラスとなっていますが、別の観点からの報酬・運営基準改定も行われています。

まず、介護支援専門員1人あたりの担当件数の実質的な上限が「40未満」であったものが「45未満」に引き上げられ、これにうまく対応できれば増収が見込めます。さらには、前回の改定時に導入された逓減性緩和について、その要件が「ケアプランデータ連携システムの導入」かつ「事務職員の配置」と厳格化されるとともに、担当件数の実質的上限が「45未満」から「50未満」に引き上げられます。さらには、要支援者のケアマネジメントについて、居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けて担当する場合の報酬が新設されるとともにプラス改定され、担当件数の算定も「要支援2件で要介護1件分」の基準が「要支援3件で要介護1件分」と緩和されます。

このことは、ケアマネジメントで生産性向上を図れば大幅な事業収入の増加が見込めることを意味します。どのように対応するか、実践現場で検討をしてみて欲しいと思います。

各種加算の動向

前述した処遇改善加算については、すべてのサービスで底上げが果たされています。今までどおりの処遇改善加算を取得するレベルであれば、2%程度の上乗せが期待できます。また、上位の加算を取得しやすくする見直しも行われており、厚生労働省も積極的な取得・算定を促しています。私も、こうした加算をしっかりと取得し、処遇改善をさらに進めて欲しいと思っています。

私が注目しているのは「生産性向上推進体制加算」(新設)です。これは訪問・通所系以外のサービス種別、つまり多機能系サービス、居住系サービス、施設系サービスを対象としたものなのですが、見守り機器等のテクノロジーを導入していること・職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取り組み等を行っていること・業務改善の取組による効果を示すデータ提供を行うこと(年1回)などを要件として利用者1人あたり月額最大100単位の加算を算定できるものです。まさに生産性向上の取り組みを誘導するもので、中長期的に介護保険制度・介護報酬を俯瞰したときに大きなインパクトを及ぼすことは間違いありません。

その他にLIFE(科学的介護情報システム)の利活用に関する加算の算定要件などに見直しが加えられていますが、それは次回の施設系サービスなどの説明で詳しく述べたいと思います。

一方で気をつけなければならないのは、同一建物等居住者(高齢者向け住まいなどの入居者)に対する訪問介護の減算措置が厳格化され、ケアマネジメントについての減算措置が新設された点です。同時改定となった診療報酬改定においても同様の対応が採られ、政府が厳しい視線を向けていることがわかります。

人員・運営基準の見直し

運営基準などの見直しについては、介護報酬の減算に絡めて、業務継続計画未策定事業所に対する減算(1〜3%の減算)が2025年4月から開始されます。このことは、BCP策定の経過措置実質的に2025年3月まで延長されることを示しています。

その他にも、テレワークの推進や管理者の兼務規定の緩和など、生産性向上と関連するさまざまな基準の見直しが講じられます。省令・通知などを確認し、適切な対応を講じておく必要があります。この点も施設系サービスと共通する部分もあることから、次回のコラムで説明したいと思います。

まとめ

今回の介護報酬改定について全体を通してキャッチ・コピーをつけるとすれば、私は「処遇改善加算改定」「生産性向上改定」「規制緩和改定」だと考えています。

この点について、次回のコラムで引き続き解説してみたいと思います。

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東洋大学 ライフデザイン学部 准教授 高野 龍昭 氏

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