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【福祉・介護コラム】 2024年度介護保険制度改正のポイント①
〜「介護情報基盤の整備」〜

2023/10/20 [福祉,コラム]

今回の福祉・介護コラムは、2024年度介護保険制度改正において最もインパクトがありそうな「介護情報基盤の整備」について、東洋大学にて教鞭をとっていらっしゃる高野先生に執筆いただきました。医療ソーシャルワーカー、高齢者分野の社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)をされていらっしゃったご経験、教育者としての視点を基に独自の視点で執筆いただきます。

2024年度の介護保険制度改正

2010年代以降の介護保険制度は3年ごとに法改正が行われ、制度の見直しが繰り返されています。
次期制度改正は2024年度に施行されることとなっており、今年5月19日にその改正法が公布されました。厚生労働省によると、その主な改正点は以下のように示されています。

このうち、中長期的に介護保険制度のあり方を考えたとき、最もインパクトのあるものになりそうなのは「介護情報基盤の整備」でしょう。

T.介護情報基盤の整備
  • 介護保険者が被保険者等に係る医療・介護情報の収集・提供等を行う事業を医療保険者と一体的に実施
U.介護サービス事業者の財務状況等の見える化
  • 介護サービス事業所等の詳細な財務状況等を把握して政策立案に活用するため、事業者の事務負担にも配慮しつつ、財務状況を分析できる体制を整備
V.介護サービス事業所等における生産性の向上に資する取組に係る努力義務
  • 介護現場における生産性の向上に関して、都道府県を中心に一層取組を推進
W.看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容の明確化
  • 看多機について、サービス内容の明確化等を通じて、更なる普及を進める
X.地域包括支援センターの体制整備等
  • 地域の拠点である地域包括支援センターが地域住民への支援をより適切に行うための体制を整備

「介護情報基盤の整備」とは

この改正点の施行は「公布後4年以内の政令で定める日」とされており、今のところ、2026年度ないしは27年度にスタートする事業だと想定されています。そのため、まだ詳細な省令・通知などは発出されておらず、その実像をしっかりと掴むことは難しいのですが、社会保障分野全体で推進されようとしている「データヘルス改革」の一環であることは間違いありません。

この施策の背景には、医療分野と比べ、介護分野でのデータ蓄積が貧弱で、政府・自治体・各事業者にそのデータが散在してしまっていることがあげられています。それを改善していくために、今後は医療・介護間の連携を強化しつつ、介護に関するデータを電子的に閲覧・共有・分析できる基盤を整備することを目的としているものです。

実際のところ、各分野でDX化が重要だとしてさまざまな施策が講じられているなか、わが国の介護分野で蓄積されているデータは、政府・自治体による介護レセプト(給付管理)情報と要介護認定(認定結果と74項目調査)情報だけです。そこに、21年度から介護サービス事業所等のLIFE(科学的介護情報システム)が加わりました。しかし、これらはそれぞれ政府・自治体・当該事業所等のみが活用可能で、それ以上の機能はありません。

「介護情報基盤の整備」とは、それらのデータを相互に利活用できるようにするものです。このことは、介護サービス実践の現場目線で言えば、利用者のこれまでの詳細なサービス利用内容や心身機能の状態変化の履歴を客観的に把握でき、精緻なアセスメントを可能にし、サービスの質を高める一助となるでしょう。

一方で、政府・自治体にとっては、介護サービス実践の実情を正確に把握できるようになり、根拠のある政策立案を可能にするはずです。なにより、事業所等ごとの「サービスの質のアウトカム評価」を行うことが可能になります。

そして、これらの介護情報は、データヘルス改革という政策のなか、将来的に医療分野のデータと連結されていくことが想定されています。

データヘルス改革はICT/DX化と表裏一体

つまり、施策の動向をみる限り、今後一層、介護サービス実践においては客観的なデータを活用することが求められます。それを前提として、介護報酬にLIFE(科学的介護情報システム)などを活用することに関するインセンティブ(加算)が拡大していくことは間違いありません。

介護サービスにおいてそうしたデータの収集・利活用を推進しようとすれば、同時に現場のICT/DX化が推進される必要があります。手書き・会議・電話・FAXで情報を共有するようなデータヘルス改革はあり得ません。

現場で利用者の状態等に関するデータを収集したら、その場から一気通貫してデータ提出まで自動化されたシステムで完結する。データの共有は紙ベースではなくICTデータで行う。そして、そうしたデータから利用者の変化やサービスの効果を把握する。そうした臨床的なシステムが不可欠となります。

この意味で、今後の介護サービスの経営管理においては、今まで以上に現場のICT/DX化を進める必要がありますし、そうしたスキルを高めるような従業員教育も欠かせません。そのことが制度と事業の持続可能性を高めると言っても良いでしょう。

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東洋大学 ライフデザイン学部 准教授 高野 龍昭 氏

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