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【福祉・介護コラム】 2024年度介護報酬改定の全体像 〜居住系サービス・入所系サービスについて〜

2024/3/27 [福祉,コラム]

今回の福祉・介護コラムは、2024年度介護報酬改定における居住系サービス・入所系サービスの改定ポイントを、東洋大学にて教鞭をとっていらっしゃる高野先生に執筆いただきました。医療ソーシャルワーカー、高齢者分野の社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)をされていらっしゃったご経験、教育者としての視点を基に独自の視点で執筆いただきます。

2024年度の介護報酬改定の動向

前回のコラムでは、1月22日の社会保障審議会介護給付費分科会での答申に沿って、訪問・通所系サービス、多機能系サービス、ケアマネジメントの介護報酬改定の概況を解説をしました。

その後、審議会の答申をほぼ踏襲する形で厚生労働省から3月15日に告示が発出され、報酬改定や基準の改正が正式に決定された形となりました。詳細は厚生労働省の「介護保険最新情報」のVol.1212以降を確認していただきたいと思います。なお、今後も厚労省からは解釈通知やQ&Aなどが断続的に発出されますから、それを随時確認していただきたいと思います。

そうした動きを踏まえつつ、今回のコラムでは居住系サービスと入所系サービスの介護報酬改定・運営基準等改正の概要を解説してみたいと思います。

基本報酬の改定

居住系サービスと入所系サービスの基本報酬は、やや厳しい改定となった訪問・通所系サービスなどと比べ、穏やかな改定となりました。

ただ、特定施設入居者生活介護(地域密着型を含む)や認知症対応型共同生活介護では+0.1%程度、「雀の涙」ほどのプラス改定にとどまっています。

一方、介護老人福祉施設では従来型個室・ユニット型個室で+2.8%程度、地域密着型では+3.0%程度のプラス改定となり、今回の介護報酬全体の改定率を大きく超える水準となりました。また、介護老人保健施設では「在宅強化型」で+3.7~4.2%程度という大幅なプラス改定となります(ただし、「基本型」では+0.6~0.9%程度というわずかなプラスにとどまります)。そして、介護医療院では+1.0%程度という改定となります。

このことは、2022年以降の物価上昇によって、光熱水費・食材料費やその他の物品購入費が影響を受け、特に施設系サービスの経営にダメージが生じていることについて、政府が基本報酬の上乗せで対応しようとしている姿勢の表れです。また、同様の理由で今年8月からはすべての介護保険施設で居住費の基準費用額が日額60円の引き上げが講じられます。

そうしたなかで注目しておかなければならないのは、介護老人保健施設の基本報酬などが「超強化型」「在宅強化型」に手厚くなり、「その他型」では抑制される傾向にあることです。このことについては、中長期的に考えた場合、「在宅療養支援・在宅生活復帰支援」にしっかりと取り組む老健にはインセンティブを与え、それ以外の老健は他の種別の施設への移行を促すような方向性を見て取ることができます。

同じような理由で、来年8月からは「その他型」「療養型」の老健施設と「U型」の介護医療院は居住費の利用者負担が日額260円増額され、その分の基本法報酬がマイナスとなる措置がとられます。

今回の報酬改定だけに目を奪われることなく、こうしたことを考えながら、中長期的な視点に立って施設の運営や現場での介護に取り組む必要があるでしょう。

各種加算の動向

今回の報酬改定での各種加算の概況をみると、最も注目されるのは「介護職員等処遇改善加算」の一本化・加算率の実質的アップと、新設の「生産性向上推進体制加算」です。これについては、前回のコラムで触れました。

その他に、LIFE(科学的介護情報システム)の利活用に関する加算の算定要件などに見直しが加えられており、これらも注目に値します。LIFEは今後の医療・介護DXの推進における最も重要なツールですから、介護の実践現場でも使いこなせるようにしておかなければなりません。

これについては、まず、「科学的介護推進体制加算」と「自立支援促進加算」のデータ提出・フィードバックの取り組みについて、現行では6ヶ月ごととなっていますが、それが3ヶ月ごとに改められます(これ以外の加算においても、LIFEのデータ提出などの頻度は全て3ヶ月ごととなります)。これは、他のLIFE 関連加算でのデータ提出等の頻度と合わせることにより、事務的な負担などを軽減するという意味での改定だと説明されていますが、それと同時にLIFEでの情報収集などをしっかりと行って欲しいというメッセージも込められていると言って良いでしょう。

また、「ADL維持等加算」「排せつ支援加算」「褥瘡マネジメント加算」など、上位の加算の取得にアウトカム評価が加わるものについても見直しが行われます。

ADL維持等加算では、上位の(U)の加算のためのADL利得の値が2以上から3以上に引き上げられ、厳格化されます。これは、ADLの改善の取り組みを一層求める改定だと言えます。

排せつ支援加算では、(U)(V)の加算取得の要件となっているアウトカム評価に、尿道カテーテルの留置されていたものが抜去可能となったケースも算入できることになります。同様に、褥瘡マネジメント加算では、(U)の加算取得の要件となっているアウトカム評価に、入所時に褥瘡が認められたものが治癒したケースも参入できることになります。これらはいずれも加算を取りやすくする改定であ流と同時に、より良いアウトカムをさらにもたらすような取り組みを求めようとするねらいがあると考えられます。

まとめ

前回のコラムでも述べましたが、今回の介護報酬改定は「処遇改善加算」と「生産性向上推進体制加算」などが注目される点です。

これらの加算に込められた政策的メッセージを介護サービスの実践・経営の現場で受けとめつつ、4月以降の取り組みに活かしていただきたいと思います。

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東洋大学 ライフデザイン学部 准教授 高野 龍昭 氏

東洋大学
ライフデザイン学部 准教授
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