プレスリリース

2020/11/10

京都大学・京都市と内田洋行、教育AIの開発・実証研究を開始
〜学校の学習・指導で説明できるAI基盤技術開発事業を受託〜

京都大学学術情報メディアセンター(所在地:京都市左京区、センター長:岡部寿男)緒方広明教授と、株式会社内田洋行(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大久保昇、以下内田洋行)教育総合研究所は、2020年7月、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)による「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」に採択され、11月より、本格的に実証研究を開始します。

学校の学習・指導で説明できるAI基盤技術開発事業

本委託事業は、教育用説明生成AIエンジンEXAIT (Educational Explainable AI Tools) を構築するとともに、京都市教育委員会の指定した実証校と連携し、ラーニングアナリティクスの学校現場への導入に取り組むものです。

文部科学省「GIGAスクール構想」にて児童・生徒一人一台の端末整備が加速しており、テスト等をコンピュータで実施するCBT (Computer Based Testing)も行われるなど、データを蓄積できる環境も整ってきたことから、そのデータを生かすために教育でのAI活用の研究も始まっています。

ただ、学校教育現場では、AIが解析したデータに学習者が納得できなければ、主体的な意欲を引き出せないという課題がありました。そのため京都大学学術情報メディアセンター緒方広明教授と内田洋行は、単に問題が自動的に提示されるだけではなく、学習者がより納得して課題に取り組めたり、先生が児童生徒のつまずきを把握して適切な指導を行えるよう、より学習・指導に有効な分析データを導き出す「説明できるAI」の開発を行うほか、京都市教育委員会と連携してその実証研究を行うことを内容とする5か年計画を作成しまして、NEDOからの委託研究で採択され、9月11日に委託契約を締結しました。

本委託事業の実証研究では、京都大学学術情報メディアセンターの緒方広明教授らによって独自に開発されたデジタル教材配信システム(e-Bookリーダー)のBookRollと分析ツールLA Viewで構成されるラーニングアナリティクスシステム「LEAFシステム」を基盤に、学習行動から説明生成を行うAIエンジン「EXAIT」を開発して搭載します。

システムの効果測定は、京都市教育委員会と連携して学校現場で実証研究を行います。内田洋行が学校現場で学習者が利用しやすいシステム構築と学習データの管理・抽出を行い、京都大学学術情報メディアセンターと共同でデータに基づく学習効果を検証します。実証研究は、2020年度内に京都市内の学校で開始予定です。

教育用説明生成AI エンジンによるデータに基づく教育改善

AI エンジン「EXAIT」は、学習行動について「モデル駆動」と「データ駆動」の両面から開発を進めます。

「モデル駆動」では、教材や知識マップをもとに学習者が解答プロセスについて自己説明を行うことで、次に学ぶべき事項や解くべき問題を理由とともに推薦します。「データ駆動」では、推薦やダッシュボードの学習ログを蓄積し、学習ログからボトムアップに説明を生成します。そして、「データ駆動」と「モデル駆動」を融合することにより、児童生徒の学習プロセスを理解して説明を生成し、学ぶべき事項を推薦するAI を開発します。

たとえば、辺の長さのみがわかっている正三角形の面積を求めるためには、「平方根の計算」「三平方の定理」「三角形の面積の公式」の理解が必要となります。これについて、解答だけでなく解答プロセスの自己説明を児童生徒に求めることで、学習者の認知を捉えて知識・学習者モデルを生成し、つまづきのポイントに応じて、モデルに基づいて次に学ぶべき教材や問題をAIが推薦します。

京都大学学術情報メディアセンター・京都市教育委員会・内田洋行教育総合研究所

京都大学の緒方広明教授らは独自に開発した「LEAFシステム」を中心とする各種研究実績、京都市教育委員会は文部科学省の実証事業等で初等中等教育改革に取り組んできた実績、そして内田洋行は教育ICTビジネスでの豊富な導入実績があります。三者がそれぞれの経験・知見を生かし、AIシステム「EXAIT」の開発・実証を通じて、教育現場で本当に活用されるための教育AI技術の確立を目指します。

京都大学学術情報メディアセンターについて

京都大学学術情報メディアセンターは、情報基盤及び情報メディアの高度利用に関する研究開発を行うとともに、その成果を学内における教育研究環境等の高度化に活用するだけでなく、他の大学や他の研究機関の研究者等の共同利用にも供している。

京都市教育委員会について

京都市教育委員会は、「一人一人の子どもを徹底的に大切にする」を教育の基本理念とし、各学校・幼稚園が教育目標を保護者・地域と共有しながら、市民ぐるみ・地域ぐるみの教育を推進している。新たな学習指導要領のもと、未来を生きる子どもたちに確かな学力を定着させるため、指導体制の工夫やICTを基盤とした新しい教育技術の活用等にも取り組んでおり、文部科学省「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業」(2019年~)等を受託し、一人一台のPC端末整備と教育データ利活用による授業のさらなる充実を目指して取り組んでいる。

内田洋行教育総合研究所について

内田洋行は、1人1台端末の導入や無線環境の構築、クラウドサービス、保守サポートまで、全国各地の学校に幅広く教育ICTビジネスを展開する一方で、次世代の教育研究に取り組み、1998年、内田洋行教育総合研究所を発足。総務省「フューチャースクール推進事業(2010年)」、文科省「学びのイノベーション事業(2013年)」ほか、産官学で次世代の教育について研究を進める。

NEDO「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」について

本事業では、人とAIがそれぞれの得意領域で役割を分担しつつ、人は新たな気づきを得て、AIは精度等を更に高めることができる、「人と共に進化するAIシステムの基盤技術開発」を行う。 加えて、AIを実世界に隅々まで浸透させるため、「実世界で信頼できるAIの評価・管理手法の確立」および「容易に構築・導入できるAIの開発」の研究開発も行う。

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【本委託事業のお問い合わせ先】

株式会社内田洋行 教育総合研究所 伊藤博康・平野智紀
TEL. 03(3555)4796
国立大学法人京都大学 学術情報メディアセンター 緒方研究室
TEL. 075(753)9052

【このプレスリリースのお問い合わせ先】

株式会社内田洋行 広報部 佐藤将一郎・深澤琴絵
TEL. 03(3555)4072  FAX. 03(3555)4620