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2025/7/4

内田洋行、九州国立博物館開館20周年記念特別展に技術協力 
王羲之(おうぎし)と41人の名士による伝説の「曲水の宴」の様子をあらわした「蘭亭図巻(らんていずかん)(永楽本)」を3D映像で再現し、新たな鑑賞体験を提供

株式会社内田洋行(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大久保 昇 以下、内田洋行)は、2025年7月5日より公開される九州国立博物館(福岡県太宰府市)で行われる開館20周年記念特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」において、「蘭亭図巻(永楽本)」を題材にした3D映像を制作、提供いたしました。

この映像は中国・東晋時代に王羲之(おうぎし)が催した「曲水の宴」の風景や詩文の世界を、3Dリアルタイムレンダリング技術によって臨場感豊かに描き出すもので、特別展終了後も同館の平常展(文化交流展)で随時公開される予定です。九州の文化発信拠点である九州国立博物館では、訪れる人々に「その時代に入り込むような没入体験」を提供することを目指し、「時間を旅する博物館」として新たな取り組みを展開しています。本作品も歴史・文化を身体感覚で「感じる」ことを目的とした映像コンテンツとして、同館の理念と高い親和性を持ち、一過性にとどまらないデジタル文化財の活用例としても注目を集めています。

映像タイトル「デジタルコンテンツ 動く 蘭亭図巻 – 永楽本 -」

【「デジタルコンテンツ 動く 蘭亭図巻 – 永楽本 -」ショート版 九州国立博物館Youtube】

https://www.youtube.com/watch?v=D_7gIaoLcuI

※本事業は、九州国立博物館開館20 周年記念特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」関連事業デジタルコンテンツ(展示映像)制作業務として実施されました。

蘭亭図巻(永楽本)について

「蘭亭図巻(永楽本)」は、中国・東晋時代の書家 王羲之(おうぎし)が353年に催した詩宴「曲水の宴」の情景を、後世の画家が描いた図巻作品です。この宴で詠まれた詩に、王羲之(おうぎし)が添えた序文「蘭亭序(らんていじょ)」は、書道史に残る名文として知られています。

「永楽本」は、明代・永楽15年(1417年)に周憲王・朱有燉(しゅゆうとん)によって刊行された『蘭亭(らんてい)図巻』の拓本であり、王羲之(おうぎし)の時代を後世に伝える「永楽大本」の中でも、現存例が極めて少ない貴重な一冊です。その繊細な筆致と流麗な構図は、まさに幻の逸品と称され中国と日本の書画文化双方において今日に至るまで高く評価されてきました。九州国立博物館に所蔵され、特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」においても、東アジアの精神文化を体現する名品としてひときわ輝きを放っています。同館では本図巻に加えて、王羲之(おうぎし)の「妹至帖」(中国・唐時代に双鉤填墨によって複製)も所蔵しており、王羲之(おうぎし)作品の体系的な展示・紹介に力を入れています。

今回のデジタル映像化は、こうした貴重な文化財を現代の鑑賞者にも深く味わってもらうことを目的とした取り組みであり、展覧会終了後も同館の平常展(文化交流展)で随時公開される予定です。王羲之(おうぎし)が体現した“詩・書・画の精神”を、現代の映像技術によって鮮やかに甦らせることで、東アジア文化の豊かな精神性を次世代へとつなぐ大切な役割を果たしています。

書と絵巻の世界に“動き”と“奥行き”を与える、デジタル映像技術の活用

本作では、3Dリアルタイムレンダリング技術を活用し、静止した絵巻に“動き”と“奥行き”を与えることで、詩・書・画が交錯する春の宴の世界を立体的に再現しています。

■移ろう時と舞い散る桜が描く、儚く美しい自然表現
春の気配感じる黄昏の蘭亭
蘭亭図巻をのぞき込んでいるような映像表現

王羲之(おうぎし)が催した「曲水の宴」に集った名士たちの優雅なひとときを、3D空間に広がる自然の中に描き出しています。植物や岩、建築物は3Dモデリングによって構成され、竹林を渡る風、花の揺らぎ、陽光の移ろいといった繊細な自然表現が、絵巻の中にある“春”の気配を臨場感豊かに描き出しています。

人物表現には、原画の風合いを大切にしながらアニメーションを施し、光の当たり方やカメラの視点で立体感を表現。王羲之(おうぎし)をはじめとする名士たちの優雅な宴の場面にしなやかな動きと呼吸感が生まれ、まるで蘭亭図巻をのぞき込んでいるような感覚を演出しています。また、映像の後半では時間の流れを、薄暗い朝から青空が広がる昼、そして黄金に染まる夕焼けへと移ろう空の色調変化で丁寧に描き、朝から夕刻までの1日の物語を表現。こうした風光明媚な自然描写が、季節の一瞬の輝きと儚さを情感豊かに伝えてくれます。

桜の花びらが舞う中、川の流れに酒の盃を浮かべ、詩が詠めなければ盃を飲む
雅な遊びのひととき

■日本に伝わる“宴”の精神、太宰府へ

この宴が7世紀後半以降の日本においても宮廷行事として催されてきたこと、やがて太宰府天満宮での「曲水の宴」として現代にも受け継がれていった様子を紹介しています。展示では、4Kディスプレイを使って、4分50秒の本編映像とさらに15秒のショートバージョンを用意しました。今後に向けてVRやAR、タッチパネル展示などへの発展も見据えた制作を行いました。

2025年の太宰府天満宮での曲水の宴の様子
太宰府天満宮では毎年3月の第一日曜日に曲水の宴が開催されています

文化財デジタル化における豊富な実績

映像制作は、内田洋行グループのパワープレイス株式会社が担当いたしました。本件に携わる制作チームは、2013年の東京国立博物館「書聖 王羲之(おうぎし)」展、2019年の東京国立博物館「顔真卿(がんしんけい)」展においても、書跡の再現映像制作を担当した実績を持ちます。いずれも、リアルタイムレンダリング技術を活用し、博物館の監修を反映しながら高精度・短期間での制作を実現してきました。

本作では、王羲之(おうぎし)が体現した詩文文化と、それが日本へと伝わり太宰府の曲水の宴として受け継がれた歴史的連続性を、映像を通じて「体感」することで興味や理解を自然に引き出す教育的価値を目指しています。これらの技術は、日本各地に眠る“宝”や地域独自の文化・自然・精神性に新たな息吹を与える技術でもあります。これまで静的に展示されてきた資料や文化財に対して、「時間」「物語」「思い」といった背景を映像で重ねることで、観る人にとってその価値がより伝わりやすく、興味を深めるきっかけになります。内田洋行グループでは、今後も博物館や図書館、教育施設における空間演出や教育コンテンツの制作を通じて、日本の宝と地域の誇りを、より深く伝えるための技術的な挑戦を続けてまいります。

展覧会情報

<九州国立博物館開館20周年記念特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」概要>
会 期2025年7月5日(土)~2025年8月31日(日)
※休館日など詳細は九博公式HPをご確認ください。
会 場九州国立博物館 太宰府市石坂4-7-2
ホームページhttps://www.kyuhaku.jp/20th/
主 催九州国立博物館・福岡県、西日本新聞社、TNCテレビ西日本、西日本新聞イベントサービス

【このリリースのPDFダウンロード】

【このリリースのお問い合わせ先】

株式会社内田洋行
広報室 深澤 琴絵・松永 裕香
TEL. 03(3555)4072 FAX. 03(3555)4620