下妻市役所
小規模自治体でも実現できるDX
―下妻市の挑戦を支えた内田洋行の実装力―

下妻市 市⻑公室DX 推進課 課⻑
⼩林 正幸様
自治体DXの推進が全国的な課題となる中、人口約4万人の下妻市が実現した先進的な取り組みが注目を集めています。
内田洋行は、その基盤となるシステムの構築をサポートしました。その経緯を、下妻市 市長公室 DX推進課 課長 小林 正幸様に伺いました。
下妻市 市⻑公室DX 推進課 課⻑
⼩林 正幸様
下妻市では、令和4年度にDX推進部署を設置。同時に小林氏は同部署に着任し、DX推進の指揮を執ることになりました。しかし、当初の状況は決して恵まれたものではなかったそうです。
「予算ゼロ・理解不足・ノウハウ欠如という典型的な課題を抱えていました。現場はアナログな作業が多く、紙とExcel中心の業務は非効率でした」
また、令和5年5月の新庁舎移転も控えており、執務環境の整備は待ったなしの状況でした。
そこで小林氏は、サイボウズ株式会社のkintone1年間無料キャンペーンを活用し、トライアル導入を開始。設定・研修も自前で行い、翌年度の予算化を実現しました。業務改善の手段としてkintoneをはじめとするDXツールを全庁導入し、現場主導で業務改善を進めていきました。
しかし、当時のネットワーク環境では、インターネット利用に制約が多く、クラウドサービスやWeb会議を快適に利用できる状況ではありませんでした。
「クラウドを使いたいという思いはあっても、セキュリティの壁が高く、現実的には難しいと感じていました」
そこでまず、インターネット閲覧環境の改善を目的に、従来のリモートデスクトップ方式からセキュアブラウザ方式への移行を決定。職員の利便性向上とセキュリティ確保の両立を目指しました。
その後、令和5年5月の新庁舎移転を契機に、さらにクラウド活用を推進するため、内田洋行は総務省ガイドラインに準拠した「α´モデル」によるネットワーク基盤の再設計を提案し、ローカルブレイクアウト(LBO)の導入が決定しました。
これにより、インターネット閲覧においては、セキュアブラウザへ変更したことで、職員がワンクリックですぐに接続できる快適さを実現しました。あわせて、シングルサインオンやファイル無害化により操作性を高め、職員の負担を最小限に抑えたネットワーク基盤を構築しました。また、LBOの導入により、LGWAN環境を維持しながら必要な通信のみを安全に分離・制御する仕組みが構築されました。この結果、TeamsZoomなどを安全に活用できる環境が実現したほか、LGWAN環境から直接kintoneへアクセスが可能となり、全庁利用が大幅に進むきっかけとなりました。
「内田洋行には、こちらの『これがやりたい』『あれがやりたい』という要望に対し、最適なソリューションを提案していただきました。キックオフミーティングから新庁舎開庁まで7カ月しかなく間に合うかと心配しましたが、トラブルもなく予定どおり新システムが稼働。多くの自治体のシステム構築を手掛けた知見があるからこそだと感心しました」
下妻市のDXは、ノーコードツールの採用により、現場主導の業務効率化と市民サービスの向上を推進しています。「自分たちで業務アプリを作れるようになり、改善のスピードが格段に上がった」「各種手続きがスマートフォンで完結するようになり、市民の方から“便利になった”という声をいただく機会が増えた」など、現場から喜びの声が聞かれるそうです。
小規模自治体でありながら、庁内業務と市民サービスの両面を同時に変革した点は、大きな成果です。
導入の効果としては、ネットワーク環境の改善によりログインや起動時間が短縮され、Web会議も日常化しました。ペーパーレスも実現し、職員のストレス軽減と働き方改革にもつながっているそうです。
業務の効率化にとどまらず、「これまでの前例踏襲型から、試行錯誤を重ねるアジャイル型の業務スタイルへと変化した」と小林氏は語ります。
「以前は“前例がないからやらない”という空気がありましたが、今は“まずやってみよう”という考え方に変わってきました」
小林氏が「日本一優しいDX推進課」を掲げ、誰でも相談しやすい雰囲気を作っていることも、職員の意識の変化につながっているのでしょう。若手だけでなく、中堅層にも意識変革は広がっています。
この取り組みは、日本ノーコード大賞優秀賞の受賞や全国からの視察・講演依頼につながるなど、高い評価を得ています。
特に、限られた人員・予算でも実現可能な「再現性の高さ」が注目されています。
これからDXに取り組む自治体に対しては、「予算・人員が限られても、『やる』と決めて進める意思決定が鍵。下妻市も予算ゼロでしたが、様々なプロダクトの無料キャンペーンを活用し、仮導入から始めました。工夫すれば道は拓けます。調査・研究だけで終わらず、管理職がコミットして改革に踏み込むことが成否を分けると思います」とアドバイス。
今後については、「窓口BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)が次の課題です。生成AIのさらなる活用や、若手IT人材の育成、より高度なネットワークへの移行も視野に入れています」と意欲を語っています。
下妻市のDX成功のポイントが、小林氏のリーダーシップと現場の本気度であることは間違いありませんが、内田洋行の「実装力」も見逃せません。内田洋行の強みは、自社製品を持たないからこそ、顧客の要望に応じて最適な製品やサービスを組み合わせ、現場で使える形に落とし込める点にあります。
「小規模自治体の身の丈に合ったシステム構築がしたい。本当に効果のあるものだけを導入したい――そんなこちらの要望をすべて受け止め、“できない理由”ではなく、“どうすればできるか”を一緒に考えてくれたことが大きかった」と小林氏は振り返ります。
下妻市の事例は、内田洋行の実装力が実を結んだ好例と言えるでしょう。

下妻市役所様

