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セミナーレポート
2019.7.19

マイナンバー制度 今後の展望と、マイナンバーカードのさらなる利活用に向けて

内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 室長代理(副政府CIO) 内閣官房 番号制度推進室 室長 向井 治紀 氏

内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 室長代理(副政府CIO)
内閣官房 番号制度推進室 室長
向井 治紀 氏

マイナンバー制度とは

マイナンバー制度とマイナンバー、マイナンバーカードはよく混同されるのですが、マイナンバー制度とは、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号。いわゆる「マイナンバー法」)のことです。

マイナンバーは国内の全住民に付番された、12ケタの番号です。平成27年10月から、マイナンバーの通知カードが交付され、現在98%が国民の手に渡っています。

マイナンバーカードは、マイナンバーの通知後、個人の申請によって交付される、顔写真入りの個人番号カードです。

マイナンバーは、番号だけでは使用できず、免許証などで本人確認が必要です。これに対し、マイナンバーカードは、これ1枚で、本人確認(番号確認と身元(実存)の確認)を行うことが可能です。また、マイナンバーを使わずに電子的に個人を認証する機能等(ICチップ)を搭載していて、官民の様々な用途に利用可能です。

マイナンバーとマイナンバーカードの違い

マイナンバーは、平成28年1月から、税・社会保障・災害分野の106項目の事務で利用が開始されました。たとえば、確定申告、扶養控除申告書、各種社会保障給付申請書、保険料の賦課、現況届等で利用されています。

マイナンバーによって、住民票や課税証明書など、住民が行政機関等に提出する書類が省略でき、平成29年11月からは約850の手続きにおいて、平成30年の10月からは約1,200の手続きにおいて行政機関等に提出する書類が省略され、今後も年金関係の約1,000の手続きにおいて添付書類が順次省略されるようになります。

マイナンバー制度導入後のロードマップ(案)

マイナンバー制度では、平成29年11月からマイナポータルというポータルサイトを運営開始しています。利用者は、マイナポータルでマイナンバーに関係する行政機関間での自分の情報がどのようにやり取りされているのか確認ができます。今後は、自宅のパソコン等から各種お知らせの受信や、官民の各種手続きなどのサービスも提供される予定です。

マイナポータルとは

マイナンバー制の安全性

マイナンバーは何のためにあるかというと、基本的にはデジタル処理をするためです。欧米なら、名前はアルファベットで表記されるので、デジタル処理がしやすい。しかし日本は、名前が漢字で、読み方もさまざまです。ではふりがなで管理するかというと、住基ネットにも戸籍にもふりがなははいっていない。つまり、ふりがなを公証する制度がないのです。そこで番号で個人を特定することにしたのです。ただし、マイナンバーは、あくまでも個人を特定する番号に過ぎず、個人を証明するものではありません。

よく「マイナンバーですべての個人情報が、政府に筒抜けになるのでは」という声が聞かれますが、そのようなことはありません。

マイナンバー制度は、制度面、システム面の両面で安心・安全の確保を図っています。
制度面では、本人確認措置(マイナンバーの確認、身元の確認)、特定個人情報の収集・保管、特定個人情報ファイルの作成禁止、違反した場合の罰則の強化などが、マイナンバー法で定められています。

システム面では、個人情報を一元的に管理せずに、分散管理をする、アクセスできる人の制限・管理の実施、通信の暗号化などを行っています。

マイナンバー制度における安心・安全の確保

マイナンバー制度による効果

マイナンバーは、さまざまな情報と連携することで利便性が高まります。そのメリットについて、自治体へのアンケートでは、以下のような声が挙がっています。

  • 「課税証明書」などの発行件数は、マイナンバーによる情報連携の前後で、16%減少した。
  • 引越してきた住民から「課税証明書」等の提出がなかった場合の催促の電話や提出依頼書の郵送に係る事務や、提出待ちの保留書類の管理に充てる手間が軽減された。
  • マイナンバー制度導入前は、「所得証明書」「住民票の写し」の未提出世帯に対する督促事務が約1,000件あったが、情報連携開始後の督促は0件となった。
  • マイナンバーによる情報連携開始後は、児童手当の支給に関する事務において、提供を受けた課税情報をシステムと連携させたことで、職員による入力作業が軽減された(平成30年度は約5,000件の入力作業減)。
  • 引越しをしてきた介護保険サービスの受給者は、「課税証明書」を添付することなく、現住所のある市区町村へ介護保険負担割合証や介護保険負担限度額認定証を申請することが可能となった。
  • 情報連携によってオンラインでの事務処理となり、申請から発行までの期間が、約1カ月から数日に短縮された。

以上のように、課税証明書、住民票の発行業務がなくなったという声が多数挙がっています。今後、年金関係の情報連携も進むので、さらに利便性向上が実感できるでしょう。

マイナンバー制度の目的は、役所の事務作業の効率化と、住民の利便性を高めることです。
マイナポータルでは、これまで役所の窓口に行っていた申請作業をオンラインでできるようになります。毎年年末調整で行っていた、保険料の控除の手続きも、住宅ローンを組む際に必要な課税情報の申請も、マイナポータルからオンラインでできます。

そのほか、e-Tax、ねんきんネット、民間送達サービスなど、外部サイトと連携することで、マイナポータルと一体的に使えるようになります。

また、子育て中でなかなか役所に行けない人も、オンラインで子育てに必要な書類を申請できたり、また、子育てに必要な情報が自治体から届くなど、子育てワンストップサービスも開始しています。

拡大するマイナンバーカードの利活用

マイナンバーの利活用の場は、どんどん広がっています。

たとえば、高齢者が運転免許証を返納した後、顔写真付き身分証明書として活用できます。地方公務員の職員証としての利用も徳島県で始まっています。今後、他の自治体でも広がっていくでしょう。民間企業での社員証としても利用していただくよう民間企業に働きかけています。

民間企業の利用の例では、凸版印刷、三菱UFJ銀行が連携し、住宅ローン契約手続きを電子化するサービスが始まっています。これにより、利用者は、自宅のパソコンで、ペーパーレスで手続きが可能になります。収入印紙の貼付や実印の押印なども不要になります。

全国のコンビニエンスストアでの住民票や戸籍証明書、印鑑登録証明書、各種税証明書などが取得できるサービスも広がっています。住民票では、平成30年度は1,773,230件がコンビニエンスストアで交付されています。今後も普及拡大を図るため、政府は、システム構築等にかかる経費について、特別交付税の措置を講じています(措置率1/2 上限額6,000万円)。

マイナンバーカードを海外でも利用可能にし、在外選挙におけるインターネット投票も検討中。カジノ入場時の管理・依存対策での活用、イベントチケットの不正転売防止への活用なども実証中です。また、スマートフォンへの電子証明書の搭載を検討中です。スマートフォンの、マイナンバーカード読み取り可能機種も拡大しています。

マイナンバーカード普及促進のために

近い将来に、マイナンバーカード1枚で、様々なことが可能なります。しかし、そのためには、現状13%のマイナンバーカードの普及率がなるべく100%になっていることが理想です。

国は、マイナンバーカードの健康保険証利用をマイナンバーカード普及促進の鍵と考えています。健康保険証として利用できるオンライン資格確認は令和2年より開始予定です。医療機関での診療情報や調剤情報の閲覧等の活用は平成29年度より実証中です。令和3年3月の本格運用を目指して、医療機関等への読み取り端末やシステム等の整備に十分な支援を実施する構えです。

また、消費税率引き上げに伴う消費活性化策として、令和2年度に予定されている自治体ポイントの実施にマイナンバーカードの活用を検討しています。

デジタル・ハローワーク・サービスの推進により、失業給付の申請書類の簡略化、教育訓練給付金の電子申請なども行っていきます。マイナポータルを使って、求職活動支援も行っていく考えです。

今年(2019年)5月にデジタル手続法が成立し、国外転出者の本人確認情報の公証、オンライン本人確認手段の利便性の向上、そして、今後、通知カードを廃止しマイナンバーカードの取得を促進することなどが定められました。

しかし、本当に普及拡大していくためには、国民にマイナンバー制度のメリットや安全性をより理解・実感してもらうよう広報活動や啓発活動も推進していかなければならないでしょう。

内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 室長代理(副政府CIO)
内閣官房 番号制度推進室 室長

向井 治紀

東京大学法学部卒業。1981 年に大蔵省入省後、財務省主計局主計官、理財局次長などを経て、現在、「内閣官房 内閣審議官(社会保障改革担当室担当)」。現在、「内閣府 大臣官房番号制度担当室長」のほか、「内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室室長代理(副政府 CIO)」を兼ねる。