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セミナーレポート
2023.7.20

庁舎空間デザインと働き方改革が創る新たな行政サービス
~近江八幡市の新庁舎整備事例~

自治体DXが叫ばれるいま、自治体ではICT環境の整備と合わせて、これらを活用する庁舎空間の構築がますます重要性を帯びています。高度情報化社会の進展に合わせた質の高い行政サービスの提供を目指す滋賀県近江八幡市の新庁舎整備計画策定の事例を紹介いただきます。また来庁者サービスを向上しながら職員の働き方改革を実現するこれからの庁舎空間の在り方について、実践的に研究に取り組まれている第一人者から解説します。

プレゼンター

  1. 【Part1】京都工芸繊維大学 名誉教授/合同会社NAKA Lab. 代表社員 仲 隆介 氏
  2. 【Part2】近江八幡市 総合政策部 行政改革課 副主幹 三浦 薫 氏

【Part1】庁舎空間デザインと働き方改革が創る新たな行政サービス

【1】自己紹介に代えて

東京理科大学沖塩研究室の助手に着任し、今年3月に退職するまでの約40年間にわたり、オフィスの研究に携わってきました。最初の20年間は、オフィスや庁舎における建築のスペーススタンダートを研究していました。後半の20年間は、企業や自治体から声をかけていただくことが増え、世の中のオフィス空間や環境に対する考え方が変わり、働く場の重要性が高まってきたと感じています。

2000年のはじめ、ある企業の本社ビルの建設に関わったことがあります。ある大手ゼネコンからビルの設計案が提出されましたが、その企業の社長は、「これはうちらしくない」と却下。当初この案件は総務部が担当していましたが、クリエイティブ部門が担当することになり、この時から私も関わることになりました。私以外にも色々な分野の専門家が加わり、2年間かけて、これからのオフィスはどうあるべきかを議論をしました。最初は「ハコ」の話から入りましたが、ハードをいくら議論しても進まない。最終的には「どう働くか」という議論になる。つまり、「どう働くか」なしに、ちゃんとしたオフィスは作れないということを、身を持って実感しました。

その後、さまざまな企業や自治体からお声がけいただき、建築プロジェクトに参画してきましたが「どういう働き方をしたいか議論しないと良いものはできない。働き方を考えなければハードを作る意味がない」と言い続けてきました。

従来は、オフィス=作業空間で、机と椅子が効率よく並んでいればよかった。建築家は図面を引き、社員は家具を並べるだけでよかった。つまり、誰もデザインをしていなかった。しかし、「空間のクオリティによって、アウトプットも変わる」ということに企業も徐々に気づき始めていると思います。

【2】なぜ働き方改革が必要か

なぜ、働き方改革が必要なのでしょうか。

自治体について考えてみます。
私は、「本当に豊かな日本を創れるのは自治体職員である」と考えています。言い換えれば、自治体職員がその気にならなければ豊かな日本は遠のくでしょう。自治体職員は、その町のクリエイティビティやクオリティを向上するサービスを提供しなければなりません。しかし、あまりにも忙しすぎてその余裕がないのが現状です。

人口が減少し、税収も減る。すると今までと同じ職員数を抱えることができなくなる。しかし仕事は減らない。むしろサービスが多様化して仕事が増えるかもしれません。今までと同じやり方では職員が疲弊して、自治体が機能しなくなるかもしれません。

働き方を変えなければ日本が“ヤバイ”

私はこのままでは日本が”ヤバイ“と思っています。

「週刊ダイヤモンド」が発表している世界時価総額ランキングを見てみましょう。平成元年のランキングを見ると、上位25社のうち17社は日本企業で、上位5社を日本企業が独占しています。ところが平成30年になると、日本企業は姿を消し、35位にようやくトヨタ自動車が登場。あとは米国の企業が上位を占めています。

労働生産性を調べると、日本の労働生産性は先進国の中で最下位です(2016年、労働経済白書より)。日本と産業構造が似ているドイツと比較すると、ドイツは日本よりも一人当たりGDPは1.4倍多い。更には労働時間が日本の約0.8倍なので、生産性は約1.7倍高いことになる。要するに、日本は仕事の仕方が下手なのです。稟議のために何枚もの書類を作ったり、重要でない会議の書類作成に労力を使うなど、やらなくてよい仕事をたくさんしているのです。

労働生産性の内容に注目してみると、日本は他国に比べて、付加価値を生み出す仕事の割合が著しく低い。つまり、新しい価値を生み出していないのです。

日本を元気にできるのは自治体しかない

日本全体を元気にするためには、ボトムアップでアクションを起こさなければなりません。それができるのは自治体です。たとえば企業が社会課題を解決しようとしても、課題が大きすぎて一社だけでは困難です。複数の企業が協力し合わなければなりません。その時に、企業のまとめ役となってリードしていくことができるのは自治体しかありません。これがうまくいくと、社会課題が解決し経済も回ります。

自治体も変わろうとしている

エスポー市はフィンランドにある人口30万人の小さな町です。ノキアなどの大企業や、スタートアップ企業が集積するイノベーション都市として有名で、世界中の企業が視察に来ています。エスポー市ではさまざまなプロジェクトに市民を巻き込み、市の職員と一緒にはたらく、あるいは市役所が調整役となって企業や大学、市民との共創を促す。そしてそこから新しいビジネスや市民サービスを生み出してきました。従来の「自治体が補助金を出す」といった上から目線の施策とは一線を画しています。

東京都も、2020年に「シン・トセイ」という、都政の行政改革を発表し、現在シン・トセイ3を進めています。都庁のワークスタイルや、制度の改革、職員の意識改革などを図り、多様なアントレプレナーとのコラボレーションによって社会課題を解決し、世界をリードする都市へと発展・成長していくビジョンを示しています。

また、東京都は、課題対応型組織に生まれ変わると宣言しています。従来は、何か課題があると「どこの部がやるの、どこが責任を取るの」という話から始まります。そうではなく、課題があればその都度チームを作って対応するということです。
そのほか、さまざまな方針が発表されています。実現は容易ではないかもしれませんが、宣言したことに価値があります。ぜひ実現してほしいです。

これからの庁舎に求められる働き方

2021年10月に内閣官房内閣⼈事局は「国家公務員のためのマネジメントテキスト」を公表しました。この中で、「これからは管理経営型のマネジメントではいけない、職場環境や職員の意識は大きく変化しているので、あらゆる職員が働きやすいように、マネジメントの在り方を変えていくことが必要不可欠だ」ということが明記されています。

職員のイノベーションを引き出す空間づくり

生産性は、以下のような式で表されます。

生産性

生産性を高めるためには、コストを下げて、アウトプットを大きくすることです。
日本は、コスト削減は得意ですが、これからの時代それだけでは生き残っていけません。アウトプット=創造性の部分を大きくしていかなければなりません。

欧米では30年前に、「より創造的な働き方をしよう」という方向に働き方をシフトしました。アメリカが「イノベーティブアメリカ」宣言を、ECも「イノベーティブEU」宣言をし、このあたりから、知恵が生まれやすいオフィスに変えていった。しかし日本は変えませんでした。なぜなら、その頃の日本は「Japan as No.1」と世界から賞賛されるほど、コマンド・アンド・コントロール(指揮統制型)のマネジメントがうまく機能していたからです。

しかし、時代は変わり、「創造性」というキーワードがとても大事になっています。

「市役所に創造性なんていらない」といった自治体がありますが、それはつまり、「そういう仕事しかしていない」ということです。誰でもできる仕事はいずれ人間がやる必要はなくなります。住民のニーズは多様化・複雑化していますから、知恵を絞って市を魅力的にするアイデアを出さなければいけません。1人で仕事をする時代は終わって、いろいろな人と知恵を出し合わなければならない。市民だけでなく、市外、県外、海外の人とも協力しなければなりません。創造性が大事になってくる。そのためにはもっともっと多様なチームワークが必要になります。自分の能力をもっと最大化しなければなりません。

人間の脳は、身体全体のエネルギーの4割を使っています。だから脳は人間に「さぼれ」という命令を出す。さぼるという行為は人間にとって心地良いのです。それでもさぼらないのは、理性や知性がコントロールしているからです。

仕事の報酬は多くの場合、成果ではなく何時間働いたかで決まっています。がんばっても給料が同じならさぼったほうがいい。目の前の仕事に喜びを感じなければ、さぼるでしょう。その状況をまず変えなければいけない。

仕事を楽しめる環境にする、成果に応じて報酬を上げる、チームワークをよくしてもっと自分の能力を出せるようにすることが必要です。

経営学者のヨーゼフ・シュンペーターは、「新しいアイデアは、突然生まれるわけではなくて、すでにあるアイデアがこれまでと違う結合をすることで生まれる」と言っています。自分一人で考えるのではなく、自分とは違う考えを持っている人とぶつかり合う中で、初めて新しいアイデアが生まれるということです。つまり、コラボレーションが重要ということです。

新しいアイデアがどんどん生まれる組織にするためには、もっとコラボレーションをしなければならないし、社員一人ひとりが、能力を発揮して課題を解決したいと思わなければなりません。

問題を打開するためには「知恵を絞る」+「試行錯誤」が必要です。そのためには多様なメンバーがぶつかり合い、インタラクションを起こす必要があります。仕事の在り方は、コラボレーション型に移行していくでしょう。オフィスもそれに合わせて変わっていかなければなりません。

スティーブ・ジョブスはappleを辞めた後、ピクサーという映像会社を買って「トイ・ストーリー」という映画を作り大成功しました。「トイ・ストーリー」の成功のポイントは、チームワークです。「トイ・ストーリー2」を作ることになったとき、ジョブスは同じやり方でやっても成功しないと考えました。そこでオフィスを新しく作り変えました。オフィスの中央に、広いスペースを作り、さまざまな部署の人たちが移動のたびに必ず顔を合わせるようにした。これによって偶然の出会いやコミュニケーションが増え、想いもかけないアイデアがたくさん生まれるようになりました。これが「トイ・ストーリー2」の成功をもたらしたのです。

リフレッシュの見直し

仕事が創造的になればなるほどリフレッシュが大事になります。リフレッシュをするということは、自分の頭をリスタートするということ。オフィスで休んでいるとさぼっていると思われますが、頭をリフレッシュしなければアイデアは生まれてきません。

アブセンティズムとプレゼンティズムという2つの概念が注目されています。アブセンティズムは、健康を害して休んでいること。プレゼンティズムは出社しているけれど調子が悪くて仕事になっていないこと。
たとえば、昨日がんばりすぎて眠い(プレゼンティズムの状態)、しかし上司に叱られるからがんばって仕事をしているふりをする。すると能率があがりません。そんな時は寝た方が、頭がリフレッシュされて午後の生産性が上がります。上司は、「寝た方がいい」と言うべきなのです。しかし、残念ながら「仕事中に寝るとは何事か」と叱責する企業がほとんどでしょう。プレゼンティズムによる企業の損失は計り知れません。

社員を幸せにすれば生産性も上がる

これからは心の資本主義の時代だと言われています。
幸福心理学の第一人者のソニア・リュボミアスキー教授は、「自分は幸福だと感じている人はそうでない人より仕事の生産性が31%高く創造性は3倍」という研究結果を発表し、「成功が幸福を招くのではない。幸福(だと感じること)が成功を生むのだ」と結論付けています。

社長がすることは、社員を幸せにすることです。そうすれば生産性も上がる。

社員はどうすれば幸せになれるでしょうか。神戸大学社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と同志社大学経済学研究科の八木匡教授は、所得や学歴よりも「自己決定」が幸福感を与えていることを明らかにしました。
いろいろな判断を自分でやらせてあげる。仕事の仕方を自分で決めさせてあげる。場合によっては仕事の課題も自分で決めさせてあげると幸福感が得られ、やる気になるのです。

これからは、自分の働き方を自分でデザインする=セルフマネジメントの時代です。特に、クリエイティブな仕事って、自分の頭が今働いているかどうかは自分にしかわかりません。それを上司がマネジメントするのはばかげています。

いろいろな場所で、自分が一番働きやすい状況を自分で作って自由な働き方をする。たとえば写真の女性は(写真は省略)、机と椅子はあるのにあえて床に座って膝にパソコンをのせて仕事をしています。この人はこうやって作業をするほうが心地よかったのだと思います。
こんなことを普通の企業でやったら叱られる。叱られるから社員もセーブする。しかしこれからは、社員が自分で「このほうがモチベーションが上がる、頭が活性化する」と思う環境を選ぶという時代になっていくでしょうし、そうあるべきです。

まとめ

創造性を高めるためには、多様なメンバーによるチームワークが重要です。そのためには、コラボレーションや多様な出会いの場が必要です。
また、人の能力をもっと最大化しなければいけません。そのためには、働く人が能力を発揮しやすいように、状況に合わせていろいろな場を作ることが必要です。今、多くの人が自分の机で作業をしていますが、仕事の内容に応じて最適な場を選べるよう、多様な環境が必要です。数人で集まって画面を共有しながらその場でアウトプットを仕上げる環境、こもって集中できるブースも必要です。

日本の職場がどんどん変わっていかないと、日本がヤバイと私は思っています。クリエイティブな雰囲気、組織、制度、ルールに少しずつ変えていく。いきなり変えようとするとハレーションが起きるので、少しずつ、試行錯誤しながら変えていっていただきたいと思います。

【Part2】近江八幡市役所の挑戦

近江八幡市は人口約82,000人、世帯数約33,400世帯、職員数約750名の小さな自治体です。前市長時代の新庁舎整備計画では、21,000㎡の大きな庁舎を予定していましたが、現市長によって9000㎡の新庁舎と庁舎前に市民が集まる広場を作る計画に変更となり、令和8年に竣工の予定です。現在は、実施設計に入るところです。

【1】オフィス改革のきっかけ

令和2年度に新庁舎基本設計に職員の意見を反映するために、若手によるワーキンググループ(以下WG)を結成し、自治体や企業を視察しました。どこのオフィスも社員や職員が生き生きと働いていたことが印象的でした。基本設計についてWGで議論した結果、「大切なことはハードではなくソフトだ」ということを認識しました。

他自治体より仲先生をご紹介いただき、仲先生による研修会を開催。日本のおかれている状況を知り、直ちに(新庁舎整備を待たずに)働き方改革に取り組まなければと焦燥感をいだきました。渋谷区の庁舎を視察したときに職員の方が言っていた「二度と前の環境には戻りたくない」という言葉がモチベーションになりました。

皆、「働きにくい」「何かおかしい」と、現状の課題には気づいていました。しかし、「誰がするの?」「どうしたらいいの?」「やった者負けなのでは?」と、見て見ぬふりをしていたと私は思っています。しかし、新庁舎整備をきっかけに、課題に向き合う覚悟ができました。

担当部署として「ハードだけでなく、ソフトも新しい近江八幡市」を目的とし、職員の意識改革・チャレンジ意欲の向上・組織風土改革を目指しました。担当者の想いとしては、「働くことが『楽しい』『オモシロイ』と思える職場にしたい」。
そのために、働き方改革・意識改革に取り組みました。

【2】取組内容

取り組み内容は次の3つです

取組内容

01 「今からできるカイゼン」を約50事業提案

WGを3つの改善チームに発展させ、行革本部会議の下部組織としました。
そして、たとえば、会議室にモニター設置、オンライン申請の数を増やす、庁内LANのwi-fi化など、50の改善案を提案。行革本会議で承認を受けて、50の取組を各課に振り分け、現在進行中です。

02 総合政策部3階フロア/オフィス改革

総合政策部のフロアを、できることからスモールステップで改善していきました。まず、Step1では、「文書量の削減」「脇机の撤去」「文具類の一括管理」を実施。小さな働き方改革ですが、まず自分たちの部で実施し、他部署にも周知しようとしたのです。オフィスがきれいになったことで他部署からの賛同は得やすかったのですが、整理整頓程度の認識であり、また、「オフィス改革」の目的の共有は不十分でした。

取組内容 総合政策部3階

Step2では、総合政策部の企画課で、グループアドレスに挑戦しました。「管理職の隣の席に誰が座るのか」など、席の選択を重荷に感じる職員もいました。また、他部署からは、引き出しがないこと、固定席がないことに対し、「絶対無理」という声も聞かれました。

Step3では、もう少し踏み込んだ挑戦をしたく、総合政策部の3階フロアに什器購入の予算をつけました。①働き方改革の必要性を理解するための意識改革研修会、②働き方からオフィスのあり方、オフィスコンセプトを考えるワークショップ、③予算約80万円でコンセプトに合った物品を業者の提案を受ける形で購入、④実際の設置・運用、という手順を踏んで、進めました。実際にやってみると、運用ルールをしっかり決めないままスタートしたため改革が徹底されない、目的の共有が不十分だったため不満の声が聞かれた、などの課題があり、今もその課題は解決されていません。

Step3 フロア全体のオフィス改革に挑戦/レイアウトプラン

運用後1か月を経過したころに仲先生と仲研究室の学生さんの協力のもとワークショップ(以下WS)を開催しました。その評価結果は下記のとおりです。

Step3 フロア全体のオフィス改革に挑戦/運用1か月後の評価WS

課題については、チャットツールの活用、使った後の机の掃除の徹底など、お金をかけずにできることはあるのに、(内部調整に)私が負担を感じ、それを提案することが今もできていません。しかし、今後改善を進めていきたいと考えています。

03 市民部2階フロア パイロットオフィス化

3つ目の取組では、02の取組結果を踏まえ、予算をつけて市民部2階フロアをパイロットオフィス化しました。パイロットオフィスの設置については、総合政策部の取組を始めた当初から必要だと考えていました。目的は以下の2点です。

  1. オフィス改革(働き方改革)の効果を可視化し、職員の意識を徐々に変える。
  2. パイロットオフィス化の実施から抽出した課題を新庁舎整備に反映する。

総合政策部のオフィス改革の取組を踏まえ、パイロットオフィスの条件は、以下の6点だと考えていました。

  • 目的が共有できている
  • 職員や市民の目に触れる
  • 市民対応がある
  • 企画的業務もある
  • 所属職員が働き方を制限されない

これらを踏まえた結果、対象部署は、2階の市民部のフロアに決まりました。
市民部のフロアをパイロットオフィス化するにあたって課題となるのは文書量でした。そこで、研修会などを通し半年かけて(10月~3月)文書量の削減を行いました。

文書量の削減と併せて、働き方を考えるWSを行いました(9月~3月)。
今回は、総合政策部の時よりもWSに時間をかけました。WSで大切にしたことは、単にオフィスレイアウトを考えるのではなく、「このように働きたい」「こうすれば生産性が上がる」と、職員自身にじっくり考えてもらうことです。

WSの運営は、仲研究室の学生さんらが中心となりましたが、たまたまそのメンバーに近江八幡市民がいて、その学生さんが学生リーダーとして立候補してくれました。未来の働き方を検討するにあたり、これから社会に出る学生さんにもWSを運営していただいたことは大変意義のあることだと思っています。

WSの主な内容は以下のとおりです。

WSの主な内容

WSで出したアイデアの要素をまとめて、以下のような理想の働き方を描きました。

Step1-2 働き方を考えるWS(9月〜3月)/これからは「こう働きたい」

ここから、空間やオフィスレイアウトに落とし込んでいくのですが、いざ、レイアウトを考える段になると、今まで議論してきた「こう働きたい」というオフィス改革の目的が薄まってしまい、「やっぱり引き出しがあった方が良い」「固定席の方がいい」など、現状の働き方にあわせたレイアウトになりそうだと感じました。

このままではいけないと思い、仲先生にもう一度「今起こっていること」「何が必要か」「そもそも、この取り組みは挑戦である」ことを強調して伝えてもらいました。

この時感じたのは、変革とは難しいものだということです。変革自体が難しいと言うより、変わりつつあった意識はすぐに戻るのだなということを実感しました。

ピンチはあったものの、無事、レイアウトができました。
「こう働きたい」から改めて考えた空間、レイアウトは以下のとおりです。

Step3 レイアウト・運用ルールの検討/「こう働きたい」から考えた空間、レイアウト

「働き方や目的に合わせて席を選ぶ」ということで、基本的にフリーアドレスです。集中席、ビッグテーブル執務席、ハイ窓側席、ファミレス席を設けています。

クイック窓口は、できる限り市民の方が長居しなくてすむように、早く窓口対応ができるよう工夫することも検討しています。例えば、今、役所では「かかない窓口」が広がっていますが、市民の方にいちいち申請書を書いてもらうのではなく、モニターを置いて、職員が市民の方から申請内容を聞き取りながら入力する、というような仕組みも考えています。

空間を変えたことで、空間に合わせて働き方そのものも少しずつ変えていこうとWSメンバーでは話しています。

運用については、取組02の総合政策部のときに、最初にルールを明確にしなかったために運用がうまくいかなかったという反省から、以下のように、対象部署の若手職員(管理職以外)で案を考えてもらいました。

Step3 レイアウト・運用ルールの検討/運用は対象部署の若手職員(管理職以外)で案を考える

運用の検討では、どうしても今あるツールをもとに考える必要があったので、上の吹き出しにあるような意見も出てきました。

WSに参加していない職員との意識共有が必要だと思い、中間報告動画の公開、レイアウト・運用説明会などを複数回行いました。
説明会の前にはかならず仲先生に「なぜ働き方改革が必要か」をレクチャーしていただきました。

7月中旬には、パイロットオフィスの什器購入、設置をし、新しい働き方がスタートします。以降は、年内は月1回、その後3カ月に1回程度、課題を抽出し、新庁舎整備におけるレイアウト、運用に反映したいと考えています。

これまでの取組の成果

01~03の取組の成果は、たとえば、固定電話では電話の取次ぎが難しい、中途半端なオフィス改革では効果を感じてもらいにくい、「フリーアドレス」は言葉が先行して本来の目的が伝わらず嫌悪されやすい、一方で固定席の課題には気づきにくいことなどの課題が見えてきたことです。

まとめと担当者としての願い/これまでの成果「課題が出てきたこと」

当初の予定では令和元年には新庁舎ができていたはずですが、結果的には令和8年の竣工となってしまいました。しかし、これから先を見据え職員の意識が変わるのなら短い8年だと今は思えます。

オフィス改革は、働き方改革の1つの手段にすぎません。職員自身がどのように働きたいかを考えることが大事です。「なんのために働き方改革に取り組むのか」という目的共有は、何度も何度も繰り返し、仲間を少しずつ増やしていくことが大事だと実感しています。

オフィス改革によって「楽しい」「オモシロイ」と思える職場にしていくことが、担当者としての私の願いです。

最後に、WSを運営してくれた学生リーダーのメッセージを紹介します。
「…(前略)…オフィス改革、新庁舎で起こる職員さんの変化が近江八幡の魅力の維持と発展、新しい取り組みの実現に繋がると考えます。」
未来を担う若者にこのように言っていただけたことを励みに、今後もオフィス改革に取り組んでいきたいと思います。