THEME.1
これからの社会で、何が起きようとしているのか
PROJECT STORY 02

先端ICT環境の特別教室「Future Lab」で、


授業の現場から教育の可能性を広げていく

先端ICT環境の特別教室


「Future Lab」で、


授業の現場から教育の


可能性を広げていく

教育現場はいま、大きく変わろうとしている。学習指導要領も大幅に改定されるなか、早くからICTを活用した授業に取り組んでいる私立の中高一貫校である郁文館夢学園は、2019年1月、内田洋行が構築した特別教室「Future Lab」を導入した。最新のICT機器に触れることで、生徒たちの変化への対応力や情報処理能力を育むことが期待される。ICT特別教室を教育現場に導入するという取り組みについて、プロジェクトはどのように進んでいったのかを追っていく。
Profile

教育現場に立ち続けた内田洋行の実力が問われた

郁文館中学校・高等学校、および郁文館グローバル高等学校を運営する郁文館夢学園は、創立130周年記念事業の一環として、先端ICT機器を完備する特別教室の導入を検討していた。テクノロジーの発展著しい現代社会で、科学と人間のあるべき姿を追求できる国際人を育成することが目的だ。永く教育業界に携わり、教材・機材のみならず、教室などの空間デザインやICT機器の導入まで手がける内田洋行にも提案の依頼があった。
郁文館夢学園から内田洋行へ問い合わせがあったのは2017年の夏。競合とのコンペになった。競合各社はいずれも、オフィス家具メーカーをはじめとする空間構築を手がける会社と、IT企業などによる協働チーム。電子教材から教室空間デザインに至るまでをワンストップで担える内田洋行には、利があった。
営業を担当した加藤は振り返る。「当社には最先端のICTを駆使した『Future Class Room』というショールームがあります。問い合わせをいただいたあと、管理職の先生から現場の先生まで何度もご見学にいらっしゃって、実物を見ながらこんなものをつくりたい、という話を進めることができました」。当初は記念事業として、学校の教育方針を体現する教室を想定していたが、次第に具体的な授業展開の可能性を検討するフェーズに入っていったという。「郁文館夢学園さまは、生徒一人につき一台のノートパソコンを支給するなど、早くからICTを活用した教育を実施しています。また、国内外に姉妹校を持ち、相互に活発な交流を図るなど、まさにこれからの時代を生きるために必要な“主体性”や“多様性”を育む教育を求めていました。ショールームの機材を扱い、現場の先生と話すことで、実際の教室運営に何が必要なのかを細かくヒアリングできたと思います」。
「Future Lab」は、多目的教室である。理科室や木工室のような、特定の教科に使われるのではなく、あらゆる教科に使われることを想定する必要がある。学校側のニーズは多岐にわたった。
デザインを担当した観音は言う。「例えば高校では、授業における活用のほかにも、放課後活動や部活動での活用方法についても考える必要がありました。『Future Lab』をつくるためには、座学の授業から離れ、学校という場をどうやって活用していくのかといった、かなり幅広い視野が必要でした。その辺りにも応えることができたのは、当社が教材から環境づくりまで、初等教育から大学まで、幅広く手がけてきたことが大きかったように感じますね」。
先進的な特別教室の設置は、教育の場をあらゆる角度から検証し、その可能性を追求することにほかならない。内田洋行のこれまでの蓄積をどのように生かすのか、試される事例でもあった。

世の中に先んじて、より良い教育環境を

結果、郁文館夢学園のICT特別教室づくりは、すべて内田洋行が手がけることになった。
「導入する個別の機器の性能だけで言えば、メーカーなどに引けを取ることもあると思います。ですが、当社には教育現場をどこよりも知っているという立場から、具体的な授業のシーンを提案できる強みがあります。これからの教育がどう変わるのか。授業の具体的な進め方はどうなるのか。教える立場、学ぶ立場から見て何が違うのか。こういった点をお客さまとしっかりと議論したことで、イメージを共有できたと思います」と、加藤は語る。これからの授業、これからの学校教育を体現する特別教室をつくるということ。この漠然としてしまいがちなイメージを、共通認識として固めていく作業に注力したのは、デザイナーの観音だった。「先生方が普段どのような授業を行っているのか、実際に使用している教材や、うまく活用できていない教材なども見せていただきながら、お話を伺っていきました」。サブテキストや模型、カードゲーム型のコミュニケーション教材など、教師が有効活用したい教材を見て、それをどう展開すれば効果的な授業ができるのかを、一つひとつ一緒に考えていったという。「教材の優れている点を教えていただきながら、しかし先生方とは異なる角度から、ICTを使ってどう引き出していくかを考えていく時間でした。その意味では、私たちも授業づくりに携わっていったことになります」。
例えば顕微鏡による観察学習などにおいても、デジタル顕微鏡を使えば、顕微鏡が映す映像をグループやクラス全体で共有することが可能になる。一人ずつ順番に行うしかなかった「観察」が共有されることで、同じものを見ながら意見を交わす「場」が発生する。あるいは遠隔授業支援システム。壁一面のスクリーンに実寸サイズの映像を投射して、遠隔地のクラスルームと授業を同期するテクノロジーによって、異なる国や地域の学校に通う生徒とも意見を交わし、多様な意見の交換が可能になる。
知識や事象を共有し、相互にコミュニケーションをしながら、主体性や対話力を育むこと。そうした学びを、ICT機器の活用や教室という環境づくりによって補助していく──受注側と発注側という関係を超えて、より良い教育環境を目指す両者が共鳴した瞬間だった。

ICT技術をどう使うか、
その判断が教育の可能性を広げる

2019年1月、郁文館夢学園には、最新ICT機器とシステムを揃えた特別教室「Future Lab」が設置された。教室では、タブレット端末をタップしてスクリーンやプロジェクターを操作する教師の姿や、一人一台のノートパソコンを使ってグループワークを行う生徒の姿がある。まるで教科書やノートを開くかのように、ICT機器を自在に使いこなす生徒たちは、互いに向かい合う格好で授業を進めている。
導入後の見学に来た加藤は、生徒たちの様子に驚きを隠せない。「特にICT機器のようなデバイスに対して、生徒たちは使いこなすのが非常に早いです。導入当初は想定していなかったような使い方も、生徒たちはどんどん編み出していきます。教育現場は先生だけでなく、生徒たちによってもつくられていくものだと実感しますね」。同時に、これまでICTの利活用に消極的だった先生が授業にICTを取り入れる様子にも遭遇するという。「大前提の話なのですが、ICT機器ってこれまでの教育の幅を広げるものなのであって、これまでの教育とバッティングするものではないんです。黒板と教科書のような授業形態は、これからも続くと思います。ただ、黒板と教科書で素晴らしい授業をなさる先生って、やっぱりICTを使っても素晴らしい授業をなさるんですよね」と加藤が嬉しそうに笑う。
観音もまた、ICT技術を真にツールとして使いこなすことの大切さを感じている。「先生という学びの進行役がいて、生徒という主体がいる。その役割をしっかり把握したうえで、ICT機器や教室環境も整えていかなければならないのかなと思いますね。その意味では、ICT機器もまた、黒板や教科書、あるいは文房具と一緒です。ただ、この新しい道具は、これまでの授業にはできなかったこと、例えば事象を共有して、それについて異なる立場から議論していくような、双方向的な学習を発展させることができます。その発展に寄与していくことが、ICT機器の役割だと思います」。
新しい道具を揃えることが目的なのではなく、学習の選択の幅を増やし、教育がカバーできる範囲を広げていく。これまでの教育が取りこぼさざるを得なかった部分も、ICTが技術的に補完できるかもしれない。学校という教育の現場から、内田洋行はその可能性を広げていく。