THEME.1
これからの社会で、何が起きようとしているのか
PROJECT STORY 03

マイナンバーカードの利便性向上の先に目指す、


誰もが簡単に、行政の支援を受けられる社会の実現

マイナンバーカードの


利便性向上の先に目指す、


誰もが簡単に、行政の支援を


受けられる社会の実現

福岡市中央区役所に、政令指定都市として初めて導入された「マイナンバーカード対応記帳台」。窓口の混雑緩和対策などの意味合いはもちろんだが、最終的に目指すのは、国民一人ひとりがマイナンバーカードを持つことが当たり前の社会だ。そうなったとき、行政サービスは時間や場所にとらわれない飛躍的な利便性の向上を遂げるだろう。先例がないなかで導入プロジェクトの中心を担った、営業とSEの二人に迫った。
Profile

マイナンバーカード普及につなげる、
という新たな視点

2016年に交付が開始されたマイナンバーカード。「国民の利便性向上」「行政の効率化」を目的に導入されたが、いまだに普及率は約14%と伸び悩み、普及がなかなか進んでいないのが実情だ。この全国の自治体にとって共通する課題にくわえて、人口増が進む福岡市では、窓口の混雑化が進行。それに伴う職員の業務負担増や業務の煩雑化も大きな課題となっており、こうした課題に対する解決策として「マイナンバーカード対応記帳台」が検討されたのである。
「マイナンバーカード対応記帳台」自体はすでに2年ほど前、姫路市で第1号が採用された実績をもつ製品。しかし、その後はイベントなどでも興味こそ持たれるものの、導入までなかなか至ることがなかった。導入事例が乏しいなかでも福岡市が導入を決めたのは、先々を見据える姿勢が大きかったと言えよう。「多くの方に関心を持っていただけるのですが、マイナンバーカードがもう少し普及してから検討したいとおっしゃる自治体がほとんどのなか、福岡市は逆に記帳台を導入することで、マイナンバーカード自体の普及促進につなげたいという発想でした」と営業担当の黒谷は語る。
話が浮上してすぐに、福岡市中央区の検討会向けに最初のデモンストレーションを実施。操作性などで高い評価を受けた。そこで黒谷は、次年度での稼働開始に向けて本格的に動き出した。既存の仕様にくわえて、福岡市がこの記帳台を導入して実現したいことを細かく丁寧にヒアリング。定期的な電話、メールでのやりとりも行いながら詳細に要件を詰めていき、複数回におよぶデモンストレーションも実施。最終的な仕様を固めていく。
「姫路市でしか社内に事例がなく、進め方は本当に難しかったですね。それでも、多岐にわたる福岡市側からの要望をひとつずつ整理し、仕様の検討を重ね、機能面はもちろん操作画面のUIなどにも要望を盛り込むことができました。自分にとっても学ぶことの多いプロジェクトとなりました」と、黒谷は振り返る。
「他社にも競合する製品はありますが、職員が関与せず住民だけで利用できる操作性の高さなど、明確に差別化を図れたのが大きなポイントとなりました。福岡市からの要望を盛り込み、入札に向けて仕様を固めることができたのは黒谷の営業努力が大きい」とは、SEとして導入に携わった河合の弁。要望に徹底的に応える姿勢が、導入という結果に結びついた。

蓄積された経験とノウハウで、
完成度をさらに高める

自治体向けのシステム導入を豊富に経験し、業務に精通したSEという立場から、営業と顧客の間に入ってアドバイザー的な役割を果たしたのが河合である。
そもそも福岡市中央区には約200種類もの帳票が存在していたが、住民の方々の利便性向上や、職員の方々の業務効率化の観点から、本当に必要な帳票はどれなのかを選別。その集約作業が一番苦労した点だと河合は語る。「帳票ごとに、発行頻度や一日ごとの発行枚数などを調べるところからスタート。さらには使用される場面や使用者の属性などからキーワードを選んで、約200種類の帳票を52種類まで絞り込みました。その上で、例えば引っ越してきた方には転入届のほか、子どもがいたら児童手当の申請が必要になるというように、シーン別に一緒に使用されることの多い帳票の紐づけを実施。住民が記帳台を使って、必要な申請書を効率よく作成できる道筋を構築するところまで行いました。福岡市の担当者からも『申請書をシーン別に体系立てて分けるといったことはやったことがなかったので、非常にありがたい視点で、助かりました』と言っていただけました」。
まさに、仕様策定の肝となる部分において、河合の豊富な業務知識とノウハウがフルに生かされていたのである。
もともと、「マイナンバーカード対応記帳台」はSEが入らなくても、販売して導入までできるものとして設計されていた製品。しかし、まだ導入事例が少ないこともあり、機能として組み込まれていない具体的な要望が多かったことで、SEが入っての大幅なカスタマイズ開発も必要になった。
「お客さまからの要望を盛り込んだ開発を行っていく際には、機能追加も結構ありました。操作画面を展開していくなかで、もっとこんな画面があるといいのでは、という画面も追加。また、利用者がパスワードを忘れていたとしても手書き用の白紙帳票が出力され操作したことを無駄にしない、といった改善も行いました。従来の製品から大幅にバージョンアップができました」と河合は語る。
導入による効果はこれからだろうが、すでに地元の新聞やテレビでも取り上げられ、大きく注目を集めている。
「住民の方々が実際に使用されてみて、画面の切り替えが速すぎるのではないか、といった声なども出てきました。今後、利用者の皆さまからのご意見も参考に改善を進めていきたい」と河合。福岡市では今後、導入後の効果も判断しながら、他の区役所での導入を検討している。

マイナンバーカードの在り方を変え、
世の中を変えていく

今回の福岡市での導入がメディアでも取り上げられたことで、各販売店からの問い合わせも増加。他の政令指定都市からも引き合いが来ているが、「長い目で見ると過渡期の製品」だと河合は話す。
「マイナンバーカード自体が住民票となり、カードだけでさまざまな申請ができるようになると良いと思います。マイナンバーカードを活用して申請書を逐一作成し窓口で申請するのでは、本来目指すカードの使い方ではないと考えています。しかし、カードが普及しなければそういった社会は実現しないので、普及段階としての一助になるととらえています。普及率が3割を超えたら社会は一気に変わるでしょう。そこに至るまでの過渡期の製品として、記帳台をもっと使いやすいものにしていきたいです」。
河合は今後、より利便性を高める仕組みとして、スマホアプリとの連動も視野に入れている。事前に個人の情報をアプリに入力しておけば、記帳台にQRコードを読み込ませるだけで完成した申請書が出てくる仕組みなど、構想を膨らませている。「意外と高齢者におけるマイナンバーカードの普及率が高いので、高齢化社会とICTのブリッジの役割も今後果たしていくかもしれませんね」。
「マイナンバーカード対応記帳台」は、内田洋行が得意としている行政領域でのICT活用を具現化した製品とも言える。そして、「場と街づくり変革」のきっかけとなる可能性も秘めている。
「記帳台は多言語対応オプションもついており、今回福岡市では英語と韓国語にも対応させ、それらの言葉がガイダンスで流れながら操作を進められるようにしました。外国人にとって特に漢字は難しく、帳票のどこに何を記入したらよいのか皆さん迷われる。あらかじめ必要情報が記入された状態で印刷されて出てくるこのシステムは、非常に利便性が高いといえます。外国人も含めた住民へのサービス向上をサポートすることに、一役買えると思っています」と黒谷。
申請データの連携が徹底されれば、ワンストップ窓口が実現し、公的サービスの利便性ははるかに向上する。さらに、医療などのライフラインや交通機関などのインフラ、各種公共施設の効率的な管理・運営の実現にもつながり、街づくりは住民の暮らしに寄り添えるものへと進化を遂げていくだろう。内田洋行は、そんな新たな時代の場と街づくりを見据えている。