プレスリリース

2021/7/28

国産木材を活用したフレキシブルな組立和室「くみたて2020」の開発・製品化
〜ポストコロナ時代に向けた可変性が高い快適な新しい空間創造をめざして〜


北海道大学大学院工学研究院の小澤丈夫教授らの研究グループは、海野建設株式会社(本社:宮崎県日向市、代表取締役社長:海野洋光)、株式会社内田洋行(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大久保 昇)との共同研究によって、組立和室「くみたて2020」を開発いたしました。

「くみたて2020」は、誰もが短時間で高度な技術を要すことなく設置することが出来る、フレキシブル性に優れた置き型の2畳サイズの和室です。伝統の木材技術と金物の技術を組み合わせることで簡易組み立てを実現し、また手作業での運搬・設置・保管に適したサイズ・重量で設計しています。

特徴的な建具を自由に配置し、本体同士を連結するなど利用シーンに応じた可変性が特徴で、日本の伝統建築が誇る建具職人の高度な技術を継承し、和の空間の伝統と心地よさを、広く一般市民や諸外国の人々の視覚、触覚、嗅覚に訴え、ポストコロナ時代の新しい空間創造への貢献を目指します。

くみたて2020初号機。札幌の建具職人が、北海道産のトドマツ材を使って製作。

ポイント

  • 1台あたり約15分、誰でもどこでも簡単に組み立て可能な2畳サイズの木製組立式和室。
  • 多種多様な建具の組合せや、本体同士の連結など、利用者が思い浮かぶ様々なシーンで活用。
  • 木の技術と金物の技術で構成され、和の空間の伝統と心地よさを訴えかける空間。

製品の特徴とコンセプト

「くみたて2020」は、基本フレームに畳と軒でシンプルに構成される構造体と、自由なレイアウトで建具パネルをはめ込むだけで完成する和室です。障子戸、板戸、床の間、付書院、違棚、躙口、縁側などユーザーの好みや目的に応じた多様な建具パネルをデザインしました。床部に木造日本建築に用いられる軸組工法の技術、建具パネルに伝統的な建具職人の技術を使い、柱・梁の接合部や建具・軒パネルには金物を採用し、木材と金物の最適な組み合わせで構成されます。また、2畳サイズの本体フレーム同士が連結することで、直列の連結や、雁行配置や坪庭を設けるなど、広がりをもった多彩な配置と新たな空間をつくることができるようになりました。アイデア次第で利用者の創造力をかきたてる設計が可能です。

「くみたて2020」は、従来は高い施工技術を要する和室空間を、所用時間約15分で組み上げることが出来ます(2人で2畳サイズ、1台の基本フレームと軒を組み上げる場合)。誰でも容易に組み立てられるように、各パーツは人手で持ち上げられる重量とし、引掛式金物による部材の組合せと六角レンチのみの使用で完成できるよう構成されています。今回、建具パネルの基本モジュールを小型のバンや軽トラックでの運搬を想定し、880mm x 880mmに小型化・軽量化し、組み立てや運搬・保管に配慮されています。

開発の経緯

くみたて和室は、日本各地における地場産木材使用の活性化を目指し、気候と植生が異なる立地にある2者、積雪寒冷地にある北海道大学建築デザイン学研究室(旧建築史意匠学研究室)と、年間を通じて温暖な気候にある宮崎県日向市の海野建設との共同作業によって2013年に企画され、2015年に先行機「くみたて2015」を開発、国産木材に造詣が深かった内田洋行が参画し、コンセプトモデルは札幌市駅前通り地下歩行空間「チ・カ・ホ」、札幌市北3条広場(アカプラ)、北海道大学構内、江差町鴎島など、道外では、東京丸の内のオフィス街、宮崎県日向港など、様々な公共の場に設置され、イベント、セミナー、地域交流などにおける使用実績を重ねてきました。

「くみたて2020」は、先行機ではできなかった本体同士の連結と建具パネルの小型化・軽量を実現し、内田洋行が製品開発において、大人数が利用する居室空間を想定して、仕様面・安全面・品質面・供給面の支援を担当しました。積載荷重と床への衝撃力などの強度試験検査や転倒防止の評価等を行い、製品化に向けての品質管理を行いました。

※「組立和室 くみたて」は国立大学法人北海道大学、海野建設株式会社、株式会社内田洋行の登録商標です。

今後への期待

イベント、休憩、飲食、文化・芸術活動、学び、インフォメーションや各種PRでの活用など、日常・非日常の様々なシーンでの使い方が可能です。人が内部に入っての使用や、アート展示、プロジェクションマッピングを併用した情報発信、公共空間でのオブジェ的な設置など使い方は多様です。日本文化と地域文化の啓発、情報発信、新型コロナウイルス感染拡大により転機を迎えている飲食業や観光業への支援、福利厚生、災害時仮設空間での居住性の向上、教育などに資するデザインとして、ポストコロナ時代の新しい空間創造をめざして本製品を活用させていきます。

なお、株式会社内田洋行にて、2021年9月より、先行して民間企業のショールームやエントランスエリアなどへの提案活動を開始します。また、北海道大学建築デザイン学研究室を中心に、今後も3者で協力しながら、様々な公共空間や私空間に新製品を設置する社会実験を重ね、研究的な視点から活用方法について研究を継続させていきます。

【参考図】

図1.外観全景

図2. 3台を連結した状態

図3.くみたて手順

図1.外観全景

図2. 3台を連結した状態

図3.くみたて手順

くみたて2020の製品名について

日本の伝統技能「巧(たくみ)」、道具や工具を使わない「手組み(てくみ)」、日本の伝統文化に使われてきた「見立て(みたて)」が、「くみたて」の基本コンセプトです。本製品を、日常の生活空間やイベントなど様々なシーンに設置することによって、日本の伝統が誇る木による和の空間の心地よさを、広く一般市民や諸外国の人々の視覚、触覚、嗅覚に訴え、日本の伝統文化の本質を再評価する機会をつくります。受注生産方式により、地域の建具職人が、特性を知り尽くした地場産木材を使い、現代において失われつつある確かな技を発揮し一品ずつ製作します。人と空間や文化との関わりが、世界的に大きな転機を迎えた2020年を、新しい空間創造への時代の節目と捉え、本製品を「くみたて2020」と命名しました。

北海道大学建築デザイン学研究室について

https://5ko201604.wixsite.com/5-historyanddesign
1948年に創設された研究室は、長く建築史を専門分野としてきました。2012年からは建築デザインに軸足を置き、北海道はもとより国内各地や欧州を対象に、建築・都市の成り立ちについて、主に文化面と技術面から調査・研究しつつ、同時に様々な建築・空間デザインプロジェクトを行なっています。特に、近年では、道産木材を使った積雪寒冷地の建築デザイン、新築だけではなくリノベーションプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。

海野建設株式会社について

https://uminoh.jimdofree.com
国産木材の製品開発を得意とする建設会社として木製パレットにヒントを得た災害時の住宅問題を解決するスクエアパネル工法など特許取得。ソーシャルビジネス災害避難住宅「救屋」を全国展開しています。このほかにも特許取得している山崩れなどの森林災害を防ぐ木製横断排水具、長期にわたって腐らない国産ウッドデッキ材 弥良来杉(ミラクルスギ)や日本で唯一の屋外専用木製手すり、白木鳥居など製作販売もしています。

株式会社内田洋行について

https://www.uchida.co.jp
内田洋行は、1910年(明治43年)創業、2021年に111周年を迎えました。2004年より宮崎県や北海道をはじめとした全国各地の国産木材活用を開始し、木材産地の地方自治体とのコラボレーションによる地域産材を活用した製品開発や、「木育」を促進する子育て支援施設、学校、企業、空港等の公共建築に国産木材を採用していく取組みや、林野庁の国産木材の受託事業への参画を進めています。

【このプレスリリースのPDFダウンロード】

【このプレスリリースのお問い合わせ先】

●くみたてを活用した活動に関すること
北海道大学大学院 工学研究院 教授 小澤丈夫(おざわたけお)
TEL. 011(706)6248 (建築デザイン学研究室代表)
FAX. 011(706)7123
https://5ko201604.wixsite.com/5-historyanddesign

●販売に関すること
株式会社内田洋行 オフィス商品企画部 部長 門元英憲(かどもとひでのり)
TEL. 03(3555)4091
FAX. 03(5543)9053
https://www.uchida.co.jp/

配信元
北海道大学 総務企画部広報課(〒060-0808 札幌市北区北8条西5丁目)
TEL. 011(706)2610 
FAX. 011(706)2092

株式会社内田洋行 広報部 佐藤将一郎・深澤琴絵(〒104-8282 東京都中央区新川2-4-7)
TEL. 03(3555)4072
FAX. 03(3555)4620

海野建設株式会社 代表取締役 海野洋光(宮崎県日向市東郷町山陰丙582番地1号)
TEL. 0982(69)3174
FAX. 0982(69)3509