地方自治体の業務は多岐にわたりますが、そのいずれにおいても文書管理は重要な役割を果たします。従来の紙ベースの文書管理では、膨大な量の文書を効率的に管理することが難しく、業務の遅延や情報漏洩のリスクが高まることがあります。そこで、地方自治体職員の皆様にぜひ検討していただきたいのが、文書管理システムの導入です。
文書管理システムを導入することで、業務効率の向上、法令遵守の容易化、災害時のリスク管理など、多くのメリットを享受することができます。住民サービスの質を向上させ、地方自治体の信頼性を高めるためにも、文書管理システムの導入は不可欠です。次に、地方自治体が文書管理システムを導入する意義と、具体的なシステムの特徴について詳しく解説します。
index
- 行政文書の電子化における国の指針と現状の課題
- 地方自治体における文書管理システムとは
- 文書管理システムを導入するメリット
- 職員の業務効率化
- 電子決裁システムと連携した決裁スピードの向上
- ペーパーレス化の促進
- 法令遵守
- 耐災害性の向上
- 地方自治体が文書管理システムを導入する際に課題となること
- 電子による文書管理への抵抗感
- 職員の教育
- データ移行の問題
- セキュリティと機密保持
- 法令や規程への対応
- システムの拡張性とシステム間連携
- 文書管理システム パッケージ・ベンダーの選び方
- ベンダーの信頼性と実績
- システムの機能と柔軟性
- 情報セキュリティ対策
- サポート体制
- コストと予算
- ユーザビリティ
- データ移行のサポート
- 文書管理規程の見直しに対する専門的な知見
- 将来的な総合内部情報システム構築に向けた拡張性
- ベンダーの将来性
- 文書管理システムと自治体の内部事務DX
行政文書の電子化における国の指針と現状の課題
行政文書の電子化に関して、国は基本的な方針を定めています。平成31年3月25日に内閣総理大臣が決定した「行政文書の電子的管理についての基本的な方針」では、行政文書の電子化を推進し、効率的かつ適正な管理を目指すことが示されています。この方針に基づき、各府省庁及び地方自治体は電子的な文書管理システムの導入を進めていますが、現状ではいくつかの課題も存在します。
まず、電子化の進展に伴う技術的な課題があります。システムの導入や運用には高度な技術が必要であり、職員のITスキルの向上が求められます。また、既存の紙文書をデジタル化する作業には多大な労力と時間がかかるため、効率的なスキャニングやデータ入力の方法が求められます。さらに、セキュリティの確保も重要な課題です。電子化された文書はサイバー攻撃のリスクにさらされるため、適切なセキュリティ対策が必要です。
また、法令や規制の整備も課題となっています。電子文書の保存や管理に関する法令はまだ整備途上であり、各自治体が統一的な基準に基づいて運用するためのガイドラインが必要です。これにより、文書管理の標準化が進み、効率的な運用が可能となります。国の指針に基づき、地方自治体が直面するこれらの課題を克服することで、より効果的な文書管理システムの導入が実現するでしょう。
地方自治体における文書管理システムとは
地方自治体における文書管理システムとは、地方自治体の特有のニーズに対応した文書管理ソリューションです。一般的な企業向けの文書管理システムとは異なり、地方自治体向けのシステムは公共サービスの提供に関連する多様な文書を効率的に管理するための機能が充実しています。例えば、住民からの申請書類や議会の議事録、各種報告書など、多岐にわたる文書を一元的に管理することが求められます。また、地方自治体の業務は法令遵守が特に重要性が高く、法令に基づいた文書の保存期間や管理方法を自動的に適用する機能も重要です。
さらに、地方自治体の内部業務の効率化も図れます。例えば、職員間での文書共有や共同編集が容易になり、チームとしての業務遂行がスムーズになります。このように、地方自治体向け文書管理システムは、地方自治体の特有のニーズに対応し、業務効率化と住民サービスの向上を実現するための重要なツールです。
文書管理システムを導入するメリット
文書管理システムを導入することで得られるメリットは多岐にわたります。特にメリットについて、詳しく解説します。
職員の業務効率化
文書管理システムを導入することで、職員の業務効率が飛躍的に向上します。従来の紙ベースの管理では、文書の検索や共有に時間がかかり、業務の遅延が発生することがありました。しかし、デジタル化された文書管理システムでは、必要な文書を迅速に検索・取得できるため、業務のスピードが格段に上がります。また、電子化された文書情報を全体で共有することも可能となり、組織間の連携も強化され、異なる部署間での情報共有がスムーズに行えるようになります。
電子決裁システムと連携した決裁スピードの向上
文書管理システムと電子決裁システムを連携させることで、決裁プロセスのスピードが大幅に向上します。従来の紙ベースの決裁では、文書を物理的に回覧する必要があり、時間がかかることが多々ありました。しかし、電子決裁システムを導入することで、文書の回覧がデジタル化され、迅速に行えるようになります。さらに、決裁の進捗状況をリアルタイムで確認できるため、滞りなくスムーズに進行します。これにより、意思決定のスピードが向上し、迅速な対応が求められる場面でも効果的に対応できるようになります。
ペーパーレス化の促進
文書管理システムの導入は、ペーパーレス化の促進にも寄与します。紙の使用量が減少することで、環境負荷の軽減が期待されます。また、文書の保管スペースが不要になるため、庁内のスペースを有効活用できるようになります。さらに、紙の管理に伴うコストも削減され、経済的なメリットも享受できます。ペーパーレス化は、地方自治体の持続可能な運営に向けた重要なステップとなります。
情報公開の迅速化
地方自治体は、住民に対して情報を迅速かつ正確に提供する責任があります。文書管理システムを導入することで、情報公開のプロセスが効率化され、住民への情報提供が迅速に行えるようになります。例えば、住民からの情報公開請求に対して、必要な文書を迅速に検索・提供できるため、対応時間が短縮されます。これにより、行政の透明性が向上し、住民の信頼を得ることができます。
法令遵守
地方自治体は、法令に基づいた文書管理を行う必要があります。文書管理システムを導入することで、法令遵守が容易になります。例えば、文書の保存期間や廃棄方法など、法令で定められた要件をシステム上で管理することができます。また、文書の改ざん防止やアクセス権限の管理もシステム上で行えるため、法令に基づいた適切な文書管理が実現します。これにより、地方自治体は法令遵守の責任を果たし、信頼性の高い行政運営を行うことができます。
耐災害性の向上
自然災害や火災などのリスクに対して、紙の文書は非常に脆弱です。しかし、文書管理システムを導入することで、文書の耐災害性が向上します。デジタル化された文書は、クラウド上に保存されることが多く、物理的な災害から保護されます。また、定期的なバックアップを行うことで、万が一のデータ消失にも対応できます。これにより、地方自治体は災害時にも重要な文書を確実に保護し、迅速な復旧が可能となります。
地方自治体が文書管理システムを導入する際に課題となること
地方自治体が文書管理システムを導入する際には、いくつかの重要な課題が存在します。これらの課題を理解し、適切に対処することで、効率的かつ効果的な文書管理が可能となります。以下に、主な課題を挙げます。
文書管理システム導入時の主な課題
- ①電子による文書管理への抵抗感
- ②職員の教育
- ③データ移行の問題
- ④情報セキュリティと機密保持
- ⑤法令や規程への対応
- ⑥システムの拡張性とシステム間連携
文書管理システムの導入に際して、地方自治体が直面する課題は多岐にわたります。まず、職員の中には電子による文書管理への抵抗感があり、システムの利点を明確に伝え、職員の意見を取り入れることが重要です。また、職員が新しいシステムを効果的に利用できるようにするための教育とトレーニングが不可欠です。さらに、既存の文書を新しいシステムに移行する際には、データの整合性や完全性を保つことが重要であり、適切なデータ移行計画を立てる必要があります。情報セキュリティと機密保持も重要な課題であり、情報漏洩や不正アクセスを防ぐための対策が求められます。法令や規程への対応も必要であり、新しいシステムが法的要件を満たしているかどうかを確認することが重要です。最後に、システムの拡張性とシステム間連携も考慮する必要があり、将来的な機能追加が容易に行えるかどうかや他の内部情報システムとの連携が重要です。これらの課題を克服することで、地方自治体は効果的な文書管理システムを導入することができます。
文書管理システム パッケージ・ベンダーの選び方
文書管理システムのパッケージ・ベンダーを選定する際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。これらのポイントを押さえることで、最適なベンダーを選び、効果的な文書管理システムを導入することができます。以下に、選定時に考慮すべき主なポイントを解説します。
ベンダーの信頼性と実績
まず、ベンダーの信頼性と実績を確認することが重要です。過去の導入事例や顧客の評価を調査し、ベンダーが信頼できるかどうかを判断します。特に、同様の規模や業種の自治体での導入実績があるベンダーは、信頼性が高いと考えられます。また、ベンダーの財務状況や企業の安定性も確認し、長期的なサポートが期待できるかを見極めることが重要です。
システムの機能と柔軟性
文書管理システムの機能が、自治体のニーズに合致しているかを確認します。例えば、文書の検索機能やアクセス制御、バージョン管理など、必要な機能が備わっているかをチェックします。また、将来的なニーズの変化に対応できる柔軟性も重要です。システムが拡張可能であり、新しい機能を追加できるかどうかを確認することで、長期的な運用がスムーズに進みます。
情報セキュリティ対策
文書管理システムには機密情報が含まれるため、セキュリティ対策が重要です。ベンダーが提供するシステムが、最新のセキュリティ基準を満たしているかを確認します。具体的には、データ暗号化、アクセス制御、不正アクセス検知などの機能が備わっているかをチェックします。また、ベンダーがセキュリティに関する認証を取得しているかの確認に加え、単に文書管理システムパッケージだけではなく、ネットワーク・セキュリティに関するソリューションを保有しているかも確認すると良いでしょう。
サポート体制
システム導入後のサポート体制も重要なポイントです。ベンダーが提供するサポートの内容や対応速度を確認し、問題が発生した際に迅速に対応してもらえるかを見極めます。地方自治体文書管理業務に長けたサポート担当者がいるかなどを確認することで、安心してシステムを運用することができます。
コストと予算
システムの導入にはコストがかかるため、予算内で最適なベンダーを選定することが求められます。初期費用だけでなく、運用コストやメンテナンス費用も含めた総コストを比較検討します。また、ベンダーが提供する価格モデルを理解し、自治体の予算に合ったプランを選ぶことが重要です。
ユーザビリティ
システムの使いやすさも重要な選定ポイントです。職員が日常的に使用するシステムであるため、直感的で使いやすいインターフェースが求められます。ベンダーが提供するデモやトライアルを利用し、実際にシステムを操作してみることで、ユーザビリティを確認します。また、職員の意見を取り入れ、使いやすさを評価することも重要です。
データ移行のサポート
既存の文書を新しいシステムに移行する際には、データ移行のサポートが必要です。ベンダーが提供するデータ移行サービスやツールを確認し、スムーズにデータを移行できるかを見極めます。また、データ移行の際に発生する可能性のある問題に対して、ベンダーがどのように対応するかを確認することも重要です。
文書管理規程の見直しに対する専門的な知見
文書管理システムの導入に伴い、既存の文書管理規程の見直しが必要となる場合があります。このため、ベンダーが文書管理規程の見直しや策定に対する専門的な知見を有しているかを確認することが重要です。ベンダーが提供するコンサルティングサービスや専門家の支援を受けることで、規程の見直しがスムーズに進み、システムの導入効果が最大化されます。
将来的な総合内部情報システム構築に向けた拡張性
地方自治体の業務は多岐にわたるため、文書管理システムが他のシステムと連携できる拡張性を持っていることが重要です。特に、電子決裁システムや情報公開システムとの連携が求められます。電子決裁システムとの連携により、文書の承認プロセスが効率化され、ペーパーレス化が進みます。また、情報公開システムとの連携により、住民への情報提供が迅速かつ正確に行えるようになります。これにより、自治体の透明性が向上し、住民の信頼を得ることができます。
ベンダーの将来性
最後に、ベンダーの将来性も考慮する必要があります。ベンダーが今後も継続的にシステムの開発やサポートを提供できるかを見極めます。特に、ベンダーの技術力やイノベーションへの取り組みを評価し、将来的なシステムの進化に対応できるかを確認することが重要です。
地方自治体が文書管理システムパッケージ・ベンダーを選定する際には、これらのポイントを総合的に評価することが求められます。各ポイントを慎重に検討し、最適なベンダーを選ぶことで、効果的な文書管理システムの導入が実現できるでしょう。
文書管理システムと自治体の内部事務DX
文書管理システムの導入は、自治体の内部事務DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で重要な役割を果たします。内部事務DXとは、自治体内部の業務プロセスをデジタル技術を活用して効率化し、住民サービスの向上を図る取り組みです。文書管理システムの導入により、業務効率化、情報公開の迅速化、セキュリティの強化、コスト削減、データ活用の促進、働き方改革など、多くのメリットが得られます。これにより、地方自治体の業務全体の効率化が図られることで、限られたリソースを新たな施策の立案や住民対応といった業務に充てることができ、住民サービスの質的向上につながることも期待されます。
関連情報もご覧ください
「e-ActiveStaff文書管理」は、地方自治体をはじめ様々な公団体でご利用いただける、実績豊富な文書管理システムです。地方自治体の業務に合わせた機能が豊富であることはもちろん、自治体業務に精通した有識者によるコンサルティングなどサポートも充実しています。
地方自治体や国公立大学、独立行政法人や公益法人などでご利用いただける文書管理システムです。行政文書管理業務の全てをデジタル化することができ、自治体DXの実現を強力に推進します。
https://www.uchida.co.jp/localgovernment/products/inside/bunsho/
地方自治体をはじめとする公共団体の業務に特化した電子決裁システムです。決裁・承認を電子化し、意思決定の標準化・迅速化・決裁業務の生産性向上を実現し、働き方の変革を支援します。
https://www.uchida.co.jp/localgovernment/products/inside/denshi/

内田洋行自治体分野のコラム編集チームです。地方自治体・官公庁の職員の方向けにお役立ち情報や業界動向情報をご紹介します。
合わせて読みたい
-
コラム
公会計の基本と運用のポイント
公会計の基本概念や新たな改革の動向を解説。公会計の定義、地方公会計制度の改革、実務課題から学習方法まで、実践的な情報をご紹介いたします。
-
コラム
電子決裁がもたらす内部事務DX!成功に向けた道筋とは
業務効率化と住民サービス向上のため、自治体の電子決裁が進んでいます。本記事では、電子決裁導入のメリットや導入時の課題、システム選定のポイントなどを解説します。
-
イベントレポート
人が主人公となる“これから”の自治体DXを目指して 内田洋行「地方自治情報化推進フェア2024」出展レポート
10月9日と10日に幕張メッセで開催された「地方自治情報化推進フェア2024」における、内田洋行ブースの様子をご紹介します。