地方自治体における電子決裁の導入は、業務効率化や決裁プロセスの可視化の観点から非常に重要です。従来の紙ベースの決裁プロセスは、時間とコストがかかるだけでなく、情報の管理や追跡が難しいという課題がありました。電子決裁の導入により、これらの問題を解決し、自治体内部の事務作業をデジタルトランスフォーメーション(DX)することが可能になります。
本記事では、電子決裁導入の背景やメリット、導入時に想定される課題、そして具体的なシステム選定のポイントまでを網羅的に解説し、自治体DXを成功へ導くための実践的な情報をお届けします。
index
- 電子決裁導入が求められる背景
- 自治体DX推進計画で求められる電子決裁の推進
- 職員の業務効率化
- コロナ禍で始まったテレワーク
- 電子決裁導入によるメリット
- 業務効率化とコスト削減
- 住民サービスの向上
- ペーパーレス化の促進
- 情報セキュリティ向上とコンプライアンス強化
- 電子決裁導入における課題とポイント
- 電子決裁を導入する際に課題となること
- 庁内の理解促進
- 既存システムとの連携
- 業務フローの見直しと文書管理規程の再構築
- 電子決裁システム選定のポイント
- 地方自治体に特化した機能が豊富であること
- 様々な内部情報システムとシームレスに連携できること
- 導入時だけではなく運用開始後のサポートが充実していること
- 導入実績が豊富であること
- まとめ: 電子決裁導入の意義と自治体内部事務DX
電子決裁導入が求められる背景
地方自治体の決裁業務の電子化は、以前にも増して要請が高まっています。電子決裁の導入に向けては、その背景を理解することが大切です。
自治体DX推進計画で求められる電子決裁の推進
地方自治体における電子決裁の導入は、総務省が策定した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の一環として強力に推進されています。この計画では、自治体の業務効率化と住民サービスの向上を目指し、デジタル技術の活用が求められています。具体的には、電子決裁の導入により、紙ベースの手続きが減少し、業務の迅速化と透明性の向上が図られます。また、データの一元管理が可能となり、情報の共有や分析が容易になるため、政策立案や行政運営の質が向上します。自治体DX推進計画は、自治体がデジタル技術を活用して効率的かつ効果的な行政サービスを提供するための指針となっており、電子決裁の導入はその中核を成す要素です。
職員の業務効率化
自治体職員の業務効率化は、電子決裁の導入が求められる重要な背景です。人口減少や少子高齢化に伴い、自治体の職員数は増加が難しくなる一方で、業務量は増加し続けています。このような状況下で、限られた人員で効率的に業務を遂行するためには、業務プロセスの見直しとデジタル技術の活用が不可欠です。電子決裁の導入により、紙ベースの書類の作成や管理にかかる時間と労力が大幅に削減されます。例えば、従来は紙の書類を回覧して承認を得る必要があった手続きが、電子決裁システムを利用することで、オンライン上で迅速に承認を得ることが可能となります。これにより、職員はより重要な業務に集中できるようになり、業務全体の効率化が図られます。また、電子決裁システムは、決裁状況をリアルタイムで把握できるため、管理職による監督や調整も容易になります。結果として、地方自治体の業務効率が向上し、限られたリソースを新たな施策の立案や住民対応といった業務に充てることができ、住民サービスの質的向上につながることも期待されます。
コロナ禍で始まったテレワーク
テレワークが急速に普及したことも、地方自治体における電子決裁の導入を後押しする要因となっています。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの自治体が職員の安全を確保するためにテレワークを導入しました。テレワークの普及により、従来の紙ベースの業務プロセスでは対応が難しくなり、電子決裁の必要性が一層高まりました。電子決裁システムを導入することで、職員は自宅やリモートオフィスからでも業務を遂行できるようになり、業務の継続性が確保されます。また、テレワーク環境下でも迅速かつ効率的に業務を進めるためには、電子決裁が不可欠です。電子決裁システムは、ネットワークを介してアクセスできるため、場所を問わずに利用することができ、職員間のコミュニケーションや協力も円滑に行えます。さらに、電子決裁の導入により、ペーパーレス化が進み、環境負荷の軽減にも寄与します。コロナ禍を契機に進展したテレワークは、今後も継続される見込みであり、電子決裁の導入はその基盤を支える重要な要素となっています。
電子決裁導入によるメリット
電子決裁の導入は、地方自治体にとって多くのメリットをもたらします。業務効率化とコスト削減、ペーパーレス化の促進、住民サービスの向上、そしてコンプライアンスの強化といった観点から、自治体は積極的に電子決裁の導入を検討すべきです。これにより、より効率的で持続可能な行政運営が実現し、住民に対するサービスの質も向上することでしょう。
業務効率化とコスト削減
地方自治体における電子決裁の導入は、業務効率化とコスト削減に大きく寄与します。従来の紙ベースの決裁プロセスでは、書類の作成、印刷、配布、保管などに多くの時間とコストがかかります。しかし、電子決裁を導入することで、これらのプロセスがデジタル化され、迅速かつ効率的に行えるようになります。例えば、書類の作成や修正がリアルタイムで行えるため、担当者間のコミュニケーションがスムーズになり、意思決定のスピードが向上します。また、紙やインク、郵送費用などの物理的なコストも削減できるため、自治体の財政負担が軽減されます。
ペーパーレス化の促進
電子決裁の導入は、自治体のペーパーレス化を大きく促進します。紙の使用を減らすことで、環境負荷の軽減に貢献できるだけでなく、書類の保管スペースの確保や管理の手間も削減できます。さらに、デジタルデータとして保存されるため、必要な情報を迅速に検索・アクセスできるようになります。これにより、職員はより効率的に業務を遂行できるだけでなく、住民からの問い合わせにも迅速に対応できるようになります。ペーパーレス化は、持続可能な社会の実現に向けた重要なステップであり、自治体が率先して取り組むべき課題です。
情報セキュリティ向上とコンプライアンス強化
電子決裁の導入は、情報セキュリティの向上とコンプライアンスの強化にも寄与します。紙の書類は紛失や盗難のリスクが高く、情報漏洩の危険性がありますが、電子決裁システムでは高度なセキュリティ対策が施されており、データの保護が強化されています。例えば、アクセス権限の設定や暗号化技術の導入により、不正アクセスやデータ改ざんを防止することができます。また、電子決裁システムは操作履歴を記録するため、監査やトレーサビリティが容易になり、コンプライアンスの遵守が確実に行えます。
電子決裁導入における課題とポイント
電子決裁の導入は、地方自治体にとって大きな変革をもたらしますが、適切な準備と対応を行うことで、そのメリットを最大限に引き出すことができます。課題を克服し、庁内の理解を深め、既存システムとの連携を図ることで、効率的で透明性の高い行政運営が実現できるでしょう。
電子決裁を導入する際に課題となること
地方自治体が電子決裁を導入する際には、いくつかの課題が浮上します。まず、技術的な課題です。既存の紙ベースのシステムから電子システムへの移行には、システムの導入・運用に関する技術的な知識が必要です。特に、セキュリティ対策やデータのバックアップ、システムの安定稼働を確保するためのインフラ整備が求められます。また、コストの問題も無視できません。初期導入費用や運用コストが高額になることが多く、予算の制約がある自治体にとっては大きな負担となります。さらに、職員の抵抗感も課題の一つです。長年紙ベースで業務を行ってきた職員にとって、新しいシステムへの適応は容易ではなく、抵抗感や不安感が生じることがあります。
庁内の理解促進
電子決裁システムを効果的に導入するためには、庁内の理解促進が不可欠です。まず、トップダウンのアプローチが重要です。自治体のトップ層が積極的に電子決裁のメリットを訴え、導入の意義を明確にすることで、職員の理解と協力を得やすくなります。次に、教育とトレーニングが必要です。職員が新しいシステムを使いこなせるように、定期的な研修やサポート体制を整えることが求められます。さらに、コミュニケーションの強化も重要です。職員からのフィードバックを積極的に収集し、システムの改善に反映させることで、職員の信頼を得ることができます。既に導入している自治体の事例では、タブレット端末の配布やテレワーク制度の導入により、職員がどこでも業務を行える環境を整え、電子決裁の定着を図りました。
既存システムとの連携
電子決裁システムの導入において、既存システムとの連携は避けて通れない課題です。まず、システム間の互換性を確保することが重要です。既存の文書管理システムや財務システムとスムーズに連携できるように、APIの活用やデータフォーマットの統一が求められます。また、データ移行の問題もあります。既存の紙ベースのデータを電子化し、新しいシステムに移行する際には、データの整合性や完全性を保つための慎重な計画が必要です。さらに、運用体制の整備も重要です。システムの運用・保守を担当する職員のスキルアップや、トラブル発生時の迅速な対応体制を整えることで、システムの安定稼働を確保します。
業務フローの見直しと文書管理規程の再構築
電子決裁の導入に伴い、業務フローの見直しと文書管理規程の再構築も重要なステップです。まず、現行の業務フローを詳細に分析し、電子決裁に適した形に再設計する必要があります。これにより、業務の効率化と透明性の向上が期待できます。また、文書管理規程も見直しが必要となる場合があります。電子文書の取り扱いや保存期間、アクセス権限などを明確に定めることで、文書管理の一貫性とセキュリティを確保します。さらに、定期的な見直しと更新を行うことで、常に最新の業務環境に適応した文書管理が可能となります。これらの見直しには、自治体業務に精通した有識者によるコンサルティングも有効です。
電子決裁システム選定のポイント
電子決裁の定着は、電子決裁システムを導入する際に、どのような基準でシステム・ベンダーを選ぶかが成功を左右します。必要な機能とサポート体制をしっかり見極めることで、導入後のトラブルや運用負荷を最小限に抑えられます。
地方自治体に特化した機能が豊富であること
地方自治体が電子決裁システムを導入する際、まず重要なのは、そのシステムが地方自治体の業務に特化した機能を豊富に備えているかどうかです。地方自治体の決裁業務は特有の要件も多く、業務を効率的かつ適切に処理するためには、地方自治体決裁業務特有の機能を有した、地方自治体での利用を前提に開発された電子決裁システムであることが不可欠です。
様々な内部情報システムとシームレスに連携できること
次に考慮すべきポイントは、電子決裁システムが既存の内部情報システムとシームレスに連携できるかどうかです。地方自治体では、既に多くの情報システムが導入されており、これらのシステム間でのデータ連携がスムーズに行われることが重要です。例えば、財務会計システムや人事給与システム、また文書管理システムなど、各種システムとの連携が求められます。システム間の連携がうまくいかないと、データの二重入力や情報の齟齬が発生し、業務効率が低下する恐れがあります。したがって、電子決裁システムを選定する際には、既存システムとの互換性や連携機能を十分に確認することが重要です。これにより、データの一元管理が可能となり、業務の効率化がさらに進むでしょう。
導入時だけではなく運用開始後のサポートが充実していること
さらに、電子決裁システムの選定において見逃せないポイントは、導入時だけでなく運用開始後のサポートが充実しているかどうかです。システムの導入は一度きりの作業ではなく、運用開始後も継続的なサポートが必要です。例えば、システムのアップデートやトラブルシューティング、職員への研修など、運用開始後のサポート体制が整っていることが求められます。特に、地方自治体の職員はITに詳しくない場合も多いため、サポートが充実していることで安心してシステムを利用することができます。また、サポート体制が整っていることで、システムの安定稼働が確保され、業務の中断や遅延を防ぐことができます。したがって、電子決裁システムを選定する際には、導入後のサポート体制についても十分に検討することが重要です。
導入実績が豊富であること
最後に、電子決裁システムの選定においては、そのシステムの導入実績が豊富であることも重要なポイントです。導入実績が豊富なシステムは、多くの地方自治体での運用経験があり、その分信頼性が高いといえます。導入実績が豊富であることは、システムの安定性や使いやすさ、サポート体制の充実度を示す一つの指標となります。また、導入実績が多いシステムは、他の自治体での成功事例や運用ノウハウが蓄積されており、それを参考にすることで自自治体での導入・運用がスムーズに進む可能性が高まります。したがって、電子決裁システムを選定する際には、導入実績についても十分に確認し、信頼性の高いシステムを選ぶことが重要です。
まとめ:電子決裁導入の意義と自治体内部事務DX
電子決裁の導入は、地方自治体の業務効率化、透明性向上、環境負荷低減、職員の働き方改革に大きく寄与します。これにより、自治体内部事務DXが促進され、より効果的で持続可能な行政運営が実現します。今後も、技術の進化とともに、さらなる改善が期待されます。地方自治体は、電子決裁の導入を通じて、未来志向の行政サービスを提供し続けることが求められます。
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「e-ActiveStaff電子決裁」は、複数の職員が連携して行う業務が大部分を占める地方自治体の決裁業務活動に特化した電子決裁システムです。合議・供覧・後閲といった地方自治体に特有の承認プロセスに対応していることはもちろん、各自治体に固有のプロセスにも柔軟に対応します。決裁業務を管理・自動化することにより、業務全体の生産性向上を支援します。
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