環境
気候変動への取組み
内田洋行グループでは、中長期的なリスクのひとつとして「気候変動」を捉え、関連リスク及び機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、本年、国際機関の示す代表的な気候変動シナリオを参照し、2030年から2050年にかけての中長期的な財務影響についてシナリオ分析を実施しました。この結果につきまして、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言の形式に則り開示します。
今後も当社グループでは組織のレジリエンスを一層高めつつ、リスクと機会への対応策を事業戦略と連動させながら、脱炭素社会の実現に貢献して参ります。
ガバナンス
当社グループは、気候変動関連課題に特化する会議体として2022年2月、環境関連担当役員を委員長、社長をオブザーバーとするサスティナビリティ小委員会を設置し、気候変動による事業、経営への影響の調査を開始しました。同委員会は年4回開催され、議事内容は社長を含むすべての社内取締役から構成される経営会議に報告、付議されます。この中における重要事項に関しては必要に応じ取締役会に報告・共有をしています。
戦略
当社グループの事業範囲において想定し得るリスクと機会を抽出し、影響の大きさと発生の可能性の2軸からそのインパクトを評価して重点となる項目を絞り込み、対策を整理しています。なお、分析にあたりIEA(国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の示す以下の2つのシナリオを参照しています。
●1.5℃未満シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ(IEA-NZE)
●4℃シナリオ:気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ(IPCC-AR5(第5次評価報告書)-RCP8.5)
分析の結果、リスクについて、1.5℃シナリオにおいては、脱炭素社会への移行に向けてカーボンプライシング等の政策や環境規制の強化が想定されており、当社グループにおいては、原材料や製品の調達価格の上昇が予想されます。これに対しては、グループ内に留まることなく外部サプライヤーとの脱炭素に向けた協働を進めることを含め対処して参ります。加えて、環境意識が高まる中、気候変動対策や中長期目標の進捗に遅れが生じた場合、お客様をはじめとする様々なステークホルダーからの信頼が低下し、購買基準が厳格化したお客様を中心に顧客離れが進み、売上の減少等につながる恐れがあります。
また、4℃シナリオにおいては、台風等風水害の激甚化が想定される中、異常気象や自然災害による当社工場や倉庫、営業所等の拠点、調達先の被災により、営業活動の停滞や在庫等の毀損、ひいてはお客様からの信頼低下や逸失利益の発生につながる恐れがあります。これらリスクに対して、当社グループは既に一定程度のレジリエンスを持つものと認識していますが、今後も最新の動向や技術を把握しつつ、その強化に努めて参ります。
一方、機会については、1.5℃シナリオと4℃シナリオの両方において想定されます。お客様における気候変動対策を、ICTと環境構築の両面でご支援するなかで、その獲得を目指して参ります。
<気候変動におけるリスクと機会の一覧>
シナリオ | リスク・機会タイプ | 外部要因 | リスク/機会 | 事業インパクト | 時間軸 | 項目 | 当社グループへの影響 | 取り組みの方向性 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1.5℃ | 政策・法規制 | カーボンプライシングの強化 | リスク | ★★ | 中期 | カーボンプライシング等の環境規制強化に伴う 調達価格および事業コストの増加 |
|
|
評判 | ステークホルダーにおける行動変化 | リスク | ★★ | 中期 | 気候変動対策の遅れによるステークホルダーからの 信頼の低下 |
|
|
|
市場 | 顧客における環境意識の変化・行動変容 | 機会 | ★★★ | 中期 | 環境意識の高まりを背景とした木材活用機会の増加 |
|
|
|
機会 | ★★★ | 中期 | 顧客の脱炭素活動に貢献する 製品・ソリューションの需要増 |
|
|
|||
機会 | ★★ | 中期 | 循環型社会に呼応した製品・ソリューションの需要増 |
|
|
|||
4℃ | 急性 | 台風等の風水害の激甚化 | リスク | ★★★ | 長期 | 異常気象や自然災害による調達・営業活動の停滞や 在庫等の毀損 |
|
|
慢性 | 気温の上昇 | 機会 | ★★ | 長期 | 慢性的な異常気象や高温下での社会活動に対応する 製品・ソリューションの需要増 |
|
|
※事業インパクト=財務影響の大きさを相対的に評価しています。
★:財務影響小
★★:財務影響中
★★★:財務影響大
リスク管理
気候変動関連のリスク管理については、ISOで規定された環境マネジメントシステム推進体制により社内各機能組織から関連情報を集約し、サスティナビリティ小委員会がこの情報を共有し、気候変動関連リスクの選定と重大性の特定を行います。また、取締役会および経営会議の監督、指導のもと、対応策の計画と実施を管理します。
指標と目標
当社グループでは、気候変動のリスクと機会に対応することを目的として、昨年2022年にCO2排出量削減の中長期目標を設定しています。再生エネルギーや将来の新たな技術なども活用することで、目標達成に向けて引き続き努めて参ります。なお、本年において、この中長期目標に変更はありません。
<CO2排出削減目標>
|
2030年までに基準年比50%削減、2050年までに100%削減 |
---|---|
|
当社期2022年7月期 |
|
Scope1およびScope2 |
|
国内および海外 |
|
本体および連結子会社 |
<現在のCO2排出量>
当社グループでは国内外すべての連結子会社を対象として、Scope1およびScope2の排出量の算定を行っています。
|
当社期2023年7月期(2022年8月度~2023年7月度) |
---|---|
|
2,081t-CO2(前年比98.2%) |
|
4,708 t-CO2(前年比98.3%) |
|
6,789t-CO2(前年比98.3%) |
<ご参考>
|
4,272t-CO2(前年比94.1%) |
---|---|
|
6,353t-CO2(前年比95.4%) |
目標達成に向けた削減初年度にあたり、エネルギー効率の良い営業車両への切り替え、オフィス・倉庫・工場照明のLED化等の施策をグループで推進した結果、活動量が昨年度より増加している状況下においてScope1、2の削減を実現しました。
<Scope3排出量の算定について>
本年、内田洋行本体を対象としてScope3の算定を開始しました。2023年7月期のScope3排出量につきましては、算定が完了次第の公開を予定しています。
最終更新日付:2023年10月13日