【自社実践レポート・RPA編】 業務自動化プロジェクト[前編]
営業部門でも業務自動化できるのか!?
コロナ禍を経て普及期に移り、一定の市民権を得たRPA(Robotic Process Automation)。RPAツールを導入後、効果が得られ改善を続けている企業もあれば、「一度は導入したものの途中で断念した」「想定通りの効果を得られなかった」という企業もあるのではないでしょうか。よその会社はどうしているのだろう…という思いが沸き上がってきますよね。今回は前後編2回に分けて、業務改善のため社内で奮闘しているメンバーから業務自動化の体験や率直な感想を聞いてみました。
はじめに
− 前編はインタビュアーの所属部門、情報ソリューション事業部の黒石さんに聞いてまいります。
黒石さんは事業部の非効率な業務をRPAツールで自動化するプロジェクトのプロジェクトリーダーに突然抜擢されていましたよね。そもそもなぜそんなことになったのでしょうか。
黒石:それは…インタビューの冒頭に非常に言いにくい話ですが、「飲み会」での決定事項ですね。コロナ禍以前の話ですが、事業部の飲み会で僕の事務処理のヌケモレが話題になり、【いま流行っているRPAで黒石の仕事を改善できないか】という笑い話があったそうなんです。その飲み会の後、本当に指名されてリーダーをすることになりました。
− そうだったんですね!非常にまじめな取り組みのように見えていましたが…
黒石:まじめに取り組みましたよ!日頃お客様にシステム導入を提案している立場なのですが、今回はユーザの立場になって企画をしたり稟議を書いたり…大変なことがたくさんありました。
部門内での自動化業務の検討
黒石:プロジェクトの体制は以下のようなものでした。
まず、私が中心になって営業担当者や事務担当者の困りごとやニーズを確認し、リスト化して
・その業務にかかっている時間や発生頻度
・RPAツールでの自動化難易度
・業務を行っている人数
などを洗い出しました。全体で17個の業務を洗い出したうえで優先順位を整理し、効果の期待できる4業務に絞り込みました。
− 選ばれなかった13業務は、なぜ選定から漏れてしまったのですか?
黒石:自分としては手間がかかっていてとても困っている業務を検討に盛り込んだつもりでした。ただ、業務を細かく見ていくとやはり営業担当の判断が必要で、RPAに任せることができない業務がありました。困っている人がたくさんいるので何とかしたかったのですが、そういう業務は自動化には合わないんですね。
あとは、かかっている時間と、最初のプロジェクトなので実装のしやすさなどの優先順位で判断しています。
− 業務を細かく見る、というと、やはり業務フローを書いたりしたのでしょうか。
黒石:そこは業務やシステムに詳しい事務担当者の方にお願いしたのですが、文章で書きだして整理しました。社内メンバーでの検討なので大げさな資料は不要で、お互いに理解ができていました。でも、文章で書きだすだけでも、いろんな社内知識やノウハウが必要ですね。自分だけでは到底できませんでした。
いよいよ稟議
黒石:申請は2段階ありました。一つは開発費用やランニング費用を負担する事業部に対する稟議、もう一つはシステム部門に対する申請です。
前者の事業部に対する稟議は、費用対効果を適切に説明する必要があり、役員やマネージャ陣に整理した業務を詳しく説明しました。ここで「かけてもよい費用」についてアドバイスがあり、自動化に取り組む業務の数を最終決定しました。
システム部門に対する申請は、別の苦労がありました。社内にはRPA導入ガイドラインなるものがあって、このガイドラインに沿ってシステム部門を動かしていかないといけませんでした。
− 部門の役員やマネージャを説得するにあたってはどんな苦労がありましたか?
黒石:役員側はもっとドラスティックな改善案が出てくると思っていたようです。直接は言われませんでしたが、地味だなあと思っていたのではないでしょうか。でも、実現性を説明していくと納得してもらえました。
これは、わたしたちがRPAを含めた業務提案をする仕事をしているから納得が早かったんだと思います。難しいことにいきなりチャレンジして失敗するより、スモールスタートして成功を積み重ねたほうがシステムは定着しやすいですから。
また、RPAは魔法の杖ではないので、業務フローのすべてをいきなり自動化できるわけではありません。フローの一部だけでも自動化し、かかっている時間を少しでも減らしていくことを続けて、全体で業務削減を図っていくことが大事だと思いました。
− 社内の導入ガイドラインについても教えていただけますか。
黒石:ガイドライン自体はそんなに目新しいものではないかもしれません。システム部門は自社の基幹システムを運用している立場なので、基幹システム周辺の業務を改善するロボットの開発にも相談に乗ってくれます。でも、部門で困っている業務についてはこちらが説明しないと理解してもらえないので、申請書式に業務フローや手順を書いて提出することで開発窓口の担当者に理解してもらう必要がありました。
いざ業務自動化!その効果は?今後の予定は?
− 開発期間を経て、営業現場では4つの業務が自動化されましたね。現場の皆さんの反応はどうだったのでしょうか?
黒石:喜んでもらっていますよ! 自分でも毎日使っている資料が自動的に作成されるようになったので、とても助かっています。また、当社でもコロナ禍で感染防止のためのテレワークが推進されています。これまで営業担当者と事務担当者が会話して確認していたことが、毎日自動でデータ出力されるようになり、生産性が上がったと実感しています。業務の合間をぬって取り組んだかいがありますね。
定量的な評価も必要なので、部門内にアンケートを取って、感想だけでなく削減できた時間なども調査しました。おおむね当初に計画したような定量効果が出ていることがわかりました。この効果はシステム部門にも報告し、全社的な評価も受けています。
− いい評価が出てよかった!マネージャ陣からは「どんどんやれ!」と言われているのではないですか?
黒石:そうなんですよねえ。一度取り組んだことで「この業務も自動化できる?」というような話が出てくるようになりました。でも先ほど言った通りRPAは魔法の杖ではないので、地道な取り組みが必要ですよ、と話しています。営業部には自動化できそうな業務がまだまだたくさんありますが、RPAツールで自動化するだけではなく、BIツールで集計を作ったり、データベースツールで情報を整理したりすることも業務改善につながります。改善の流れを止めずに続けていくことが重要ですね。
− RPAツールを選定しようとしている方、今まさに業務改善に取り組んでいらっしゃる方に一言お願いします。
黒石:プロジェクトに任命されると「自分の仕事だけで忙しいのに…」と思う人もいらっしゃるかもしれません。でも、推進する立場にいると、自らが苦労している業務を選んで改善してしまえるといううまみもあります(笑)わたしはまさにその立場を活かして自分の業務をラクにしてしまったので、こんないいこともあるよと伝えたいです。
− 黒石さん、本日はありがとうございました!
RPA/業務の自動化を検討されている方へ