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農林水産省 大臣官房新事業・食品産業部 * 所属、役職は2026年3月時点 |
まず、原材料調達・品質管理改善室のミッションについて概略をお伝えします。当室では、食品産業が抱える技術的な課題に横断的にアプローチする業務を行っています。
省力化に関わる取組を、下図の3つの枠に整理しました。
1つ目の『食品製造現場の自動化』は、自動化・省力化投資を進めるための支援をダイレクトに届ける取組です。2つ目の『関係機関・団体との連携』は、経済産業省や中小企業庁、(独)中小企業基盤整備機構(通称:中小機構)といった組織と連携して進めていくもの。3つ目の『産学官での連携』は、農林水産省の関連研究機関である(国研)農業・食品産業技術総合研究機構(通称:農研機構)の食品研究部門と連携し、新商品開発などのバックアップを行う取組です。
食品製造業の構造をデータから確認すると、社数において中小・小規模事業者が全体の97.7%を占めています。製品出荷額ベースで見ても、中小・小規模事業者が7割弱を占めることが食品製造業の特徴です。食料の安定供給には、中小・小規模事業者の支援が大切である。そう肝に銘じて業務にあたっているところです。
労働生産性(従業員一人あたりの年間付加価値額)を見ると、製造業全体の平均に対して食品製造業は低い状況が続いています。労働装備率(従業員一人あたりの設備投資金額)も同様ですが差の開きには凸凹があり、製造業全体の平均に近接する年もある。こうした動きをしっかりと引き上げ、設備投資によって労働生産性を高める取組が大事になると考えています。
下のグラフは、景気の動向と設備投資に対する不足感についての経営者のマインドを経年で追ったものです。2022年以降の近年、景気拡大を背景に設備投資不足を感じているという傾向が見てとれます。
労働力人口の減少による人手不足もいわれていますが、この課題にどう対応するか。食品産業の方々にアンケートした結果では、『業務の効率化・省人化』が対策のトップに挙がりました。
食品製造業におけるソフトウェア投資額の推移を見ても、2022年頃から上向きの伸びが続いています。
その一方で、中小の食品企業の方々からは、省力化を推進するにも「人がいない、ものがない、お金がない、情報がない」といった声が寄せられているのが現状です。
では、こうした状況下でどういった施策が行われているか。政府全体の動きについてご紹介します。
2025年6月に、『省力化投資促進プラン』が策定されました。対象は食品製造業を含めた12業種。生産性向上への取組が遅れている業種をターゲットに設備投資・省力化投資を進め、継続的な賃上げができる環境を作れるよう、官邸の号令のもと政府全体が一体となって取り組む戦略プランです。
食品製造業については、農林水産省が経済産業省などと連携しながら、各種施策に関する情報を事業者の皆さまにしっかり提供し、補助金を有効活用できるよう取組を進めているところです。その仕掛けの一つとして創設されたのが、『食品企業生産性向上フォーラム』です。
『食品企業生産性向上フォーラム』は、生産性向上に取り組む食品企業をトータルにサポートする枠組みです。会員制の組織として、食品企業の方々を中心に機械メーカーや研究機関など関係機関の方々にも登録いただき、多彩な施策が好評を得て、2026年2月末時点で785名の方々に参加いただいています。
主な取組として、下図の4つの柱を立てて推進しています。
『T.人材育成講習会』は、「省力化を推進する『人』がいない」という声に応える施策です。2025年度は3回のオンライン講習会を実施し、各回とも200名前後のご参加がありました。9割の方々にご満足いただき、2026年度はさらにバージョンアップさせて実施したいと考えています。
『U.交流会/セミナー』では、リアルに交流できる出会いの場を提供しています。2025年度は4回の交流会を実施しました。メルマガなどオンラインの情報発信も行っていますが、やはり事業者同士が直接交流し、情報交換できるつながりを持つことが大切です。今後の予定としては、2026年6月に食品業界での日本最大級のイベント『FOOMA JAPAN 2026』に経済産業省と連携してブース出展し、独自のセミナーなども企画しています。
こうした一連の取組を通じて省力化投資の動きをさらに引き上げていきたいと考えているところです。食品企業生産性向上フォーラムには法人、個人いずれでも登録でき、会費は無料です。ご関心があれば、ぜひ参加いただければと思います。
▽ご興味がある方はご覧ください
食品企業生産性向上フォーラムについて(農林水産省)
農林水産省では『食品企業生産性向上フォーラム』をベースに、食品製造業の生産性向上に向けた、以下の施策を展開しています。
具体的な施策について、下図に当室が展開する補助事業を3つ掲示しました。
1つ目は『業種横断型技術開発実証事業』。単独で競争関係にあるような企業が協力して、共通のテーマに業種横断で取組むプロジェクトを支援する事業です。2つ目は『省力化技術導入支援事業』。AIやロボットなど新技術の導入費用の半分を補助する事業です。3つ目は『産地連携支援緊急対策事業』。食料の安定供給のために、国産原材料の取り扱い増加に伴う設備投資を補助する事業です。
各事業をもう少し詳しくご説明すると、『業種横断型技術開発実証事業』は下図のような構成の事業になります。日頃はライバル関係にあるA社、B社、C社が、国が補助事業を用意することによって連携でき、共通の課題に取組む。そうしたプロジェクトを応援するための仕掛けです。
令和7年度の補正予算に基づく事業では、以下のようなプロジェクトが採択されました。
1)生産設備データの標準化
製造現場における生産設備データの仕様や、規格に関する業界標準を策定する取組です。
(味の素、味の素食品、カルビー、サントリーホールディングス、ハウス食品、明治、一般社団法人日本包装機械工業会で構成)
2)製造工程におけるAI伴走システムの開発
熟練技能への依存を構造的に解消するためにAIを活用する取組。食品メーカーを起点にコンソーシアムを組み、着手しているところです。
(菓子製造、菓子包装OEM、納豆製造、醤油製造等から10数社に加え、北海道大学川村研究室等の学識経験者から構成)
3)マイクロ波減圧技術応用による食品乾燥技術の実証
フリーズドライなど食品乾燥のニーズの高まりを受けて、高効率に作る技術を実証していく取組です。
(農研機構食品研究部門、南信州菓子工房、げんき本舗、長野県工業技術総合センターから構成)
4)米粉の加工適性評価手法の開発
パンや麺類等の米粉加工品についての、米粉の加工適性をより精密に評価する手法を開発するプロジェクトです。
(農研機構食品研究部門、こだわり農場 鈴木、ひまわり農業協同組合から構成)
次に、『省力化技術導入支援事業』について。AIやロボットなどの先進技術の導入を支援し、その成果を皆さまの共有財産として横展開する取組です。
令和6年度、令和7年度と実施し、全国各地にモデル事業が生まれ始めています。先進技術の導入にはリスクもあり、なかなかチャレンジに踏み切れない事業者もいるなかで、近しい同業者でうまくいった事例に触れることができるのは、重要な支援策になると考えています。
令和7年度の補正事業では、応募22社のうち8社を採択しました。例えば、青森県の鶏肉の加工処理等を行うメーカーでは回転釜や自動計量器、充填機まで一連の製造工程を機械に置き換えた事例があります。三重県のおにぎりせんべいのメーカーでは、最新のAI技術を取り入れた画像検査装置を導入しています。
こうしたモデル事業で省力化技術が導入された暁には、農林水産省としても横展開の広報をしっかりしていきたいと考えていますので、ぜひご期待ください。
次に、『産地連携支援緊急対策事業』について。国産農産物を使用した場合、国内産地としっかり連携した場合に、その設備投資を支援する事業です。3つの補助事業のなかでは予算規模が一番大きい取組です。こうした枠組みをうまく活用して設備投資を進めていただければと思います。
令和7年10月1日に施行された『食料システム法』は、農林水産省肝入りの新しい制度になります。一昨年、食料・農業・農村基本法が四半世紀ぶりに改正され、『食料システム』という言葉が新しく法律に明記されました。
『食料システム』とは何か。一次産業だけを応援しても食料の安定供給は果たせず、食品製造業や卸売業、小売業、外食業などが『食料システム』として一体となり、持続可能な生産体制、流通体制を作っていくことが大切である。こうした理念のもとに新しく生まれた制度です。
食料システム法における『計画認定制度』とは、食品等事業者が事業計画を策定して申請すると、農林水産大臣の認定が得られる制度です。各種の支援や特例などのメリット措置を講じています。
認定対象は、下図にある4つの事業活動です。
01 安定取引関係確立事業活動
02 流通合理化事業活動
03 環境負荷低減事業活動
04 消費者選択支援事業活動
4つの枠組みでさまざまな事業計画をカバーし、食品事業者を幅広く応援できる仕掛けになっています。どれに当てはまるかご相談を受け、「このメニューで申請しましょう」とサポートするコンサルティングも行っていますので、支援に関心があれば、まずは相談ください。
メリット措置には以下のようなものがあり、本日は一例として下図の赤枠の3つをご説明します。
『中小企業等経営強化法の特例』は、税金の優遇です。中小企業庁の中小企業経営強化税制を活用する枠組みで、食料システム法のメリット措置としてワンストップで活用できる特例です。
『農研機構の研究開発設備等の供給及び協力』は、食品事業者の皆さまと農研機構をつなぐという当室のミッションに関わるものでもあります。食料システム法の計画認定を受けると、農研機構の専門家のアドバイスを受けながら研究開発設備を利用できる措置です。
『日本政策金融公庫の長期・低利の資金貸付』は、融資に関するメリットです。細かな要件はありますが、対象事業に認定されれば長期・低利の融資が受けられる特例措置です。
先にご説明した補助事業は基本的には年1回の募集になりますが、食料システム法は恒久的な法制度として措置されていますので、いつでも申請可能です。補助事業と法律の措置と、それぞれをうまく活用いただければと思います。
最後に、日本成長戦略の動きについてお話させていただきます。昨年、高市政権が誕生し、総理のリーダーシップのもと『責任ある積極財政』を掲げ、日本の経済を成長させていこうという強い思いのもと政策が動いています。
そうしたなかで立ち上がったのが、『日本成長戦略本部』です。総理を議長に関係大臣によって構成され、そのもとに『日本成長戦略会議』が設けられて17の戦略分野について議論が行われています。
戦略分野の一つに『フードテック』が指定され、農林水産大臣のもと農林水産省が力強く推進するべく、昨年の秋冬から動き出しているところです。
フードテックワーキンググループとは、農林水産大臣を座長に副大臣と政務官が座長代理、民間の有識者の方々にも加わっていただき、農林水産省が総力で事務局を務める体制となっています。
具体的には、フードテックの幅広い分野のなかでもターゲットを絞り、下図の赤枠にあるように4つの検討ユニットを設けて議論を開始しました。
『植物工場ユニット』は、完全閉鎖型植物工場などの先端技術・運営ノウハウに高市総理も高い関心を持つテーマです。『陸上養殖ユニット』も、日本ならではの技術が活かせるとして検討ユニット入りしました。
『食品機械ユニット』は、食品事業者にとって一番関わりの深い部門かと思います。ロボット技術やAIを活用した自動化設備、冷凍技術のような日本ならではの高品質な食品製造技術などに焦点を絞って議論していくユニットです。
『新規食品(植物由来食品等)ユニット』は、フードテックという言葉から一番イメージしやすい分野ではないでしょうか。プラントベース(植物由来)の食品や、機能性に注目した『完全食』のような食品が誕生し、日本が世界に打ち出していける商品開発が進んでいます。こうした新規食品の開発を戦略として議論するユニットです。
昨年末に成長戦略会議がスタートし、会議と並行して、事務局を中心にさまざまな事業者とやり取りをしながら議論が進んでいます。今年の夏には政府の成長戦略の策定につなげ、さらなる政策の展開に結び付けていく所存です。
食品製造業をめぐる環境は、非常に厳しい状況が続いています。省力化投資や設備投資、DXを進め、しっかり応援していかなくてはならない。農林水産省だけではなく、経済産業省や中小企業庁、機械メーカーなどと連携し、一歩でも二歩でも施策を前に進めていきたい。そう考えています。事業者の皆さまにも、われわれ農林水産省を信じていただき、一緒に進んでいければと願っています。
食品業の経営者・マネージャーの皆さまへ