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【食品ITフェア2026 オンライン】 製造現場のプロが教える食品自動化機器・ロボット導入のポイント

2025/5/18 [食品,セミナーレポート]

本セミナーでは、食品工場が直面する人手不足や生産性低下の課題をテーマに、現場視点での自動化・省人化の進め方を具体的に解説します。構想段階から設備導入、失敗しやすいポイントまで、実例を交えながら明日から使える考え方をお伝えします。

Robots Town株式会社
代表取締役
白坂 紳滋 氏

2008年 江崎グリコ株式会社
2015年 B-Rサーティワンアイスクリーム
2021年〜 Robots Town株式会社代表取締役社長
2021年〜 2023年 立命館大学副事務局長
2021年〜 一般社団法人i-RooBO Network Forumセンター長

会社概要

Robots Town株式会社 代表取締役の白坂 紳滋と申します。はじめに、会社概要をご紹介します。

もともと私は、江崎グリコ株式会社で2008年から2015年まで製造現場の一員として働いていました。その後、株式会社B-Rサーティワンアイスクリームで新工場の立ち上げに従事し、ボイラーや冷凍機、コンプレッサー、排水、キュービクルなど、工場を運営していくために必要なユーティリティの機器の導入やメンテナンスを行いました。
こうした経験をもとに2021年に立ち上げたのが、Robots Town株式会社です。

Robots Townは「食品工場を働きたい職場NO.1にする」というビジョンを掲げ、食品工場の自動化に特化した事業を行っています。

本社は新大阪ですが、神戸に一品一様のオーダーメイドの機械を作る工場があります。2021年から、立命館大学とともに食品用のロボットハンドの研究開発も行っています。
また、FOOMA JAPAN とともに FOOD TOWN というプラットフォームを運営するほか、農林水産省の食品企業生産性向上フォーラムの委託運営、北海道経済産業局や近畿経済産業局とともに地域の食品工場の自動化を促進する事業も行っています。

食品製造業の現状と今後

1)食品工場の95%が人手不足

食品製造業の現状と今後についてお話します。 食品工場は今、大変な人手不足に陥っています。「食品工場は人手不足ですか?」という問いに対して約95%の会社が「YES」と答えています。

FOOD TOWN サービス紹介 食品製造業の現状と今後-1

2050年までに人口が1億人を切るという予想が出ていますが、これは単純に計算すると、毎日約2,000人ずつ減少していくことになります。今後、労働生産性を維持する上で、人材不足が最大の課題となることは間違いありません。

現状、食品製造業は、他の製造業と比べて労働生産性はおよそ半分しかありません。つまり、「一つの製品を作るのに人をかけすぎている」という業界になっています。

FOOD TOWN サービス紹介 食品製造業の現状と今後-2

ただ、暗い話ばかりではありません。

FOOD TOWN サービス紹介 食品製造業の現状と今後-3

人手不足を解決するためには、生産工場の自動化が求められますが、経営者や工場長、現場で働いている人たちは、この問題に気づいてきています。2013年に4,400億だった食品機械の出荷額は増加傾向にあり、2024年には6,000億を超えています。

2)2つの解決策

それでは、食品工場の人手不足を解決するにはどうしたらよいでしょうか?

私たちが考える解決策は大きく2つあります。
①「生産性」を上げる。人にしかできない単純作業をどんどん自動化する
②今いる人材を「育て」「大事」にする

これからの食品工場では、この2つが求められてくると考えられます。
逆に言うと、この2つができないと、食品工場の維持が難しくなる時代に突入してくるのではないかと思います。

それでは、この2つの解決策について詳しくご説明します。

「生産性」を向上する

1)自動化の事例

人手不足の解決策の1つ目は、「生産性」を上げることです。
では、どのように「生産性」を上げたらよいかというと、自動化です。
そこで、食品工場で自動化を導入した事例をいくつかご紹介しましょう。

① お弁当の盛り付け

まず、お弁当に錦糸卵を盛り付ける工程を自動化した事例です。
ある工場で、ラインで流れてくるお弁当に、設定値35g、プラス・マイナスのばらつきが3g、1分間に25ショットで錦糸卵を盛り付ける工程がありました。人手による作業では品質のバラつきが大きく、作業環境の乱れが課題となっていました。
これを自動化し、ラインを止めることなく流れてきたお弁当に対して35gの設定値で正確に錦糸卵を盛り付けるようにしました。この盛り付けの機械は、およそ500〜600万円で導入できます。

② おにぎりの包装

次に、おにぎりの包装を自動化した事例です。
おにぎりをフィルムで包装し、テープで貼る。熟練者が作業にあたれば1分間に10個可能ですが、未経験者の場合、1分間に3個にとどまります。
そこで、人による作業精度のバラつきを解消するため、機械による自動化を導入しました。フィルム巻きを自動化し、最終工程のテープ貼りのみを人が行います。
これは単なる省人化ではなく、今いる人の生産性を1.5倍〜2倍に引き上げることを実現した自動化事例です。

エアーで駆動する機械と、電気で駆動する機械の2種類あります。いずれも、およそ20〜30万円で導入できます。

③ 段ボールの開梱

段ボールを開梱し、中身を取り出す作業を自動化した事例です。
食品工場で、中身を傷つけずに段ボールをカットして、開封します。これを1日に2,000〜3,000ケースやるとなると、かなりの重労働になります。ナイフでカットして中身を取り出すので危険作業にもあたります。
そこで、スカラロボットという機械を用いて自動化しました。スカラロボットを導入すると、開梱して中身を取り出し、段ボールを潰すところまで自動化できます。一連の工程で、およそ3,000〜3,500万円ほどで導入できます。補助金を活用してこのような自動化を進める会社は少なくありません。

④ 納豆の充填

納豆を1分間に300個作る機械の事例です。
納豆業界は、納豆を1分間に50個しか作れない会社よりも、1分間に300個作れる会社の方が有利で、「数勝負」の業界になっています。
ある工場に導入した機械では、納豆を充填する部分が6列あり、スピードを稼ぐため、重さを測定するロードセル計量ではなく、面積ベースで測定するマス計量を採用しました。フィルムを供給し、連封になったタレを1個ずつ自動でカットして納豆の中に供給し、最後に蓋を閉めてウエイトチェッカーに通します。このようなラインの自動化で、およそ3,000〜3,500万円ほどで導入できます。

⑤ ゼリーの陳列

ゼリーを番重に斜めに重ねて配置する、「刺身状」の自動投入を実現した事例です。
ゼリーを重なり合うように斜めに並べるという、繊細な配置要件がありました。そこで、前工程からランダムに流れてくるゼリーを、サーボループ機構を用いることで正確なピッチで切り出し、次工程へと送り出します。

⑥ 餡子の充填

餡子が入った袋をカットし、餡子を絞り出す機械の事例です。
この機械を導入した工場では、以前はこの工程を行うパート社員が腱鞘炎になるほど腕が疲れる重労働だったため、離職率が非常に高かったといいます。
そこで一連の工程を自動化しました。餡子が入った袋を超音波カッターで自動でカットし、餡子を自動で絞り出します。ちなみに、袋の中の餡子の残りは、人の作業とほぼ変わらないほど絞り出すことができます。したがって、歩留まりにもそれほど影響はありませんでした。自動機を入れることにより、社員の重労働が解消され、大変喜ばれた事例です。

⑦ 製函とピザの箱詰め

最後は、段ボールの組み立てとピザの箱詰めを自動化した事例です。
段ボールを組み立てる製函機は、どこのメーカーにもありますが、いかに安く正確な自動化技術を実現するかがポイントになります。そこで私たちは、電動のXY軸ロボシリンダを採用して設計・製造した製函機をご提案しました。
製函からピザの箱詰め、最後にテープを止めて封函するところまで、およそ1,500〜2,000万円ほどで導入できます。導入された工場では、もともと2名のパート社員が担当していましたが、2年弱で投資回収ができました。

2)FOOD TOWN

ここまでご紹介したような自動化を検討するとき、どこに相談すればよいでしょうか?
工場で働いていると、機械や機械を作っているメーカーのことを知るチャンスがなかなかありません。そこで私たちは、「工場で働いているエンドユーザーの知らないをなくしたい」という思いから、自動化のサポートをする「FOOD TOWN」を立ち上げました。
FOOD TOWNは、業界初、食品業界の自動化に特化したプラットフォームで、パソコンやスマートフォンから見ることができます。

食品業界の自動化に特化したプラットフォーム「FOOD TOWN」

FOOD TOWNの最大の特徴は、食品業界の自動化に関する相談窓口があることです。「このような自動化がしたい」「こういうところで人手不足に困っている」「どこに相談しても自動化ができない」というような相談をダイレクトにできる窓口があります。

FOOD TOWN サービス紹介

現在、国内で食品機械を作っているメーカーは約1,300社あると言われていますが、FOOD TOWNにはそのうちの1,174社、商品数としては12,970点が掲載されています。エンドユーザーの登録者数は7万6,000名を超えています。

FOOD TOWN 紹介

ページビュー数は月間35〜40万人。相談件数は年間約400件ほどです。
ぜひこのFOOD TOWNから私たちにご相談をお寄せいただければと思います。

今いる人材を「育て」「大事」にする

1)食品プロジェクトマネージメント検定

人手不足の解決策の2つ目は、今いる人材を「育て」「大事に」することです。
人材を育成するときに鍵をにぎるのは「検定」です。

私は、江崎グリコとサーティワンアイスクリームに務めたサラリーマン時代を通して、国家資格も含めてさまざまな資格を取ってきましたが、気づいたことがあります。
食品工場の自動化に対する検定がないことと、食品工場の自動化を学べる機会がないということです。
ないなら作ってしまおうということで、Robots Town では、食品工場の自動化を進める人材を育成する検定試験を開発しました。
その1つが、「食品プロジェクトマネージメント検定」です。

食品プロジェクトマネージメント検定とは?
食品プロジェクトマネージメント検定 概要

学習から試験まで全てオンラインで行います。もちろん人材開発支援の助成金などを申請することができる検定となっています。

検定には、1級と2級があります。1級と2級では、学びの内容はほぼ共通していますが、1級のほうがやや難易度があがります。また、1級では実技試験が課されます。

具体的に学ぶ内容は、食品工場の自動化に必要な「品質管理・会計管理・生産管理(QCD:クオリティ・コスト・デリバリー)」の3つです。
このうち「品質管理」は、お客様が口に入れる食べ物に関する管理なので、最も大事になります。「会計管理」は、自動化に対する投資が会社にとって必要かどうかの見極めを行います。「生産管理」は、自動化によって人がやるよりも1.5倍、2倍の能力が出せるか、同じ時間でどれだけ生産数をあげられるかを追求します。また、機械導入後のメンテナンス体制を自社で確立し、安定稼働を維持することも、生産管理に含まれます。

食品プロジェクトマネージメント検定 監修者一覧

検定の開発には、品質管理の部分をSARAYA様に、会計管理の部分を公認会計士の橋本昌和様に、そして生産管理の部分を山口県立産業技術短期大学校の山口俊憲先生と大阪工業大学の皆川健多郎先生にご協力いただきました。

2)検定の導入事例

では、検定の導入事例をご紹介しましょう。

① くら寿司

食品プロジェクトマネージメント検定 導入事例1 くら寿司株式会社様

くら寿司では、工場に配属される新入社員、若手社員の教育カリキュラムとして検定を採用しています。採用の背景としては、QCDの大事さがわからないまま工場に入るよりも、その大事さをしっかり理解した上で入ってきてほしいという想いがありました。

② 三島食品

食品プロジェクトマネージメント検定 導入事例2 三島食品株式会社様

ふりかけの「ゆかり」などを製造されている三島食品では、現場で働いているパート社員に検定を受けてもらっています。その結果、「こんなところを自動化したらいいのではないか」「ここで単純作業ばかりやっている」「ここの作業は重労働で厳しい」などという声を上げられる人財が育ち、改善につなげています。

③ 井原水産

食品プロジェクトマネージメント検定 導入事例3 井原水産株式会社様

井原水産は、北海道で土産用の数の子を製造している会社です。
土地柄もありますが、やはり人手不足が非常に顕著になってきている中で、自動化の大切さを実感しています。せっかく機械を導入しても倉庫で眠っているということがないように、確実に自動化を成功させるために検定を組み込んでいます。

3)保全技能士 電気2級検定

その他にも検定・学習講座を開発していますので、ご紹介します。

まず、機械の点検・保守・修理を安全に行うための資格として「機械保全技能士」という国家資格がありますが、「保全技能士 電気2級検定」の実技講習プログラムを開発しています。

食品プロジェクトマネージメント検定 保全技能士とは

「機械保全技能士」のなかでも、なぜ「電気系」の2級に特化した実技講習プログラムだけを作ったのかというと、合格率が非常に低いことと、実技で電気を学ぶ機会がなかなかないからです。
機械を導入するということは、電気を学ぶこととイコールになりますが、電気を教えられる人がいる会社は非常に少ないです。そのために保全技能士を取得できる人が育たず、自動化を進めていくことが難しくなります。
そこでこの検定では、実技を通して電気を学んでいけるように開発しました。たとえば、配線の向きや配線の圧着時間、プログラムの作成方法などをオンラインで動画を見ながら実践的に学べるカリキュラムを構築しています。

4)AI外観検査検定

次にご紹介する検定は、「AI外観検査検定」です。

AI外観検査検定とは

これは国内唯一の「AI外観検査」に特化した検定試験で、画像処理の基礎知識からロボットの連携まで学ぶことができます。
たとえば、賞味期限の印字が間違えたままコンビニに出荷されてしまうと、全て回収しなければいけませんが、「AI外観検査」を入れることによってこの問題を改善することができます。「AI外観検査」によって不良品を出さない仕組みを作ることができれば、食品業界の大きな課題である「品質向上」を解決します。
実機となるカメラが届きますので、それを使って不良品を見つける仕組みをオンラインで学びます。学習に使ったそのカメラは、そのまま現場に導入して、異物検査や賞味期限の印字の検査に活用いただけます。

5)食品企業生産性向上フォーラム

最後に、農林水産省の食品企業生産性向上フォーラムをご紹介します。

食品企業生産性向上フォーラムとは

食品企業生産性向上フォーラムでは、食品工場の生産技術に必要な知識を詰め込んだ講習会を開いています。また、年に3〜4回ほど、リアルとオンラインを交えて、食品工場のユーザーの交流会を開催しています。エンドユーザーの食品工場の自動化事例を学びながら、他の工場の方々との横の繋がりを広げていくことができます。
こちらも、ぜひご登録いただければ幸いです。

▽ご興味がある方はご覧ください
食品企業生産性向上フォーラムについて(農林水産省)

夢は食品機械のマーケット1兆円

私には夢があります。それは、食品機械のマーケットを現在の6,000億円から、2030年までに1兆円にすることです。

最後に 夢は食品機械のマーケット1兆円

食品工場の方々が、これから国内で顕著になってくる人手不足の問題にいち早く気づき、自動化についてしっかり学んだ上で、自社にあった自動機を自分の目で判断できる人財を育てる。そしてFOOD TOWNを通して自動機を導入し、「自動化できて良かった」「生産性が上がった」「人手不足を乗り切れた」という食品工場がどんどん増えていく。そんな未来を実現したいと考えています。
この夢に近づく指標の1つが、食品機械のマーケット1兆円であると考えています。

▽ご興味がある方はご覧ください
FOOD TOWN(ロボッツタウン株式会社)

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