
1.管理会計システムとは?
管理会計システムとは、その名の通り、管理会計の効率化を図るツールのことです。
管理会計とは、経営の意思決定に役立てることを目的として、経営状況を把握する会計を指します。管理会計の業務は Excel でも可能ですが、情報の一元管理が困難です。そのため、経営管理の効率や効果を高めるために、管理会計システムを導入する企業が増えています。
財務会計システムとの違い
管理会計システムと財務会計システムはどちらも企業会計の支援ツールですが、目的が異なります。財務会計とは、企業の財務状況を外部のステークホルダー(株主、投資家、金融機関、税務署など)に開示するための会計です。そのアウトプットは法令や会計基準に準拠し、財務諸表や税務申告書など形式の決まったものが大半です。財務会計はこうした「社外向けの会計」を効率化する機能を備えています。
一方、管理会計システムは、経営における意思決定の支援を目的とした「社内向けの会計」を効率化するためのツールです。そのため、法的な制約や定まった形式はなく、企業独自の基準で作成できます。
| 財務会計 | 管理会計 | |
|---|---|---|
| 目的 | 外部ステークホルダー(株主、投資家、金融機関、税務当局など)に企業の財務状況を正しく報告する | 経営者や社内管理者が意思決定や業績管理を行うための情報提供 |
| ターゲット | 外部ステークホルダー(株主、投資家、金融機関、税務当局など) | 社内(経営層、事業部門) |
| 特徴 | ・法令や会計基準(会社法、税法、IFRSなど)に準拠 ・過去の取引・事実を記録し、正確性重視 |
・法的な制約はなく、企業独自の基準で作成 ・将来予測や意思決定に役立つ情報を重視 |
| 主なアウトプット | ・財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書) ・株主向け報告書、決算短信 ・税務申告書 |
・予算管理資料(予算 vs 実績) ・部門別損益計算書 ・原価計算レポート ・売上・利益計画、シミュレーション資料 |
2.管理会計システムの代表的な機能
管理会計システムには、以下のような機能が搭載されます。
- 予実管理:予算と実績(売上・経費・利益)を管理し、進捗状況を確認する機能
- 帳票作成・管理:部門別損益計算書や原価計算書、売上予測(見込)表など、経営における各種帳票を作成・管理する機能
- 分析:財務データを経営判断支援目的に様々な角度から集計・分析する機能
このほか、製品によってはデータの自動取り込み機能や、会計担当者向けのタスク管理機能が搭載されているタイプもあります。
3.管理会計システムのおもなタイプ
管理会計システムは、おもに以下の3種類に分けられます。
1)経営管理における汎用性が高いタイプ
経営管理を幅広く支援するタイプです。会計情報の分析に長け、企業独自の事業セグメント別の分析など、経営管理に役立つさまざまな機能を利用できます。
各種システムとの連携もしやすいため、生産・原価管理システムや人事労務システムなどのデータを活用して経営管理を行いたい企業に適しています。
2)予実管理を中心としたタイプ
予実管理機能が充実しているタイプです。細かな単位で予実管理を行えるため、多くの部門やプロジェクトを抱える企業に適しています。ほかのシステムとの連携により、データの収集・分析も容易です。
3)会計ソフトに管理会計機能が搭載されたタイプ
一般的な会計ソフトに管理会計機能が搭載されたタイプです。管理会計と財務会計が同システム内で完結できるため、会計業務全体の効率が向上します。
4.管理会計システムを導入するメリット
管理会計システムを導入すると、以下のようなメリットを期待できます。
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1)管理会計業務を効率化できる
管理会計システムは、会計業務の効率化を支援します。自動仕訳や分散入力、承認機能、銀行データ連携機能により、管理会計業務にかかる時間や労力を削減可能です。従来の Excel での管理と比べて迅速に業務を遂行できるため、決算の早期化にもつながるでしょう。
2)人的ミスを防止でき、データの正確性が高まる
データの自動取り込みに対応しているシステムなら、各種データを手作業で入力する必要がありません。また分析をシステムで実施できるので、複雑な Excel で分析作業がなくなります。これにより業務効率化と入力ミス防止を同時に実現し、データの正確性を高めます。
また、金額の誤りに対するアラート機能が搭載されたタイプなら、手作業での入力が必要な場面でも、入力ミスをその場で見つけられます。
3)経営状況を把握しやすくなる
管理会計システムなら、日々の会計データから最新の情報を、各種帳票の形で自動出力できます。これにより、Excel での管理と比べて、経営者は自社の経営状況をリアルタイムで把握しやすくなります。正確な情報を迅速に収集することで、収益性の向上施策をスピード感持って実行できるでしょう。
4)経営戦略の立案に役立つ
管理会計システムは会計担当者の業務だけでなく、経営層の仕事を強力にサポートします。システムによる多角的な分析結果を活用すれば、より的確な経営戦略を立案しやすくなるでしょう。また、管理会計業務が効率化されることで、経営層は経営戦略の立案に専念できる点もメリットです。
5.管理会計システムを導入するデメリット
管理会計システムは、業務効率や正確性の向上などに役立つ一方、以下のようなデメリットも存在します。
1)導入・運用コストがかかる
管理会計システムの活用には、多くのコストが発生します。システム導入時の初期費用だけでなく、月額利用料や運用にかかる人件費などのランニングコストも必要です。
また、自社オリジナルのシステムを開発する場合や、機能をカスタマイズする場合は、より高額な費用がかかります。
2)セキュリティ対策の強化が必要
管理会計システムに限りませんが、企業の機密情報を多く扱うシステムであり、セキュリティ対策は欠かせません。しかし、どれだけセキュリティ機能が充実したシステムを導入したとしても、外部からデータに不正アクセスされるリスクはゼロになることはないでしょう。
データの安全性を高めるためには、パスワードの設定やアクセス制限、従業員教育など、自社でもセキュリティ対策を強化する必要があります。
6.管理会計システムを選ぶ際のチェックポイント
管理会計システムを選ぶ際は、以下の6つのポイントをチェックすることが大切です。
1)提供タイプはクラウドとオンプレミスどちらなのか
管理会計システムの提供タイプは、「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に大別されます。
クラウド型は、システム提供会社のサーバーにデータが保管されます。自社でサーバーを構築する必要がないため、短期間での導入が可能です。また、インターネット環境さえあればどこからでもアクセスできるため、複数拠点を展開する企業にも適しています。過去データを長期間に渡り保存する場合は、クラウド環境容量が大きくなり、ランニングコストに反映されます。
一方、オンプレミス型は、自社でサーバーを構築して運用します。自社の運用に合わせたカスタマイズが可能で、セキュリティ性を高めやすい点がメリットです。ただし、自社でシステムの運用保守を進める必要があるため、運用管理部門の人数が少ない場合、導入のハードルは高いでしょう。
2)対応可能な帳票の種類と柔軟性
管理会計システムを選ぶ際は、対応可能な帳票の種類や柔軟性を確認しましょう。部門別損益計算書や製品別の原価計算表、予算実績対比表など、自社の管理会計に必要な書類に対応しているかどうかが重要です。また、事業の変化によって必要な帳票が変わることも考えられます。自社である程度変更ができる柔軟性が求められます。
財務会計とは異なり、管理会計の帳票には記載内容の規程がありません。企業ごとに必要なデータが異なるので、自社の課題に合わせた帳票のカスタマイズが可能な製品がおすすめです。
3)データ分析の単位
部門別やプロジェクト別、取引先別など、データ分析の単位もチェックしましょう。必要とされるデータ分析の単位は、企業によって異なります。たとえば、店舗を運営する企業なら、地域別や店舗別での分析が可能なシステムが向いています。
また、全社に係る予算や費用を分析したい単位に配賦することができるかも確認しておくとよいでしょう。
4)システム移行におけるスムーズさ
既存のシステムや Excel などから、データをスムーズに移行できるかどうかも重要です。移行作業の工数が多いと、システムの導入が遅延してしまいます。
また、システムの移行において、データの整合性を保てるかどうかもチェックしましょう。移行後のデータに不整合が生じると、的確な経営判断を実現しにくくなってしまいます。
5)ほかのシステムとの連携性
販売管理システムや給与管理システムなど、ほかのシステムとの連携性も確認しておきましょう。すでに運用しているシステムとの連携が可能なら、管理会計業務の効率をより一層高められます。また、業務全体のフローが一目瞭然となるため、業務改善も図りやすくなります。
6)レポートの作成・出力機能
管理会計の目的は、経営層に経営判断の材料を提供することです。そのため、レポートの作成・出力は、重要度の高い機能といえます。
文字色やグラフなどを用いて、見やすく読みやすいレポートを作成できるシステムや、普段よく使う Excel との親和性が高いシステムもおすすめです。
7.まとめ
管理会計システムの導入により、正確なデータが迅速に共有され、また経営戦略に沿った分析を行うことで、より的確な経営判断が可能となるでしょう。
管理会計システムを選ぶ際は、提供タイプや各種機能、ほかのシステムとの連携性などを確認することが重要です。
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