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電子帳票とは?導入で業務効率化を実現する方法を説明します
昨今、企業のDX推進やペーパーレス化の流れの中で、「電子帳票」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。しかし、具体的に電子帳票とは何なのか、導入することでどのようなメリットがあるのか、詳しく知らない方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、電子帳票の基本的な知識から、導入のメリット・デメリット、種類の解説、そして自社に合った電子帳票システムを選ぶ際のポイントまで、網羅的にわかりやすく解説します。電子帳票への理解を深め、業務効率化やコスト削減を実現するための一歩として、ぜひご活用ください。

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1.電子帳票とは何か?

電子帳票とは、従来紙で作成・管理されていた請求書、納品書、領収書、注文書、或いは製造や物流といった現場で使用する作業指示書といった様々な帳票を、電子データとして作成、送受信、保存できるようにしたものです。これにより、紙の印刷、郵送、ファイリングといった手間やコストを大幅に削減し、業務プロセスの効率化を図ることが可能になります。

紙の帳票との違いを明確化

紙の帳票と電子帳票の最も大きな違いは、その名の通り「物理的な紙媒体であるか、電子データであるか」という点です。この違いが、業務のあり方に大きな影響を与えます。

紙の帳票 電子帳票
作成 印刷が必要 データとして作成・出力
配布・授受 郵送、手渡し メール、専用システム、EDIなどで送受信
保管 ファイリング、物理的な保管スペースが必要 サーバー、クラウドストレージなどに電子的に保管
検索 目視、手作業での確認 キーワード検索などで迅速に検索可能
コスト 用紙代、印刷代、郵送費、保管スペース費用 システム導入・運用費、通信費
編集・加工 困難、再作成が必要 比較的容易(アクセス権限による制御が必要)
セキュリティ 紛失、盗難、劣化のリスク 不正アクセス、改ざん、情報漏洩のリスク(対策が必要)
共有 物理的な移動やコピーが必要 ネットワーク経由で容易に共有可能

このように、電子帳票は作成から保管、検索に至るまで、紙の帳票が抱える多くの課題を解決する可能性を秘めています。

電子帳票が注目される背景

電子帳票が近年特に注目されている背景には、いくつかの要因があります。まず、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の動きが活発化し、業務プロセスのデジタル化が求められていることが挙げられます。また、2022年1月に改正された電子帳簿保存法により、電子取引で授受した帳票の電子データ保存が義務化(※宥恕措置あり)されたことも大きな要因です。これにより、多くの企業が電子帳票システムの導入を本格的に検討し始めています。さらに、働き方改革やテレワークの普及に伴い、場所を選ばずに業務を行える環境整備の必要性が高まったことも、電子帳票の普及を後押ししています。

※宥恕措置(ゆうじょそち)とは、電子帳簿保存法における電子取引データの電子保存義務化に伴い、2023年末まで紙保存を認めた経過措置です。詳細は国税庁のガイドラインをご参照ください。

2.電子帳票を導入するメリット

電子帳票を導入することによって、企業は多くのメリットを享受できます。ここでは主なメリットを5つ紹介します。

1)コスト削減効果

電子帳票の導入は、さまざまなコスト削減に繋がります。まず、紙の帳票で発生していた用紙代、インク・トナー代、印刷機のリース・メンテナンス費用といった印刷コストが不要になります。また、帳票を郵送するための封筒代や切手代、郵送作業にかかる人件費も削減可能です。さらに、帳票を保管するためのファイルやキャビネット、倉庫などの物理的なスペースコストや、その管理にかかる人件費も削減できるでしょう。これらのコストは、帳票の発行枚数が多い企業ほど大きな削減効果が期待できます。

2)業務効率化

電子帳票は業務効率化にも大きく貢献します。帳票の作成から承認、送付、保管までの一連のプロセスがシステム上で完結するため、手作業による手間や時間を大幅に削減できます。例えば、作成した帳票データをシステムにアップロードするだけで取引先に自動送信したり、受領した帳票データを自動で仕訳システムに取り込んだりすることが可能になります。これにより、担当者はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。

3)検索性と情報共有の向上

紙の帳票の場合、過去の帳票を探すのに多くの時間と手間がかかることがありました。しかし、電子帳票であれば、取引先名、日付、金額などの条件で瞬時に必要な情報を検索できます。これにより、問い合わせ対応の迅速化や、過去の取引データの分析などが容易になります。また、電子データであるため、必要な情報を関係者間でリアルタイムに共有することも可能です。テレワーク環境下でも、オフィスにいるのと同様に帳票データへアクセスできるため、業務の継続性が高まります。

4)セキュリティ強化と内部統制

電子帳票システムには、アクセス権限の設定や操作ログの記録といったセキュリティ機能が備わっていることが一般的です。これにより、不正な閲覧や改ざん、持ち出しのリスクを低減できます。また、帳票の作成から承認、保管までのプロセスがシステム上で管理されるため、業務プロセスが可視化され、内部統制の強化にもつながります。紙の帳票で起こりがちな紛失や誤廃棄といったリスクも軽減されるでしょう。

5)BCP対策としての有効性

自然災害や感染症のパンデミックなど、不測の事態が発生した場合でも、電子帳票であれば事業継続計画(BCP)の観点からも有効です。紙の帳票はオフィスが被災すると消失してしまうリスクがありますが、電子データとしてクラウド上や遠隔地のサーバーに保管されていれば、データの保全が可能です。また、テレワーク環境でも帳票業務を継続できるため、事業への影響を最小限に抑えることができます。

3.電子帳票導入のデメリットと対策

多くのメリットがある電子帳票ですが、導入にあたってはいくつかのデメリットや注意点も存在します。事前にこれらを理解し、対策を講じることが重要です。

1)導入・運用コストの考慮点

電子帳票システムを導入するには、初期費用としてシステムの購入費や開発費、設定費用などが発生します。また、導入後も月額利用料やサーバー維持費、保守費用などのランニングコストがかかります。これらのコストは、導入するシステムの規模や機能、提供形態(クラウド型かオンプレミス型か)によって大きく異なります。導入前に複数のシステムを比較検討し、費用対効果を十分に吟味する必要があります。クラウド型サービスを利用すれば、初期費用を抑えられる場合が多いです。

2)システム障害時のリスクと対応策

電子帳票はシステムに依存するため、万が一システム障害やサーバーダウンが発生した場合、帳票の作成や閲覧ができなくなるリスクがあります。また、サイバー攻撃によるデータ消失や情報漏洩のリスクも考慮しなければなりません。対策としては、信頼性の高いシステムを選定することはもちろん、データのバックアップ体制を確立しておくこと、セキュリティ対策が強固なサービスを選ぶこと、障害発生時の復旧手順を事前に定めておくことなどが挙げられます。

3)従業員のITリテラシーと教育の必要性

新しいシステムを導入する際には、従業員がそのシステムを使いこなせるようにするための教育や研修が必要です。特に、これまで紙ベースの業務に慣れ親しんできた従業員にとっては、操作方法の習得や業務プロセスの変更に抵抗を感じる場合もあります。導入前に十分な説明会を実施したり、わかりやすいマニュアルを用意したりするなど、従業員がスムーズに移行できるようサポート体制を整えることが重要です。ITリテラシーに不安がある従業員向けの研修プログラムを用意することも効果的でしょう。

4.電子帳票の主な種類と特徴

電子帳票は、その作成方法やデータの保存形式によっていくつかの種類に分類できます。自社の業務内容や目的に合わせて最適な種類を選ぶことが大切です。

作成方法による分類とその特徴

電子帳票の作成方法による分類としては、主に以下の3つが挙げられます。

特徴 メリット デメリット
専用システム型 電子帳票の作成・配信・管理に特化したシステムを利用する方式 高度な機能、自動化、他システム連携が豊富 導入コストが高い傾向、カスタマイズに制約の場合も
既存システム
活用型
販売管理システムや会計システムなど、既存システムの帳票出力機能を利用する方式 既存資産の活用、追加コストを抑えられる場合がある 機能が限定的、専用システムほどの柔軟性はない
汎用ソフト型 表計算ソフト(Excelなど)や文書作成ソフト(Wordなど)で作成する方式 手軽に作成可能、コストが低い 機能が限定的、既存システムとの連携が難しい、個別最適化のリスク

自社の帳票発行枚数、求める機能、予算などを考慮して、最適な作成方法を選びましょう。

データ形式による分類と比較

電子帳票のデータ形式として代表的なものには、PDF形式と画像データ(JPEG、PNGなど)があります。

メリット デメリット
PDF形式 レイアウトの再現性が高く、どの環境でもほぼ同じように表示・印刷できます。改ざん防止機能やパスワード設定も可能です。多くのシステムで標準的に扱われています。 専用ソフトがないと編集が難しい場合があります。
画像データ形式
(JPEG,PNGなど)
データの表示が容易で、特別なソフトが不要な場合が多いです。 ファイルサイズが大きくなりがちです。文字情報をテキストとして認識できないため、検索性が劣る場合があります。拡大すると画質が劣化することがあります。

一般的には、ビジネス文書としての信頼性や改ざん防止の観点から、PDF形式が広く利用されています。電子帳簿保存法のスキャナ保存要件などでも、特定の画像形式が指定される場合があります。

5.電子帳票システムの選び方のポイント

電子帳票システムは数多く存在するため、自社に最適なシステムを選ぶためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。

1)自社の業務課題の明確化が最優先

まず、電子帳票システムを導入することで何を解決したいのか、自社の業務課題を明確にすることが最も重要です。例えば、「帳票の印刷・郵送コストを削減したい」「製造現場で紙に手書きするのをやめたい」「帳票の検索時間を短縮したい」「テレワークでも帳票業務を行えるようにしたい」「電子帳簿保存法に対応したい」など、具体的な課題をリストアップしましょう。この課題が明確であればあるほど、システム選定の軸が定まり、必要な機能や要件が見えてきます。

2)既存システムとの連携性を確認

多くの企業では、会計システムや販売管理システム、ERP(統合基幹業務システム)など、既に何らかの業務システムを導入している場合が多いでしょう。新しく導入する電子帳票システムが、これらの既存システムとスムーズに連携できるか確認することは非常に重要です。データの二重入力の手間を省き、業務全体の効率化を図るためには、API連携やCSVファイルのインポート・エクスポート機能などが充実しているかを確認しましょう。

3)操作性とサポート体制の重要性

どれだけ高機能なシステムであっても、操作が複雑で使いにくければ、従業員に浸透せず、かえって業務効率を低下させてしまう可能性があります。導入前に無料トライアルやデモンストレーションを利用し、実際に操作画面を見て、直感的に使えるか、自社の業務フローに合っているかを確認しましょう。また、導入時や運用開始後のサポート体制も重要です。問い合わせ窓口の対応時間や方法、マニュアルの充実度、トラブルシューティングの迅速さなどを確認しておくと安心です。

4)セキュリティ対策の確認事項

電子帳票は企業の重要な情報を取り扱うため、セキュリティ対策は万全でなければなりません。データの暗号化、アクセス権限の詳細な設定、不正アクセス防止策、操作ログの記録機能などが備わっているかを確認しましょう。特にクラウド型のシステムを利用する場合は、データセンターのセキュリティレベルや、ISMS認証(ISO27001)などの第三者認証を取得しているかも選定のポイントになります。

5)電子帳簿保存法 への対応状況

電子帳簿保存法に対応した形で電子帳票を保存・管理したい場合は、システムが同法の要件を満たしているかを確認する必要があります。具体的には、真実性の確保(タイムスタンプ付与機能、訂正削除履歴の保存など)や可視性の確保(検索機能、関連書類の相互関連性の確保など)に関する機能です。JIIMA認証(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会による認証)を取得しているシステムは、法的要件を満たしている一つの目安となります。

2022年1月に改正された電子帳簿保存法では、電子取引で授受した帳票データの保存が義務化されました(※宥恕措置あり)。

※宥恕措置(ゆうじょそち)とは、電子帳簿保存法における電子取引データの電子保存義務化に伴い、2023年末まで紙保存を認めた経過措置です。詳細は国税庁のガイドラインをご参照ください。

6.電子帳票と電子帳簿保存法の関連性

電子帳票の導入を検討する上で、対象が契約書、請求書など税法で保存が義務付けられている帳票類である場合には、電子帳簿保存法への理解は不可欠です。この法律は、国税関係帳簿書類の電子データによる保存を認めるもので、電子帳票の運用に深く関わってきます。

電子帳簿保存法の概要を説明

電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、簡単に言うと、税法で保存が義務付けられている帳簿や書類について、一定の要件を満たせば電子データで保存することを認める法律です。この法律は、大きく分けて「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つの区分があります。特に「電子取引データ保存」については、2022年1月の改正で、電子メールやEDI取引などで授受した取引情報(請求書や領収書など)は、電子データのまま保存することが義務化されました(2023年12月31日までは宥恕措置あり)。

電子帳票が法対応にどう貢献するか

電子帳票システムを導入することは、この電子帳簿保存法への対応をスムーズに進める上で非常に有効です。多くの電子帳票システムは、電子帳簿保存法の要件(真実性の確保、可視性の確保)を満たす機能を備えています。例えば、タイムスタンプの自動付与機能や、訂正・削除の履歴を確実に記録する機能、日付・金額・取引先などで検索できる機能などです。これらの機能を活用することで、企業は法令を遵守しつつ、帳票管理の効率化とペーパーレス化を推進できます。

7.電子帳票導入の進め方

電子帳票をスムーズに導入し、効果を最大限に引き出すためには、計画的なステップを踏むことが重要です。

手順1)対象帳票の選定と業務分析

まず、どの帳票を電子化の対象とするかを選定します。すべての帳票を一度に電子化するのは負担が大きいため、発行枚数が多いもの、業務負荷が高いもの、関連部署が多いものなど、優先順位をつけて段階的に進めるのが現実的です。対象帳票が決まったら、現在の作成・承認・送付・保管といった業務フローを詳細に分析し、課題点や電子化によって改善できるポイントを洗い出します。

手順2)システム選定と比較検討

次に、洗い出した課題や要件に基づいて、複数の電子帳票システムを比較検討します。機能、コスト、操作性、サポート体制、セキュリティ、既存システムとの連携性、電子帳簿保存法への対応状況などを総合的に評価します。ベンダーにデモンストレーションを依頼したり、無料トライアルを利用したりして、実際にシステムに触れてみることも重要です。

手順3)社内体制の整備とルール策定

システムの導入と並行して、社内体制の整備と運用ルールの策定を進めます。電子帳票の運用責任者や担当者を明確にし、各部署との連携方法を定めます。また、帳票の作成基準、承認フロー、データの保存期間、セキュリティポリシーなど、具体的な運用ルールを策定し、社内に周知徹底する必要があります。従業員向けの研修や説明会も実施しましょう。

手順4)テスト導入と効果測定

本格導入の前に、特定の部門や一部の帳票に限定してテスト導入(パイロット運用)を行うことを推奨します。テスト導入を通じて、システムの操作性や業務フロー上の問題点を洗い出し、改善策を検討します。また、コスト削減効果や業務時間短縮効果などの効果測定も行い、本格導入への判断材料とします。

手順5)本格導入と継続的な改善

テスト導入で得られた知見を基に、問題点を修正し、本格導入へと進みます。本格導入後も、定期的に運用状況をレビューし、利用状況や従業員からのフィードバックを収集することが大切です。新たな課題が見つかれば改善策を講じ、より効果的な運用を目指して継続的に見直しを行いましょう。

8.まとめ

電子帳票の導入は、コスト削減や業務効率化、セキュリティ強化、法令対応の推進といった多くのメリットをもたらします。特に、電子帳簿保存法の改正を受けて、企業に求められる帳票管理の在り方は大きく変わりつつあります。

自社に適したシステムを選定・導入することで、ペーパーレス化とDXの実現を加速させることができます。
もし、電子帳票の導入を具体的に検討されている場合は、内田洋行のペーパーレスソリューションをご活用ください。

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著者石井 陽子
株式会社内田洋行 情報ソリューション事業部
著者石井 陽子
株式会社内田洋行 情報ソリューション事業部

入社後、全国の販売パートナーを通じスーパーカクテルの拡販に従事。さまざまな業種のお客様の業務改善提案に携わる。2020年より営業経験を活かしてデジタルマーケティングおよびインサイドセールス業務に取り組んでいる。

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