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【UCHIDA ビジネスITフェア 2023】 仕事の副操縦士。ChatGPTをはじめとするジェネレーティブAIと「Microsoft 365 Copilot」で一変する私達の働き方

2023/11/28 [AI,ワークスタイル,セミナーレポート]

2022年11月にChatGPTが登場し、2023年3月にはその技術を使った画期的な生産性ツール「Microsoft 365 Copilot」が発表されました。ChatGPTをはじめとする革新的なジェネレーティブAIで、私たちの働き方がどう変わり、DXにはどのような影響を与えるのか?そして、ワード、エクセル、パワーポイントを「Microsoft 365 Copilot」とERPを組み合わせることで、業務はどのように進化を遂げるのか?そのヒントを提供します。

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 エバンジェリスト
西脇 資哲 氏

ITの機能を知らなくても、誰もが生産性を高められる

本日は主に「ChatGPT」と「Microsoft 365 Copilot」の2つについてご紹介します。

今、ChatGPT が大ブームになっています。ただ、この ChatGPT は突然現れたわけではありません。これまでのAIのさまざまな取り組みの礎があったからこそ、ChatGPT などのジェネレーティブAIが登場したのです。

AI人工知能の歴史

ただ、これまでのAIとは決定的な違いがあります。それはAIの民主化です。ChatGPT はAIの技術を皆さんに開放したのです。

例えば、皆さんはディープラーニングを先週やったでしょうか。おそらく、やっていないと思います。でも、ChatGPT は違います。今、一般の多くの方が毎日のように使っています。

この ChatGPT は2022年11月に世の中に登場しました。そのわずか数カ月後には、小学生が使って良いのかどうかという議論が始まるほど、急速に広まったのです。これは明らかに今までのAIの歴史の流れとは異なり、大きな転換点を迎えたと言っていいでしょう。

企業の反応も今までと違います。これまでは新しいIT技術、例えばクライアントサーバーシステムやクラウド、スマホ・タブレットのアプリなどを私たちがいち早くおすすめしても、多くの企業は「様子を見たい」と躊躇しました。しかし、この ChatGPT などの生成AIについては、率先して取り組もうとしています。

ChatGPT について簡単に説明したいと思います。

ChatGPTとは?

ChatGPT の特徴をもっとも表しているのは2行目に記した「対話」でしょう。私が今からコンピューターと対話しながら、これまでの仕事のやり方が大きく変わることをお見せしたいと思います。

皆さんは、今年の夏も非常に暑かったと思いませんか。その一因であるエルニーニョ現象について調べてまとめたいと思った場合、どうするでしょうか。

おそらく Google で「エルニーニョ現象 アジア 日本 原因」と入れて検索するでしょう。そして、表示されたリンクをクリックして、出てきたページのテキストを Word などにコピーして、さらに次のリンクをクリックしてコピーするという作業を繰り返して、最終的に自分で編集して文章にすると思います。もし、英語のページだったら、DeepL などのツールを使って翻訳しなくてはならないでしょう。大変です。

これと同じ調べ物を ChatGPT に依頼してみましょう。「アジアや日本におけるエルニーニョ現象を教えてください。その原因は何でしょうか?」と問いかけるだけで、一つの文章にまとめた回答が出てくるのです。

人間の言葉に対し、AIが対話を行うとは?

今までは、検索をしてクリックし、テキストをコピーして、複数の文章をつなぎ合わせ、自分で要約をしなければなりませんでした。言い換えると、これまでは検索のやり方が上手で文章をうまく丸めることができる人でないと生産性を高められなかったのです。

ITで生産性を上げたいとき、まず必要な機能を知って、さらに上手に使いこなさなければなりません。ところが、ChatGPT を使えば機能をわざわざ知る必要がないのです。きちんと目的を知っている人であれば、誰でも生産性を高めることができるようになった。これが今までのIT技術との決定的な違いです。

しかも、この ChatGPT には MBA や米国医師免許試験、米国司法試験の合格レベルの知識が入っているのです。

Microsoft は2019年、2021年、2023年に、この ChatGPT を作り出した OpenAI に出資しました。そして、Microsoft と OpenAI は中長期的な戦略的パートナーシップを組みました。

この OpenAI が作った仕組みを保有しているのは、この2社のみです。その利用は誰に対しても開かれているので、自由に使うことができますが、この仕組みはすべて Microsoft のクラウド上で動いています。

OpenAIとMicrosoftのパートナーシップ

驚くべき ChatGPT の能力

ChatGPT に対して私たちはいろいろなことができますが、大別すると主に2つです。
「聞く」と「依頼する」です。

ChatGPTで可能なタスクの数々

左側の「聞く」から説明しましょう。

仮に、シニア向けの健康にかかわる新商品や新サービスのアイデアを出す仕事があったとしましょう。例えば、「60歳から80歳までの男性における軽度な健康リスクをいくつかあげてください。その健康リスクをカバーするために求められる栄養素やサプリメントの種類を考え、どんな商品のニーズがあるかを考えてください」と聞くと、きちんと回答してくれます。

「60代、70代、80代の健康リスクは何ですか」というような聞き方ではなく、上記のように突っ込んで聞くほうが、こちらが求めるものを ChatGPT は返してくれるようになります。

さらに、「これらの栄養素やサプリメントを60歳から80歳の男性が使う新しいビジネスを、店、設備、施設などと組み合わせて考えてください」と指示を出せば、もちろん ChatGPT は教えてくれます。しかも、その理由まで添えてくれます。

これを何度も繰り返すと、さらに自分が求める回答が得やすくなります。テニスの「壁打ち」のように繰り返してください。気づけば、ChatGPT は完全にもう1人の社員になっているでしょう。

次は、右側の「依頼する」です。在庫管理を例に説明しましょう。

商品を扱う業務であれば、在庫管理表を Excel で作成していることが多いと思います。この商品の入庫と出庫、在庫数量を、まずテキスト形式の CSV に変換しましょう。

この CSV ファイルを ChatGPT に読み込ませた上で、例えばこう指示します。「このファイルは在庫管理表で、在庫の推移を表しています。在庫状況がどのように変化しているか教えてください」。すると、日付、出庫数量、入庫数量、在庫数量の変化がわかるグラフを出してくれて、その変化の傾向も教えてくれます。

追加で「適正な在庫数はいくつですか」と尋ねれば、適正在庫の計算方法を示しながら、その数を提示します。さらに、「出庫数量が多い日はどのような日に集中していますか」と聞くと、日曜日が多くて火曜日が少ないことを指摘してくれて、人間は金曜日に入庫したほうが良いと判断できます。

従来は、すべてのデータを人間が見た上でBI(ビジネスインテリジェンス)ツールなどで分析していました。しかし、ChatGPT に依頼すれば、データを見るところから作業してくれます。

もうひとつ紹介しましょう。アンケートなどのフリーコメントの処理です。

まず、ChatGPT にフリーコメントを投げてから、「このアンケートのフリーコメントの傾向をまとめてください。良かった点、悪かった点を分析してください」と依頼するのです。すると、きちんと教えてくれます。しかも、総評も書いてくれて、その中にはこのアンケートを取ったセミナーの改善点まで指摘してくれます。

顧客に対する調査やマーケティングの調査などで、このようなフリーコメントを集計して処理することは多いと思います。ChatGPT を活用してください。

先ほども言いましたが、コツは何度も指示を繰り返すことです。1回で答えを求めることは今日からやめて、納得いくものが出てくるまで指示を出してください。

さらに言うと、ChatGPT は画像を作成することもできます。指示文を入れるだけで、自動で生成できます。

DALL-E / DALL-E2 / DALL-E3

プロンプト(指示文)を制する者がAIを制する

ChatGPT の登場で、AIの技術が民主化され、誰でも使うことができるようになりました。では、AIが民主化された今、何が求められるのでしょうか。

それは、AIに指示を出す能力です。

AIへの指示に必要な情報例

繰り返しますが、AIからうまく回答を引きだす指示が重要です。中途半端な指示をすれば、中途半端な回答しか出てきません。

コンピューターに指示する言葉を「プロンプト」と言います。ポイントは主に次の4つです。

  • 役割
  • ゴール
  • 対象
  • 出力形式

例えば次のように ChatGPT に指示してみましょう。

「あなたは法律の専門家です。
法律の専門家として、万引きはどうして犯罪なのかを説明してください。
対象は小学生です。小学生でもわかるように説明してください。
200文字程度に収まる文にしてください」

上記のプロンプトを入れると、ChatGPT は法的な観点から「万引きは店で物を買わずに持ち出すことで、これは犯罪です」と説明を始めます。

では、同じ質問を、別の役割を与えて尋ねてみましょう。

「あなたは小学校の先生です。小学校の授業で、万引きがどうして犯罪になるかを小学生に説明してください」と指示すると、言葉づかいや表現が変わります。「万引きはお店で物を買うときにお金を払わずに持ち帰ることで、これは絶対にやってはいけないことです」と回答し始めるのです。

さらに、「あなたは万引きで逮捕されたことがある経験者です。万引きで逮捕された過去の経験から、万引きがどうして犯罪であるかを説明してください」と指示してみましょう。すると、「お店の人のお金を取るのと同じです。私はそのことで大変な思いをしました。万引きはみんなに迷惑がかかるので、絶対にしないでください」と説明します。

私たちが会社で何かを考えるとき、主に従業員の経験や知識、思考力だけを使っています。しかし、ChatGPT なら世界中の人の経験や知識を活用することができるのです。むしろ、その役割を明確にしたほうが ChatGPT の能力が発揮されます。

もう少し詳しくAIに意図を伝えるプロンプトの例を紹介しましょう。

AIに意図を伝えるためのMeta Prompt

プロンプトをうまく作ることができれば、新商品の企画やターゲット分析、プログラミング、計画の立案なども ChatGPT に依頼することができます。

例えば、会社には、独自に作ったホームページやパンフレット、カタログ、マニュアル、FAQなどがあると思います。それらを ChatGPT に学習させれば、新しい商品やサービスを作ったときに、そのカタログやパンフレット、ホームページ、マニュアルなどをAIで生成することも可能になるでしょう。

生成AIがバリューチェーン全体に与えるインパクト

「Microsoft 365 Copilot」とは?

ビジネスの現場を大きく変える ChatGPT。これが、日々の仕事で使っている Word や Excel、PowerPoint、Outlook、Teams などのソフトウエアの中で使えたら良いと思わないでしょうか。

Microsoft はすべての製品に生成AIの機能を搭載するという約束をしました。

名前は「Copilot」。副操縦士という意味です。

主の操縦士は人間です。Copilot は人間から聞かれたことや依頼されたことを提示し、それを使うかどうかは人間が最終的に決めます。

あらゆる製品に生成AIの機能を搭載

すでに搭載されている製品があり、多くの方からご期待をいただいていた「Microsoft 365 Copilot」も2023年11月1日にリリースされました。

ソフトウエアを Copilot で連携させましょう。なぜなら、連携をしないとAIがソフトウエアの枠を越えた理解ができません。この枠を越えて理解できるようになると、さまざまなことが可能になります。

例えば、Microsoft 365 Copilot の Word の画面の中には Copilot のボタンがあります。このボタンを押して ChatGPT のように指示を与えてください。

例えば、「製造業におけるテロなどの地政学的なリスクについてまとめてください」と指示してみましょう。すると、整形された文章が書き出されるのです。しかも、それは MBA レベルの文章です。

さらにカーソルを Copilot のボタンの上に合わせれば、メニューが出てきて、そこには「テロや紛争が起きそうな地域の一覧」という候補プロンプトも出てきます。クリックすると、リスクの高い地域が追記されて、選定理由も添えられます。皆さんが普段求めている書類にとても近いものが短時間で作成可能です。

ソフトウエアを連携させていると、この Word ファイルから PowerPoint を作成することもできます。Copilot に命令するだけで、PowerPoint のスライドがほぼ自動的に作られます。

統合されていることのメリットが生かされえる

Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams などのソフトウエアで作ったファイルをはじめ、社内のいろいろなデータをAIで統合しましょう。その統合されたデータを用いれば、さまざまなことが新たに可能になります。大切なのは、データを統合し、人間が目的をきちんと把握してAIの力を引きだすように指示を出すことです。

Pluginによって変わる行動

Microsoftの責任あるAIの取り組み

Microsoft は、AIが社会に変革をもたらし理想郷を生み出してくれると信じています。しかし、暴走してはならないということも理解しています。

Microsoft CloudとAIの信頼性

これが、我々が約束している「責任あるAIの原則」です。

お客様のデータはお客様のものです。すべて皆さんのものです。AIに問い合わせた内容を我々が閲覧することはできません。また、皆さんのデータをAIの学習に使うこともありません。どうぞ、安心して使っていただきたいと思います。

さらに、Microsoft は ChatGPT をモニタリングしています。暴力的なことや差別的なことなど倫理に違反している言葉が現れたら、それを異常として感知し、適切に対応する仕組みをもっています。この ChatGPT は安全に利用できるAIです。

考えるより、やってみる

本日の話をまとめます。

ChatGPT などの生成AIを活用することによって、業務に費やす時間を圧倒的に減らすことができます。言い換えると、生産性の向上によって新たな時間が生まれるということです。

生産性革命”今まで”と”これから”

その新たな時間を使って新しいビジネスを考えるのも良いでしょう。お客様のいらっしゃる現場に出向くのも良いでしょう。あるいは有休や育休を取って、ワークライフバランスを充実させるのも良いでしょう。会社によっては、副業に割り当てる時間を増やしてくれるかもしれません。

ChatGPT は新しい同僚です。外国語をいくつも話せて、MBA の知識をもっていて、医師免許試験や司法試験に合格できるほどの知識ももっている。さらに、プログラミングもできるし、イラストも描くことができて、社内の情報や人脈に精通しているという同僚です。

ぜひ、ご活用ください。

こんな人材投資できますか?、ChatGPTなら可

最後に、経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が取りまとめた『生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方』に書かれていたことを、端的に紹介したいと思います。

生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキル

特に最後の2つが重要です。

  • ものごとを細分化し指示に変える力
  • 考えるより、やってみる姿勢

企業には大きな目標があります。それは売上の最大化であり、株価の最大化です。AIに「我が社の売上や株価を最大化する方法を教えて」と尋ねても、その問いはあまりに大きく、AIはまともに答えることができません。AIに指示するには、物事を細分化する必要があります。その力を身につけましょう。

そして、考えるより、ぜひやってみてください。今すぐにやり始めて、生成AIによってこれまでの仕事のやり方を変え、生産性の向上を目指していただきたいと思います。

Microsoft 365 の導入・活用を検討されている方へ

主な製品シリーズ

  • 文書自動配信サービス「AirRepo(エアレポ)」
  • 業種特化型基幹業務システム スーパーカクテルCore
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