介護サービスや医療サービスなどの「質の評価」についてはさまざまな議論がありますが、国際的には「ドナベディアン・モデル」に倣って質の評価を行うべきだというコンセンサスがあります。これは、次の3つの側面から評価を行うという考え方です。
① 構造 structure
サービスを産み出す構造(専門職の配置人数や職種、設備・建物の水準などが十分か否か)に着目した評価
② 過程 process
サービスを提供する際の過程(介護過程の展開やケアプランの作成が適切に行われているか否か、事故防止や虐待防止のための対策などが適切にとられているか否かなど)に着目した評価
③ 結果 outcome
サービスを受けた結果による利用者の効果(ADLの改善、BPSDの改善、心身機能の悪化の防止、意欲の改善などの度合いなど)に着目した評価
2021年度から始まったLIFE(科学的介護情報システム)は、このなかの「③ 結果 outcome」の評価を可能とする仕組みとして開発された側面もあります。
従前の介護保険制度においては、それ以外の2点は、設備基準や人員・運営基準などの法令で一定程度担保されてきましたが、アウトカム評価については手付かずの状況が続いていました。
この意味で、LIFEによるアウトカム評価を反映した加算は今後ますます重要になるはずです。
実際、今回の介護報酬改定では、LIFEを用いたアウトカム評価に関連する加算の要件などの見直しが行われています。その内容を確認してみましょう。
この加算の(U)を算定する際に求められる「調整済みADL利得」の値は、従前は「2」でしたが、今回の改定で「3」に厳格化されました。
つまり、従前どおりに(U)の加算を取得するためには、Barthel Index のスコアでADLが改善する利用者が増えなければならないことになります。
この加算の(U)・(V)を算定する際に求められるアウトカムとして、従前は「排尿・排便の少なくとも一方が改善するとともに、いずれにも悪化がないこと」または「おむつ使用『あり』から『なし』に改善していること」の2つが設定されていましたが、今回の改定では、それらに加えて「尿道カテーテルが留置されていた者について、尿道カテーテルがか゛抜去されたこと」も設定されました。
このことは、アウトカム評価にカテーテル留置からの改善も加えることになり、評価の対象が拡大したことになります。
この加算の(U)を算定する際に求められるアウトカムとして、従前は「褥瘡が発生するリスクがあるとされた入所者について、褥瘡の発生のないこと」が設定されていましたが、今回の改定で、それに加えて「褥瘡の認められた入所者等について、当該褥瘡が治癒したこと」も設定されました。
このことも、アウトカム評価に褥瘡の治癒も加えられたこととなり、評価対象が拡大したことととなります。
LIFEに関連する加算のうち、アウトカムを要件としているものは上記の3項目で、いずれも厳格化・対象拡大という見直しが講じられています。大規模なものではありませんが、アウトカム評価の拡大だと言って良いと思います。
こうした見直しは今後も同じ方向で継続・拡大するものと思われます。私は、次の介護報酬改定では、アウトカム評価の対象も「栄養」や「口腔機能」「BPSD」などに関するものも加えられてくると予測しています。
そう考えると、加算の算定をしっかりと行うためには、LIFEを用いて利用者の自立支援・重度化防止を図るような「質の高い介護」を提供できるような体制づくりを進めることが重要となります。
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