HOME > 情報システム分野 > IT レポート > トレーサビリティシステムを活用した、食品製造現場におけるDX化の改善事例

【UCHIDA ビジネスITフェア 2024】 トレーサビリティシステムを活用した、
食品製造現場におけるDX化の改善事例

2025/3/26 [食品,ERP,セミナーレポート]

食品製造業の生産現場において、原材料入荷から製造・製品出荷までをトータルに管理して作業を効率化するソリューション「Trace eye FOOD-Pro」について解説いたします。実際の導入事例として、かつお節等製造業のマルトモ株式会社様と惣菜製造業のフジフーズ株式会社様のケースも紹介します。Trace eye FOOD-Proは、自社工場だけでなく、取引先、海外工場、外部倉庫、さまざまな拠点をクラウドでつなぎ、食の安全・安心を支援します。

株式会社サトー
営業本部ソリューション推進部
企画・推進グループ エキスパート
渡辺 真 氏

さまざまな市場で活用される自動認識ソリューション

株式会社サトーは、主に電子プリンターやラベルを絡めた自動認識によるソリューションを提供しています。当社のブランドステートメントは「あらゆるものを情報化して社会の動きを最適化する」です。

当社は、いろいろなものにタグを付けたりラベルを貼ったりすることで情報化を図ります。単に管理したい物や人にバーコードラベルを付けるわけではありません。現場運用に最適なやり方で情報化することを重視します。これを当社では「タギング」と呼んでいます。そして、さまざまな現場の課題を解決するために、当社の商品やサービスを最適に組み合わせた自動認識ソリューションをワンストップで提供します。

さまざまな人やモノの動きを情報化する

当社は、さまざまな市場で自動認識ソリューションを提供しています。このセミナーでは食品市場に絞り、特に食品製造業における生産管理や原材料管理、トレーサビリティにかかわる当社のソリューションを紹介します。

当社はこれまで食品製造業の現場をいくつも見てきました。そこには共通して見られる大きな課題テーマがあると捉えています。「品質と作業性の両立」です。どうすれば品質と作業性をともに向上できるのか。ここで出てくるキーワードこそ「DX」です。当社の自動認識ソリューションは、DXによって食品製造業の「品質」と「作業性」を両立させます。

食品業界共通の課題

ラベルリレー方式でトレーサビリティを確立する

ここから導入事例を二つ紹介したいと思います。
一つ目は、フジフーズ株式会社様です。こちらの会社は、セブン-イレブン向けの大手デイリーメーカーとして、1日200万食の商品製造と年間550種類以上の商品開発を行う大きな食品加工企業です。毎日、セブン-イレブンの店舗に並ぶ食品を製造し、多くが即時出荷されます。

フジフーズ株式会社様

こちらの茨城工場で当社のソリューションを導入いただきました。
この茨城工場は2022年から稼働している新しい製造現場です。ここでは冷凍食品が作られていますので、製造してから一旦保管する在庫が存在します。ここが他の工場とは異なるところです。セブン-イレブンからの発注を受け、在庫から出荷をするという形で業務が動きます。この業務形態は、同社では初めてのオペレーションだったことから、基幹業務システム「スーパーカクテルCore FOODs」(内田洋行)が導入され、立ち上げ時から稼働されました。

システム導入の背景 フジフーズ株式会社様

実は、当初からラベルリレー型の生産方式を実施するという構想がありました。ラベルリレーとは、製造現場の情報をラベルでつないでいく管理方法です。これによりトレーサビリティの確立が可能になります。

これに加えて、計量機とのデータ連携の構想もありました。食品製造の工程では、人が原料をレシピ通りに計量することがよくあるのですが、これがヒューマンエラーの原因になります。このアナログ工程をシステム化するのは難しいのですが、フジフーズ様の茨城工場では、計量機の情報も集めて管理を強化し作業効率も高めていくことを課題として設定していました。

このトレーシングの強化と作業効率の向上を求めていたことから、当社に「一緒にやりませんか」と声をかけていただきました。

システム導入の背景2 フジフーズ株式会社様

製造工程における管理強化と作業効率を向上させた

前述の通り、2022年の立ち上げから基幹システムのスーパーカクテルCore FOODsが動いていました。現場では、そこから出力される製造指示書やラベルなどに基づいて業務が進められます。ただ、担当者が紙を見ながら作業をしたり、ラベルを目視で確認したり、手を動かして記録や入力をしたりなど、システムから指示書やラベルを出す利点が生かし切れていないと思える状況がありました。

導入前の運用イメージ(生産現場) フジフーズ株式会社様

このときの課題を整理すると次のようになります。

〈現場の課題〉

  • 現場作業の管理強化が課題(誤計量、誤投入)⇒ 作業はあくまで目視でのチェック
  • トレースを行うのに多くの時間と労力が必要 ⇒ 作業日報からの情報追

人が管理する形だとヒューマンエラーの可能性が生じます。また、人力で記録をとっていると、ある情報が欲しいときに複数の帳票を突き合わせることになるなど、多くの時間と労力がかかるようになります。

この課題を解決するために、スーパーカクテルCore FOODsと連携して現場を支援する仕組みを導入しようとなり、当社の食品トレーサビリティシステム「Trace eye FOOD-Pro」を導入いただくことになりました。

導入後の運用イメージ(生産現場) フジフーズ株式会社様

この現場では、すでにラベルでQRコード(注)まで作られていたので、当社はこれを積極的に活用しようと考えました。

まず、スーパーカクテルCore FOODsから出る製造指示などの情報は、紙に印刷するのではなくて、タブレットやパソコン、モバイルスマートデバイスなどの端末で受け取るようにしました。そして、手書きや目視の作業を廃止し、QRコードをスキャンする形に変えました。何らかの間違いがあったときはすぐに知らせます。また、このようにスキャンすることで、瞬間にデータ化することも可能になりました。

情報のリレーも重要なポイントです。特に、生産現場では物の形が変わっていきます。そこで、ラベルを使って、変化していく物の情報をしっかりと次につなげられる仕組みも作りました。その結果、ファイリングや記録紙の突き合わせなどの情報管理の業務を減らすこともできました。また、即時的なデータ化によって、現場のデータを基幹業務システムと連携できるようになり、パンチ入力もなくなりました。

比較的シンプルな取り組みですが、これらを実行することで作業ミスの削減や作業効率の向上を実現することができました。

導入後、お客様の声をいろいろといただきました。主に二つに分けられます。

〈お客様の声〉

  • 「製造工程における管理強化が図れた」
    ・「指示書の出力」「製造各工程への配布」「実績の記入」「回収」「システム入力」といった一連の業務プロセスがシステム化され、省力化、時間短縮、ミス防止につながった。
    ・秤量工程は計量ミスの防止に加え、開封後の原材料の管理(開封後期限管理)ができるようになった。
    ・調理工程は誤投入の防止、投入順序のチェックなど、作業品質の向上を実現した。
  • 「万が一の場合に製造工程のトレースが即座に追えるようになった」
    ・従来の日単位ではなく製造ロットごとのトレーサビリティが可能になった。

エクセルの駆使がヒューマンエラーにつながる

導入事例をもう一つ紹介します。
マルトモ株式会社様は、かつお節をはじめ、スーパーマーケットなどでよく見かける食品を製造しています。工場は、本社のある愛媛県や宮城県にあり、当社のシステムを導入いただいています。

マルトモ株式会社様

当社のシステムを導入いただいた背景を説明します。
こちらの会社では、2016年から本社と工場でスーパーカクテルCore FOODsを稼働し、さまざまなデータをしっかりと集めて管理できる環境を構築しています。ただ、現場レベルの課題になかなか着手できないという状況もありました。その課題に取り組みたいと、当社に声をかけていただきました。

課題を整理すると四つのポイントがありました。

〈現場の課題〉

  • 製造現場でのヒューマンエラーが発生(先入先出チェック、誤投入誤計量) ⇒ 作業者の負担増や原料廃棄のコストが発生
  • 計量小分けなど重要な工程は熟練者のみで作業 ⇒ 属人化
  • トレース照会をするときにエクセルの紙媒体を用いる ⇒ 調査に時間がかかる
  • 原材料の在庫管理が不十分で実態をつかんでいない ⇒ 過剰発注や在庫切れなどが発生

上位システムとしてスーパーカクテルCore FOODsが稼働していたのですが、生産の現場とは分断されていました。スーパーカクテルCore FOODsで指示書やラベルなどの情報が作られるものの、現場では業務をやりやすくするためにエクセルで再加工されていました。こうなると作業がアナログになるので、状況は以前と同じままでした。

導入前の運用イメージ(生産現場) マルトモ株式会社様

そこで、当社から「現場を改善しましょう」と提案して、システムとしてTrace eye FOOD-Proを採用いただきました。

導入にあたっては2ステップを踏みました。まず、基幹系業務と現場系業務をそれぞれ最適なシステムで管理して運用。そして、双方のデータが連携するように拡張しました。

具体的には、現場レベルでしっかりと情報を作るように変えました。例えば、QRコード入りの管理ラベルをオンデマンドで発行。きちんとID化を実施して、その後の各工程でコードをスキャンすることで、チェックと評価を同時にしながら記録のデータも即時的に集めるようにしました。

導入後の運用イメージ(生産現場) マルトモ株式会社様

導入後、こちらの会社からは次の声をいただきました。

〈お客様の声〉

  • 「アナログからデジタル化に移行したことで、現場作業員の抵抗感があるかと思ったが、スムーズに活用できている」
  • 「システム化することで運用ルール、手順が簡単に厳守できるようになった」
  • 「目視チェックや手書きがなくなった。また、手順が簡潔化したことで作業効率がアップした(計量・小分け)」
  • 「計量・小分け・投入が誰でもできるようになった。ヒューマンエラーもなくなった(先入先出、誤計量、誤投入)」
  • 「ミスが起こらない、起こさせないシステムで、作業者への精神的負担が軽減されている」
  • 「トレース調査時の作業が2〜3時間かかっていたが、5分程度で必要な情報が入手できている」

システム導入で品質確保と作業性向上を両立

当社の食品トレーサビリティシステム「Trace eye FOOD-Pro」についてもう少し解説させてください。このシステムは当社が2004年から提供しているものです。名前が示す通り、トレーサビリティを実現する仕組みを構築します。

製造業の現場業務支援を目的とし、原材料の入荷・在庫・計量・投入・出荷までをクラウドでつなげてサポート。入口から出口までしっかり支えるのが当システムの特徴です。また、その仕組みを作る過程において製造現場の作業効率も高めます。食品製造業の品質確保と作業性向上を両立するお手伝いできます。

Trace eye FOOD-Pro で実現できること

Trace eye FOOD-Proは現場起点のソリューションです。生産管理システムや製造実行システムと連携して互いの強みを発揮させると、生産プロセスの全体最適に大きく貢献できます。特に、スーパーカクテルCore FOODsは、食品製造業やプロセス型製造業に特化した製販一体型の統合パッケージです。これと現場支援のTrace eye FOOD-Proを連携させることで、トレーサビリティ強化や人的ミスの防止、煩雑な記録作業の軽減を実現できます。

スーパーカクテル × Trace eye FOOD-Pro で生産現場を改善

例えば、原材料の入荷においては、スーパーカクテルCore FOODsが現在の受注情報や発注リードタイムを考慮して購買計画を立案します。発注を確定すれば、そのデータがTrace eye FOOD-Proに送られて入荷予定の原材料となります。そして、この情報を基に検品作業を実施することになります。

また、入荷した原材料の箱などにQRコードが貼られている場合は、そのQRコードを読み取るだけで入荷検品をできるようにします。ラベルがなく、文字や数字だけの場合は、文字や数字を読み取ることができるOCR付きハンディーターミナルで機械的に入力して、同時にモバイルプリンターで原材料ラベルを発行して箱に貼り付け、倉庫に格納します。その原材料の入荷実績にかかわるデータ(商品名、数量、使用期限、ロットなど)はスーパーカクテルCore FOODsに自動で反映されていきます。

製造ラインにおいては、まずスーパーカクテルCore FOODsが生産計画を策定します。そして、最終調整されて確定された指示がTrace eye FOOD-Proに連携。計量指示、投入指示、完成予定に分解されて、現場の作業を支援します。

例えば、計量作業では製造指示書のQRコードを読み取ることから作業が始まります。指示書に基づいて、小分けや計量のチェックを行います。その場で小分けラベルを発行。この作業においては、原材料の使用期限切れや使用禁止、小分けの重量が誤っていないかが自動でチェックされ、問題があればエラーが表示されます。

計量した原材料を投入するときも、QRコードを読み取り、間違いのチェックや使用履歴データを記録します。誤った原材料を読み取った場合はすぐにエラー表示が出ます。

最後に、出来高を登録して、完成品用の管理ラベルを発行し貼り付けます。原材料投入情報と完成情報はスーパーカクテルCore FOODsと連携されるので、原材料の在庫は出庫されて製品在庫が入庫されたという形で処理されます。

また、計量時に読み込んだ原材料ロットのデータは完成時の製品ロットに反映されます。特定の製品ロットに問題があれば、すぐに使用原料をトレースできます。逆に、問題のある原料ロットを使用した製品の出荷先も短時間で割り出せます。

このように、スーパーカクテルCore FOODsとTrace eye FOOD-Proの連携により、製造現場における現物と情報を一致させることが可能になり、業務の効率化や生産管理精度の向上、トレーサビリティの向上を効果的に実現することができます。

当社は、さまざまな現場の課題を解決するソリューションをいろいろと提供しています。お困りごとがありましたら、ぜひご相談ください。

注)QRコード®は、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

食品業の経営者・マネージャーの皆さまへ

主な製品シリーズ

  • 文書自動配信サービス「AirRepo(エアレポ)」
  • 業種特化型基幹業務システム スーパーカクテルCore
  • 会議室予約・運用システム SMART ROOMS
  • 絆 高齢者介護システム
  • 絆 障がい者福祉システム あすなろ台帳

セミナーレポートやホワイトペーパーなど、IT・経営に関する旬な情報をお届けする [ ITレポート ] です。

PAGE TOP

COPYRIGHT(C) UCHIDA YOKO CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.