
本記事では、食品業における在庫管理の重要性や課題、効果的な管理方法について詳しく解説します。
1.食品業における在庫管理とは
食品業における在庫管理とは、食品や原材料、資材を適切に保管し、在庫を効率的に管理することを指します。
在庫管理が適切に行われないと、必要な製品や原材料が不足し、欠品による機会損失が発生する可能性があります。一方で、過剰に在庫を抱えると、食品廃棄の増加や高い保管コストが発生し、経営効率悪化を招いてしまいます。
そのため、食品業界においては、適正在庫を維持することが特に重要です。
2.食品業における在庫管理の課題
食品業における在庫管理は、賞味期限の管理、需要予測、保管場所の把握など、多くの課題を抱えています。以下で詳しく解説します。

1)賞味期限の管理が難しい
食品の在庫管理において、賞味期限の管理は最も重要かつ負担の大きい業務のひとつです。
賞味期限を記録し、チェックする作業には多大な工数がかかり、業務負担が大きいという課題があります。特に、品目数が多い倉庫や、仕入先から賞味期限情報が貰えない業態では、手作業での管理が多くなり、手順が煩雑になりやすく、その結果人為的なミスが発生するリスクも増します。
2)需要予測が当たらない
食品業界では、在庫切れや過剰在庫を防ぐために、販売データを活用し、需要に基づいた適切な生産・発注を行うことが重要です。しかし、流行や季節、天候などの影響を受けるため、正確な需要予測を立てることが難しいという課題があります。
また、急なブームが起こると、一時的に特定の商品が品薄になることもあります。こうした変動要因を考慮して需要予測を行っても、予測が外れることは珍しくなく、欠品や過剰在庫につながることがあります。
3)保管場所の管理が複雑
在庫管理では、「どこに何が保管されているか」を把握することが重要です。保管場所が分かりづらい場合、入出荷作業に時間がかかり、業務効率が低下する可能性があります。賞味期限管理を行う際には、保管場所を賞味期限ごとに分けることが望ましいですが、これが保管場所の把握を難しくすることもあります。
このような保管場所に関する課題を解決するためには、ロケーション管理を徹底し、商品の位置情報を適切に記録・管理することが必要です。
4)人手(人材)が不足している
食品業界に限ったことではありませんが、人手不足も大きな課題の一つです。食品の在庫管理は非常に細かい管理が求められますが、こうした業務を担う人材の確保が難しくなっているのが現状です。
特に、アナログな方法で在庫管理を行っている場合、人手不足によって業務の効率が低下しやすくなります。手作業での管理が続くと、在庫確認に時間がかかる、ヒューマンエラーが増えるといった問題が発生しやすくなります。非熟練者でも一定水準以上の作業ができるよう、現在アナログな手法で行っている業務については、システム化・機械化・マニュアル整備を進める必要があります。
5)保管コストが高い
食品の在庫管理においては、在庫の過不足を防ぐことがコスト管理の重要なポイントになります。特に、在庫状況を正確に把握できていないと、過剰在庫が発生し、保管コストが高騰するという問題が生じます。
また、増えすぎた在庫はスペースを圧迫し、作業効率が低下する原因にもなります。
6)必要なデータをすぐに取り出せない
在庫管理は単に倉庫内の在庫を把握するための業務ではなく、商品の需要予測や売れ行きの分析に基づき、生産指示や補充発注を行う重要な役割を担っています。
しかし、膨大な在庫データと実際の在庫に差異があり、必要な情報を正確に・迅速に抽出できないという課題を抱える企業もあります。加えて、サプライチェーンの川上に位置する企業の場合、川下での販売データを他企業から受領する必要があり、更に分析のタイムラグが発生することになります。
3.食品業における在庫管理の課題を解決する方法
食品業における在庫管理の課題を解決する2つの方法について、以下で詳しく解説します。
1)在庫管理システムを導入する
在庫管理システムを導入すると、在庫状況をリアルタイムに把握でき、保管場所の把握、適正在庫の維持が可能になります。入荷、出荷だけでなく、倉庫内の保管場所移動など、在庫に関わるアクションを全て記録します。そうすることで何がどこに置いてあるのかが正確に把握でき、システムと実際の在庫が一致します。得意先へ商品を出荷する際には、正しい賞味期限の在庫を出荷するよう指示が出され、人的ミスで誤ったものを出荷しようとした場合には警告を出します。
在庫管理システムの導入によって、在庫の管理精度が向上し、食品ロスを防ぐことができるほか、人的ミスの削減や業務効率向上を実現できます。また、正しい実績データの蓄積によって需要予測の精度向上が期待できます。
▼食品業向け在庫管理システム導入事例(新宿高野様)
新宿と共に135年。新時代に向けた「店舗・工場・物流が連動する基幹システム刷新」への道のり
2)トレーサビリティシステムを導入する
トレーサビリティシステムは、原材料の入荷から最終製品の出荷までの流通履歴を記録・追跡できる仕組みです。これにより、品質管理やリスク管理を効率化し、消費者の信頼を確保できます。現物へのソースマークと、システムでの履歴管理から成り立つシステムであることが大半で、原料入荷に始まり、計量・投入・完成など製造ラインでの作業、出荷など、各アクションをシステムで記録します。前述の在庫管理システムに機能が内包されているケースや、連携するケースもあります。
万が一の食品事故の際にも迅速な対応が可能になり、食品ロスの削減にもつながります。
▼食品トレーサビリティシステム導入事例(マルトモ様)
計量ミス・誤投入を防止
4.食品向け在庫管理システムに搭載されている主な機能
ここからは、食品向けの在庫管理システムに搭載されている主な機能を4つ解説します。
1)トレーサビリティ・賞味期限を管理する機能
食品業界では、原材料の仕入れから製造、出荷までの流通履歴を正確に把握し、品質管理を徹底することが求められます。そのため、在庫管理システムにはトレーサビリティ機能が搭載されており、「いつ・どこで・誰が製造し、どこへ出荷されたのか」を記録・追跡できます。
具体的には、賞味期限管理、ロット別管理、ロケーション管理などの機能があります。入荷・製造・出荷などの各伝票に、原材料や製品の賞味期限やロットが紐づけられるため、食品事故発生の際には迅速に出荷先や関連原材料・製品の特定ができます。
2)入出庫を管理する機能
倉庫では日々、原材料や製品の入出庫が行われ、在庫が常に変動しています。しかし、入出庫管理が適切に行われていないと、システム上の在庫数と実際の在庫数がズレてしまい、欠品や過剰在庫の原因となることがあります。また、システム上の在庫を見て販売や発注の判断ができなくなることで、営業や購買のオペレーションコスト増にも繋がります。
手作業での管理はミスを引き起こし、正確な在庫数の把握が難しくなるため、通常の入荷・出荷の管理に加え、入出庫、引当、預け・預かり在庫の管理などもシステム化することが有効です。
3)機器連携機能
賞味期限やロットごとに履歴や置き場所を管理するにあたり、ハンディターミナルをはじめとする物流オペレーション機器との連携が有効に働く場合があります。在庫管理システムには、各現場に適した機器とのデータ連携によって、現場の作業効率化を実現する機能が備わっています。
- 食品向け在庫管理システムの機器連携機能の例(スーパーカクテルCoreFOODs 物流オプション)
4)適正在庫を管理する機能
在庫は、多すぎると保管コストが増加し、少なすぎると急な注文に対応できず機会損失が発生するため、適正な数量を維持することが重要です。特に食品業界では、賞味期限や消費期限に余裕をもって出荷することが求められるため、適正在庫を維持しながら無駄を減らす管理が求められます。
在庫管理システムには、適正在庫数を管理し、最適な在庫量を維持するためのサポート機能が搭載されています。
5.食品業の在庫管理をシステム化するメリット
食品業における在庫管理をシステム化することで得られるメリットについて解説します。
1)フードロスの防止に繋がる
在庫管理システムを導入することで、リアルタイムで在庫データを把握し、商品の賞味期限や状態、置き場所を正確に管理できます。
また、在庫の過剰な発注や適切でない保管による廃棄ロスを最小限に抑え、フードロス削減の実現に貢献します。
2)品質・食品安全性が高まる
食品の安全性を確保するためには、賞味期限や鮮度の管理を徹底することが不可欠です。在庫管理システムを導入することで、リアルタイムで情報を追跡でき、古い在庫の流通を防ぐことで、商品の品質維持が可能になります。また、有事の際の初速を速めることで、事故の影響範囲が広がることを防ぎ、早期に原因を特定して対処することができます。
品質管理が向上することで、食品関連のクレームや健康被害のリスクを低減し、結果として顧客満足度の向上にもつながります。
3)業務の効率化に繋がる
在庫管理システムは、リアルタイムにデータを収集・提供し、手作業による在庫管理の煩雑さを軽減します。手入力によるミスを防ぎながら、より正確な在庫管理が可能になり、人為的なエラーを削減できます。非熟練スタッフの作業効率を引き上げることができる点も重要です。
その結果、作業負担が軽減され、全体の業務効率が向上し、コスト削減と収益の最大化につながります。
6.食品業の在庫管理をシステム化する際の注意点
食品業の在庫管理をシステム化する際には、自社の業務フローに適したシステムや運用方法を選定することが最優先となります。特に現場作業の記録はシステムの要となりますが、工数が大きいため、実際にどのような運用ができるかの検証や、現場に合った機器を使って自動的に記録ができる環境を整える工夫が必要です。
また、新しいシステムを導入しても、スタッフが適切に操作できなければ十分に活用することはできません。さらに、特定の担当者に依存した運用になってしまうと、その担当者が不在になった際にシステムが適切に機能せず、在庫管理が滞るリスクが高まります。
そのため、複数のスタッフがシステムを活用できる体制を整え、運用の属人化を防ぐことが重要です。自社の言葉でマニュアルを作成することや、教育体制にも気を付けるとよいでしょう。
7.まとめ
食品業の在庫管理は、賞味期限の管理、需要予測の精度向上、人手不足の解消といった課題を克服することで、フードロス削減や業務の効率化につながります。特に、在庫管理をシステム化することで、リアルタイムでの在庫状況把握や適正在庫の維持が可能になり、欠品や過剰在庫を防ぐ仕組みを構築できます。
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