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【食品ITフェア2026 オンライン】 標準でつなぐ原材料、仕組みで守る食品工場
−GS1標準バーコードによる識別と、入荷〜出荷の一元管理で確実化する−

2025/5/18 [食品,セミナーレポート]

食品原材料・資材の管理効率化とトレーサビリティ確保をテーマに、GS1標準バーコードの活用方法をご紹介します。日付情報やロット番号をバーコード化し、業務効率化と安全性向上を実現するガイドラインを解説します。

GS1 Japan (一般財団法人流通システム開発センター)
ソリューション1部 グロサリー業界グループ グループ長
岩崎 仁彦 氏

入所以来、世界110以上の国・地域が加盟するGS1国際標準の策定・維持管理に従事。国内普及も担当し、製造・卸・小売およびソリューションプロバイダーへの導入支援を通じて、サプライチェーンの効率化を推進。
* 部署、役職は収録時点

株式会社サトー
国内営業本部 ソリューションビジネス統括部
ソリューション推進部 企画推進運用グループ グループ長
渡辺 真 氏

<前半>

GS1が提案する「標準」

この講演では、前半はGS1 Japan(一般財団法人 流通システム開発センター)、後半は株式会社サトーが担当します。

GS1はベルギーに本部を置く標準化団体であり、「共通ルール」を提供する組織です。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで商品を買うときに目にするバーコードも、その代表的な成果の一つです。バーコードの数字の付け方やシンボルには国際的な規格があり、私たちはすでにその「標準」を日常的に利用しています。

本日は、標準そのものの詳細ではなく、「標準を活用することで、いかに業務効率を高め、利益につなげるか」という観点でお話しします。

食品業界で求められていること

現在、食品業界には大きく3つの課題があります。

  • 現場の省力化(人手依存からの脱却)
  • 根拠ある記録の保持と即時提示
  • 企業間・企業内でのデータ連携

食品業界では、目視・手書き・転記といった作業が依然として多く残り、効率化とミス低減の両立が課題となっており、この手作業をシステム化することが必要です。そこで我々GS1が提案するのが、二次元シンボルを活用した「読み取り・照合・記録」の仕組み化です。

また、10〜20年前と比べると、情報量は爆発的に増加しており、消費者が自ら情報を発信するチャネルも飛躍的に増えています。このような変化の中で、企業には、何か起きた際に、根拠のある記録を速やかに提示し、説明することが強く求められるようになっています。これは、自社のビジネスを守るだけでなく、そのデータを活用して競争力を築くうえでも有用です。

さらに、今のサプライチェーンは国際的に複雑化しています。非常に高度なオペレーションを行っている企業も増えていると感じています。複雑化するサプライチェーンの中では、企業間・企業内でデータをつなぐことが重要です。そして、こうしたデータをDXやAIで活用していくためには、構造化データとして整備することが重要です。

全体最適の起点は「識別と記録の共通言語」

効率性を上げる二次元シンボル

特に効果が大きいのが、「入荷を起点とした二次元シンボルの活用」です。

原材料や資材の入荷時には、以下の情報を一度に扱う必要があります。

  • 品目・仕入先
  • 注文内容との照合
  • 賞味期限
  • ロット番号・シリアル番号

これらを人手で処理すると、工数の増加やミスのリスクを避けることはできません。さらに、入荷時に誤入力が発生すると、その後の工程はすべて誤った情報に基づいて進んでしまいます。作業自体は手順どおりに行われていても、元となる情報が誤っているため、その誤りに気づくまでに時間がかかり、結果として手戻りが増える可能性があります。

入荷の誤記録は後工程に波及する

ここで二次元シンボルを活用し、入荷時点から情報を読み取り・照合・記録していくことで、正確な情報が工程全体に引き継がれます。品質低下や効率低下を生み出すミスを減らせるようになるでしょう。

二次元シンボルを活用するメリットは、主に三つあると考えます。

  • 入力作業の削減
    スキャンだけで入力が完了し、工数を削減
  • ミスの防止
    誤った作業はシステム上でエラーとして検知可能
  • 記録の自動化
    証跡を即座に取り出せる状態で蓄積

加えて、従業員の心理的負担の軽減という効果も見逃せません。

二次元シンボルの活用:受け取り側のメリット(入荷)

二次元シンボルを用いるメリットは、品物を送り出す出荷側(売り手側)にもあります。
二次元シンボルを製品に付すことで、

  • 出荷ミス(品目間違いやロット・日付逆転)の防止
  • 出荷履歴の自動記録
  • トレーサビリティの迅速化

が実現します。

さらに、上流のサプライヤーから問題の報告があったときも、回収時の対象範囲をすぐに絞ることができ、損失を抑えることが可能です。また、この出荷データは自社の売り上げの分析やロジスティクスの分析においても有用です。

二次元シンボルの活用:出荷側のメリットは?

標準化することの重要性

二次元シンボルには、多くの情報を入れられるため、受け手側(買い手側)は出荷側(売り手側)に対して「二次元バーコードに自社の工場名や特別コードなどさまざまな情報を入れてほしい」とリクエストしたくなります。しかし、ここは少し立ち止まって考えていただきたいところです。

特定企業だけの要件を反映すると、そのラベル、ひいては対象商品自体が「汎用品」ではなく「専用品」となり、他社では使用できなくなります。仮に、売り手側が複数の買い手企業に対して、それぞれの要望に合わせた専用ラベルを作成することになれば、対応負担は大きくなります。その結果、最終的には「対応できません」という判断につながる可能性があります。

なぜ「標準化」が必要なのか? 〜個別リクエストの限界〜

ここで重要となるのが、「標準化」です。では、なぜ標準化されたフォーマット、つまり標準フォーマットが必要なのでしょうか。主に三つの理由があります。

1つ目は、取引先ごとの個別対応を減らせることです。共通仕様に一本化することで、取引先ごとの個別対応や処理の分岐を抑えることができます。なお、私たちが提案している「標準」は公開されており、誰でもダウンロードできます。

2つ目は、データが「標準」に基づいていれば、システムが変わっても意味が通じやすいことです。標準コード体系によって意味と形式が統一されていれば、システムの更新やリプレイスがあっても、データ連携がしやすくなります。

3つ目は、将来的に必要となる要件を追加しやすいことです。対象範囲の拡大や追加項目が必要になった場合でも、「標準」を土台としていれば、対応しやすくなります。

もちろん、すべてのシステムを「標準」だけで組み立てなければならない、ということではありません。基盤となる部分で「標準」を活用し、その上で各社の業務や目的に合ったシステムを構築していただくことが重要だと、標準化団体であるGS1は考えております。

「標準」で共通言語を作る

企業間のデータのやり取りで必要になるのは、相手が変わっても同じ意味で解釈できる「共通言語」です。二次元シンボルの場合、この共通言語は次の3点で構成されます。

  • 標準識別コード:GTIN(JANコード)
  • 識別コードの定義:GS1アプリケーション識別子
  • 標準の二次元シンボル
共通言語を作る:同じ意味で“読めて、記録できる”状態へ

「標準識別コード」とは、世界共通で利用されている標準の商品識別コードであるGTIN(Global Trade Item Number)を指します。日本では、このGTINが一般に「JAN(Japanese Article Number)コード」と呼ばれています。GTINは、POSレジで読み取るためだけの専用コードではなく、商品を識別するための標準コードです。また、コード番号の「桁数」や「番号の割り当て方」が共通のルールとして定められています。

標準識別コード

また、「識別コードの定義」とは、具体的にはデータの意味を示す「GS1アプリケーション識別子」を指します。これを用いることで、日付情報やロット番号、シリアル番号などのデータを、「標準」に沿った形でシンボルに入れることができます。仕組みは比較的シンプルです。例えば、賞味期限を入れる場合は、先頭に賞味期限を表す「15」を付け、その後に6桁の数字を続けます。具体的には、「(15)260320」のように表します。

識別コードの定義:GS1アプリケーション識別子

このように標準化を図ることで、企業間・システム間でデータをスムーズにやり取りできるようになります。例えば、賞味期限などの日付データをシンボルに入れる場合、標準化されていないと、「2026.3.20」「20,3,2026」「20 Mar 2026」など、さまざまな形式で表される可能性があります。その結果、システム間で正しくデータをやり取りできなくなるおそれがあります。
一方、GS1アプリケーション識別子は、データの意味や形式を示すための標準です。これに従えば、どの国でも賞味期限は「(15)260320」のように表すことができます。これにより、コンピュータが処理しやすくなり、正確かつ迅速に情報交換を行うことが可能になります。

桁数・可変長・表記方法などが統一(標準化)されている

GS1二次元シンボルの活用事例を一つ紹介します。
六甲バター株式会社様では、生産した製品を入れた段ボールに、二次元シンボル(GS1 QRコード)を生産ライン上で印字しています。この二次元シンボルには、商品識別コード(JANコード)に加えて、製造日などの日付情報やロット番号などの情報が、GS1の「標準」に沿った形で入れられています。
同社では、この二次元シンボルを活用し、パレットに段ボールを積み付ける際に、ロット違いや日付違いが生じないよう管理しています。これにより、トレーサビリティも実現しています。

GS1 二次元シンボル導入効果は実証済み:六甲バター活用事例

GS1Japanでは本日紹介した内容のガイドラインを無料で公開しています。ぜひご参照ください。

バーコード表示と企業間活用を、手順と注意点で整理

注)本資料の画像の一部には生成AIによって生成・加工した画像を含みます

<後半>

加工食品メーカー様における標準化ラベルの活用

ここからは、「加工食品メーカー様における標準化ラベルの活用」と題し、株式会社サトーより具体的な取り組みをご紹介します。

まず当社の概要です。株式会社サトーは1940年創業、本社を東京都港区に置き、ラベルプリンターをはじめとする自動認識ソリューションの企画・開発・製造・販売を行っています。特長は、単体製品ではなく、周辺機器を含めた総合的なソリューションとして現場に提供している点にあります。

会社概要 株式会社サトー

当社のブランドステートメントは「あらゆるものを情報化して、社会のうごきを最適化する。」というものです。

当社は、あらゆるモノやヒトに情報をひも付け、その動きを可視化することで、現場ごとに最適な課題解決の仕組みを提供します。この情報のひも付けを、当社は「タギング」と呼びます。このタギングには「与える」「つなぐ」「活かす」の三つのステップがあります。単なる情報化ではなく、その情報をしっかりとつないで活かすことが、結果的に現場や社会の最適化を支援できると考えています。

目指す姿

標準化されたラベルの運用ポイント

加工食品メーカー様におけるタギングの活用のキーポイントは、本講演の前半にも出てきた「標準化」です。

加工食品メーカーの現場では二次元シンボルのQRコードが多用されています。まず、このQRコードを用いてモノと情報をひも付けることが、タギングの第1ステップ(「与える」)です。次に、そのQRコードをスキャンし、正誤チェックと作業記録を蓄積する第2ステップ(「つなぐ」)へ進みます。そして、蓄積されたデータを使う「活かす」段階へと発展していきます。

加工食品メーカー様で多く見られるのは、トレーサビリティの強化への活用です。タギングをすることで、根拠のある記録を提示できるようになります。

標準化されたラベルの活用方法

■「与える」:情報付与のポイント

最初の「与える」のステップで重要なのは、QRコードに入れるデータが何を表しているのかを標準化で明確にすることです。データの桁数やフォーマットがGS1の「標準」で決まっているので、それに基づけば細かな調整が不要となり、企業間やシステム間でのやり取りがスムーズになります。

加工食品の製造現場では、単純にラベルにQRコードを印字して貼るということが難しいというケースがあります。例えば、食品の製造現場では異物混入が大きな課題です。シールのようなラベルでは、台紙がゴミとなるので、異物混入のリスクが高まります。そこで、台紙のないラベル(「ノセパラベル」)を使っていただくことで、このようなリスクをなくせます。

また、あえてラベル内部に金属のアルミを入れておき、万が一食品に混入してしまった場合には金属探知機で検知ができるというラベル(「メタルサーマル」)もあります。当社は、このようなラベルをプリンターから消耗品まで自社で生産しています。

運用のポイント 「与える」:情報付与のポイント

■「つなぐ」:情報連携のポイント

「つなぐ」のステップでも、製造現場で運用するにあたってのポイントがあります。

例えば、入荷した原材料の箱に標準化されたラベルが貼ってあっても、作業をするときは開封して中に入っている小袋を使うというケースがよくあります。そういった場合には、外装の箱に貼ってあるラベルの情報をしっかりと小袋に継承していくことが大事です。このとき、モバイル型のプリンターがあれば、情報をつなぎながらラベルを打ち出して、すみやかに小袋に貼っていくことができます。

製造現場では、入荷した原材料が製造プロセスの中で形を変えながら動いていきます。この変化や動きに合わせて、オンデマンドでラベルを発行して、情報をリレーさせていくことがポイントです。

運用のポイント 「つなぐ」:情報連携のポイント

■「活かす」:データ活用と改善

「活かす」のステップでは、多くの食品加工メーカー様がトレーサビリティの強化に取り組みます。これまでのステップで蓄積したデータを使えば、情報が「見える化」されます。このメリットを活かします。

当社のソリューションのダッシュボード機能では、製造現場でエラーがどこでどれだけ起きているかを可視化できます。このエラーは、システムが人の作業ミスを防いだことを意味します。また、この「見える化」から「気づき」を得て、「改善」につなげるというサイクルを回していくことで、作業ミスの発生が少ない環境を実現できます。加えて、作業者の精神的な負荷を下げたり、属人化を解消したりなど、より生産性の高い製造現場に変えることも可能になります。

運用のポイント 「活かす」:データ活用と改善

導入事例(マルトモ株式会社様)

導入事例を一つ紹介したいと思います。

愛媛県に本社を置くマルトモ株式会社様は、だしやつゆを製造している加工食品メーカーです。詳細については当社のウェブページで公開しているので、ぜひ参照してください。ここではポイントを絞って説明します。

こちらの企業では、製造プロセスにおいて、いわゆる「手書き運用」をしていました。そのため、どうしても誤計算や誤投入が発生してしまい、原料の廃棄コストが課題となっていました。また、一部の工程が属人化してしまい、その状態が人手不足という課題も生み出していました。さらに、紙媒体によるトレース管理も非効率的なものでした。

導入事例(マルトモ株式会社様)

そこで、標準化された二次元シンボルのラベルを用いたソリューションを導入しました。すると、ヒューマンエラーがゼロになり、属人化から脱却でき、誰でも高品質な製品の製造ができるようになりました。さらに、デジタル化によってトレーサビリティも向上したという喜びの声もいただきました。

マルトモ様に導入いただいたソリューションは当社の「Trace eye FOOD-Pro」でした。2004年から続く、当社のトレーサビリティソリューション「Trace eyeシリーズ」の最新モデルです。製造現場の業務支援を目的としたもので、原料の入荷から在庫、計量・投入、出荷までをサポート。顧客特有のニーズにも柔軟に対応可能なテンプレート型パッケージになっています。「Trace eyeシリーズ」については、現在までに85社96工場に導入されています。

この「Trace eye FOOD-Pro」を導入することで、モノに情報を与え、要所要所で情報をつなぐことによって、作業品質の確保や作業性の向上を実現できます。

また、この現場起点のソリューションを、生産管理システムや製造実行システムと連携させることで、生産プロセスの全体的な最適化に貢献することもできます。例えば、生産管理システムの「スーパーカクテルCore FOODs」と「Trace eye FOOD-Pro」を連携させることによって、生産現場の改善がさまざまにできると考えています。

「スーパーカクテル」×「Trace eye FOOD-Pro」で生産現場を改善

当社は、「Trace eye FOOD-Pro」をはじめ、いろいろな現場の課題を解決するソリューションを用意しております。お気軽にご相談ください。

▼ご興味がある方は製品紹介をご覧ください
食品トレーサビリティシステム「Trace eye FOOD-Pro」

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