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興人ライフサイエンス株式会社 |
※2026年4月収録のセミナーを講演録として掲載しております。
本日は、化学品・化粧品ITフェア2026という場で、私が製造業に身を置きながら実践してきた取り組みについてお話しします。特別なコンサルタントを入れたものではなく、私自身の経験と、現場で試行錯誤しながら積み上げてきた内容です。
テーマは「本質へのアプローチでスマート化へチャレンジ」です。
スマート化というと、AIや最新ITの導入に目が向きがちですが、私はそうは考えていません。本質に向き合い、「見える化」のレベルを上げていくこと――その結果としてスマート化は実現すると考えています。
まず簡単に、私たち興人ライフサイエンス株式会社についてご紹介します。
弊社は大分県佐伯市に拠点を置き、東京ドーム約13個分という広大な敷地で操業している製造会社です。
1953年に溶解用パルプ工場としてスタートし、事業再編を経ながら、現在は酵母を中心とした微生物発酵技術を核に、食品素材や医薬・飼料分野向けの機能性素材を製造しています。特に、酵母エキスやヌクレオチドなどの製品は、天然由来の価値を活かした素材として国内外で幅広く利用されています。
私は1980年に社会人としてスタートしました。当時は、コンピュータはまだ専門家のもので、OSはテキストベース、技術計算の為にプログラムも自分で書くというような時代でした。
その後、PCに Macintosh や Windows といったGUIのOSが搭載され、個人の仕事のツールとして広まりました。当時のObject指向という概念に感銘を受けたのを覚えています。
表計算は Lotus 1-2-3、その後 Excel が登場し、インターネット、ERP、クラウド、そしてAIへと時代は大きく変わりました。
私自身も、統計解析から始まり、業務システム開発、ERP導入、クラウド活用、現在は工場のスマート化と取組は変わりましたが、振り返ってみるとデータを集め、分析し、次のアクションにつなげる。これが、今も昔も変わらない実現したいこと、仕事の本質だと感じています。
2018年に佐伯工場に異動し、工場オペレーションの最適化に取り組みました。
製造業が求めるものは昔から変わりません。
これらはすべて、「最適なオペレーションの積み重ね」によって実現されるものです。
ところで、「オペレーション」とは何でしょうか。私は「状況を把握し、必要な情報と能力を使って、最適な対応を行うこと」と定義しています。
つまり、オペレーションの質が上がれば、工場全体の能力も上がるということです。
多くの現場では、「今のやり方」を前提にして物事を考えています。しかし、その“現状の正常”は、本当に正しいのでしょうか。私はこう考えています。「現状の正常とは、テクノロジーの制限によって妥協した姿にすぎない」と。
これを本来の姿に持っていくには、その本来の姿の描き方(アプローチ)と描く道具(ツール)、これと自身のスキルアップ、これらを合わせることで、本来の姿が実現できると考えています。
例えば、現場でトラブルが起きたとき、従来はどうしているでしょうか。
この一連の流れには、数時間から数日かかります。つまり「結果を見て判断する」世界です。
しかし、IoTやデジタルツイン、エッジコンピューティングを使えばどうなるか。
つまり、「発生から対応までがリアルタイムになる」のです。
これが本来の姿です。
スマート化を進める上で最初に重要なのは、ターゲットは手段ではなく目的であるということです。
多くの改善活動は、「時間短縮」や「効率化」といった“手段”にフォーカスしています。しかし、それでは本質的な改善にはつながりません。
ターゲットをオペレーションにした場合は、生産活動本来の目的に対して効果があります。
本来の目的は何かといえば、
この精度を高めることです。
目的にフォーカスすれば、結果として時間短縮や省力化もあとからついてきます。
もう一つ重要なのは、「管理の手法」ではなく「管理する内容」に目を向けることです。
製造業では、管理強化という言葉がよく使われます。しかし、管理そのものが目的になってしまっているケースが多いと感じています。
本来やるべきことは、状態を正しく判断し、最適な状態に持っていくことです。4M(マテリアル、マシン、マン、メソッド)の変化や顧客からの要望品質が多様化する中で、評価基準や条件の見直しにターゲットを向ける必要があります。
そのためには、
といった要素をモデル化し、判断できる仕組みが必要です。
今、現場で使っているツールを思い浮かべていただきたいのですが、多くの場合、
こういった使い方になっていると思います。一見すると「情報共有している」ように見えるのですが、本当にそうでしょうか。
実際には、情報がバラバラに存在していて、関連情報が紐づかない 、リアルタイム性がない、検索がしにくい、転記や再入力が発生するなど、情報活用が困難な状態になっているケースが多いと思います。
つまり、これらのツールは「共有」のためのものではなく、個人の作業を整理し、保管するためのツールにとどまっているということです。
Excel自体は進化していますが、使い方の発想は20年前と変わっていない。ここに問題があります。ではどうするかというと、発想そのものを変える必要があります。
これからの情報共有は、
そういった「情報活用のためのプラットフォーム」に変えていく必要があります。
では、こうした取り組みを進めた先に、どのような工場になるのか。いわゆるスマートファクトリーの姿についてお話しします。
私がイメージしているのは、一言で言えば、リアルタイムに情報が共有され、判断と対応がその場でできる工場です。
見える化も段階的に進化します。「状態が見える」、次に「正常か異常かが見える」、さらに「原因が見える」、そして「どう対応すべきかが見える」とレベルアップし、最終的には、未来が見える。つまり、結果を予測できる状態になります。
では、こうした環境になると、人の仕事はどう変わるのか。
従来は、情報収集、検討、報告のサイクルがシリアルで行われていました。つまり前の作業が終わらないと次が始められないイメージです。
しかし、スマートファクトリーでは、情報がリアルタイムで自動的に集約され、連携して定型処理まで自動実行されるようになる。すると前の処理を待つ必要がなくなりパラレルに、ジャストインタイムで仕事が行われていくというイメージです。
これまでの話を踏まえて、取組におけるアプローチの基本を書き出してみました。
その中でも基本中の基本が、(1)情報、データは発生した時点で取得、共有可能を求めていく事です。そしてそれを生かすのが、(5)形式知化、オブジェクト化、モデル化です。情報、データと事象を関係付ける非常に重要なアプローチです。
以下は、オブジェクト化、モデル化のイメージを図式化したものです。
暗黙知のままでは、プロセスの良し悪しをデータから判断することができません。結果の良し悪しは評価できますが、それが本当に最適だったのかまではジャッジできません。
そこで重要になるのが、オペレーションと設備、この両方をきちんと「オブジェクト」として定義することです。そのうえで、状態を確認するモデル、正常・異常を判断するモデル、将来を予測するシミュレーションモデルを構築します。
生産計画からタスクが展開されると、対象となるオブジェクトとパラメータが自動設定され、それがそのままオペレーションの指標として機能していきます。
これは本来あるべきプロセスの姿を考えるうえで、非常に重要な工程だと考えています。
システム構成として考えるのは、要件定義で確定した機能を使い続けるものでなく、変化、進化することを前提として、3つの基盤を中心にしています。人がタスクを処理するする①アプリ、マスタ基盤、設備を中心に発生するデータ、情報を収集する②IoT基盤、それらを統合し、生産活動として情報、データ提供する③データ活用基盤です。その結果をERP等基幹処理システムに連携するイメージです。
また、クラウドとSaaSを活用による最新IT、進化への追従、、内製化による変化への追従を可能にしています。
オペレーションの最適化を求めていく上で、それの精度を上げていくのが、生産エンジニアであり、従来の学術的アプローチに加え、データサイエンス、最新IT活用スキルを持ち合した人材を目指すべきと考えます。
詳しくは専門的になりますので、またの機会があればと思っています。
重要なのは、実課題にそのアプローチで取組む事であり、机上の知識ではありません。
弊社では、そのようなアプローチを身につけるための専用ツールと、それを利用した課題解決に専門家からの支援サービスを活用しています。(以下の図をご参照)。
私がこれまで経験してきた中で、変わらないものがあります。
それは、「課題があれば、データを集めて解決する」ということです。
ツールは進化しましたが、周囲を見ると仕事のやり方は意外と変わっていない。なぜみんな疑問に思わないのだろうか、そんな思いが私のDXスマート化の取り組みの出発点です。本日の内容が、皆様の現場を見直すきっかけになれば幸いです。
化学品製造業・卸売業のビジネス課題解決のヒントに!