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【UCHIDA ビジネスITオンラインセミナー 福祉版】 第2部:令和3年度 報酬改定の動向について 〜個別サービスの動向(障害児支援・相談支援編)〜

2021/11/5 [福祉,セミナーレポート]

本記事は「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定(厚生労働省)」に関するオンラインセミナーの講演録(全3部)です。第1部では報酬改定の全体像についてお話ししました。第2部は、個々のサービスの動向、中でも障害児支援と相談支援に着目してお話しいたします。
4月から、障害児通所・入所支援、計画相談の報酬が非常に大きく変わっています。今後の事業所運営にも大きな影響を及ぼすはずですので、しっかり理解していきましょう。

一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会
常務理事兼事務局長 又村 あおい 氏

前職は神奈川県平塚市役所福祉部勤務。障害児福祉制度全般や、権利擁護施策、障害児者支援を通じた地域づくりなどが主な活動分野。主な著書に『あたらしいほうりつの本』(全国手をつなぐ育成会連合会発行)など。

相談支援(計画相談・障害児相談)における報酬改定の方向性

大胆に改善された計画相談。一挙に黒字転換も?

従来は、相談支援は大事だから赤字覚悟でもやってきたという事業所が大半だったのではないでしょうか。しかもほとんどが一人職場で、相談専門支援員の人件費もカバーできず、赤字の大半を事業所が背負っている、そういう状況だったのではないでしょうか。しかし、今回の改定によって、相談支援は、法人事業所の事業の柱になるのでは?というくらい、思い切った改定になっています。

報酬改定は3年に1回行われます。前回、平成30年度の改定でも、相談支援は大幅に改定され、これで黒字に転換できるのではという期待がありました。しかし、なかなか加算を取りにくい、あるいは、最初にまず人員をそろえてからでないと加算がつかない、初期投資をしなければならないことから、使える事業所が少なかった。しかし、その問題が今回の改定で一挙にクリアされました。

(1)計画相談・障害児相談

スライド資料:計画相談・障害児相談

注目してほしいのは、1、2の項目です。

まず、1項の「特定事業所加算を廃止したうえで『機能強化型サービス利用支援費』として本体報酬に組み込み」とは、言い換えると、加算手続きをしなくても「機能強化型サービス利用支援費」がつく。従来のように加算手続きをしなくても、人員配置などの条件さえ揃っていればベースの報酬額が上がるということです。

さらにすごいのは、2項の「専従の相談支援専門員の配置」についてです。従来は、専従の相談支援専門員を常勤で2名以上配置しなければなりませんでしたが、専従であれば1人が常勤、もう1人は非常勤でも上位報酬の対象になったことです。

2人の常勤雇用が難しかった事業所も、1人は非常勤で良いとなると、かなり雇いやすくなるはずです。上位報酬も取りやすくなるのではないでしょうか。

さらに注目したいのが3項です。「複数の事業所で連合を組み、一定の条件を満たせば、より上位の報酬が得られる」ことになりました。

たとえば、常勤1人、非常勤1人の事業所では、機能強化型サービス利用支援(Ⅳ)にしかなりませんが、他の事業所と合体することで、見かけ上、常勤2人、非常勤2名になり、1ランク上の(Ⅲ)に上がる。連合する事業所数に制限はないので、4つの事業所と連合して、常勤4人、非常勤4人にすることで、最も単価の高い機能強化型サービス利用支援(Ⅰ)になることも可能なのです。
ただし、そのためには連合を組むすべての事業所が地域生活支援拠点の指定を受けている必要があります。

スライド資料:計画相談・障害児相談-2

4項の「主任相談支援専門員配置加算」は、主任相談支援専門員を配置して、職員向けに研修を行う体制があれば、100単位が上乗せされます。体制加算ですので、主任相談支援専門員がいるだけで、全てが1,000円増しになります。

5項の「初回加算」は、わかりやすく言えば、新しいサービス利用しようとしている人を、相談員が何度も訪ねたり相談をしたりしてサービス計画案を交付するまでに3カ月以上かかり、4カ月目以降に月2回以上の個別対応を丁寧にやった結果、ようやくサービス等利用計画の作成になった場合、4カ月目以降は初回加算を算定でき、サービス等利用計画の作成月には倍額の初回加算がとれるというものです。

6項の「集中支援加算」もインパクトがあります。従来は、あらかじめ半年に1回とか3カ月に1回など決まった回数、相談員がモニタリングを行うときは、モニタリング費用が加算されていましたが、クライアントによっては決まった日だけでなく何度も来てほしいと言われる場合があります。従来は、その分は無償だったものが、改定によって「集中支援加算」として3,000円もらえるのです。
また、計画決定月以外に、臨時のサービス担当者会議を開いたという場合、従来はこれも無償でしたが、同様に、「集中支援加算」として3,000円がもらえるようになりました。

しかし、この改正のポイントは、単に加算がもらえる、ということだけでなく、頻繁に予定外のモニタリングが発生するということは、そもそもモニタリング回数の設定がおかしいのではないか、ということにも今後はつながるのではないかと思います。

7項の「居宅介護支援事業所連携加算」は、介護保険への移行について加算するものです。たとえば、障害のある人が介護保険に移るといったケースで、ケアマネージャーに情報提供や引継ぎをする場合、300単位、あるいは専門文書の作成で100単位が加算されます。

8項の「保育・教育等移行支援加算」は、7項と同様で、就学、進学、就職等にともない、障害者福祉サービスの利用を終了し、次のステップに紹介した場合も300単位の加算がとれます。

10項の「ピアサポート配置の加算」は、第1回でも述べましたので簡単に説明しますと、ピアサポーターを常勤換算で0.5人以上置いた場合、相談業務に関わっているかどうかに関わらず、全部100単位加算されるというものです。

これらの加算を積み上げていくと、相当な額になります。
下の表を見てください。

サービス利用支援費は、従来は14,620円だったものが、機能強化(Ⅳ)(Ⅲ)で15,220円、つまり1件当たり780円上がります。さらに、常勤1名、非常勤1名の2名体制になると、16,220円に上がります。他の事業所と連合して、常勤専従が4人以上になると、18,640円の単価になります。さらに、専任相談支援専門員がいれば、全部1,000円増し、ピアサポーターがいれば全部1,000円増しになります。
モニタリングも上位報酬が取れれば1件18,000円に上がります。
その上、過去の報酬改定でついた加算も全部生きています。

前回の改正では、私は、「相談支援は、設備投資と思って常勤の人を配置し赤字覚悟で増やしましょう」と言っていました。しかし、大変だからやれないという事業所が大半でした。

でも、今回の報酬改定では、常勤が1人いれば、さらに新しい常勤の人を雇う必要はありません。非常勤でいいのですから、はるかに雇いやすい。その上で、仲間になってくれる相談事業者を探す。連合体を組めるか組めないかが成否を分けます。ここが、今回の報酬改定のキモです。

これまで赤字だけど大事だから仕方がないといって相談支援をやってきた事業所こそ、今回の加算は利用してほしい。今までの加算も全部生きていますから。相談支援を収益の柱にしてくださいとまでは言いませんが、赤字からは脱却できるはずです。ぜひ生かしてください。

障害児通所(医療的ケア)・短期入所における報酬改定の方向性

(1)障害児通所

一般型・重心型に加え、「医療的ケア児」という類型が新設される

障害のあるお子さんについて、前回の報酬改定の目玉は医療的ケアでした。今回も、医療的ケアが非常に重視された改定となっています。

スライド資料:障害児通所(児童発達支援・放課後等デイ)

1項は、基本報酬区分に「医療的ケア児」というサービス類型を新設するというものです。従来は、重心型(重症心身障害児を通わせる事業所)と一般型しかありませんでした。ここに、ケースによっては重心型より単価の高い「医療的ケア児」型が加わったのです。医療的ケア児は、重症心身障害児ほど重症ではなく、自分で動き回れるが、見守りやケアが必要な児童です。従来は、これらの児童も一般児童と同等の報酬単価で、余分にかかる見守りやケアに対して、加算がありませんでした。今回、医療的ケア児が新設され、新たな判定スコアができたことは大変大きなインパクトがあると思います。

2項の「看護職員加配加算」については、「医療的ケア児区分」ができたことにより、一般型事業所は廃止、重心型については、医療的ケア児全員の合計点数で加算対象を判断することになりました。以前は重度の障害のある児童の数に対して加配加算がされていましたが、事業所全体の点数になったことで、加配加算がとりやすくなりました。たとえば複数のケアが必要な児童が3人と、それほどケアが必要ではない児童3人がいた場合、これまでは看護職員加配の加算はとれず、もし加配した場合の人件費は持ち出しになっていました。改定後は、人数は少なくても、医療ケアがたくさん必要な子がいれば、点数が高くなり、看護職員の加配にお金がつくようになりました。

3項は、看護職員を、児童指導員等の員数に含めてよいというものです。以前は、看護職員が3人、保育士・児童指導員が4人いる場合、4名しか員数に含められませんでしたが、看護職員も通所の職員扱いにして良いという特例です(ただし看護職員の半数以上が保育士または児童指導員であることが条件)。

以下は、医療的ケア児に対する支援の全体像を示したものです。
とくに障害児の通所施設に手厚い加算がされていることがわかります。

以下は、障害児通所(医療的ケア)の報酬の基本的な考え方をまとめたものです。

上記の図版にて、左下の棒グラフを見てください。従来は、一般型と重心型しかなかったため、一般事業所では医療的ケア児がいても、報酬は一律8,300円でした。これが改正後になると、基本報酬が8,850円に増えた上、医療的ケア児がいると、点数によって16,000円から28,850円も加算されるようになりました。看護職員の加配が必要になるので人件費も増えますが、相当思い切った報酬改定だと思います。

以下は、医療的ケアスコアの新旧比較表です。

新旧で見ると、基本スコアの見直しもされていますが、それよりも大きな改定は、見守りスコアが加わっていることです。「見守り」というとただ見ているだけという印象を持たれるかもしれませんが、重度ではないが動ける医療的ケア児の見守りですから、人工呼吸器を自分で外してしまう際の見守りといった、健康や生命の維持のために不可欠なものです。見守りスコアの判定は、ドクターや医療機関が行います。

スライド資料:障害児通所(児童発達支援・放課後等デイ)-2

4項の「職員配置が厳格化」について、従来は、障害福祉サービス経験者であればよかったのですが、保育士または児童指導員に限定されることになりました。2年間の経過措置があるので、その間に資格取得などする必要があります。

5項の「家族支援を強化」について、たとえば、保護者を相談支援という形でケアした場合の報酬が、従来は1時間2,800円×月2回までだったのものが月4回に拡充されました。さらに、事業所内の相談支援は、個別相談で100単位、グループ相談で80単位がそれぞれ月1回算定可能になります。たとえば、放課後デイで、職員が進行しながらの保護者同士のお話会、先輩保護者に体験談を聴く会などは企画しやすいと思いますので、ぜひ積極的に加算を取ってほしいと思います。

6項の「ケアニーズの高い子どもを受け入れる場合の『個別サポート加算(Ⅰ・Ⅱ)』が新設」については、本当にケアが必要な児童には1日1,000円加算するというものです。

実は、今回の改定で、放課後デイサービスの基本単価は一律500円下がりました。国としては、必要な所を手厚くするために、削れるところを削るという方針です。
つまり、それほど重度ではない児童を預かっている放課後デイサービスは、報酬が下がるが、重度で他に行くところがない児童を預かっているというような放課後デイは、従来よりも報酬が上がるという仕組みになっているのです。

個別サポート加算については、以下を見てください。

スライド資料:障害児通所(児童発達支援・放課後等デイ)-3

個別サポート加算が新設されるということは、どういう意味を持つのでしょうか。まず、下表を見てください。

見てのとおり、今までは加算の評価が、事業所単位で区分Ⅰ(重度の障害児が多い)、区分Ⅱ(重度の障害児が少ない)に分かれていました。事業所単位なので、定員10人の事業所では、重度の児童が2人、重度ではない児童が8人の場合は、自動的に区分Ⅱとなっていました。しかし、見直し後は、区分分けが廃止となり、加算は、子ども一人ひとりにつくことになりました。ですから今後は、児童一人ひとりについて、本当に重度の認定でないかどうかを突き詰める必要があります。そうでなければ、受けられる加算が受けられなくなってしまいます。

スライド資料:障害児通所(児童発達支援・放課後等デイ)-4

10項の「児童指導員等加配加算」については、理学療法士、作業療法士などの専門職を配置することを評価した「専門的支援加算」が新設されます。常勤換算1人以上配置で49〜374単位の加算となります。

11項の「専門的支援加算」については、児発(児童発達支援)のみ、経験5年以上の保育士または児童指導員でも算定可能です。

スライド資料:障害児通所(児童発達支援・放課後等デイ)-5

12項の「基本報酬単価」については、児発事業が50単位/日の引き上げになったのに対し、放課後デイが50単位/日の引き下げになりました。

その他は上記のとおりです。

以下に、障害児通所サービスのポイントとして、ここまでの話をまとめます。

スライド資料:障害児通所サービスのポイント

医療的ケア児新設の影響が大変大きいので、厚生労働省が資料を配付しています(「医療的ケアを必要とする障害児への支援に係る報酬の取扱いについて」)。医療的ケア児の受け入れを考えている事業所は必読です。

(2)短期入所(医療型短期入所)

スライド資料:短期入所(医療型短期入所)

1項のとおり、医療的ケア者の短期入所は、基本報酬そのものが50〜100単位アップします。これは非常に大きいです。

2項の、医療型短期入所の利用対象者に、強度行動障害児者や医療的ケアスコアが16点以上の障害児等が加わったことも大きな変化です。

4項の「日中活動支援加算が新設(200単位)」については、現状、医療型の短期入所施設は都道府県内で1〜2カ所しかなく、同一施設内ですべての活動を完結せざるを得ないことが多いことからつけられたものです。

障害児入所支援における報酬改定の方向性

スライド資料:障害児入所支援

ポイントは上記のとおりですが、注目したいのは、
2項の、「ソーシャルワーカー配置加算」の新設です。入所者の地域生活への移行を支援するために、社会福祉士や経験5年以上職員の専任配置に対して、定員30名以下で53単位の加算がつきます。なぜこれがついたかというと、障害児の入所については児童相談所が決定し、地域に戻る場合も本来は児童相談所が対応すべきなのですが、人手が足りないため、事業所では、ソーシャルワーカーを配置して対応してきました。それが評価されることになったのです。

4項の「乳幼児の加算。乳幼児加算の対象を拡大」については、乳幼児であればすべて加算となります。

スライド資料:障害児入所支援-2

5項の「サテライト加算」とは、福祉施設を出て小規模なユニットで生活するなどの際、これを評価する加算です。これも今回の改定の大きな特徴のひとつです。308単位の加算がつくことになりました。

その他の改定は以下のとおりです。

スライド資料:障害児入所支援-3

その他、障害児入所支援の報酬改定でインパクトが大きいのは、人員の配置の部分です。以下を見てください。

これまでは、児童4.3人に1人の職員配置でしたが、改正によって、4人に1人となりました。これはおそらく初めての増員です。わずかですが、障害児入所施設もようやく大人の施設並みに職員配置がされるようになり、当然その分報酬も上がりました。これは非常に前向きな変化だと思います。

以上、今回は、相談支援、障害児の入通所についてお話ししました。
とりわけ、計画相談、障害児の通所(児童発達支援、放課後等デイサービス)、医療的ケアの改定が大きいので、ぜひご確認いただきたいと思います。

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