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【UCHIDA ビジネスITオンラインセミナー 福祉版】 第3部:令和3年度 報酬改定の動向について 〜個別サービスの動向(障害者入通所サービス・就労系・GH・生活介護)〜

2021/11/5 [福祉,セミナーレポート]

本記事は「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定(厚生労働省)」に関するオンラインセミナーの講演録(全3部)です。第3部は、「令和3年度報酬改定の動向について」の最終回として、成人の方の入通所サービス、グループホームについてお話しします。とくに成人の方向けサービスの中でも就労系は天変地異といってよいほどの大きな変化がありましたので、ぜひご注目いただきたいと思います。

一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会
常務理事兼事務局長 又村 あおい 氏

前職は神奈川県平塚市役所福祉部勤務。障害児福祉制度全般や、権利擁護施策、障害児者支援を通じた地域づくりなどが主な活動分野。主な著書に『あたらしいほうりつの本』(全国手をつなぐ育成会連合会発行)など。

就労系サービス(就労移行・就労定着・就労継続A・B)における報酬改定の方向性

(1)就労移行・就労継続に共通の見直し

スライド資料:就労移行・就労継続に共通の見直し

1項の「就労実績や平均労働時間、平均工賃の実績については、平成30年度・令和元年度・令和2年度のいずれかを適用できる」の改定は、新型コロナの影響が大きいです。緊急事態宣言等によって販路が断たれ、就職口が狭まるなどの影響があり、工賃が半減したという事業所もあります。ですので、平均工賃の実績は過去3年までさかのぼって、最も高い数字を適用してよいことになりました。このままコロナの影響が続くと、来年度もそうなるかもしれません。

2項の「在宅でのサービス利用について、新型コロナ特例を恒常的な取扱いとする」が意味するところは、在宅サービス利用は、通えない相当な理由があるときに限られていましたが、コロナの影響で通うのを避けたい場合の利用も可能になりました。これが、コロナ期限定ではなく、今年度からレギュラーメニューとして利用できるようになったということです。本人が希望し、市町村が認めれば利用可能、かつ、在宅と通所を組み合わせることも可能になりました。在宅のほうがスムーズに作業ができる人もいますし、在宅のほうが向いている職種もありますから、選択肢が広がったのは喜ばしいことです。

3項の「加算のうち施設外就労加算及び移行準備支援体制加算(Ⅱ)を廃止」は、波紋をよんだ改定です。この加算をあてにして職員を配置していた事業所もあるかもしれませんが、廃止になりました。しかし、就労系サービス報酬全体はマイナスではなくプラスになっています。ですから、この廃止分は、新設される各種加算などの原資となったと考えてください。

(2)就労移行支援

スライド資料:就労移行支援

1項の「就労定着率の算出が『前年度』のみから『前年度+前々年度』へ変更については、就職実績が年度によってばらつくことを平準化するということです。就労継続期間6カ月以上をカウントするというルールは変更ありません。

2項の「就労支援員の常勤要件を緩和」については、従来は15:1配置、かつ、1名は常勤が条件でしたが、全員常勤換算でOKとなりました。

3項の「本人や他の支援機関等を交えたケース会議等によるアセスメント強化を評価する加算(支援計画会議実施加算)を創設」は、本人の能力を評価するための会議を1回開くごとに5,830円が、月1回・年4回を上限に加算されるというものです。

4項の「雇用形態による『一般就労』の判断は見送り」については、そもそも「一般就労とは何かという問い」でもあります。一般就労とは、一般の企業などで働くということですが、パートやアルバイトはどうするのか、週20時間未満で働いている人はどうなるのか。週15時間しか働かず低い賃金しかもらえない場合でも一般就労と言えるのか。今回は、これについては議論せずに、雇用形態にかかわらず雇用契約さえ結んでいれば一般就労と判断することになりました。ただしA型は福祉サービスの扱いですので除きます。

(3)就労定着支援

スライド資料:就労定着支援

1項の「基本報酬の算定条件を見直し、本人や事業主等に対して支援内容を記載したレポートを月1回以上提供することを算定要件とする」について、従来は、月1回面接しなさいというルールでしたが、その結果、面接をしさえすればいいとする事業所も出てきました。そのため、今後は、ただ面接をするだけでなく、支援レポートを作り、それを関係者で共有できる状態にしないと報酬算定できない。つまり従来よりも丁寧な関わり方をしないと報酬にむすびつかないということになりました。

2項の「企業連携等調整特別加算(240単位)を廃止して、新たに『定着支援連携促進加算』へ組み換え(利用者の就労定着支援計画に関わる機関を交えた会議を開催し、連絡調整を行うことを評価)」は、より企業にバトンタッチしやすいように、関係機関を集めて連絡調整した場合、加算されるということです。支援期間(最大3年間)を通じ、月1回算定可能で年4回を限度に5,790円が加算されます。これもひと手間かけたサポートが評価されるということです。

また、月1回の対面支援については、3項の「リアル面談のほかオンラインや電話等の活用も認められる」となりました。

(4)就労継続支援A型

スライド資料:就労継続支援A型

1項の「基本報酬を『1日の平均労働時間』から総合評価(200点満点の点数方式)へ変更」については、これまで、A型は長時間働くことを評価の軸にしていましたが、今後は、5つの評価軸で評価する総合評価に変わります。5つの評価軸は、①労働時間、②生産活動、③多様な働き方、④支援力向上、⑤地域連携活動。合計200点満点で自己採点して、点数に応じて報酬が決まります。以下の2〜6項は、評価軸の具体的な内容を示したものです。

2項のとおり、「1日の平均労働時間は、利用者の賃金増加につながることや、支援コストがかかる点を評価(最大7時間以上で80点)」となりました。

3項の「生産活動収支の状況は、利用者に支払う賃金の総額以上だと高評価(最大40点)」については、収益を給与として分配するのがA型。しっかり稼いでいるかも評価の対象となります。

4項のとおり、「多様な働き方に係る制度整備及び実施状況は、利用者を職員として登用する、在宅勤務に係る労働条件などを定めている、フレックスタイム制に係る労働条件を定めているなど8項目のうち、任意の5項目を点数化して評価(最大35点)」となりました。

スライド資料:就労継続支援A型-2

5項のとおり、「安心な職場環境の基礎となる支援力向上の取組は、昇給、昇格と連動した人事評価制度の整備、過去3年以内の福祉サービス第三者評価の受審状況、外部講師による内部研修会の開催状況8項目のうち、任意の5項目を点数化して評価(最大35点)」となりました。

6項のとおり、「地域連携活動の実施状況は、前年度に実施した地元企業と連携した高付加価値の商品開発、施設外就労による地域での働く場の確保など地域と連携した取組みが1事例でもあれば評価(10点)」となりました。

これらをすべて足すと200点になります。ただし、 7項の「これらのスコアを公表しないと減算(マイナス15%)」となりますので注意してください。

上の表は、新旧の基本報酬の考え方を示したものです。大雑把に言うと、従来の一番高い単価との比較でいうと、改定後はスコア105点を境に、従来より報酬が上がる仕組みになっています。200点満点中の約半分強のスコアなら従来の最も高い報酬よりもさらに高い報酬になるということです。
単純に長く働けばいいというやり方でやってきた事業所は苦しくなりますが、やるべきことをきちんとやっている事業所は評価されて高い報酬が得られるということです。

また、これまでは評価軸が1つのみでしたが、これからは5つになりますので、各事業所で何が得意なのかを見極め、得意なところで点数を取っていく、苦手なところをカバーしていくということにもつながるかと思います。

スライド資料:就労継続支援A型-3

上記の8、9項は、就労継続や就労移行支援から一般就労に移行できた場合の評価が手厚くなったということが現れている改定だと思います。就労継続から就労移行支援に移ったことも評価するようになりました。かなり明確に、企業就労にウェートをおいた改正だということがわかります。

(5)就労継続支援B型

スライド資料:就労継続支援B型

1項の「従来の工賃に応じた報酬体系(工賃系)と、工賃に関係なく一律の報酬体系(一律系)を選択可能とする」については、天変地異といっていい大きな改定です。就労継続支援B型は今まで工賃が高いか低いかという評価軸しかありませんでした。しかし改正後、工賃が高ければ報酬が上がる(工賃系)と、工賃に関係なく一律の報酬(一律系)という2つの類型ができました。

工賃系はこれまで同様、工賃が上がれば報酬が上がる仕組みです。一方、一律系は報酬が一律で、基本報酬単価は、工賃系の最低より低いです。ただし、工賃ではないところで勝負するわけで、たとえば、地域の人と手を携えて障害のある人が地域で存在感を発揮して仕事をした場合には「地域協働加算」がつく。あるいは、ピアサポートを配置したら加算がつく。このように、工賃ではないところに加算をつけることで、基本報酬は低くても、報酬アップできるのが一律系の特徴です。

では、地域協働加算とは何でしょうか。

スライド資料:就労継続支援B型-2

4項のとおり、「地域住民などの地域関係者と協働して生産活動収入がある活動を行い、その内容をインターネットなどで公表した場合に算定可能」となっています。

5項の「ピアサポートの実施加算」は、第1部、第2部のセミナーでも説明しましたが、一定の養成研修を受け自治体が認めた者が、就労や生産活動への参加についてピアサポートを行った場合に認められます。

この改定によって、自分の事業所は工賃重視でいくのか、それとも工賃からはなれて一律系でいくのか、うちは地域との連携が強いからそっちでいこう、など、自らの方向性を見定めて選ぶ時代になったと言えるでしょう。

上の表は、新旧の報酬体系を示したものです。従来は、最高の工賃は約6,500円でしたが、改定後、工賃系の最高賃金は7,020円に上がります。1人500円くらいのアップですから20人で1万円、20日間で20万円、1年間で240万円のアップとなります。相当思い切った改定です。

上の図の右端は、地域協働加算とピアサポート実施加算について説明しています。地域協働加算の例としては、たとえば地元のスーパーに直売コーナーを設置して事業所で作ったものを置いてもらい、障害者が地域の人と交流をしたり販売したりする。このような行為に対して1日300円の加算がつきます。

以下は、就労系サービスのポイントのまとめです。

スライド資料:就労系サービスのポイント

1項のとおり、施設外就労加算は廃止されましたが、本体報酬への組込みと、新たな加算に充てられました。

2項のとおり、就労定着支援で、支援レポートが導入されましたが、勝手に書いたのではだめで、国から示される標準様式を使わなければいけません。

3項のとおり、就労継続A型のスコア判定は自己採点ですが、国から示されるガイドラインに従わなければなりません。

スライド資料:就労系サービスのポイント-2

5項のとおり、B型の報酬類型の選択は毎年4月で、一度、工賃系か一律系かを選んだら年度内に変更はできません。しかし、1年毎に変えられるわけですから、工賃が思った以上に上がった場合は工賃系で継続し、上がらなければ一律系に変えるということも可能です。各事業所の運営方針が問われることになると思います。

6項のとおり、一律系を選択肢した事業所でも、工賃向上計画は引き続き作成することになりました。少しでも報酬がよいに越したことはありませんから当然かと思います。

グループホームにおける報酬改定の方向性

グループホームは、障害のある人、知的障害のある人の暮らしの場として極めて重要です。だからこそ多様なグループホームが存在し、国も後押ししています。たとえば、従来型のアパートを借り上げたホーム、重度障害のある人をターゲットとして日中サービス支援を行うホーム、いずれホームを卒業したい中軽度の障害者などが利用するサテライトホームなどが増えています。

すると悩ましいのは報酬をどう配分するかです。結論から言うと、重度や高齢期の方の報酬を厚くする傾向が鮮明になっています。

スライド資料:グループホーム

改定の方針として、支援区分「4」以上と「3」以下で差をつける傾向が鮮明になっています。

2項のとおり、重度障害者支援加算を見直し、従来の区分「6」限定の加算3,600円に加え、「4」以上の強度行動障害者を対象とした重度障害者支援加算IIが新設(180単位)されました。加算には、3項に示すように、研修や職員の数などの条件があります。

スライド資料:グループホーム-2

4項の「医療的ケア者の対応」については、規定通りの職員に加え常勤換算1名以上の看護職員配置という条件がありますが、1,200円の加算があります。

5項の「強度行動障害者に対しては、体験利用でも1日4,000円の加算」があります。

6項は、地味ですが案外大きいです。個人単位でのヘルパー利用の経過措置が令和6年3月まで延長されました。

スライド資料:グループホーム-3

7項の「夜間支援体制加算」は、大きく変わりました。区分が「4」以上の人は夜間の支援必要な可能性高いので加算が上乗せに、「3」以下の人は不用の可能性が高いので引き下げになりました。

以下はグループホームにおける改定をまとめたものです。

中央の「④基本報酬の見直し」を見てください。これは日中サービス支援型の例ですが、区分「4」「5」「6」ではわずかですが報酬が上がっていますが「3」だけ減額になっています。重度障害者の支援にウェートを置いていることの現れだと思います。

生活介護・施設入所等に関する報酬改定の方向性

(1)生活介護

スライド資料:生活介護

生活介護についてはさほど大きくは変わっていません。

1項の「医療的ケア者のサービス利用を促進するため、常勤看護職員等配置加算に常勤看護職員3人以上配置の区分(常勤看護職員等配置加算(Ⅲ)(定員20名以下で84単位))」は、従来では常勤の看護職員2人までしか加算がなく3人以上配置すると持ち出しになっていましたが、常勤3人以上配置に加算がつくものです。ただし、医療的ケアのスコア項目で該当する者を2名以上受け入れていることが条件です。

2項の「重度障害者支援加算」は、従来は、入所施設に併設されている生活介護を、強度行動障害者が通所のみで利用した場合の加算は認められませんでしたが、改正後は加算がつくようになりました。

3項は、重症心身障害者を2人以上受け入れている場合はもともとの報酬単価に加え、全員に500円の加算があります。重症心身障害の人を受けれていて、利用人数の多い事業所にはインパクトが大きいでしょう。

以下は、重度障害者支援加算の見直しについてまとめたものです。

共通事項としては、強度行動障害のある方の個別支援を行う場合の、利用者の状態確認や環境の変化への適応力などのアセスメントについて、従来は90日で7,000円/日加算していたものを、90日では短すぎるということで180日に延長し、5,000円/日となりました。単位数は減りましたが期間が延びたので総額は増えることになります。強度行動障害の方が、安定的な通所・入所ができるよう時間をかけて環境を整えたり、支援員のスキルをあげたりするために加算が長くとれるようになったということです。

(2)施設入所・療養介護

スライド資料:施設入所・療養介護

こちらについては、大きな変更はありません。
ただ、1項の「口腔衛生管理体制加算の新設」や、2項の「経口移行加算および経口維持加算の見直し」がありました。たとえば、歯科医師が職員に口腔ケア技術について助言を月1回以上行うと、全員300円増しになります。

スライド資料:施設入所・療養介護-2

あまり目立ちませんが重要なのが、6項の「療養介護」です。療養介護の利用者枠が拡大されました。(1)高度な医療的ケアを必要する者、(2)強度行動障害があり医療的ケアを必要とする者、(3)遷延性意識障害があり医療的ケアを必要とする者、そして、(4)これらに準じる状態と市町村が認めたものを療養介護の対象者として、明文化されました。

(3)居宅介護・重度訪問介護・外出系のサービス

スライド資料:居宅介護・重度訪問介護・外出系のサービス

これも大きく変わるところはありません。ただ、1項の「居宅介護」で、資格の特例要件が変わります。いわゆる2級ヘルパーがサービス提供責任者の場合、報酬が10%減から30%減に強化されました。いずれは廃止の方向です。

2項の「重度訪問看護」では、ヘルパーが運転して病院に送迎するなどの際、運転中に駐停車して対応しなければならないような緊急事態があった場合「移動介護緊急時支援加算」が新設されました(240単位/日)。これが大きな変化です。

(4)自立訓練・自立生活援助

スライド資料:自立訓練・自立生活援助

大きな変化はありませんが、3項の「人員基準の緩和」はインパクトがあります。従来、サービス管理責任者と地域生活支援員は兼務できませんでしたが、これが認められるようになりました。人員基準上は、支援員として0.5人の扱いになります。これは、言い方を変えれば、サビ管が1人いて、あと1人非常勤職員がいれば、事業所として成り立つということです。
自立生活援助だけは、兼務が可能なのです。他はできません。
仮に、相談支援員の常勤専従の人がサービス管理責任者の資格を持っていて、地域生活支援員も兼務できるとしたら、なかなかすごいことです。相談支援をやらない手はないのではと思います。第2回で述べたように、相談支援には多くの加算が新設されたからです。

その他の改定としては、4項の「標準利用期間(1年間)を超える場合は1回のみ延長可能だったのが、市町村審議会が認めれば回数制限なし」に変更されました。
5項では、同行支援加算が、回数に応じて加算額上乗せに改定されました。回数が増えたら加算されて当たり前だと思いますが今まではされませんでした。ようやく当たり前のことがされるようになったということです。

以上が今回の報酬改定のあらましです。今回のセミナー全3回3時間では語り尽くせない大きな改定がありましたので、ぜひみなさんで国の資料などを確認していただければと思います。

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