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【UCHIDA ビジネスITフェア 2021】 デジタル化へ突き進む日清食品の挑戦!

2021/12/3 [食品,経営,セミナーレポート]

経済産業省と東京証券取引所は2021年6月7日、デジタル技術を前提としたビジネスモデルそのものの変革及び経営の変革に果敢にチャレンジし続けている企業20社を「DX注目企業」に選定しました。昨年の「DX銘柄」に引き続きの選出となる、日清食品ホールディングスは、ここ5年ほどで急速にデジタル化を進めてきました。レガシーシステムの撤廃とクラウド化、コロナ禍におけるテレワーク環境や業務のデジタル化推進等、次々とデジタル変革に取り組んでいる事例をご紹介いただきます。

日清食品ホールディングス株式会社
CIO
成田 敏博 氏

日清食品におけるデジタル化推進

日清食品は1948年に設立しました。従業員数は約1万4千人。本社は大阪・東京。即席めん、低温食品、飲料、菓子の分野で約60のグループ会社を持ちます。

われわれは、創業以来、絶えまないイノベーションを続けてきました。即席めんの開発は、時間からの解放でした。次に、カップヌードルに代表される容器入りめんの開発により場所からの解放を実現しました。今まさに取り組んでいるのは、未来の食。完全な栄養食の開発に挑戦中です。

スライド資料:絶え間ないイノベーション

当社の理念は、「常に新しい食の文化を創造し続ける」こと。EARTH FOOD CREATOR(食文化創造集団)として、環境・社会課題を解決しながら持続的成長を果たすことを使命としています。そして、4つの大切なバリューとして、Happy、Creative、Unique、Globalを掲げ、それが社風ともなっています。

当社では、NBX=NISSIN Business Transformationと銘打ち、単なるデジタル化にとどまらない、ビジネスモデル自体の変革を目指した取り組みを行っています。

スライド資料:NBX=NISSIN Business Transformation

当社の場合は、特定の部署がDXを進めているのでなく、各部署がそれぞれの課題をデジタルで解決すること目指しています。今後は、それを横串にして、横断的に管理しようと考えています。

当社がデジタル化を本格的に加速し始めたのは2019年のことです。当時、社内に以下のようなポスターが公開されました。デジタル化による生産性向上を推進するという、経営トップの意向を示すために、社内で作成されたものです。

スライド資料:社内ポスター

左下には目標とするマイルストンが示されています。

2019年は脱・紙文化元年、2020年はエブリデイテレワークと記されています。このポスターができたのはコロナ禍以前でしたので、コロナ対策といったことは念頭になく、当時は東京オリンピック開催にあわせて毎日テレワークできる環境づくりを目標にしました。2023年には業務の自動化やAIの活用によるルーティンワークの50%減、2025年にはAIとビッグデータを使った、完全無人ラインの成立を目標に掲げています。

次世代型スマートファクトリー

2018年、関西に次世代型スマートファクトリーが完成しました。最新鋭の設備の導入とIoT技術の活用により、可能な限り自動化と効率化を図り、安全・安心な製品の製造を徹底的に追及しました。ロケットの安全基準よりも高い品質で、年間10億食を生産できる工場です。生産ラインには人が立ち入らず、すべてロボットが生産活動をしています。工場内には700万台のカメラを配置し、製造過程を厳しくチェック。生産データはNASA室とよばれる集中監視・管理室に集約し、工場内のすべての情報を一元管理しています。

スライド資料:NISSIN KANSAI FACTORY

工場内を、「高度清潔区」「清潔区」「準清潔区」の3つのエリアに区分し、外部からの異物持ち込みリスクを低減。入退場は、静脈認証によって行います。

さまざまなテクノロジーを駆使して、食品製造業として必要とされる安全・安心の確保と、生産性向上を両立しています。

レガシーシステム刷新

2016年にはレガシーシステムの抜本的な刷新が敢行されました。これは非常に困難なチャレンジでした。旧システムは、さまざまな機能がつぎはぎされ、相互に何が関連しているのかわからない、まさにスパゲティ状態だったようです。

スライド資料:メインフレーム(ホスト)について

長年使用していたシステムは仕様書もなく属人化しており、メインフレームの開発要員も高齢化。以前は基幹システムが3つ(ERP/メインフレーム/会計システム)あり、システム数は180を超えていました。システムトラブルが続発し、情報企画部の残業も増加。ついに、レガシーシステム終了プログラムが発足しました。

既存システムを洗い出し、業務上必要性の低いシステムは廃止して、保守運用業務を効率化。基幹システムはERP/BIに、周辺システムはMicrosoft365等の統一基盤に移行されました。

スライド資料:プロジェクトのゴール 16年中のメインフレーム・他システムの停止

以下は、プロジェクト終了後のシステム構成です。

スライド資料:プロジェクト後のシステム関連機能図

ホストコンピュータを2017年に完全撤去し、もともと180あったシステムは約1年をかけて47まで削減しました。その後もいくつかのシステムを統合し、最終的には33システムまで削減しました。

使い慣れたシステムを入れ替えることに対しては強い反発もありましたが、当時のプロジェクトメンバーが「そのシステム、本当に必要ですかと」と粘り強く説得し、システムの移行を完遂しました。

働き方の改革

レガシーシステムの破壊の次は、働き方の創造的破壊に着手しました。

ニューノーマル時代、リアルからデジタル中心の働き方に変わってきています。当社では以前からタブレットPCの使用が標準化され、コミュニケーションのオンライン移行も早く、重要会議もMicrosoft Teamsで行われていました。

オンライン会議が増えたことで、一時的にネットワークの遅延が起こるようになり、ネットワーク環境の見直しが行われました。2年前はVPN接続が一部で行われていましたが、zscalerを導入し、VPNから脱却しました。

また、テレワーク環境下での業務の効率化を図るため、kintoneやDocuSignを導入。徹底的なペーパーレス化をすすめました。

スライド資料:「システム遺産」の破壊から、「働き方」の創造的破壊に向けて

システム開発の内製化

2021年5月14日の日経電子版に「日清食品、社員自らアプリ開発 定例業務を50%削減へ」という記事が掲載されました。当社は、プログラミングができる社員はごく限られますが、そうしたスキルがなくても自社メンバーでシステムを開発しています。kintoneのCUSTOMINEや、PowerAppsなど、プログラミングを必要としないプラットフォームが世に出てきたことで、当社のような非IT企業でも、システムが内製開発できるようになったのです。

きっかけはコロナ禍に伴う在宅勤務体制の拡充でした。紙が介在することで在宅勤務がしづらい場面が多々あり、社内の決裁書、申請書等をkintoneでデジタル化することにしました。

kintoneの導入ポイントは、以下の4点です。
1.レスポンスを含めたユーザビリティが高い
2.モバイルでの利用に適している
3.クラウドネイティブなサービスである
4.自社メンバーのみによるシステム開発が可能
さらに、21社のユーザー企業にヒアリングし、6システムのプロトタイプ検証を経て、システム選定を行いました。

以下は、展開のスケジュールです。

スライド資料:展開スケジュール

2020年1月に選定を開始し、4月にパイロット導入し、決裁書の電子化を行いました。これが成功裏に進み、従来紙で行われていた業務を迅速にデジタル化できるという感触を得ました。その後、IT部門での先行導入、現場部門およびグループ会社への展開を経て、現在では全社への利用拡張を行っています。
現場では、総務、経理、人事、法務、製品開発、生産部門などの各部門に徐々に導入。IT部門ではなく、現場の人間が自分たちで実業務に則したシステム開発を行うようになっています。

推進体制

システム開発の中心となるのは、IT部門ではなく業務部門です。各業務部門が要件整理、システム開発、ユーザーへの説明や問合せ対応を行います。IT部門は、業務部門を支える立場としてアドバイスやシステム環境の提供を行います。また、導入初期には他のユーザ企業の経験者の方を副業人材として受け入れ、運用ノウハウについてアドバイスをいただいていました。SIerさんにはシステム開発ではなく技術支援と開発ノウハウの提供をお願いし、それらが自社に内在化していくことを目指しています。

スライド資料:推進体制

現場の声

実際にkintoneを使ってシステム開発をした現場からは、次のような声が挙がっています。

「直感的に操作でき、最初に触ったときにはこんな簡単にシステムがつくれるのかと感動した。これならIT部門以外の事業部門でも、ある程度習熟すれば、自分たちで開発・運用することができると感じた。」

「容易に機能修正ができるので、現場ニーズの変化に合わせやすい。プログラムの専門知識が無くても現場の担当者が自分でアイデアを形にできるので、社外へシステム要件を定義して発注する壁が無くなった。」

「これまで主にペーパーレス化に活用されてきたが、今後はプロジェクトの進捗整理やメンバー間の情報共有など、業務の様々な点で改善活用に利用できるのでは、との声が次第に増えてきた。」

「簡便な機能を作成することはできるが、複雑な業務やフォーマットに対応するのは馴染まないと感じている。対象とする業務をある程度選定する必要があると思う。」

PowerAppsについて

PowerAppsを使用して、製品情報の詳細を、いつでもどこでも参照できるモバイルアプリを作成しました。

たとえば営業担当者が、出先で取引先から、「チラシに掲載する情報が欲しい」と言われた場合、従来なら、社外から社内に連絡し、社内の人に調べてもらってから情報を得る、という方法しかありませんでした。しかし、このアプリを利用し、出先でもスマホで商品を検索し、必要なデータをその場で参照することができるようになりました。

スライド資料:作成したアプリの概要

このアプリは、PowerAppsの使用方法の学習から開発・説明・修正・公開まで、延べ約25時間程度で完成しました。

今後目指していくこと

目標はモバイルファースト、つまり、パソコンを使わなくても業務が遂行できる環境です。製造、販売、在庫、BCP対策など、様々な場面でモバイルのみで業務が遂行できることを目指しています。たとえば、バーコードなどによる商品情報の読み取り、入力、画像認識、音声認識、AR/VR等、以前なら“近未来”とも思えた機能が、今では自分たちの手で内製開発し、利用できる時代になってきています。実現手段(テクノロジー)はもうあるので、今後は、ユースケース=どのような場合に、どのような価値を生み出すか?というアイデアが特に必要となってきています。

ノーコード開発で目指すこと

今後も、コロナに限らず環境の変化はあって当たり前のものとして、変化に耐性のあるシステムを提供する必要があります。また、現場の課題を迅速にシステムに反映し、仮説検証を繰りかえすことがポイントとなります。こうした「アジャイル・アプローチ」を念頭に進めています。

社内で内製できる体制を目指すことで、外部リソースによるブラックボックス化を排除します。外部リソースを利用するのであれば、丸投げではなく、足りないノウハウの補完を目的として利用することです。こうした「内製思考」も重要な要素になります。

最終的には、IT部門のみならず、エンドユーザーである業務部門自らが、デジタル化に取り組む文化を醸成することを目指します。

スライド資料:ノーコード開発により目指すこと

新規ビジネスモデル創造への挑戦

創業時は、戦後で食べ物が不足し健康悪化につながっていた時代でした。ところが、今や食べ物が廃棄されるほどに多く、また飽食が健康悪化につながる時代になっています。オーバーカロリーによる肥満の人が増える一方、間違ったダイエットによる隠れ栄養失調が増えるなど、食生活は豊かになっているのに対して、それに伴う問題点も抱えています。

そこで、当社では、「好きなものを好きな時に好きなだけ食べても大丈夫な世界をつくりたい」。こうした世界をテクノロジーで実現することを目指しています。

スライド資料:おいしい完全栄養食を実現する技術

たとえば、減塩したり、油分をカットしてもおいしさを保つ技術、カロリーをカットしてもおいしさを保つ技術。味のエグみや苦みをマスキングする技術、調理時の栄養素流出を防止する技術など。

こうした技術を活かして開発された完全栄養食のカレーは、見た目や味は一般的なカレーライスと変わりませんが、エネルギーや食塩は減り、必要な栄養素をすべて充足しています。

スライド資料:日清のおいしい完全食の栄養比較

臨床試験では、完全栄養食により健康状態が改善した効果も出ています。

スライド資料:日清のおいしい完全食 摂取の効果(臨床試験のデータ)

今後、定期宅配便や、社員食堂、シニアを対象とした健康寿命延伸サポートプログラム、コンビニ・スーパーでの販売、スマートシティでの普及など、多様なタッチポイントによる展開が予定されています。

また、さまざまな研究機関等と連携して、未来の食=おいしい食の技術×テクノロジーを推進し、「日本を、未病対策推進国へ」としていくことトップダウンで進められています。

以下は、2030年に向けた「未来の食」の成長ロードマップです。

スライド資料:「未来の食」の成長ロードマップと投資方針

フードサイエンスとの共創による「未来の食」で社会課題を解決していく。そのために、既存事業コア営業利益の5%〜10%を継続的に投下する。

2022年を目途においしい完全食を普及させ、2025年には完全食市場で中心となる存在へ。さらに、2030年には食のパーソナライズ化を実現し、テクノロジーによる食と健康のソリューション企業を目指す。これが当社の描いているロードマップです。

当社DXの取り組みの本丸として、これらの取り組みが全社を挙げて推進されています。

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