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【食品ITフェア2022 オンライン】 中小企業だから出来た!水産加工企業のデジタル化戦略 テレワーク率85%を実現

2022/4/8 [食品,ワークスタイル,セミナーレポート]

コロナ禍によって勤務スタイルの変化が余儀なくされました。しかし、株式会社オカフーズは、これを機に、それまで積み重ねてきた改善活動の成果出しを一気に早めることができました。まず、業務を価値あるものだけに絞るため、全業務をチャート化。デジタル、ネットワーク、クラウド、ペーパレスを前提に、業務を刷新し生産性を高めました。このプロジェクト成功の鍵は、経営者自身が社員全員に「デジタル化は経営目的を達成する重要な手段」と強いメッセージを発信し続けたことにありました。今後は、外部とのデータ連携で、社内はもちろん、お客様の改善にも寄与していきます。

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株式会社オカフーズ
常務取締役 統括本部本部長
濱田 康之 氏

成功の秘訣は代表の旗振り

株式会社オカフーズは東京の築地に本社を構えています。事業所は、国内ではここ一箇所です。1975年の設立。現在47期になります。年商は70億円。資本金は4000万円。事業内容は水産加工品の製造、輸入・販売です。

主力商品は、魚の骨を取り除いた「骨取り魚」の切り身や加工品です。マネージメント領域は、原料調達、中国やベトナムでの商品加工、海上輸送、在庫管理となります。その後は、業務用の食品問屋様に商品を供給させていただき、最終的には高齢者施設や病院、社員食堂などでお使いいただいております。

はじめに、我々の基幹システムのコンバートとクラウド化についてお話したいと思います。コロナ禍の中、なかなか社員が集まらない状況の下で進めた基幹システムのコンバート。非常にハードルの高いミッションでしたが、我々は成功することができました。どんなところがポイントだったのか、かいつまんで説明させていただきます。

我々の基幹システムは下の表のように変遷してきました。

スライド資料:基幹システムの変遷

2011年のリニューアルのとき、内田洋行の「スーパーカクテル」を導入しました。現行の前のバージョンになります。そして、この2021年で新しいスーパーカクテルでクラウド化を図ったのでした。まずお伝えしたいのは、成功の一番の要因は代表の強い意向と旗振りにあったということです。代表の岡孝行は、常に全社員に向けてこのミッションの重要さを伝え続け、これが大きな推進力となりました。

スライド資料:代表の強い意志と旗振り

2017年から取り組んできた業務改善活動

今回の基幹システムコンバートとクラウド化の成功は、2017年から続けてきた独自の業務改善活動「FISH活動」の成果なしには語れません。

このFISHは、Fighting(闘志がある)/Improvement(改善・進歩)/Shinka(進化)/Henka(変化)の頭文字を組み合わせたものです。我々は、この活動を株式会社システム科学のHIT法という業務改善法に基づいて作り上げました。

具体的には、まずすべての業務を「見える化」。約3,800件あったのですが、これらの業務をすべてチャート化し、処理の流れになっているのかを明確化しました。すると、同じ業務をやっているのに、作業者によってフローが違っていたり、あるいは同じような仕事を違う部署でもやっていたりと、改善の着眼点がいろいろと出てきました。

そして、改善の大小にかかわらず、できるところから改善していこうということになり、3,198件の改善が実施されることになりました。実際に改善したものの一部は以下の通りです。

スライド資料:オカフーズのFISH活動

例えば、お客様や調達先からいただく請求書などの書類を待っていると、月次決算がなかなか締められません。そこで、お客様など外部の方たちにご協力をお願いすることで、実働5日以内に月次決算を締めることができ、リードタイム半減させることができました。また、経費精算のクラウドシステム化など、とにかく紙だらけの文化を一掃しようと、強力に業務改善を推し進めました。

スライド資料:FISH活動の成果

その結果、わずか1年で1人当たり40%の業務を削減。就業時間も30分短縮。残業もほぼゼロで回していくことができました。削減で浮いたリソースを「ステークホルダーの役に立つ」という経営理念の実現に活用しています。例えば、新しい部門を創設してそこに人を割り当てました。

こうなったら思い切って踏み切ろう

実際の基幹システムコンバートとクラウド化の経緯について話させていただきます。

先ほど説明した通り、我々は2017年から業務改善に取り組み、順調に進めて成果を出すことができました。しかし、2020年3月に新型コロナの感染拡大が深刻化し、業務のやり方を根本的に見直さなくてはならなくなりました。

特に、受発注・出荷・経理をリモート環境で滞りなく進めるにはどうしたらいいか。これを解決する仕組みの構築が急務となりました。ただ、急変の事態だったので、早急に最低限必要なモノ・ツールのみを準備し、とにかくリモート体制に入りました。

当時活用したのは、主に次の三つのツールです。

スライド資料:コロナ禍での体制急変

リモートワークになると、異なる部署とのコミュニケーションが取りにくくなります。そこで、グループウェアの「サイボウズOffice」を導入して、リモートでも社内のすべてのコミュニケーションができるようにしました。スケジュール管理も、このサイボウズに集中することにしました。

また、「TeamViewer」も導入して、本社にあるパソコンを外部から遠隔操作して基幹業務を動かせるようにしました。さらに、就業時間中は常時接続のZoomを設け、在宅勤務でもチーム内のコミュニケーションがいつでも取れるようにしました。最大85%の社員が同時にテレワークできる体制を構築し、これは今も継続しています。

ただ、早急に対応したために、次のような問題が出てきました。

スライド資料:テレワーク体制で出てきた新たな問題

つまり、早急にリモート化を図ったことで、新たな作業負担やストレスが生じてしまったのです。そこで、「こうなったら思い切って基幹システムのコンバートとクラウド化に踏み切ろう」と決断したのでした。

新システムの要件定義に業務改善活動が役立った

新システムを選ぶときは、次の二つの点を検討しました。

スライド資料:新システム選定の理由

そして、内田洋行の「スーパーカクテルCoreFoods販売」を採用。併せて、文書自動配信サービス「AirRepo」の導入も決定。プロジェクトを開始するにあたって、次の体制を作り上げました。ポイントは、現場が迷わないように責任と役割の体系を明確にしたところです。

スライド資料:プロジェクト体制

基幹システム全般や業務連携を担う者と、ハードとソフトの連携やサブシステムの連携を担う者は分けました。これを1人にすると業務がヘビーになるというのは最初から予想されたからです。

幸い、業務改善で人的リソースが豊富にあったので、体制づくりで問題が起きることはありませんでした。こうして体制が出来上がり、次は要件定義(業務ヒアリング)のフェーズに入りました。

このときも2017年から進めていた業務改善が大いに効果を発揮しました。一つ一つの業務をすでにチャート化し、シンプルにしていたので、要件定義にかかる時間を大幅に短縮。担当のSEの方への説明もスムーズにできました。

また、業務改善の中で、2割の社員がエクセルなどのマクロを用いて業務を自動化できるようになっていました。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入して入力作業の自動化も進めていました。その結果、このマクロやRPAで改善できた業務についても、新しい基幹システムにうまく組み込むことができました。

繰り返しになりますが、常に代表が旗振りをしたことで、社員全員のベクトルを同じ方向に向けることができました。今振り返っても、これが大きかったと実感しています。例えば業務ヒアリングを全社協力体制で円滑に進めることができたり、プロジェクトメンバーの士気を高いまま保持できたりしました。

7カ月という短期間でプロジェクト完了

要件定義が済んだら、次は改善判断やツール導入決定のフェーズです。我々の場合は、これをシステム担当だけに任せることはしませんでした。なぜなら、判断が部分適合・全体不適合になりやすいからです。

スライド資料:改善判断やツール導入決定

我々は、役割を明確化かつ分散化させた体制を築きながら、常に上と報・連・相ができ、大きな決断が迫られるところでは経営陣がスピーディーに決済する仕組みも整えました。これによって全体適合の判断がすぐにできるようになりました。プロジェクトを進める上で大事なのはこのスピード感だと思います。

このような取り組みのかいがあって、7か月という短期間で基幹システムのコンバートとクラウド化を進めることができました。そして、大きな成果や効果を出すことができたのでした。

スライド資料:成果・効果

まず、在宅勤務の社員は、遠隔操作をして基幹システムを操作する作業から解放されました。これはとても喜ばれました。また、我々は1カ月に約13,000レコードの受注入力をするので、社内では「レスポンスが遅くなったら困る」という懸念の声が多く出ていました。しかし、実際にやってみると、自社でサーバを設置していたオンプレミス構成のときよりも処理が速くなり、とても快適に作業できるようになりました。

その先のデジタルを活用したSHINKA

最後に、我々が今後、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通して何を目指しSHINKA(進化)していくかということについてお話しします。

弊社は毎月「オカフーズSHINKA通信」という社内報を発行しています。社内報ではあるのですが、外部のステークホルダーの方々にも配布し、我々が今何を考えているかを発信しています。この中で、代表の岡がDXについての考えを示しています。

スライド資料:代表の強い意向と旗振り

また、弊社は期が変わる度に「方針手帳」というものも発行しているのですが、今季(47期)の方針手帳にもDXに関する方針を明確に示し、全社員と共有しております。

まず、DXを狭義と広義に分け、狭義はビジネスプロセスのデジタル化であり、広義はビジネスモデルのアップデートであるとしています。この狭義と広義のDXに取り組むことはステークホルダーの役に立つ一つの道であると明示しています。

また、「ステークホルダーのDXフォローは弊社の役割と心得る」とも記し、我々が成功したDXをステークホルダーの方と共有する重要性も説いています。そして、我々は今回のプロジェクトの成功を基盤とし、さらなるDXを目指して、すべての業務をデジタルでアップデートし、新しいビジネスモデルをデジタルで作り出そうと動き始めています。

スライド資料:プロジェクトの成功を基盤とし、更なるDXを目指す

オンラインを活用した情報発信

最近では、オンラインを活用したさまざまな取り組みを展開しています。例えば、ベトナム工場の見学ツアーや、お客様に向けた自社商品を用いた調理のプレゼンテーション、海外の工場との会議などをオンラインで実施しています。

スライド資料:活動のデジタル化 〜オンライン工場ツアー〜
スライド資料:活動のデジタル化 〜オンライン調理プレゼン〜

デジタルを支援するツールもアップデート

働き方のデジタル化も進めています。社内のコミュニケーションツールを「Slack」に変更しました。すでにチームやトピックごとのチャンネルが100以上になっています。弊社では、このSlackを使うときのルールを定めています。目的は生産性と価値の向上です。例えば、基本的に全てのやりとりを公開し、1対1のダイレクトメッセージは使わないということや、Slack内のメッセージで何か気づきがあったら誰でもコメントを入れて良いといったルールがあります。共感したことがあれば「積極的に『いいね』を入れよう」と伝えています。

そのほか、マニュアル作成ツールも導入し、担当者がいなくても対応できるような業務改善にも着手。すでにデジタル業務マニュアルが400件以上になっています。 会計システムも革新し、「Money Forwardクラウド」を導入。2021年には、そのマネーフォワードさんからイノベーション賞もいただきました。採用やチームマネージメントも、デジタルでアップデートしています。

スライド資料:働き方のデジタル化 〜マニュアル作成ツール〜

働く場所も刷新

デジタル化をきっかけに、働く場所も刷新していこうと、オフィスを全面リニューアルしました。これまでは全員が1フロアにぎゅうぎゅう詰めになっていましたが、テレワーク活用を前提に座席数を絞り、オンラインミーティング用の個人ブースや、議論が活性化するようリラックスできる演出を凝らしたミーティングスペースなど、新しい働く場を構築しました。

アナログ活動も大事に

デジタルで全てをアップデートする一方で、土台となる社員のマインドに関わるアナログな活動は大事にしています。毎朝の環境整備、社員全員で理念方針を深めるための勉強会、そして社員もステークホルダーの皆様にもオカフーズという会社に共感していただけるようなインナーブランディング活動などです。

これからも、我々はもっともっとデジタルでアップデートしていかなければならないと考えています。今後は社内だけにとどまらず、仕入先様やお客様に対してもDXを図っていきたいと考えております。

例えば、お客様の業務用食品問屋からいただいた受注データに対して、何らかのデータを付加して出荷データとしてお返しできないかと思っております。こうすることで、お客様の倉庫管理システムの改善や改革に役立つことができるのではないかと考えております。

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