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【食品ITフェア2022 オンライン】 老舗ベンチャー・ホッピービバレッジの人財育成とこれからの働き方

2022/5/10 [食品,経営,ワークスタイル,セミナーレポート]

歴史ある老舗企業のブランド再生・売上V字回復を成し遂げた三代目代表取締役社長・石渡 美奈様が信条とする「よいものづくりはよい人づくりから」。その言葉の背景を自らの経験として語るとともに、経営者として事業継承・人財育成や組織運営への想い、そしてコロナ禍で新たな働き方が求められる今だからこそ考えたいこれからの働き方について、同分野のスペシャリストである白河桃子先生との対談形式でお届けします。

ホッピービバレッジ株式会社
代表取締役社長
石渡 美奈 氏

相模女子大学大学院 特任教授、昭和女子大学 客員教授
白河 桃子 氏

白河:ホッピービバレッジ株式会社様は、2010年より石渡 美奈様が若くして三代目代表取締役社長となり、新卒採用も大幅に増やして若返りを図りました。タイトルにもある「老舗ベンチャー」と呼ばれる所以です。今回は、まず石渡様にホッピービバレッジ株式会社についてお話いただき、その後、対談形式で、同社の人財育成とこれからの働き方についてお聞きしたいと思います。

What‘s HOPPY

石渡:当社の主力商品であるホッピーは、2022年夏で発売74年を迎えるロングセラー商品です。昨今はホッピーをストレートで飲まれる方も増えていますが、ホッピーとほかのアルコール飲料を割って飲む、ミキサードリンクのパイオニアとして知られています。最も人気があるのは、ホッピーと無味無臭の甲類焼酎を割っていただく飲み方で、ホッピー:焼酎=5:1で割るとちょうどビールと同じくらいのアルコール度数になります。昨今ではジン、ウォッカ、ワインなど多くのカクテル素材としてもご愛飲いただいています。

最近は低糖質・低カロリー・プリン体ゼロの発酵飲料ということで、健康に良いことから人気が高まっています。特に、コロナ期において、自然免疫力を高めようということから発酵食品の人気が高まったことも影響しているかと思います。

スライド資料:What‘s HOPPY

ホッピーの創業者は私の祖父の石渡秀です。彼は10歳のときに父親の名を借り、曽祖父の名を冠した石渡五郎吉商店を今の赤坂のミッドタウンあたりで創業。もとは陸軍の御用商人として餅菓子を納めていましたが、海軍を通じてラムネの伝来をいち早く聞きつけ、15歳のときに「秀水舎」を創業してイカリラムネの製造販売を始めます。その後、コクカ飲料株式会社に社名変更し1948年からホッピーの製造開発を始めました。1995年に地ビール免許取得と同時にホッピービバレッジに社名変更。2010年に創業100年を迎え、私が三代目の代表取締役社長に就任。2022年4月に黒ホッピー30周年、2025年3月6日には創業120年、2048年7月にはホッピー100周年を迎えます。コロナの影響で経営はかなりスリムになりましたが、今後体力をもどして、元気に創業120年を迎えたいと思います。

デジタル技術活用

石渡:私は広告代理店勤務を経て、1997年に当社に入社しました。アルコール市場がどんどん縮小している頃で、その当時、トップバイヤーの方に言われたことは大変印象に残っています。「メーカーが良いものを作るのは当たり前。ホッピーがロングセラー商品であることは知っている。しかし、お客さんに手にとってもらえないと良い商品とはいえない。そのためにいくら広告にかけられますか?」と。前々職が広告代理店だった為、大手飲料メーカーが広告にどれだけお金をかけているかはよく知っていましたが、当社のような中小企業がそこまでお金をかけることはできません。

一方、同時期にホッピーのイメージ調査を行ったところ、「ホッピーを飲むと腰が立たなくなるから飲むなと言われている」「ホッピーは残りもののビールをあつめて薄めたものだ」などなど、惨憺たる結果でした。しかし、リサーチ会社の方には「内容はともかくこれだけの知名度は宝だ。もしかしたらダイヤモンドに変わるかもしれない」と言っていただきました。

また、お客様から「ホッピーはどこで飲めますか?」「どこで買えますか?」というお問い合わせをよくいただいていました。もっとホッピーを知ってもらう必要があると思った私がご縁をいただいたのが、インターネットでした。

当時はまだパソコン通信の時代で、世の中でインターネットはほとんど知られていませんでした。しかし、IT系企業に勤めていた友人から、「これからはインターネットの時代だ。企業も個人も誰もが自分のHPを持ち、全世界に情報発信できる時代になる。予算の少ない中小企業のPRには最適なツールだ」と聞き、そんな素敵なツールがあるのなら使わない手はないと、すぐにHPの作り方を勉強し、毎日見てもらうために「看板娘ホッピーミーナのあととり修行日記」というブログを始めました。これがいろいろな方の目にとまり、ホッピーのような古くさいイメージがある会社の社長が女性だというミスマッチ感や、女性社長を後押しする風潮もあり、おかげ様で新聞やテレビなどにもかなり取り上げていただきました。

現在のデジタル活用として、「発幸(発酵)レシピサイト」として、ホッピーに合う簡単な料理やおつまみのレシピを紹介するサイトを公開しています。レシピは管理栄養士が監修した、健康に良く栄養バランスの良いものを紹介しています。また、ショートフィルム専用オンラインシアタ―も開設しました。ホッピーファンの方から応募いただいたショートストーリーを短編フィルムにした作品の他、毎週木曜日に1本ずつ、常時16本配信しています。その配信プログラムにあわせた、オリジナルのホッピーカクテルとおつまみレシピをYouTube「ホッピーチャンネル」にて紹介しております。今後は英語や中国語、スペイン語版も制作し世界に発信していきたいと考えています。

スライド資料:現在のデジタル活用事例

コロナ期においての地元とのつながり

石渡:地元あっての中小企業ですので、地元を大切にすることが何より大事だと思っています。先代の父も、地元の赤坂氷川神社の例大祭で私財を投じて江戸型山車の巡航や宮神輿を復活させ、今では毎年多くの人が集まるにぎやかな祭りが開催されるようになりました。

私も東日本大震災を機に人が遠のいた地元赤坂を盛り上げたいという想いで、2012年に「食べないと飲まナイト」というはしご酒のイベントを赤坂で開催すべく企画しました。最初は30店舗ほどが参加する小さなイベントでしたが、徐々に参加者も増え2000人を超える大イベントに成長。しかし、2020年にはコロナによって開催ができなくなりました。コロナで赤坂から怖いくらいに人もいなくなり、みな打ちのめされましたが、地元の仲間同士で「みんなでがんばろうよ」と声をかけ合い、2021年6月にはオンラインで「茜まつり」という赤坂の魅力を発信するイベントを開催することができました。今年(2022年)の6月にはTBSとの共催で、リアルとオンラインのイベントを赤坂全域で開催する計画もあります。

全く先の見えないコロナ期で私も不安がなかったわけではありませんが、コロナがあったからこそ、仲間がいればどんな課題も乗り越えられるという気付きを得ました。地元あってのホッピーだとあらためて実感しています。

地球環境問題への取り組みについて

石渡:私の54歳の誕生日でもあった、2022年2月26日10時13分から、「HOPPY EARTH PROJECT」を始動しました。地球温暖化防止に関する知識や、個人や家庭できる取り組み、ホッピービバレッジの取り組みを46項目、3日に1回のペースで配信していきます。

コロナによって経済活動が止まり、少し空気がきれいになったような気がします。私たちが経済活動を行うことで地球環境を壊しているのだと実感します。しかし、私たちが生きていくためには経済活動が必要で、両輪が大事です。私たちの地球が、未来永劫元気でいられるように、HOPPY EARTH PROJECTを通じて発信を続けていく考えです。

スライド資料:「HOPPY EARTH PROJECT」始動

伝統と革新について〜事業継承についての概念整理〜

石渡:事業承継の究極のテーマは永続性だと思っていますが、虎屋17代当主の黒川光博様に次の100年について伺った際、こうおっしゃっていました。「過去は変えられない。未来はわからない。目の前の一分一秒を社是にしたがって、丁寧においしい和菓子を作り続けていく。それが正しければ虎屋の今後600年、700年があるだろう」と。それと同じようにホッピーも、一分一秒を丁寧に、お客様に安心して召し上がっていただける、愛されるものを作っていくことで200年後、300年後があると考えています。

永続性を支える概念として、承継と革新、「変わらないもの」と「変わるもの」があります。承継とは、歴史に残す価値観・捨てる価値観・取り入れる価値観を見極めること。革新とは、技術、商品、手法を常に時代のニーズに合わせ続けること。老舗企業とは、古い企業ではなく、「歴史は長いが経営は最新」でなければならないと思っています。

2009年から2010年に早稲田大学ビジネススクールで寺本義也教授にお世話になりました。寺本先生の、「経営には、時代、国と地域、業種業態、企業規模を超えた『原理原則』がある。その『原理原則』を愚直なまでに、やり続けられるかどうかだ」というお言葉に射抜かれ、この先生のもとで学ぼうと決意しました。ちなみに、弊社を「老舗ベンチャー」と命名してくださったのは寺本先生です。

原理原則は企業によってそれぞれだと思います。私にとっての原理原則は、三代目を降りるまで常に追求し続けていくものだと思っており、一つは創業時に祖父がこの会社にこめたものづくりの想い。そして三代目としては人財育成がライフワークだと考えておりますので、これをとにかく懸命にやる。社員の幸せの実現のために何をすればいいかを徹底的に追求し続けたいと思います。

スライド資料:愚直に守っていること

父が他界した直後にコロナ期に入り、正直申し上げればとても心細かったのですが、それでもブレずにここまでこられたのは原理原則の認識があったからです。原理原則を愚直にやっていけばどんな嵐も乗り越えられる。その一心で駆け抜けてきました。

石渡氏×白河氏による対談

「変わるもの」「変わらないもの」

白河:ありがとうございました。ホッピーの100年を駆け抜けていただきました。リーマンショックや東日本大震災、そして今回のコロナ。さまざまな危機をホッピーが乗り越えてこられたその秘訣がたくさんちりばめられていたのではないでしょうか。

老舗経営の極意として、「変わるもの」「変わらないもの」というお話をされました。ブランディングにもかかわってくるテーマだと思います。石渡さんが三代目社長に就任した当初、ホッピーのパッケージを一新されたということをお聞きしました。

石渡:広告代理店出身の若くてとがった女性社長がやってきて、古くさいパッケージを一新し、おしゃれな新商品を作って自信満々でリリースしたのですが、結果は惨憺たるものでした。変わりすぎて、理解してもらえなかったのです。ホッピーという名を借りた偽物とも言われ、そこで気づきました。「お客様は、古くさいものは嫌だけど、変わりすぎるのも嫌なんだ。本質的なホッピーは変えてはいけないのだ」と。「変わるもの」「変わらないもの」を間違えてはいけないことを、高い授業料を払って学びました。

デジタル化による働き方の変化

白河:これはすべての企業に通じる話ですね。デジタル化にもいち早く取り組まれていますが、デジタル化で働き方はどう変わりましたか。

石渡:今から7年ほど前、Cisco様を視察して、webexで世界の拠点を結んでリモート会議をされている様子を拝見し、「すごい!」と思いました。これがあればどこに行っても仕事ができる。子育て中の社員も子どものお迎えに行った後、自宅から夜の会議に参加できる。こんな便利なものはないと、すぐに社内に導入しました。ところが社員にはなかなか浸透せず、ほとんど利用されませんでした。しかし、コロナ期でやむを得ず使うようになるとその便利さがわかり、今では当たり前に使用しています。

白河:かなり早くから導入されていたのですね。だからコロナ禍で、多くの企業が混乱している中、スムーズにリモートワークが定着したわけですね。一方で、リモートができる環境でありながら、営業面では対面を重視するほか、地元との結びつきを強めることを意識されています。

石渡:やはり対面でなければ、お客様のニーズやウォンツをつかむことができないと考えています。逆にこのような時だからこそ足を運ぶことで伺えるお話があると実感しました。また、コロナ期は、製品をつくっても商売ができませんでしたし、とにかく横のつながりを大切にして支え合うことが大事だと考えました。地元が元気でなければ私たちの未来もありません。
ただし、社内から一人でも感染者を出すことは避けなければなりません。幸い2019年から健康経営を取り入れ、年2回の血液検査をもとにオーソモレキュラー栄養療法を通じて免疫力を高め自己防衛を培っています。

ホッピービバレッジ流人財育成

白河:ふだんから社員の健康意識を高めたり栄養療法を行うなど、健康にもかなりの投資をされていますね。

石渡:社員は財産なので健康管理は重視しています。最近面白い調査結果が出たのですが、世の中では、コロナによって鬱の人が増えたりコロナ太りの人が増えたりする傾向にありますが、当社ではこの2年間で逆に心身の状態が良くなっていることがデータでわかりました。心身ともに健康だからこそ、今を乗り越えられているのだと、数値からも実証できたのです。社員が元気なおかげで会社も大変助かっています。

白河:御社では社員教育をしっかりされています。一般的に中小企業では、育成する余裕がないため新卒採用をされるところは大変少ないですが、御社では新卒を採用して10年かけて育てるとか。

石渡:株式会社武蔵野の小山昇社長より「中小企業が良い会社を作ろうと思うなら人財育成に手を抜くな、社長が育てよ」というお教えをいただきました。また北海道大学の松尾睦教授は、プロになるには10年かかるとおっしゃっています。私も社員を10年かけてプロにするという構想で社員教育に取り組んでいます。

セミナー参加者とのQAタイム

白河:ここからは参加者の皆さんの質問にお答えいただきたいと思います。1問目、「ホッピーファンです。缶飲料は発売しないのですか?」

石渡:環境保全の一環で、何度も再利用できるリターナブル瓶と、リサイクルされるワンウェイ瓶を使用しています。瓶は砕かれた後高温で溶かし、再度新たな瓶として生まれ変わるので、新たに原材料を投入する必要がほぼ無く、環境にやさしいです。また、瓶の栓を抜いたときの「シュポッ」という音もホッピーの良さなので缶飲料は出しません。

白河:2問目、「ブログやサイトの閲覧数を上げるために意識していることはなんでしょうか」

石渡:毎日更新することが一番PVアップに効果があると思います。ですから、ブログを始めるなら、毎日やると覚悟することが大事です。今はブログではなくInstagramやFacebookですが、毎日きちっと更新することでフォロワー数が増えると思います。そのほか、写真の撮り方とかいろいろテクニックはありますが、何かテーマを決めることも良いと思います。

白河:3問目です。「新卒者が戦力になるまで時間と手間がかかるが、採用当初の苦労や乗り越えること、人財育成のステップは?」

石渡:弊社は採用のプロセスが長く、特に私との面接から合格までが長いです。なぜなら私は採用時に、「一度覚悟を決めて合格を出したら、私から出した手を自分からひっこめることはない。この手を握るかどうかはあなた次第だ」と、社員と約束するからです。だから、手を出す覚悟を決めるまでがどうしても長くなるのです。
しかし、そこまでしてもやはり去っていく人もいます。私もそうでしたが、人が成長していく過程は山あり谷ありです。それを全力でサポートし、壁を乗り越えて晴れ晴れした社員の顔を見るのは何よりも幸せなので、苦労と思ったことはありません。

育成のステップでは、入社前を含めた最初の5年間を大事にしています。守破離という言葉がありますが、この5年間は「プレ守」の期間だと思っています。学生気分を脱して社会人意識を身につける。そして次の5年間で、プロになっていくための生きがい、働き甲斐、死生観等の感覚を磨いていく。また、弊社は社員一人一人の成長に合わせたオリジナルマネジメントプランを作っています。手間暇はかかりますが少しずつ機能しはじめ、現在では経営を支えるメンバーの殆どが新卒社員です。

白河:最後の質問です。「原理原則の話がありましたが、一番大事にしている原理原則とは何でしょうか」

石渡:情熱ですね。父からの「情熱をもって生きろ」という言葉がずっと心にあります。私から情熱がなくなったら社員の情熱も消えてしまいます。会社が生き続けるために何より大事ではないでしょうか。

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