介護記録は法律で整備が義務付けられています。厚生労働省の「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」では、第37条に諸記録の整備が明記されています。しかし、記録の目的は法律に従うだけでなく、利用者のケア向上にも役立つものです。ここでは、記録が持つ具体的な目的を5つに分けて解説します。
介護記録は職員間で利用者の状況を共有するために必要なものです。利用者が夜間に体調を崩した場合、その経過や対応を記録しておけば、翌朝の職員が適切にケアを引き継げます。この情報共有がないと、ケアの連続性が失われ、利用者に負担をかけてしまう可能性があるでしょう。
介護記録は、利用者やその家族との信頼関係を築くためのツールとしても重要です。希望があれば、介護記録は利用者やご家族に開示する必要があります。「今日は散歩を30分しました」「食事は全量摂取されました」といった具体的な記録を基に家族に説明することで、安心感を提供できます。また、家族からの要望を正確に記録することで、適切な対応が可能になるでしょう。
介護記録は、利用者に合ったケアプランを作成するための貴重な情報源となります。記録を振り返ることで、利用者の体調や行動の変化を把握でき、適切なサポート内容を決定できます。たとえば、「最近食事量が減ってきている」という記録があれば、栄養士や医師と連携して対策を検討するきっかけになるでしょう。
介護記録は、ケア全体の質を向上させるためにも活用されます。過去の記録を分析することで、どのケアが効果的だったのかを検証できます。たとえば、「リハビリを午前中に行うと利用者の参加意欲が高まる」という傾向が記録から分かれば、他の利用者にも同様の方法を試すことができます。
万が一、トラブルや事故が発生した場合、介護記録は法的な証拠としても役立ちます。転倒事故が起きた際に、「どのような状況で発生したのか」「その後の対応はどうだったのか」を記録しておけば、責任の所在を明確にできるでしょう。また、監査や調査の際にも正確な記録が必要です。
介護記録は、単なる業務の一環ではなく、利用者のケアをより良くするための基盤です。これらの目的を意識して記録を作成することで、ケアの質がさらに向上します。
介護記録は、利用者のケアを的確に行い、職員間の連携をスムーズにするための重要な役割を果たします。ここでは、その基本的な書き方として3つのポイントを詳しく解説します。
記録は「5W1H」を意識して書くことをおすすめします。「5W1H」とは、「誰が(Who)・何を(What)・いつ(When)・どこで(Where)・なぜ(Why)・どのように(How)」を意味し、これを押さえることで記録の具体性が向上します。
たとえば、「利用者Aさんが昼食を食べなかった」という情報では不十分ですが、以下のように記載すれば他の職員にも状況が伝わりやすくなるでしょう。
こうした詳細な情報があれば、他の職員が同じ状況に直面した際に役立ちます。
介護記録には主観的な感想を含めず、事実をそのまま記載することが求められます。「疲れているように見えた」という主観的な記録では、読み手が同じ状況を正確に把握できません。その代わり、以下のように具体的な行動や言葉を記録しましょう。
このように書けば、他の職員が同じ状況を共有でき、必要な対応を検討する際の重要な資料となります。
介護記録は全ての職員が一目で理解できる内容にすることが大切です。専門用語の多用や曖昧な表現は避け、簡潔で具体的な表現を心がけます。たとえば、「口腔ケア実施」という短い記録ではなく、「昼食後、利用者Bさんに歯磨きと口腔内確認を実施。異常なし」と書くことで、対応の詳細が伝わります。
また、以下のポイントを意識すると記録がさらに分かりやすくなるためおすすめです。
これらの基本を押さえることで、介護記録がより実用的で共有しやすいものになります。日々の記録にぜひ取り入れてみてください。
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介護記録を効率的かつ正確に作成するためには、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。これらを活用すれば、記録作業がスムーズになるだけでなく、ケアの質向上にもつながります。
介護記録のテンプレートをあらかじめ作成しておくことで、記録漏れを防ぎ、作業効率を大幅に改善できます。
テンプレートには、日常的に記録する項目(例:体調、食事、活動内容など)を整理しておくと便利です。例えば、次のようなフォーマットを用意しておくと、記録の統一性が保たれます。
テンプレートを活用することで、記録にかける時間を削減し、質の高いデータを蓄積できます。
介護記録で頻繁に使用する言葉や表現をリスト化しておくと、記録作業をさらに効率化できるでしょう。
たとえば、「全介助」「部分介助」「自立歩行」といった用語や、日常的に使う言葉を事前にまとめておけば、入力時の迷いを減らせます。また、職員間でこのリストを共有することで、記録内容の一貫性も向上します。さらに略語や記号を活用する場合は、全員が理解できるようにルールを統一することが大切です。
重要な出来事をその都度メモしておくことで、記録の正確性が向上します。利用者の状態や行動は時間が経つと記憶が曖昧になりがちです。そのため、携帯用のメモ帳やタブレットを活用し、気づいたことをすぐに記録する習慣をつけると良いでしょう。
たとえば、「昼食後に咳が出たが、10分後に治まった」といった細かい情報もメモすることで、後から正確に正式な記録に反映できます。
介護記録を電子化することで、さらに効率的な作業が可能になります。テンプレートの活用やクラウドによるリアルタイムの情報共有が可能になり、申し送り時の混乱が減少します。また、過去のデータを簡単に検索できるため、ケアプランの改善にも役立つでしょう。
これらのポイントを実践することで、介護記録の作成がより効率的かつ正確になり、職員全体の負担軽減とケアの質向上を同時に実現できます。
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【福祉コラム】介護現場におけるICT利活用の必要性と向き合い方<導入編>
介護記録を電子化することで、作業の効率化や情報共有のスムーズさが大幅に向上します。ここでは、介護記録を電子化するメリットをご紹介します。
記録を電子化すること、介護記録を作成する時間が大幅に短縮されます。紙の記録では、手書きや修正に多くの時間を割く必要がありましたが、電子記録ならテンプレートや選択式入力が可能です。これにより、記録作業がスピーディーかつ正確になります。また、自動保存機能により、記録の紛失や書き直しの手間も省けます。
利用者の体調変化を記録する際、体温や食事量をタブレット端末に入力するだけで完了するシステムがあります。記録時間が短縮すれば、その分ほかのケアに時間をかけられるでしょう。
電子記録の最大の利点は、情報共有がリアルタイムでスムーズに行えることです。紙媒体では、記録が手元にない場合、他職員が迅速に情報を確認できないことが課題でした。一方、電子記録ではクラウドを活用することで、遠隔地でも即座に情報にアクセス可能です。
たとえば、夜間勤務中に体調が急変した利用者の情報を記録すれば、翌日の担当職員がすぐに状況を把握し、適切な対応を計画できます。また、書類やケアプランもクラウドでどこからでもアクセスして共有できるため、利用者の長期的な健康管理に役立つでしょう。
「絆Core」は、介護記録を電子化するための革新的なツールで、効率化とケアの質向上を両立させるシステムです。「絆Core」の活用で、デジタル活用による業務効率化を推進し、介護現場の働き方改革を実現しましょう。効率的な記録作成が、利用者の満足度向上と職員の負担軽減につながります。ぜひ、検討してみてください。
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