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【福祉コラム】 福祉系ITの活用と介護人材不足対策

2020/1/10 [福祉,コラム]

介護業界の人材不足への対策として、介護ロボット、見守りセンサーなどのIT機器の活用が期待されています。それぞれのIT機器のメリットを理解して、介護職の負担軽減に役立ててはいかがでしょう。

目次

  • 介護業界におけるIT機器の可能性と限界
  • 見守りセンサーの可能性
  • ケース記録のIT化
  • 要介護者のレクリエーション機器として
  • 介護は「人」が主流

介護業界におけるIT機器の可能性と限界

介護業界では、未曽有の人材不足の中、介護ロボット、AIなどIT機器を活用して、その対策の切り札として期待される声を耳にする。確かに、介護現場におけるIT化の可能性は充分に期待でき、人材不足の1つの手法としては大きな効果をあげることは間違いない。

しかし、IT化が進んでも、その可能性と限界を、介護現場の実情と照らしながら充分に理解していないと、失望に終わってしまうと考える。その意味では、IT機器のメリットを充分に理解しながら、現場に還元していくことを忘れてはならない。

一部、雑誌などでは、遠くない将来、「介護ロボットが要介護者や認知症高齢者のケアを担う」「AIによってケアマネジャーは不要になるのでは!」といったフレーズを目にすることがある。確かに、100年後、200年後は、もしかして可能性があるかもしれないが、少なくとも30〜40年先の団塊世代の大部分が亡くなる時期までは、介護の主力は人間であり、その技術革新は「介護職」の代替になる程度には及ばないであろう。

その意味では、介護現場におけるIT化の推進は、現状の介護職の労働業務の負担をできるだけ軽減できることを明確にしていくことである。

見守りセンサーの可能性

介護現場におけるIT化及び機器において、もっとも実用価値のある製品としては「見守りシステム」である。介護施設ではどうしても限られた介護職員では目が行きとどかなくなり、転倒や認知症高齢者の徘徊などの不安があり介護職員の精神的な負担が大きい。しかし、IT化と福祉機器による開発が進めば、高齢者の少しの異変に気付き介護職の負担が軽減される。しかも、早期対応も可能である。

昨今、介護施設では個室化が進み、状況を適宜把握することが難しくなっている。その意味でも、プライバシーには配慮しながらも見守りセンサーの開発によって、かなりの介護職の負担は軽減されている。特に、夜勤帯は勤務する介護職も少ないため、大きな効果をあげている。

ケース記録のIT化

ケース記録のIT化においては、日々の記録に割く時間の短縮が期待される。特に、AI化進めば、多くのケースデータを個人情報に配慮しながら蓄積することで、一定の症状、年齢、状態を入力することで、日誌に記載する例文が数秒間で示されれば、それらを各ケースの状態に修正するだけで、ケース記録業務の短縮化が図れる。

介護職にとって記録の例文を導き出すまでに時間がかかり、かなりの負担となっている。これら事務業務は、サービス残業化している例も多くあり、介護現場の負担の1つとなっている。記録業務がIT化の推進によって軽減されれば、かなりの効果として評価できる。

要介護者のレクリエーション機器として

さらに、IT化に期待できる分野としては、要介護者のレクリエーションへの活用である。介護職の業務の1つに余暇活動なども挙げられ、適宜、レクリエーションメニューを考えていかなければならない。毎回、カラオケやゲームでは飽きてしまい、介護職の思案が試される業務である。

そのため、AI機器を用いて、今後ビジュアル的なハイテク機器も活用した要介護者向けのレクリエーション素材が開発されることで、介護職の負担軽減が期待される。

介護は「人」が主流

ただし、あくまでも介護は「人」によってなされるもので、ロボットが代替できるようになるまでには、100年、200年先であろう。

しかし、介護職業務をパーツ的に考え、それらの一部を助ける機器が開発されることで、10人の介護職が必要なところ9人で賄うことができるようになるであろう。そして、その負担軽減部分は休日を増やすなどの目に見える形で、働く介護職員に効果を示していくべきである。

そして、IT化が進んでいる介護事業所は、その珍しさから若い介護職員の魅力を引き付け、リクルート活動にもプラスになるかもしれない。単に介護人材を募集しても、集まらない時代、ユニークな取り組みによって人を集める意味で、IT化の促進は意味があると考える。

その意味では、介護は「人」が主役という前提を踏まえて、IT化の推進を目指すのであれば、介護人材不足対策の1つの切り札となりえると考える。

淑徳大学 社会福祉学科 教授
結城 康博 氏

1969年生まれ。法政大学大学院修了(経済学博士、政治学博士)。ケアマネージャー他介護系の仕事に従事。また、社会保障審議会等の委員を務める。2007年より淑徳大学総合福祉学部准教授。2013年より現職。著書に、『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』『孤独死のリアル』など多数。く丁寧な解説には定評がある。

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