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トモヱ乳業株式会社 |
トモヱ乳業株式会社の廣木です。私はIT企業で約10年SEとして勤務した後、当社に入社し、現在はDX推進を担当しています。第2工場建設や基幹システム刷新などに携わり、販売・購買・生産計画を含むプロジェクトの責任者を務めてきました。
当社は1956年創業、2026年に創立70周年を迎えました。代表の中田俊之は医師でもあり、その知見を活かして安全・安心な製品づくりを追求しています。健康経営にも注力し、「健康経営優良法人」に8年連続認定されました。さらに『ネクストブライト1000(※)』を受賞し、『ブライト500(※)』を目指しているところです。2023年度には第13回『日本で一番大切にしたい会社』にて審査員特別賞を、また茨城県よりリスキリング推進企業として『グッドプラクティス賞』を受賞しました。このように、社員の健康や教育に非常に力を入れている会社です。
※ 経済産業省が運営する『健康経営優良法人認定制度』において、中小規模法人部門の中で上位500社(ブライト500)に次ぐ、特に優れた取り組みを行う501位〜1500位の企業に与えられる冠称。
事業はチルド製品を中心とした食品製造で、牛乳・乳製品・飲料などを全国に供給しています。お客様と共同開発したプライベートブランドの商品もあり、当社の名前は出ていないけれども、皆さまが知らぬうちに手に取っていただいているものも多いのではないかと思います。
1994年の第1工場、2013年の第2工場稼働により、生産規模は国内でも最大級となりました。そして今年70周年を迎え、さらに発展を続けているところです。
当社は2022年に「グランドデザイン2030年トモヱビジョン」を策定しました。
システム部門としては、業務の簡素化と労働生産性向上を軸に、全体最適を目指しています。この観点から、さまざまな改善を進めてきました。
現在、下図のようにさまざまな基幹システムを導入しています。当初はERPパッケージシステムの導入を検討しましたが、フィット&ギャップ分析(※1)を行ったところフィット率が非常に低く、選定には至りませんでした。結果として、スクラッチ構築(※2)か個別のパッケージシステムを選定するか、業務によって使い分けて対応しています。
※1 ERPパッケージの標準機能と自社要件の乖離を可視化する分析。
※2 システムをゼロから独自に作り上げること。
パッケージシステムを導入した代表例として、原価計算に『スーパーカクテルCore FOODs』を導入しました。この業務をシステム化すること自体が初めてだったこともあり、『Fit to Standard(※)』の考えのもと、標準機能が非常に充実していることから選択に至ったものです。
※ 既存業務をパッケージの標準機能に合わせて変更すること。
当時は以下の課題を抱えていました。
まず、『在庫管理強化、適正計画、安全在庫』について。欠品を恐れて生産計画を多めに立ててしまう、入出庫が常にあるため現時点の在庫が把握できないといった問題が発生していました。
次の『属人化解消』は、業務の個人依存による問題です。誰かが休んでも別の人が代行できない、ベテランのノウハウが適切に共有されないといった状況に陥っていました。
『業務負担軽減』は、Excel での手集計が多く、処理に時間がかかりミスも発生しやすいという問題です。翌日の製造計画が夕方にならないと確定せず、製造現場の準備作業が遅れるといったことが発生していました。また、忙しさのせいもあり、業務改善まで手が回っていないという問題もありました。
『原価精度の向上とスピード改善』も、Excel での手作業による問題です。原価計算を Excel で行い年1回程度の頻度でしか算出できない、加工費分配の粒度も粗く、精度の高い原価が得られないという問題を抱えていました。
『在庫管理強化、適正計画、安定在庫』という課題に対して以下の3点に取り組みました。
従来はベテランの勘に頼っていた生産計画をシステム化することで、需要予測の精度を向上させ、予測に対する結果責任も個人ではなくシステムに負わせる。これにより個人の作業が簡素化するだけでなく、責任に対する負担も軽減させることを目指しました。
では、ベテランの勘とは何か。翌日の製造数の予測を聞くと、曜日や天気、お客様によるバラツキを考慮していたのです。「スーパーの注文は土日が多いが、週末に雨が降るとその注文が月火に流れる」といった具合です。「気温が高くなると牛乳が減り、アイスコーヒーが売れる」など、さまざまなことを頭の中で考えながら予測していたわけです。
これらの勘のすべてをロジック化するのではなく、影響が大きい要素を分析してシステムに組み込んでいきました。その結果、予測精度は向上し、現在はシステムの方が安定した精度を出せるケースも増えています。
当社の製品は季節の影響を大きく受けますが、安全在庫数は年間を通じて同じ設定になっていました。安全在庫数に手を加えるのは責任重大ですので、誰もやりたがらなかったというのが実情です。
ここにシステムを導入し、移動平均法に統計を組み合わせた処理を行うことで、製品ごとに安全在庫数が自動で変動するように改善しました。これにより安全在庫数に妥当性が持てるようになり、在庫不足や過剰による廃棄を大幅に減らすことができました。
常に入出庫があるため現在庫の把握が難しく、生産計画の数字にブレがあるという問題を、すべての入出庫をシステム連携することで解決しました。いつでも現在庫がわかるようになったことで生産計画の精度が高まり、それに従って後工程の購買業務の生産性も向上しました。
『需要予測の精度向上』、『安全在庫数の見直し』、『正確な現在庫』の3点が揃ったことで、非常に精度の高い生産計画が可能になりました。
『属人化解消』と『業務負荷の低減』に向けて、以下3つに取り組みました。
改善前は、社内に同一のマスタが複数存在していました。マスタ以外にもさまざまなデータが複数のパソコンに点在しているという問題もありました。これらの問題に対してシステムの導入、作業環境の整理、作業の平準化といったことを行った結果、『マスタや各種データの一元化』が実現しました。各所に点在していたデータをシステムに集約したことで、全員が同じ情報を参照できるようになり、誰が見てもズレのないデータが手に入るようになりました。
『各呼称の統一化』も成果の一つです。取組の中で、同じ商品でも部署によって呼び方が違うことがわかりました。作業の呼び方もそうです。なるべく同じ言葉にしたほうが良いと考え、統一化を図っていきました。
業務においては、正しく伝わることが重要です。呼び方が複数あるとミスにつながりかねませんので、呼称統一は取り組んでよかったと強く感じているところです。
ベテランの業務をシステムに継承することで、誰が対応しても同じ工数、同じ精度になるよう作業を平準化しました。『業務は組織でカバーすべきもの』として、他の人でも『代行して作業ができる』環境を作り、そのために必要な『情報の共有化』も図りました。
結果として属人化が解消し、誰かが休んでも他の人が代行でき、誰が実行しても同じ結果が得られるようになりました。
従来は翌日の製造計画を前日の18時頃に作成していたのを、前日の朝9時の時点で確定できるようにしました。
現場では、製造計画をもとに翌日の準備をします。今までは18時以降でないと取り掛かれず、原料の不足や機械の不具合などに気付くのも遅くなっていました。製造計画は生産計画確定後になり、生産計画の立案が遅いため全体が遅れ、後工程の現場の負荷が大きくなっていたのです。
しかしシステム化によって生産計画の立案が早まり、製造計画も前日朝9時に確定するようになったことで、現場の準備で何か問題が起きても日中に対応できるようになりました。会社全体の生産性が上がっただけでなく、現場からは「心にゆとりができた」という声が寄せられ、対応してよかったと実感しています。
原価計算では、以下の2点に取り組みました。
『スーパーカクテルCore FOODs』を導入し、従来は Excel の手集計で行っていた原価計算をシステム化しました。前述の『Fit to Standard』の考えのもと、業務をパッケージシステム(スーパーカクテル)の標準機能に合わせたことで、短期間で導入することができました。
結果として、Excel ではできなかった経費と製造実績のシステム連携が可能になり、原価計算に要する時間が大幅に短縮されました。生産計画システムや購買管理システムとも連携でき、最新の原価が反映されるようになったことも大きな成果です。
従来は、原価計算の頻度は年1回程度。実際には季節によって原価は大きく変わりますが、年間平均を取っていたことで、季節変動までは網羅できていませんでした。加工費の分配が組織単位で、粒度が粗いといった問題もありました。
これをパッケージシステムの機能に合わせた業務プロセスに移行し、RPA(※)なども利用して処理を自動化したことで、今では原価計算を毎月行えるようになっています。加工費もより細かに算出して原価に反映し、精度の高い原価の把握が可能になりました。
※ Robotic Process Automation の略。定型業務を自動化する技術。
取り組みの主な成果は以下のとおりです。
在庫日数が約40%改善しました。改善前の在庫日数は約1.2日分でしたが、商品ごとの安全在庫数を見直し、需要予測と生産計画の精度が向上した結果、現在では約2日分を保持しています。これは、何かトラブルがあっても2日以内に対応すればお客様にご迷惑をかけずに済むことを意味し、より安心してお任せいただける体制につながっています。
残業時間が会社全体で1日あたり約30時間の削減、生産課の人員は約33%の削減という実績が生まれました。
残業時間の削減は、製造計画の確定が前日の朝9時に早まり、現場が残業で対応していた翌日準備を日中にできるようになったことが大きな要因です。また、生産効率が高まった、計画の精度が上がった、属人化が解消したといったことによって、従来は6名体制だった生産課は、今では4名で回るようになっています。
原価計算の頻度が、従来の年1回から月1回に高まりました。これにより夏冬の原価が比較でき、毎月の原価も把握できることで、経営陣の素早い判断が可能になります。経営に大きく貢献する成果だと感じています。
ただ、このように導入効果が非常に高いことも、継続しなければ意味がありません。運用サポートにも力を入れて、これらの実績を維持し続けることが必要だと考えています。
最後に、DXを進めるうえで念頭に置いている3つのポイントをお伝えします。
この3つを大切に『グランドデザイン2030年トモヱビジョン』達成に向けて、事業の下支えをしていきたいと考えています。今回の取り組みが、皆さまのシステム導入の一助になりましたら幸いです。
本日はありがとうございました。
食品業の経営者・マネージャーの皆さまへ