低コストで手軽に始められる Excel による生産管理の魅力についても解説するので、参考にしてください。
1.生産管理は Excel でできる?
生産管理は Excel で実施することが可能です。Excel を利用した生産管理の利点は以下の通りです。
- コストの抑制が可能
- 基本操作に慣れている人が多い
しかし、複数人で同時に編集することが難しい、他システムとの連携が難しいという点には注意が必要です。メリットやデメリットの詳細については、後ほど解説します。
2.Excel で作れる生産管理表の種類
Excel を利用すると、さまざまな種類の生産管理表を作成することができます。以下は、代表的な生産管理表と、それぞれの詳細です。
ガントチャート
ガントチャートは、生産プロセスを可視化するための管理表です。縦軸で工程を表し、横軸で期間を表します。また、棒グラフを用いて進捗状況を可視化します。
Excel では、行に作業内容、列に日付を記載し、横軸で進捗状況を表すことでガントチャートを作成できます。ガントチャートを用いれば、複数の作業が並行して進んでいる状況でも、それぞれの進捗を把握しやすくなります。
ただし、タスク同士の関連性や全体のスケジュールの把握には向いていません。状況や目的に合っているか確認した上で使いましょう。
バーチャート
作業の日程を一覧にした管理表がバーチャートです。作業に必要な日数を管理することを重視しており、作業の始まりと終わりが把握しやすいです。
なお、Excel で生産管理表を作成する場合は、行に作業内容、列に日付を記載します。全体スケジュールを把握しやすい一方で、複数のタスクの関連性や進捗状況は分かりづらいです。
グラフ式工程表
グラフ式工程表は、ガントチャートとバーチャートの特徴を組み合わせたものです。納期やスケジュール、作業の進捗率を比較しやすい工程表として活用されています。
なお、Excel で作成する場合は、縦軸に進捗率、横軸に日付を記載したグラフにします。作業の進捗が分かりやすいほか、特定の作業が他の作業に与える影響も把握しやすいです。
このように作業の状況や関連性が分かることがメリットですが、その分情報量が多くなりがちです。そのため、作成や理解には一定の時間を要します。
工程管理曲線
計画と実際の進捗を比較できる工程表が工程管理曲線です。出来高累計曲線やS字カーブ、バナナ曲線などとも呼ばれます。工程管理曲線を Excel で作成する際は、線グラフを用います。
計画に対する進捗状況が可視化されるため、進行の度合いや遅延の程度などが分かりやすいです。また、上方許容限界曲線・下方許容限界曲線を記載するため、進捗状況の許容範囲が分かるのも利点です。しかし、作業それぞれの進捗は記載できません。
ネットワーク工程表
ネットワーク工程表は、作業の工数や関連性を表すための工程表です。具体的には、作業の流れを矢印と接点で表現します。そのため、前段階で完了させるべき作業や、並行して進められる作業が視覚的にわかります。
ネットワーク工程表を用いれば、各作業の関連性やクリティカルパスがわかりやすいです。また、作業日数を記載すれば全体のスケジュールを見積もりやすくなるという利点もあります。
優先順位の高い作業がわかり、取り組むべき順序が明確になれば、全体のスケジュール管理の効率化にも繋がります。
3.生産管理表作成で使える Excel 関数一覧
Excel で生産管理表を作成する際は、関数を活用することが大切です。ここからは、具体的な関数とそれぞれの詳細を解説します。
SUM 関数
SUM 関数は、基本的な関数のひとつで、指定された範囲内の数値を合計する関数です。この関数の名前は、合計するという意味を持つ英単語 SUM に由来しています。
数値を合計できる性質上、週や月の生産数の集計などのシチュエーションで役立ちます。生産管理の現場でも、頻繁に使用される関数です。
AVERAGE 関数
AVERAGE 関数も SUM 関数同様基本的な関数です。引数で指定したセルやセル範囲内の数値の平均値を算出する関数です。指定された範囲内の数値の平均値を算出できる性質上、週や月ごとの生産数の平均を求める際に使用されます。
また、引数に指定するセルやセル範囲は、必ずしも一か所に集まっている必要はありません。離れた場所に点在していても、問題なくAVERAGE 関数を使用できます。
WORKDAY 関数
指定した休日を除いて稼働日を計算できる関数が WORKDAY 関数です。設定すると、基準となる日付から指定した稼働日数を加算または減算した日付を返します。具体的には、土日や祝日を除いて何日前、何日後といった表現になります。
WORKDAY 関数を使えば、納品書の支払日や発送日、作業日数などの計算を容易にすることが可能です。なぜなら、土日や祝日といった休日を自動的に除外してくれるためです。
SUMIF 関数
SUMIF 関数は、SUM 関数と似た性質を持ち、指定範囲内の数値を合計します。指定した範囲内の数値をすべて合計する SUM 関数と異なり、SUMIF 関数は特定の条件を満たす数値のみを合計します。
たとえば、10以上の数値のみを合計するなどの条件を設定できます。この性質は、顧客や製品といった詳細な条件に合わせて合計値を算出したい場合に便利です。
COUNTIF 関数
COUNTIF 関数は、指定した条件と一致するセルの数をカウントしてくれる関数です。なお、対象を範囲指定することできます。
空白でないセルの数としてカウントするのではなく、詳細な条件を設定してセルをカウントできることがメリットです。具体的には、製品番号や納期などの条件に合わせて、該当する数を算出できます。
4.生産管理において Excel を使うメリット
生産管理においてExcelを使うメリットは多岐にわたります。以下は、具体的なメリットとそれぞれの詳細です。
コストがかからない
Excel は Microsoft 365 の一部であり、多くの企業で導入されています。そのため、既に導入されているソフトを使うだけで、新たにソフトウェアを購入する必要がありません。
専用の生産管理システムを導入しようとするとコストがかかりがちですが、Excel を活用することで、初期費用やランニングコストを大幅に抑えることができます。
簡単に操作しやすい
ビジネスシーンでは、Excel を日常的に使用しており、基本操作に慣れている人が多くいます。そのため、生産管理に Excel を使うことで、新しいソフトウェアの学習やトレーニングをする必要がありません。
ただし、関数やグラフについては学習が必要な人もいます。しかし、完全に新しいツールを導入するよりも、心理的なハードルは低くなりやすいです。
5.生産管理において Excel を使うデメリット
生産管理に Excel を使う際は、デメリットにも注意する必要があります。具体的なデメリットとそれぞれの詳細は、以下の通りです。
同時編集が難しい
Excel では、一人がファイルを開いていると他の人が確認や編集をすることができません。そのため、複数の担当者で一斉に作業することができず、リアルタイムでデータを更新することもできません。
また、内容を変更した人がわからず、履歴にも残らないため注意が必要です。複数人で生産管理に関するデータを入力することが前提の場合、この仕様が障害となることがあります。
データ量によりパフォーマンスが低下しやすい
パフォーマンスがデータ量の影響を受けやすいことも、生産管理において Excel を使用するデメリットです。
Excel の操作性は、Excel ファイル内のデータ量やパソコンのスペックに依存します。そのため、データ量が増加するにつれて処理速度が低下し、業務効率に悪影響を及ぼす可能性があります。
他システム、機器との連携が難しい
社内で利用する他のシステムや、現場で使う機器との連携が難しいのは Excel のデメリットのひとつです。
こういった連携ができないことで、人の手による転記が多く発生し、効率化を阻む可能性があります。
6.生産管理を Excel で作る際のポイント
生産管理を Excel で作る際は、いくつかのポイントを意識しましょう。ここからは、具体的なポイントとそれぞれの詳細を解説します。
工程を詳細に区分する
生産管理表は、工程を詳細に区分することで実用性を高められます。そのため、中間作業も含めて細かく工程を定義しましょう。
Excel で生産管理表を作成する際には、多くのセルを用意して正確で詳細な工程区分の設定を目指しましょう。手間や時間がかかりますが、業務効率や生産性の観点から重要な部分です。
誰が見ても理解できるようにする
生産管理表では、専門用語や難解な表現を避けましょう。
生産管理表において重要なのは、使用する人に意味や内容が伝わることです。そのため、生産管理表を作成したら、現場の従業員に確認してもらい、内容が適切に伝わるかチェックしましょう。また、視認性を高めて直感的に理解できるようなデザインにすることも大切です。
情報共有を徹底する
生産管理表を作成した後は、関係者が確認しやすい場所に掲示して情報共有を徹底しましょう。紙媒体を事業場に掲示する方法もありますが、オンラインでファイルを共有したほうが効果的です。
オンラインでのファイル共有は、ファイルの更新がしやすくなるほか、どこからでもアクセスして内容を確認できるからです。社内サーバーやファイル共有ができるグループウェアなどがあれば活用して、情報共有できる環境を整えましょう。
7.生産管理を効率化させるなら「システム」の活用がおすすめ!
ここまで Excel の活用について記載しましたが、生産管理の効率化や根本的な課題解決を目指すなら、生産管理システムの活用が最適です。システムを導入すると得られる効果は多岐にわたります。代表的な効果は以下の通りです。
- データの自動収集(他システムとの連携を含む)と分析が可能になる
- 手作業によるミスが減る
- リアルタイムでの情報共有が実現する
- 工程の詳細な追跡や進捗管理が容易になる
- 全体の生産プロセスを統合的に管理できる
また、専用のシステムなら大量の情報も処理しやすくなります。業務の効率化や精度の向上など、さまざまなメリットを得られるため、自社の目的や方針に合わせて最適なシステムの導入を検討しましょう。
8.まとめ
生産管理は Excel で運用することができます。Excel での生産管理は低コストで実行できる一方で、同時編集ができなかったり、リアルタイム性がなかったり、データ量によってはパフォーマンスが低下したりします。また、Excel での生産管理は、関数の知識やスキルが必要なため属人化しやすい、システムや機器との連携が難しいといったデメリットがあります。
Excel での生産管理のデメリットを解消し、より効率的な生産管理を行う場合は、生産管理システムの導入がおすすめです。
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