1.原価管理とは
原価管理とは、製品・サービスの製造や提供にかかるコストを適切に把握し、管理する手法のことです。原価管理に行うことで、企業活動で発生する無駄なコストを削減でき、利益率の向上につながります。
もともと原価管理は製造業の管理手法として知られていましたが、近年は、さまざまな業界で原価管理が注目されています。
2.原価計算、予算管理、利益管理との違い
原価計算、予算管理、利益管理は、いずれも企業の経営管理に欠かせない手法です。利益創出に向け、それぞれの違いを明確にしましょう。
原価計算
原価計算は、製品・サービスの製造や提供にかかるコストを詳細に計算する手法です。一方、原価管理とは、原価計算で得られた結果をもとに、「実際のコスト」と「理想のコスト」のギャップを縮小し、利益率向上を目指して原価をコントロールすることです。つまり、原価管理に取り組むためには、原価計算が不可欠といえます。
予算管理
予算管理の一要素が原価管理です。予算管理とは、予算の作成、実行、統制を行うことです。予算は、企業全体の経営計画にもとづいて作成される、一定期間の売上高、コスト、利益などの数値目標を指します。
原価管理では、予算のなかでも特に原価に関する部分に焦点を当て、原価の計画、統制、分析を行います。
利益管理
利益管理とは、利益目標を達成するために、利益とコストを計画的に管理することです。利益向上には、売上アップとコスト削減の両方からアプローチできます。そのため、利益管理では、利益算出に際し、原価がどれくらいかかっているかが重視されます。
予算管理と同様に、利益管理にも原価管理が必要です。利益の最大化に向けて、利益管理と原価管理は切り離せない概念といえるでしょう。
3.原価管理の目的
原価管理の目的は利益率向上とリスク管理の2つに大別できます。詳細を解説します。
利益率向上のため
適切な原価管理は、企業の利益を最大限に引き上げるとともに、財務の健全性を高めます。原価管理を行うことで、製品・サービスに付随するコストを正確に把握し、管理できるようになるためです。適切な価格設定によりコスト削減が実現すると、企業の利益率の向上につながります。
リスク管理のため
原価管理は、経済や社会の変動による影響を最小限に抑えます。たとえば、予期せぬ為替レートの変動や原油価格の上昇といった外部要因は、原材料費や燃料費の増加などを通じて原価を押し上げ、企業の利益率に直接的な影響を与えます。
適切な原価管理がなされると、外部要因を考慮し、迅速に対応できる体制を整えることが可能です。結果として、経営の安定性を確保し、企業の持続可能性を高められます。
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4.原価管理における課題
多くの担当者が原価管理に悩まされています。ここでは原価管理における課題を解説します。
原価の正確な把握の困難さ
原価管理の課題は、原価の正確な把握と価格設定の難しさにあります。近年、為替レートや政治情勢などの外部要因が原材料費や燃料費に影響を与えており、コスト競争の激化や多品種少量生産の増加も、原価の動きを読みにくくしています。
原価計算を行っている企業でも、製品完成間近や決算時に赤字が判明するケースは少なくありません。
Excel 管理の限界
多くの企業が活用する Excel も、原価管理の課題の1つです。Excel で原価管理を行うには、関数やマクロの知識が必要となります。専門性が不足している職場では、原価管理業務が特定の人に集中しがちです。さらに、ファイルの更新やバージョン管理にかかる手間も、業務の負担を増やしています。
効率的な原価管理を実現するには、原価管理システムや生産管理システムの導入が推奨されます。
5.原価管理を正確に行うメリット
原価管理を正確に行うと、無駄なコストや損益分岐点の把握が可能です。ここでは、原価管理を正確に行うメリットを解説します。
無駄なコストを把握しやすくなる
原価管理では、原価の構成要素に着目し、無駄なコストを特定します。将来的に無駄になる可能性の高い要素も見つけ出します。コスト削減に成功すれば、販売価格を据え置いた状態でも利益率の向上が可能です。
なお、商品開発現場にコスト削減を提案する際は、混乱を避けるために具体的な指示を出しましょう。原価管理により数値化された具体的根拠を示すと、現場の理解を得られ、スムーズに商品開発を進められます。
損益分岐点を把握できる
原価管理を行うと、損益分岐点を把握可能です。損益分岐点とは、売上高がトータルコストと等しくなる分岐点のことで、損益分岐点を境に利益と損失が発生します。
損益分岐点を把握できると、どれくらいの原価でどれだけの利益が出るかを理解し、客観的な観点から経営判断を下せます。市場に出した製品を撤退させるべきかどうかの判断も、損益分岐点を把握しておけば適切に行えるでしょう。
6.原価管理の流れ
原価管理では、現状把握から施策立案、改善までの一連のプロセスを通じて、無駄なコストを削減します。原価管理の流れを解説します。
1)標準原価の設定
標準原価は、製品・サービスの製造や提供に必要となる「理想のコスト」のことです。標準原価には、材料費や労務費、経費などが含まれます。標準原価は、過去のデータや市場調査にもとづいて設定され、コスト管理の基準となります。
2)実際原価の計算
実際原価は、製品・サービスの製造や提供にかかった「実際のコスト」を指します。実際原価には、材料費、労務費、経費などが具体的に計上されます。実際原価の正確な計算は、原価の構成要素ごとのコストを把握するために不可欠です。
3)差異分析
差異分析では、標準原価と実際原価の間に生じる差異を分析します。特定された差異は、コスト改善施策のパフォーマンスを評価する指標の根拠となります。
差異分析を通じて、どの要素が原因でコストの無駄が生じているかを特定し、無駄の原因を明らかにしましょう。
4)改善の実施
差異分析の結果にもとづき、コスト削減や効率改善のための具体的な施策を講じましょう。改善施策には、プロセスの見直しやコスト削減策の導入などが該当します。改善策を実施して、次回の原価管理サイクルでよりよい結果を目指しましょう。
7.効率的に原価管理を行う方法
原価管理の効率性向上という課題に取り組むため、原価管理のやり方を見直しましょう。効率的な原価管理の方法をいくつか紹介します。
デジタルツールを活用する
Excel をはじめとする手作業による原価管理には限界があるため、原価管理システムやERPシステムの導入が推奨されます。
デジタルツールは、データの自動収集・分析を可能にし、リアルタイムでの原価管理を実現します。また、自動化により業務の属人化を防げるため、担当者の負担も削減可能です。
標準原価の設定と定期的な見直しを行う
標準原価を設定して定期的に見直すことで、原価管理の精度を向上させられます。標準原価は、過去のデータや市場動向にもとづいて設定され、企業のコスト管理の基準となります。変化する外部環境に対応するためには、標準原価の定期的な見直しが不可欠です。
定期的な差異分析と改善策を実施する
差異分析は単発の取り組みではなく、継続的に実施することが重要です。定期的に差異分析を行うと、コスト管理の問題点や改善点を早期に特定できます。差異の原因を特定し、適切で具体的な施策を講じることで、原価削減と効率向上を両立できます。
8.まとめ
原価管理は、企業の利益率を向上させ、リスク管理にもつながる取り組みです。ただし、Excel での原価管理は効率化に課題があります。効率的な原価管理のためには、システムの導入が推奨されます。
特に工場全体でかかる費用(労務費や経費)を適切に製品に配賦する際には適切な基準が必要です。
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