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【DXからERPを考える】 第3回:ERP導入が難しいわけと、DXの突破口

2022/4/28 [ERP,経営,コラム]

DX(デジタル・トランスフォーメーション)が全盛の昨今でも、基幹システムやERPにお悩みを感じている担当者、経営者の方は少なくありません。この連載コラムでは、「DXからERPを考える」と題して、ERP導入を支援する現役コンサルタントが、これまでの経験を踏まえて、成功するERPの導入、活用のポイントを分かりやすく解説いたします。

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
技術・事業開発本部 営業推進部 調査役
務台 博海(むたい ひろみ)氏

1998年入社。メインフレーム、クラサバのプログラマーからキャリアを開始し、Webシステム開発のプロジェクトリーダーを担当。その後自社パッケージ製品の開発、導入、他社パッケージ製品の導入のプロジェクトマネージャを担当。2012年以降は、「PMO支援サービス」として、ERPを中心とした企業基幹システムの計画策定、導入のご支援が中心。2020年より、「DX支援コンサルティング」として、より上位のDX戦略立案、組織立ち上げ等の支援を主に行っている。

【主な資格】ITストラテジスト, ITコーディネータ, プロジェクトマネージャ, PMP, システム監査, DX検定エキスパート, テクニカルエンジニア(データベース)

前回前々回とDXについて、ERPについて、なんとなく使っていた言葉を改めて整理しました。
そのうえで今回は、ERP導入の難しさのわけとDX的な突破口についてみていきましょう。

ERP流行の変遷

企業がIT化を進め、個別のシステムとしては、会計、販売管理、人事給与、等と個別の業務システムは導入したのだが、どうもうまくないと思い始めた2000年代頃。
データの整合性をとることに苦労し、それぞれの保守の負荷やコストも大きくなって、気づけば自社に多くのシステムと多くのサーバを持っており、それぞれがサポート切れやパッチ提供などをバラバラのタイミングで必要としてくるため、お守りに手一杯。
そんなころERPというコンセプトは、舶来品であることもあってか、魅力的に映りました。

・データの一元化
・システムの統合
・ベストプラクティス
・業務の標準化
・全体最適
・内部統制強化

これらが達成されれば、日々の苦労から解消され、企業内でのデータ活用が活発になる。
はずでした。実際には、初期の期待(売り文句?)とは裏腹にそこまでの果実を収穫できた企業は少ないでしょう。
確かに保守が一元化され、内部統制強化には貢献しているのですが、一度ひととおりERP製品を導入した企業は、5〜10年後の再構築タイミングでは、過度な期待は禁物とばかりに、せめてできるだけカネを掛けずに、無難にやり過ごそうというふうにさえ見えます。

ERP導入計画に対するニーズ

私のもとにいらっしゃるお客さまのお困りの声は、以下3タイプのいずれかになります。

①ERPが未導入。新規導入したいが、社内にこれを担う人材がいない、ノウハウがない。

②基幹システムと呼べるものはあるが、生い立ちは古くスクラッチやオフコン等であり、現在の業務に合わないところも多い(老朽化)。さらには数年後には保守を担当している社内外の人材が退職してしまい、立ち行かなくなってしまう。ERP製品の導入を検討したいが、社内にこれを担う人材がいない、ノウハウがない。

③ERPを導入済。現在のシステムを数年利用しているが、近いうちにサポート期限が到来する。現行ベンダーからはバージョンアップをする場合の提案見積を受けているが、なかなかの高額。不満の多い現行システムをそのままバージョンアップする気が起きない。別のERP製品の導入を検討したいが、社内にこれを担う人材がいない、ノウハウがない。

①は年々減っているものの、今もってあります。設立して間もない企業ではなく、創業何十年という企業であったりします。②も年々減っていますが、それでもよくあります。③は、現行システムに不満がなければお声は掛からないはずですし、ERP導入のノウハウは社内にあるはずですが、これもよくあるパターンです。

処方箋のまえに、標準と追加開発の関係を整理

ERP製品の導入は、標準機能のみを使用し一切の追加開発をしない。とすれば、最安、最短、最高品質となります。
最高品質というのは、追加開発が全くなければバグが埋め込まれないからです。もちろん、標準機能にもバグはあり得ますので最高であってゼロとは限りません。しかし自社の導入以前に多くのユーザにテストされていれば、大方のバグは取り去られているはずです。

そんな「最安・最短・最高品質」。それができるケースとできないケースの違いはどこにあるでしょうか。
一言で言えば、「業務プロセス、そのやり方にこだわりがあるかどうか」。
新しく立ち上がった事業であれば、こだわりができあがっておらず、標準機能だけで少なくとも「ひとまずははじめてみよう」がしやすいものです。
あるいは、基幹システムと呼べるようなものをこれまで使用していなければ、ERP製品の標準機能だけでひとまずは始めてみようがしやすいものです。
逆に、「長年かけてこういうやり方にしてきた」という場合は、「これじゃあ回らない」、「こういうケースはどうすればいいのか?」などとなり、追加開発要望が発生します。こうなると、業務のディテールの再現を追求していってしまい、開発費は増加する一方。かといって、トップの鶴の一声によってむやみに不許可としても、教育フェーズやひどい場合は本稼働後に「これじゃあ回らない」と利用者からの大反発にあってしまいます。

ある企業さまでは、大反発どころか従業員が失望して離職してしまったと言います。

ある企業さまでは、「利用部門からクレームを受けるわけにはいかない」と、現行システムでできていることは同じくできるようにしようとし、追加開発規模が膨張し、当初予算を大きく上回り、かつバグが多発しました。

ある企業さまでは、「標準機能を賢く使って追加開発をなくそう」とプロジェクトをスタートさせたものの、最初のフェーズから追加開発を多発させ、「原形をとどめていないほど追加開発」しました。

ある企業さまでは、社長が「標準機能のみで本稼働まで持っていく」としたものの、最終盤の並行稼働中に「切替はできない」という結論に達しました。結局、旧システムを継続使用しており、使えない新システムの保守をどうするかが議題となっています。

DXからこの問題を考える

何を目的として、何をするのか」、「競争上の優位性を確立」できるのか。
これにもどれば、御社のその業務プロセスは、誰のために洗練されたものでしょうか。
その業務プロセスによって、競争上の優位性を確立していますか。
もしそうであれば、ここに投資を惜しむことはできません。場合によっては、既製品であるERP製品を使おうという発想自体が矛盾するということにもなりかねません。

もし「短納期を実現するための仕組み」で競合他社に打ち勝つのなら、ERPとの結びつきが高いかもしれません。

もし「受注から売上までに何度も顧客とやり取りをして内容調整がなされる」ような場合は、ERPが見積→受注→売上と一連の内容を二重入力なく、内部統制を強化するような考え方とは合わないかもしれません。

もし「競争上の優位が、見積前の提案や、納入後のアフターサービス、製品そのものにある」場合は、投資を振り向けるのはココであり、ERP領域ではないかもしれません。この場合のERP領域の業務プロセスは、企業の全体最適で言えば譲るべきところになります。つまり、ERP製品に個別要求をあまり増やしません。

ただ、このことを理解したとして、的確な判断はなかなか難しいものです。
しかし、「この業務プロセスをやめてERP製品に合わせてしまっても、強みが維持できるか」「この業務プロセスを維持するために追加開発を行うことが適切か、競争優位の源泉なのか」。こういった問いに正対してこそのDXです。
人が主体性をもって産みの苦しみをいとわずに解を出そうとすることこそが、「何を目的として、何をするのか」「競争上の優位性を確立」できるのか。に繋がるのです。
正解があるというよりどう判断するか、誰かが決めてくれるのではなく自らが選択するのです。思考停止をしていては競争優位には程遠いのです。

次回以降は、ERP導入の活動における勘所を説明してまいります。

第4回:ERP導入に向けた社内で注意すべき事柄もご覧ください。

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