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株式会社日本能率協会コンサルティング 事業会社にて経営企画業務に携わり、JMAC入社。これまでのコンサルティング領域は、中期のビジョン策定・経営計画策定支援と管理会計システム再構築である。経営計画策定支援にて業務改善が重点課題となる場合等、具体的な改善案の検討および改善施策の実行も含めた支援実績多数。 |
全6回にわたり、原価管理再構築における「壁」への対処法について考えてきました。しかし、経営陣がどれほど優れた戦略を描き、精緻なシステムを構想しても、それだけで変革は完遂しません。
最終回となる本稿で向き合うのは、新しい仕組みに命を吹き込み、日常の業務として回していくための最大の鍵となる「現場の巻き込み」です。
現場を味方につけ、新しい運用を定着させるためには、現場の「納得」が不可欠です。私たちは、現場の納得感を次の方程式で捉えています。
【 納得 = 必要性の理解(共感) × 有用性の理解(期待) 】
掛け算であるため、どちらか一方がゼロであれば、納得感もゼロになります。現場社員を巻き込むためには、プロジェクトの各フェーズ(診断・構想・運用)において、この「必要性」と「有用性」に対する理解を促進するアプローチが有効です。
プロジェクトの初期段階である診断Phaseにおいて重要なのは、いきなり新しい仕組みを押し付けることではありません。まずは、既存の管理会計数値に関する現場レベルの不満を「吐き出し」させることが重要です。現場の生の声を起点に、それらを解消できる点を示すことで、再構築への理解を促進します。
共感(必要性の理解)へ繋げる:現場には「現在経営層が意思決定に使用する数値に、現場の実態が反映されていない」という強い不満があります。新しい管理会計がこのズレを正し、現場の真の姿を経営に伝える仕組みになることを示すことで、現場は変革の必要性を理解するようになります。
期待(有用性の理解)へ繋げる:また、「現在の自分達の評価に使用される数値に、管理不能な要素が含まれている」という不満も多く聞かれます。自分たちの努力ではどうにもならないコストで評価される理不尽さを解消し、正当な評価に繋がることを示すことで、現場にとっての有用性の理解に繋がります。
続く構想Phaseでは、管理数値を組織・部門・個人の方針や役割、そして実際の活動内容とつながるように設計します。
共感(必要性の理解)へ繋げる:戦略を落とし込んだ組織方針から、部門方針、さらに個人の役割へとブレイクダウンし、管理数値を紐づけます。自分たちの目標が全社戦略の中でどのような位置づけにあるのかが明確になることで、必要性の理解が深まります。
期待(有用性の理解)へ繋げる:さらに、購買、製造、出荷など、各部門の業務の特性を深く理解した上で、組織・部門・個人の日々の活動と管理数値を紐づけます。現場の動きと数字が直結する設計にすることで、「この数字は自分たちの仕事の成果を表している」という有用性の理解に繋がります。
最後の運用Phaseでは、仕組みを作って終わりではなく、実際にデータを使った学びの抽出や、経営層への報告をサポートすることで、必要性と有用性を現場に実感してもらいます。
共感(必要性の理解)へ繋げる:これまで現場の動きと会計が連動していなかったため、現場から経営層への報告は非常に困難でした。新しい仕組みにより、現場の動きと会計が繋がり、経営層へのスムーズな報告が可能になるようサポートします。これにより、「この仕組みがあるからこそ正しい報告ができる」という必要性の理解に繋がります。
期待(有用性の理解)へ繋げる:単に数字を出して終わるのではなく、管理数値から次のアクションにつながる「学び」を抽出することをサポートします。数字を改善のヒントとして活用し、実際の成果に結びつける体験を通じて、現場はシステムの真の有用性を理解します。
原価管理再構築における数々の「壁」を乗り越えるのは経営の意思決定です。しかし、その決定を日常の運用として定着させ、真に価値ある数字を生み出し続けるのは、現場の意思に他なりません。
現場の不満に耳を傾け、業務に即した設計を行い、日々の活用をサポートする。この一連のアプローチを通じて「共感(必要性)」と「期待(有用性)」を醸成し、確かな「納得」を築き上げること。それこそが、原価管理再構築を成功に導く最大の推進力となります。
本連載が、皆様の企業の変革と、現場と一体になった強い原価管理体制の構築に向けた一助となれば幸いです。
(完)
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