一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会 会長 |
コラムをご愛読の皆さま、こんにちは。
今月は、自身も重度の知的障がいの息子さんをもつ、全国手をつなぐ育成会連合会佐々木会長による手記のご紹介です。グループホームでの生活の様子や成長の喜びなど生の声をお届けします。ぜひ、福祉施設の経営者や職員の皆さまにとって、日々の施設運営や障がいのある方々へのサービス提供における励みとなれば幸いです。
私の息子は、現在37歳になります。障害程度は重く、障害福祉サービスを受ける上での障害支援区分は6と最重度です。
息子が特別支援学校(当時は養護学校)の高等部に在籍していたころ、PTAの先輩から、将来について聞かれました。その時、「グループホーム(以下GH)で暮らさせたい」という話をしました。なぜなら、息子は、重度の知的障害がありますが、住み慣れた地域で暮らさせたいと考えていたからです。その時、先輩から、「重度の人のためのGHを作るからその時は、誘うわね」と言われました。まだ、学生でしたから、その時は、半信半疑で聞いていましたが、息子が21歳になる直前、その先輩から、「重度の人のためのGHを作ったから、入居しない?」と誘われました。その時、まだ息子も若いし、主人も私も元気だし、どうしようかと迷いました。しかし、区内に重度の知的障害者のためのGHは他になかったのと支援者が地域で、重度の自閉症や知的障害のある人の支援を長いこと続けている信頼できる人であったので、主人と話し、「週末は帰宅する」ということで、入居の方向で準備を始めました。もちろん、本人がどうしても慣れない、嫌と言うのであれば、私たちも元気なので、いつでも自宅に戻るという気持ちで送り出すことにしました。
数回の体験入居を経て、息子も安定して暮らせそうだったので、正式にGHに入居することになりました。息子が21歳1か月の時です。当然、同じ区内ですので、日中は、今まで通っていた通所施設に通い、週一回通っていたスイミングクラブも継続できました。当時は、重度の知的障害者がGHで暮らすということは、想定されていなかったので、役所の人からもずいぶんびっくりされました。
定員が6人のGHでしたが、重度の人ばかりだったので、一度に全員が入居せず、息子は、3人目の利用者でした。その後、入居した方も含め、学校時代からの知り合いで、利用者間の問題は、ありませんでした。
親が元気なうちに入居したことの最大メリットは、一度にすべての支援(生活面、医療面、手続き等)をGHにお任せするのではなく、家族がそれまでしてきたことを伝えながら、当面は、親が担うこと、GHがやることをうまく使い分けることができることでした。
例えば、日常生活支援(食事・洗濯・掃除等)に関することは、GH。医療面では、風邪などは、GHで通院に付き添う、今まで通っていた遠い精神科などは、家族が担う、役所の手続きは、家族が行うなどです。16年経ち、家族も高齢になり、できなくなった利用者さんは、GHにお願いしたり、訪問看護、訪問医療も導入されました。
生活支援は、とても丁寧に母親目線で、一人ひとりに合わせてやっていただいているので安心しています。例えば、食事ですが、毎日、時間が決まっていて一斉に食べるのではなく、一人ひとりに適した時間で食べていますし、夏は、通所施設から帰宅すると汗びっしょりですから、シャワーや入浴し、本人が希望すれば、夜も入浴できます。
息子は、言葉は、単語と少しの二語文でコミュニケーションを図っていますが、人との「言葉遊び」がとても好きです。特に、お気に入りの世話人さんとは、決まった会話を楽しみたいという気持ちがあります。そういったことにも、充分応えていただいており、息子の情緒は、とても安定しています。
最近は、母が週末に出かけることが多くなり、GHにお願いすることが増えてきましたが、息子は、却ってその方が楽しそうです。というのも、必ず、翌週は、自宅に帰るのかという確認があるのですが、最近は、次はホームと言うと嬉しそうなのです。週末がホームの時は、移動支援のサービスも、受けられるようGHの管理者が息子に合うヘルパーさんを探してくれ、数時間お出かけしています。
息子は、家系的に糖尿病の気があるので、夕方、運動のための散歩もヘルパーさんと行っていますが、そういった手配もGHでやってもらっているので、助かっています。
最初の自宅以外での生活(現在のGHでの生活)がとても安心できるものであったので、今後、例えば、息子の体調に変化があったり、GH自体が小さなNPO法人が運営しているので、継続ができなくなった時について、親としては、不安はあります。
ただ、息子が16年間、世話人さんや何人もの生活支援員さんと暮らし、培ってきた力があるのではないかとも感じています。
最近、色々な場面で、「大人になったね」と主人と話すことがあります。37歳ですから、当然なのですが、それだけ成長したということを感じる今日この頃です。
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