一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会 副会長 |
コラムをご愛読の皆さま、こんにちは。
今月は、自身も知的障がいの息子さんをもつ、全国手をつなぐ育成会連合会副会長による手記のご紹介です。福祉施設の職員の方とのやりとりや心に残ったエピソードなど生の声をお届けします。ぜひ、福祉施設の経営者や職員の皆さまにとって、日々の施設運営や障がいのある方々へのサービス提供における励みとなれば幸いです。
皆さま、はじめまして。私は、全国手をつなぐ育成会連合会の副会長を仰せつかっております、小島 幸子(こじま こうこ)と申します。栃木県手をつなぐ育成会の会長でもあります。
私の障害のある長男は、未熟児で誕生しました。体も心も大きく育って欲しいと願い「良太」と名付けましたが、その名の通りに本当に大きく育ってくれました。
毎日、近所にある生活介護の事業所に通っています。知的障害がある自閉症で障害支援区分は6、聴覚過敏など繊細で、こだわりも激しく強度行動障害と呼ばれてしまっています。小さな頃から、母子通園ホーム、言語療法、感覚統合訓練などありとあらゆることをやってきましたが、人生、奮闘と努力だけでは解決できないこともあるようです。なんだかこんな歌、ありましたね(笑)
さて、障害者に対する虐待のニュースが毎日のように報道される日々ですが、被虐待者は、知的障害で行動障害のある人が圧倒的に多いというデータがあります。そうなんです。良太のような人が虐待にあいやすいようです。
例えば、私が良太の身体に「あざ」を見つけたとします。そうすると私はまず、施設の職員を疑ってしまいます「あの職員、いつもニコニコして感じいいけど、ストレスがたまって、良太と二人きりの時に良太の身体をぎゅっとつねっているのではないかしら?」
一方で良太は、毎日施設で入浴して来るので、職員が良太の身体にあざを見つけたとします。そうすると職員は母親である私を疑います「良太さんのお母さん、育成会の活動を熱心にやっているけど、家では疲れ果ててイライラして、良太さんのことを蹴飛ばしているのではないかしら?」
施設と自分の名誉のために言っておきますが、あくまでも仮定の話です。しかし、どこでついたかわからないあざを発見する時は、あります。施設でついたか家庭でついたか?お互いに詮索し、なんだかモヤモヤした気持ちになります。名付けて「あざの呪縛」です。最近、聞いたのですがそこにグループホームの世話人が関わるケースもあり、三角関係の呪縛になることもあるようです。
あざを見つけた方が、連絡帳に書く。早く見つけた方が勝ち?どこでついたか?言葉のない障害のある人だから、原因を探るのに科捜研の女が必要か?(笑) あざだけではなくて身体に出来たニキビ、虫刺されなどもあります。
私は、施設の職員に対してお話することもあるので、正直な家族の気持ちをこうやってお伝えすると皆さん、くすっと笑って下さいます。最近は、ある職員から「連絡帳に書く時にあざなどのことを書く時『きちんとやっています』アピールになるような気もして・・・」と正直に胸の内を明かしてくれました。
それでは、呪縛を解決するには、何をすればいいでしょうか?
一つは、お互いになんでも言いやすい雰囲気の信頼関係を築くことではないかと思います。「言うは易く行うは難し」ですが、時間をかけていくしか方法はないようです。しかし、職員の異動もありますから、なかなか難しいところはありますが、時々、施設を訪問して職員とじっくりと話をしてみることが重要ではないか?と考えて実行しています。
良太の施設の職員は、良太と同年代か年下の人が多くなって来ています。若い職員に私たち家族は救われているのです。私は、良太が不穏になると「良太がまた怒っている」「パニックになった」とネガティブな表現をしがちですがある職員は、そのような状態の良太を「良太さんがあわてている、そわそわしている」という表現をしてくれました。とってもあったかい気持ちになりました。昼間の大半の時間を施設で過ごしています。良太は、家では見せない表情を施設でしているのでしょう。職員にはいつも感謝の思いでいます。これからもよろしくお願いいたします。
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