アクタス税理士法人 東京と大阪を中心に5拠点、総勢約150名で構成する会計事務所グループ「アクタス」の代表を務める。税理士は、「接客・サービス・コンサル業」であるという考えにもとづき、いつもお客様の立場になって徹底的に考え、経営視点でのコンサルティングを提供している。セミナー講師も数多く行っており、受講者目線で、わかりやすく丁寧な解説には定評がある。 |
今までは、保険商品のタイプごとに個別に取り扱いが決められていたため、その個別範囲から逃れるような保険商品の開発がされてきましたが、今回の改正で、解約返戻金の率に着目した取扱いに変更され、そのような事が難しくなります。定期保険等の保険料の資産計上の新しい基本的な考え方をこの機会にぜひご確認ください。
これまで国税庁は、解約ありきの節税目的となる長期平準定期保険や逓増定期保険、がん保険等の保険商品について、問題になる都度個別にその適正化を図ってきました。その後も国税庁等と新しい保険商品との間ではいたちごっこが続き、その解消も含め、先月6月に定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いの見直しを目的とした法人税基本通達が発表され、以下のようにルールの統一化が図られました。
定期保険のうち、「最高解約返戻率」が50%を超える定期保険等について、次の通り一定期間の保険料の一部を資産計上することが原則となりました。なお、「最高解約返戻率」とは、その保険の保険期間を通じて解約返戻率が最も高い割合となる期間におけるその割合のことをいいます。
1.「最高解約返戻率」50%超70%以下(年換算保険料相当額が30万円超の定期保険等)
・資産計上期間:保険期間の当初40%相当の期間
・資産計上額:年間の支払保険料×40%
2.「最高解約返戻率」70%超85%以下
・資産計上期間:1と同じ
・資産計上額:年間の支払保険料×60%
3.「最高解約返戻率」85%超
・資産計上期間:保険期間開始日から解約返戻率が最高となる期間の終了日
・資産計上額:年間の支払保険料×最高解約返戻率×70%(保険期間開始日から10年経過日までの期間は90%
また、次の3つの定期保険等は通達改正後も全額損金となります。
1.保険期間が3年未満の定期保険等
2.最高解約返戻率50%以下の定期保険等
3.最高解約返戻率70%以下、かつ、年換算保険料相当額が30万円以下の定期保険等
「短期払のがん保険等」とは、保険期間が終身でありながら、保険料の払込期間が短期の保険商品をいい、これまでは保険料の全額損金算入できるといったメリットがありました。今回の改正により、以下のとおりとなります。
1.年間の支払保険料が30万以下
支払日の属する事業年度で損金算入
2.年間の支払保険料が30万円超
保険料の払い込み期間にかかわらず、保険期間の経過に応じて損金算入
改正通達は、以下の区分に応じた日以後の「新契約」に適用されることになります。よって、過去の契約に遡及されることはありません。ただし、既存契約の見直しをし、契約内容の変更をすると改正後の取扱いとなる可能性がありますので注意をする必要があります。
(契約変更の詳細は、下記「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」のQ11参照)
1.最高解約返戻率50%超の定期保険等:2019年7月8日以後の契約分から
2.短期払のがん保険等:2019年10月8日以後の契約分から
◆国税庁Webサイト「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」
◆アクタスWebサイト「節税目的の定期保険等の通達改正について」